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第131話:『結晶に包まれた島ベイチニア半島』








ベイチニア半島


日本から6000キロほど離れた場所にある島。


その島の人口は、約15000人。


観光地があるわけではないが、のんびり暮らすにはうってつけの場所だと評判が高い豊かな場所だ。



時刻は、既に真夜中。


ある豪邸の一室に寝る1人の女の子。


気持ちよさそうに寝ていた。


カルメ:「ママ…」
寝言を漏らすオレンジ色のショートヘアの女の子カルメ。


枕カバーをぎゅっと握り締めた。


そんな豪邸の地下には、研究施設が広がっていた。


その施設に1人で、何やら準備を進める研究者ロヴィニ博士。


彼は、カルメの実の父である。


ロヴィニ博士:「長年研究し、そして1年前ようやく見つけた”ヴィータのペンダント”。これさえあれば!」
博士の脳裏には1人の女性が浮かび上がっていた。


ロヴィニ博士:「待っててくれ、ヴィラ」
博士は、手に持っていたペンダントを装置の上に置いた。


ヴィータのペンダント。ヴィータとはイタリア語で、”命”を意味する言葉だ。


そして、ヴィラとは博士の妻、つまりカルメの母親である。だが、ヴィラは既に、この世にいない。カルメが物心つく頃に病に侵され、病死した。


ロヴィニ博士:「お前が生き返れば、カルメはきっと喜んでくれる。だから、目を覚ましてくれ」
博士は、倉庫の扉を開けた。その扉を開けた瞬間、中の冷気が漏れ出す。


そして、博士は倉庫の中からストレッチャーを引っ張ってきた。

そのストレッチャーに眠る女性。彼女こそが、ヴィラである。しかし、それはもう死体だった。


ロヴィニ博士:「お前の美しさは、コールドスリープで保たれた。お前は、昔のままで蘇るんだ」
死体であるヴィラの頭を撫でる博士。


ストレッチャーを引っ張り装置の近づける。


まずは、一度装置の上に置いたヴィータのペンダントを見せる。

ロヴィニ博士:「見てくれヴィラ。これが、多元世紀の歴史に記されたペンダント、死んだ人間をよみがえらせる力があると言われているヴィータのペンダントだ。お前を生き返らせようと、私が1年前に発見し、そして研究を重ねて、今日ようやくお前を蘇生させるために使う時が来たんだ」
博士はヴィラの死体を所定の位置に置いた。


ロヴィニ博士:「カルメに笑顔を見せてやってくれ」
博士は装置を起動させた。


眩しい輝きが、ヴィラを照らす。


そして、ヴィータのペンダントに埋め込まれている綺麗な宝玉にレーザーのようなものが照射される。


レーザーを受けるヴィータのペンダント全体が輝き出し、研究部屋全体を照らすほどの輝きを放った。


それを見て、期待が深まるような顔をする博であった。







第8OP『Mysterious《Naifu》』








第131話:『結晶に包まれた島ベイチニア半島』







ペンダントから放たれる輝き。その輝きは装置の判断で、正常値を示していた。


ゲージが緑色に点灯していることを確認する博士は、期待を寄せた。


このまま行けば、ヴィラは蘇る。そしたら娘は喜んでくれる…!

そんなことを思いながら博士は期待していた…が、次の瞬間、装置から異常な音が鳴り、さっきまで緑色に点滅していたゲージも危険を示す赤色に変化した。


ロヴィニ博士:「な、何!?どういうことだ!さっきまでうまく行っていたはずだ!」
博士は装置のキーボードで、状況を調べた。

だが、一体、何が起きたのか予想もできなかった。


すると、突然、新たな異常音が装置から鳴り出した。


ロヴィニ博士:「このままでは、何が起きるかわからない!仕方ない!装置を強制終了!」
強制終了のスイッチを押して、装置の強制終了を実施した。しかし、装置は止まることなく動いていた。

ロヴィニ博士:「な、何故だ!なぜ止まらない!!はっ!」
装置が止まらないことに驚く博士。だが、それよりも驚いたことが、部屋の天井に、次元の渦のようなものが展開された。

