第128話:『ドミナシオン復活!悲しみか喜びの選択肢』
エルフェンの森
先ほどまで青空が広がっていたエルフェンの森だが、たった今、雨でも降りそうな空になってしまった。
そんなエルフェンの森に現れた蜘蛛の姿をした巨大怪物。
目を光らせ、森にいる動物たちや野生のモンスターたちが怯えて逃げ回る。
エルフェンの森からずっと離れた山奥
人間が滅多に立ち入ることがない、この山奥に1体のモンスターが立っていた。
鹿の姿をしたモンスターは、何かの異変を察知したかのように、遠い場所を見つめていた。
その方向は、エルフェンの森がある方向だった。
そのモンスターは、その方向に向かって空を駆ける。
第8OP『Mysterious《Naifu》』
第128話:『ドミナシオン復活!悲しみか喜びの選択肢』
森の中に現れた巨大な蜘蛛。
かつて、この森を支配していたドミナシオンが遂に復活したのだ。
体内にあったエネルギー物質を全て吸い取られ、気力を無くしたアドレーは、その場に倒れてしまう。
キャッシー:「アドレー!」
キャットちゃんはアドレーを抱え呼びかけるが、アドレーは気を失っており目を開くことはなかった。
ドミナシオン:『遂に、蘇った…。我の本当の姿に!』
ドミナシオンは、口から糸を吐き森中にまき散らした。
森から逃げようとする生き物たちが、その糸に捕まってしまう。
アントン:「おいおい、あれがドミナシオンか。想像していたよりもでけえな、おい」
ラーヴル:「この力をボスは欲しがっているのか…!」
ドミナシオンの姿を見て少し驚くアントンたち。
静香、龍可も、その姿を見て目を丸くする。
レイド:「んー、何か強そうだけど、マジかで見るとキモイな。よし、こいつの力はパスしよう」
レイドは、その場から離れる。
レイド:「あんな力がなくても、俺は強いし」
自分の強さを自慢しながら、レイドは立ち去った。
だが、誰もレイドが去ったことに気付いていない。
ガリーナ:「なんとしてもいただくわ。この力を!全員、攻撃準備!」
ガリーナが部下たちに命令する。
部下たちは、動揺しながらお互いに目を合わせる。
こんな奴から力を奪えるのか心配なのだ。
ガリーナ:「どうしたの!これは命令よ!」
部下たちに喝を入れるガリーナ。
命令は命令だ。部下たちはデュエルギアをドミナシオンに向ける。
ガリーナ:「攻撃開始!」
プラントのメンバーたちがドミナシオンに向かって攻撃を開始する。
炎や、水、風、地、あらゆる属性の攻撃を放ち、ドミナシオンに当てるが、まったく聞いていなかった。
ドミナシオン:『弱いな、人間というのは…!』
ドミナシオンは8本ほどある、その足でプラントのメンバーたちを蹴散らした。
「「「「うわあああああああ!!」」」」
手も足も出ないプラントのメンバーたちは、吹き飛ばされてしまう。
その風圧が、キャットちゃんたちを襲う。
キャッシー:「きゃあああ!」
静香:「キャットちゃん!」
龍可:「急いで、そこから離れて!」
龍可たちのいうことを聞き、アドレーを抱えて、その場から離れるキャットちゃん。
レミ:「みんな!」
そこにレミが到着した。
龍可:「レミ、よかった無事だったのね」
レミ:「えぇ、それよりもあれってもしかして…」
龍可:「うん、ドミナシオン。復活を止められなかったわ」
キャッシー:「ごめんなさい。私がもっと早くデュエルにケリをつけていれば」
ドミナシオン復活を、自分の所為にするキャットちゃん。
静香:「キャットちゃんの所為じゃないわ。自分を責めないで」
静香がキャットちゃんを慰める。
レミ:「早く、あいつを止めないとまずいわね」
ドミナシオンが歩き出し、周りの樹木を倒していく。
更に、糸を吐き、森全体を襲った。
その頃、剣代たちとミッションウォッチを通して連絡をを取っていた梨香―。
剣代:『そうか、レイドからモンスターたちを取り戻したか』
梨香:「うん、ギリギリだったけどね。それよりも、見えてる?」
梨香が剣代に問いかける。
剣代:「あぁ、見えてる」
剣代、そして明日香と珠里も、目の前に映っているものが信じられず、動揺していた。
梨香:「あれが、アドレーが言っていたドミナシオン…」
巨大な蜘蛛がドミナシオンだと言うのは、なんとなく想像がついた。