ロヴィニ博士:「な、なんだ!あれは!」
博士は、その次元の渦に目を向けた。

すると、その渦は徐々に広がり、やがて博士を吸収するほどの大きさになってしまった。

ロヴィニ博士:「う、う、うわあああああ!」
その渦に吸い込まれてしまった博士。大きな叫び声を出すが誰も助けには来ない。






次元の渦が展開されている真下に、レーザーのようなものが照射され、そこを中心に結晶体の柱が次々と発生した。

その結晶体は部屋だけには止まらず、研究施設全体、そして博士の豪邸をすぐに包み込んだ。


更に、そこから結晶体は広まっていった。



酔っ払い人:「おーい、俺の家はどっちだー」
アルコールが入っている所為で進行方向が分からず、中々家にたどり着けない男性。


酔っ払い人:「ん?」
目の前に見える光ったもの。


酔っ払い人:「なんだ?車か?こんな狭い道に?いや、バイクか?でも、音しねえな」
酔っ払い人は目の前に見えた光ったものを見て、言葉を適当に並べた。

その光は、段々と近づいて来ている。


酔っ払い人:「まあいいや。おーい!タクシー!」
男はタクシーだと思い手を振った。


しかし、近づいているのはタクシーではない。


結晶体が次々と道を支配し、その道の上を歩いていた酔っ払い人すらも、その結晶体に包み込まれてしまった。

その人は、頬を赤く染めたまま、結晶体に包まれてしまう。



この現象により、真夜中にも関わらず島中の人々が慌てて避難を開始する。


「うわああああ!」
「きゃああああ!」
そんな悲鳴が、そこら中から聞こえた。


父親:「早く隠れろ!」
家族4人が、家の中に隠れた。

家の中にいれば安全だろうと判断したのだろう。

だが、結晶体は家の中にまで広がり、家族4人は、悲鳴を上げながら結晶体に包まれてしまった。



クレート:「皆さん急いで!早く避難を!港の方へ進んでください!!」
1人の男性が住民たちを誘導していた。


男性は、そこから見えるロヴィニ博士の豪邸を見つめた。


明らかに、あそこを中心に、この現象は起きている。

クレートは携帯電話の電話帳から、ロヴィニ博士の電話番号を引っ張り電話をかける。

クレート:「出てください、博士…」
慌てて博士に連絡を取るクレートだったが、博士は電話に出てくれなかった。

クレート:「くっ」


研究仲間:「クレート!ここも危険だ!急いで、離れるぞ!」
クレートの研究仲間であった人が、そう言って取り残された住民がいないことを確認し、その場を離れる。




しばらくして、結晶体による増殖は収まった。

だが、これにより、島の住民の半分以上が結晶化に巻き込まれてしまった。






その頃、ロヴィニ博士の豪邸の一室で寝るカルメは、夢を見ていた。


優しい母の笑顔。

だが、その笑顔は突然失われた。

ベッドに横たわる母。そんな母の頬を撫でるカルメ。

カルメ:「ママ…。ママ、起きてよ」
あの時、なぜ母が目を開けてくれなかったのかわからなかった。

同時3歳。物心はまだついていない。

けど、成長すれば、物心もつく。そして、母があのとき死んだことだって理解できる。

短い期間だったけど、母との楽しい思い出。それはカルメにとって大きな宝物でもある。


6歳になった直後、カルメは歳の取らない身体になってしまった。

多元世紀ではよくあることだ。



どんなに月日が経っても、この思い出だけは消えない。いや、消したくない。母が生きていた証拠となる思い出を…。



だが、そんな夢は突然と風景を変えた。


真っ暗い部屋。そんな部屋の中に、カルメは1人呆然と立っていた。


???:「うわああああ!」
そんな部屋の中で聞こえた悲鳴声。

聞いたことがある声だった。


ロヴィニ博士:「カルメ!」

カルメ:「パパ…?!」
上を見ると、渦のようなものに吸い込まれそうになっている父を見つけた。

カルメは、その短い腕を伸ばし、博士を掴み取ろうとする。

ロヴィニ博士:「カルメーーー!」

カルメ:「パパーー!」
お互いに手を掴もうと腕を伸ばすものの、博士は渦に吸い込まれて姿を消した。


カルメ:「パパァァァァ!」
ただ叫ぶことしかできないカルメ。

だが、その叫びがカルメを夢から覚まさせてくれた。


カルメ:「いやっ!」
変な夢を見た所為で、突然ベッドから起き上がるカルメ。

冷や汗を掻いていた。


カルメ:「パパ…パパ!」
カルメはベッドから立ち上がり、部屋を出ようとする。

だが、扉を開けようとドアノブに手を伸ばしたとき、後ろに何かいることに気付いた。


カルメ:「だ、誰…?」
後ろを振り向くカルメ。
暗い部屋のため、はっきりと姿が見えなかったが、少なくとも人間ではないことは確かだった。


その影は一歩ずつカルメに近づいた。

少し怯えるカルメ。

そして、窓から射す月の光が、その影を照らす。



???:「……」


カルメ:「?」
影の正体は、豹柄の猫類の生き物だった。


カルメ:「豹さん?虎さん?」


ジャガー:「いや、ジャガーだ。ロヴィニ・ジャガー」
カルメの前に立つ豹柄の生き物が、自分の名前を名乗った。

カルメ:「パパ…」
ジャガーの声を聞いたカルメは、その声に聞き覚えがあった。

ジャガー:「パパ…?」

カルメ:「パパ!パパなんだね!よかった!」
カルメがジャガーに抱き付いた。


ジャガー:「私がパパ…」

カルメ:「私、心配したんだよ!夢の中で、パパが消えちゃったから、すごく心配で!」
ぎゅっとジャガーを抱きしめるカルメ。


ジャガー:「キミが、私の子供…」
何やら事の状況ができていないジャガーに、カルメは声をかけた。

カルメ:「どうしたの?パパ」

ジャガー:「私は、キミのパパでいていいのか?」

カルメ:「何言ってるの?パパはずっと私のパパでしょ」
カルメがジャガーに語り掛ける。

すると、ジャガーの頭の中に、妙な記憶が流れ込んだ。

1人の女性。その女性を照らす眩しい光。天井に展開された異空間の扉。

ジャガー:「うっ」
頭痛に悩まされるジャガー。


カルメ:「パパ、どうしたの?どこか痛いの?」
カルメが、ジャガーの身体に触れ、心配そうな顔をする。

ジャガー:「いや、何でもない。カルメ、キミの願い、パパである私が叶えよう」

カルメ:「ホントに!やった!パパ大好き!」
カルメがジャガーに抱き付く。


ジャガーの首元にぶら下がる綺麗な宝玉が埋め込まれたペンダントがキラッと光る。






ベイチニア半島での出来事は、すぐに全世界に広がり、ニュースのトップにもなっていた。



ニュースキャスター:『見てください!今、テレビに映っているのが、ベイチニア半島です、昨夜、島で一体、何があったのか!謎が深まるだけです!』



別のチャンネル


ニュースキャスター:「島の半分以上の人々が、昨夜島を襲った結晶化に巻き込まれました。しかし、逃げ切れた人達も、恐怖の身体の震えが止まらないと言っていました」


別のチャンネル


ニュースキャスター:「この事態に、国家政府はどう動くのでしょうか、気になるところです」


どこのテレビも、ベイチニア半島のことで持ちきりだった。





フロンティア本部元帥室


百々原:「はい、わかっています。大統領」
元帥の百々原は、日本の大統領、明智と連絡を取っていた。

ディスプレイに映る明智が頷いた。


明智:「情報では、結晶体の発生源は、ここらしい。一刻も早く何が起きているのか調査を開始するのだ」
そう言って、明智は百々原との通信を切った。


通信が切れたことを確認した百々原は、別のところに連絡を入れる。

部下:「はい、元帥」

百々原:「私だ。先ほど私が上げたSOA特務隊の人員は集まっているかね?」

部下:「はい、お連れしましょうか?」

百々原:「頼む」
大統領が、ベイチニア半島の調査を依頼してくるのを予想して、百々原は既に数名、現地へ向かわせる人員を用意していた。





その頃、フロンティア本部のエントランスにある大きなテレビを見ていた九十九未来。


ベイチニア半島…。その言葉を聞いて、1人の男性の顔を思い出した。

未来は、すぐにエレベータに乗って最上階へ向かう。


未来:『もしかして…』
心の中で呟いた。






先ほどまで百々原1人だったフロンティア本部の元帥室

だが、そこに、鬼柳、ミスティ、エマリー、吹雪、恵美、亜美の6人が集められた。


百々原:「いきなり呼び出して済まない。だが、SOA特務隊の新たな任務が入ってな。しかも、明智大統領からの依頼だ」
真剣な顔で話をする百々原。


吹雪:「もしかして、ベイチニア半島のことですか」

百々原:「察しがいいな。その通りだ。知っての通り、昨夜ベイチニア半島では、謎の結晶化が発生し、島の半分以上を飲み込んでしまった。その島に暮らす人々も半分以上が、結晶化に巻き込まれたそうだ。そして、情報では、その結晶体の発生の源が、ここらしい」
デスクの上にあるディスプレイを、みんなの方に向けて、ディスプレイに映る地図を見せた。

そして、その地図の一カ所に印が付いていた。


鬼柳:「ここは?」
鬼柳がそう聞くと、印がある場所の写真を見せた。

大きな豪邸の写真だった。





百々原:「ロヴィニ博士のご自宅兼研究施設だ」


エマリー:「ロヴィニ博士?」
聞いたことない名前にエマリーが反応した。


百々原:「ベイチニア半島に暮らす研究者だ。冒険家でもあり、執筆した本も沢山出ている」

亜美:「そんな博士の家から、結晶体は出てきているのですか?」

百々原:「あぁ」

恵美:「何かの実験中、失敗して、こんなことを引き起こしてしまったか…、あるいは、何らかの目的のために、こんなことをわざと引き起こしたか。そんなところでしょうか?」

百々原:「それを、調べてほしいのが、今回の任務だ。大統領の情報では避難民の中に、ロヴィニ博士の姿はなかったと聞く。それに、博士の1人娘であるカルメという女の子もな」
博士の顔写真とカルメの顔写真を地図の上に表示した。


カルメの顔を見て、ミスティは「まだ、小さい女の子」と呟く。


百々原:「ヘリの準備は、既にできている。準備出来次第、すぐに向かってくれ」
百々原が、みんなにそう言ったとき、部屋の扉がノックされ、扉が開いた。


未来:「すいません、ベイチニア半島に向かうのであれば、私も同行させてください」
九十九未来が、部屋の中に入ってきた。


ミスティ:「未来さん」

百々原:「別に構わないが、何かあるのか?」


未来:「ロヴィニ博士とは、少しだけ面識があります」
それを聞いた百々原を初め、部屋にいる、みんなが驚く。









人間界とは別の世界、バリアン世界



ハートランド:「ドン・サウザンド様、アラクネーの宝玉の分析が完了しました。これは、間違いなく本物です」
ハートランドが分析を終えたアラクネーの宝玉をドン・サウザンドに見せる。

ドン・サウザンド:「そうか。なら、その宝玉をここへ」
ドン・サウザンドはそう命じ、ハートランドは、ドン・サウザンドの近くにあるテーブルに宝玉を置いた。


ドン・サウザンド:「血を吸い取り、絶望の力を宿す”血のデスリング”」
ドン・サウザンドは指に填めていた血のデスリングを外し、テーブルの上に置いた。

ドン・サウザンド:「支配の力を持つ魔獣が封印されたアラクネーの宝玉」
テーブルの上にある宝玉を手に持ち、宝玉の中心部に映っている蜘蛛の形の模様を見つめる。

ドン・サウザンド:「残るは1つ。命を宿す力」
ドン・サウザンドが、そう呟いていると、1人のバリアンが、慌てたような表情でドン・サウザンドに近づく。

コルダ:「ドン・サウザンド様。例の物があると思われる場所を特定しました」
コルダがドン・サウザンドの前に頭を下ろす。

そして、その頭上に大きなホログラム画面が出てきた。

それに映っているのは、ベイチニア半島の、今の映像だった。

ドン・サウザンド:「随分と、珍しい島だな」

コルダ:「どうやら、謎の現象によって起きたものだそうです。人間界もかなり慌てておりました」

ドン・サウザンド:「それで、この島にあるのか」

コルダ:「はい。こちらで確認したところ、この建物の内部で、例の物の反応をキャッチしました」
拡大した建物は、ロヴィニ博士のご自宅だった。

ドン・サウザンド:「ほう」

ハートランド:「これはこれは、アラクネーの宝玉が見つかったばかりだと言うのに、まさかこんなに早く最後の得物が見つかるとは。ドン・サウザンド様、これはチャンスです」
ハートランドが嬉しそうに言った。

ドン・サウザンド:「うむ、コルダよ。急いで、人間界へ向かうのだ。そして、命の宿るペンダント…、ヴィータのペンダントを手に入れろ」


コルダ:「了解。この任務には、あの男も同行させようと思います」

ハートランド:「あの男…?あぁ、あのバカ王子ですか」

コルダ:「用がないので消すつもりだったが、まだ使えそうだったんで、独房に入れて置いたんだ」
しゃがんでいたコルダが立ち上がり、ハートランドに向かってそう言った。

ドン・サウザンド:「奪取のやり方は、お前の好きにしろ。全てはヴィータのペンダントだ」

コルダ:「了解しました」
コルダは、その場を後にする。


ハートランド:「ドン・サウザンド様、ヴィータのペンダントの件もありますが、九十九遊馬の方はどうなさいますか?奴は、我々にとって、強敵になる存在。アストラル世界の力を持つ人間です」

ドン・サウザンド:「あの男の所在を知っているなら、早く手を打て」

ハートランド:「そ、それは…」
ギロッとしたドン・サウザンドの目に動揺するハートランド。

実は知らないのだ。遊馬が今どこにいるのかを。

ドン・サウザンド:「特に目立った動きもない。それに姿を現さない以上、こちらの行動もまだバレていないということだ。今は、後回しだ」

ハートランド:「りょ、了解」
ハートランドはドン・サウザンドの命令を聞いて、この場を離れる。


ドン・サウザンド:『九十九遊馬、アストラル。前世紀の屈辱を晴らすときは、そう遠くない。その時が訪れたとき、お前たちは完全に消滅するのだ。そして、お前も例外ではないぞ、ナッシュ』
心の奥底で怒りを爆発させていたドン・サウザンドだった。





その頃、コルダはバリアン世界にある独房に入っている1人の人間の元を訪れていた。

その男が入っている独房の扉を開ける。


コルダ:「出ろ、仕事だ」
独房の中へ入り、しゃがみ込む男性に声をかける。


???:「こんな俺に仕事だと?とっとと消したらどうだ?」


コルダ:「2度も言わせるな人間風情。仕事だと言ったんだ」
コルダがそう言うと、男性は立ち上がった。





???:「俺に仕事をさせてどうするつもりだ?」


コルダ:「チャンスをやるだけだ。ある物を取ってくれば、お前をここから解放してやる。お前もまだ死にたくないだろ?バギー」
独房に入っていた男が、遂に顔を現した。


バギー・グ・テイタラ。
元ダイシャラス王国の第2王子。


1年半ほど前、テイタラファミリーを率いて、ダイシャラス王国で反乱を起こし、自分が戦争をコントロールできる世界を実現させようとしたが、フロンティアに阻止され、最終的に遊馬に倒された後、ウェスカーたちによってバリアン世界に強制送還されたのだ。


そして、それからずっと独房の中にいたのだった。


バギー:「取るもの取ってきたら、俺を解放してくれるのか?」

コルダ:「ああ、約束しよう」
コルダは、不気味な笑みでそう言った。









フロンティア本部を出発して何時間経っただろうか…。


ヘリでベイチニア半島に向かう鬼柳、ミスティ、エマリー、吹雪、恵美、亜美、未来。



未来:「ロヴィニ博士とは、6年前に一度会っているの。主人と一緒に登山に行ったときのことよ」
未来は6年前のことを、みんなに話した。



未来:「あの日、私は下山中に一馬とはぐれてしまい、道に迷ってしまったの。明るい日差しが出ていたとはいえ、周りは木や岩に囲まれた地帯で、戻る道が把握できず、身動きが取れない状態だったわ。でも、そこに通りかかったのが、私たちと同じで山から下山中だったロヴィニ博士だったの」
今でも、困っている私に優しく声をかけてくれたことを覚えていた未来。

未来:「私は事情を話し、博士は一緒に、下山しましょうと声をかけてくれて、その山を無事に出ることができて、主人とも会うことができたわ」
あの時、私が無事でいられたのは、博士のおかげだと主張する未来。


亜美:「そんなことがあったんですね」


恵美:「優しい人なのね」
未来の話しを聞いていた恵美たちが、ロヴィニ博士がいい人だと認識した。


鬼柳:「だが、そんな人が、どうして今回の事態を引き起こした?」
腕を組んで鬼柳がそう聞くと、ミスティが鬼柳の耳を引っ張る。

鬼柳:「っ!」

ミスティ:「まだ、博士が、今回の事件を起こしたとは限らないでしょ。早とちりし過ぎよ、京介」
夫の耳を引っ張っては離し、鬼柳は耳を押さえる。

鬼柳:「引っ張ることないだろ…」
仲のいい夫婦。周りから、そんな目で2人を見つめた。


吹雪:「そう言えば、博士には、娘がいると言っていたね。キミは、娘について博士から聞いてはいないのか?」

未来:「残念ながら、家族に関することは聞いていないです」

エマリー:「娘がいるってことは、奥さんがいるってことだよね。元帥の話しの中には、奥さんのことは言っていなかったけど…」

鬼柳:「もしかしたら、奥さんだけは助かったのかもしれないな」
鬼柳はそう思い込み発言した。



すると…。



パイロット:「そろそろ目的地だ」
ヘリコプターを操縦するパイロットが、みんなに目的地到着のことを知らせる。



鬼柳と吹雪は、操縦席の正面の窓から、島の様子を伺う。


鬼柳:「あれが、ベイチニア半島か」

吹雪:「テレビで見たとおりだね」
島のほとんどが結晶体に覆われている。


島の上空を飛行するヘリコプター。



ヘリコプターに乗る他のみんなも、窓から下に広がる結晶体に覆われた島を見つめる。


亜美:「あ、人が…」
亜美は見つけてしまった。

街が結晶体に包まれたときに巻き沿いとなった人々を…。

それは、亜美だけではなかった。

エマリーたちも見つけていた。



ミスティ:「一体、この島で何が…」
口を押さえながら、そう呟いたミスティ。



ベイチニア半島を襲った悲劇。この悲劇は、なぜ起きてしまったのか。


そして、密かに動くバリアン…。


ベイチニア半島での戦いが、遂に始まろうとしている!







第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』





次回予告

ナレーション:ベイチニア半島に上陸したミスティたちは、ロヴィニ博士の助手である人物と出会う。

その人物から明かされる博士がやろうとしていた研究の真実とは…!

そして、そんな中、ミスティたちの前に、奴が現れる。


鬼柳:次回、遊戯王5DXAL「さらわれたミスティ」


鬼柳:「ミスティ、なぜお前が!」





遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!


未来:「日本から6000キロほど離れた場所にある島ベイチニア半島。人口15000人ほどが暮らしている豊かな島で、評判も高いわ。ロヴィニ博士が暮らしている島でもあるわよ」
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