明日香:「あれを森の外に出してしまったら、世界中が大パニックよ!」
珠里:「何とかしないと!」
このままでは、世界中が混乱してしまう。そう思った明日香達。
梨香:「私は、急いでキャットちゃんたちと合流するわ。お兄ちゃんたちも早くね」
梨香がミッションウォッチに向かってそう言ったが、ミッションウォッチから兄の声が聞こえなかった。
梨香:「お兄ちゃん?お兄ちゃん!応答して!」
急に電波が届かなくなってしまったミッションウォッチ。これも、ドミナシオンの復活の影響なのか。
梨香はともかくキャットちゃんたちがいると思われる方へ走った。
その頃、突然通信が切れた梨香に呼びかける剣代。
剣代:「梨香!返事をしろ!梨香!」
しかし、返事がない。
珠里:「お姉ちゃんから返事ないの?」
剣代:「あぁ、どうやら妨害電波か何かが、この辺に走っているのかもな」
そう、これはドミナシオンの復活による影響ではなく、プラントの方が妨害電波を発しているためである。
その妨害電波は、電波を走っている距離から答え差がある。だから、さっきまで聞こえていた声が、急に聞こえなくなっていたのだ。
明日香:「梨香も心配だけど、他のみんなも心配ね」
珠里:「お姉ちゃんだったら、もしかしたら、みんなの方に向かってるかも」
剣代:「そうだな、俺たちもそっちに―」
何かの気配を感じた剣代。
何かが近づいている。
明日香:「剣代?」
剣代の様子がおかしいことに気付いた明日香。
剣代がずっと見ている方向に奴が来た。
レイド:「あれ?剣代ちゃんじゃない」
剣代:「やっぱりあんたか」
何かと因縁があるレイドが剣代の前に現れた。
光燐之太刀を構える剣代。
レイド:「おいおい、今は奴を止める方が先決じゃないのか?俺の相手をしている暇ないだろ」
レイドはそう言った。確かにレイドの言う通りだ。あいつを止める方が最優先だ。
レイド:「今日のところは、お互い見なかったことにして、俺は引き上げるよ」
剣代:「次会ったときは、必ずあんたを捕まえて見せる」
レイド:「やれるものならね」
フッと笑って、レイドはその場から立ち去った。
立ち去ったことを確認し、剣代は光燐之太刀を収める。
明日香:「とりあえず大丈夫みたいね。行きましょ」
3人は、ドミナシオンが暴れている方へ向かった。
ドミナシオンは、なりふり構わず好き放題暴れていた。
アントン:「大人しく俺たちに捕まれってんだよ!」
ラーヴル:「深追いはよせ!アントン!」
プロミネンス・トレンチガンを構えながら、ドミナシオンに向かって走るアントンをラーヴルが止めようとするが、アントンは聞く耳を持たず、プロミネンス・トレンチガンから炎の弾丸を発砲した。
命中したものの、ドミナシオンの体には傷一つついていなかった。
ドミナシオン:『消えろ、人間!』
ドミナシオンは口から糸を吐き出し、その糸でアントンとラーヴルを捕えた。
ラーヴル:「しまった…!」
アントン:「くそっ!なんだよ!この糸は!?」
身体に絡まった糸から抜け出そうとするアントンとラーヴルだが、人間から見ればあまりにも長く大量の糸をまき散らされたため、全然抜けられずにいた。
そして、ドミナシオンは、口元に粒子を溜め、それを一気に放った。
大砲のように放たれた粒子は、周りの樹木を破壊し、アントンとラーヴルを吹き飛ばした。
ラーヴル:「ぐわあああ!」
アントン:「がああああ!」
爆風の勢いが物凄く、ラーヴルたちはかなりの距離を飛ばされた。
ガリーナ:「アントン!ラーヴル!くっ」
これで、仲間たちのほとんどが戦闘不能になってしまった。
このままでは、任務遂行が果たせないと感じたガリーナ。
でも、ガリーナは予想以上にドミナシオンが強いことに驚いていた。
ガリーナ:「まさか、これほどの力なんて…。人間が太刀打ちできる力じゃないわ」
ガリーナの足は震えていた。
ガリーナ:「けど、ボスは、この力を欲しがっている。この力を元に新たな兵器を製造して、プラントの勢力を上げるために、この力が必要なのよ」
ガリーナは”デス・ヴォルストガルフ”のデュエルギアを”ヴォルストランサー”を構える。
ガリーナ:「例え私一人でも、どんな手を使ってでも、捕えてみせるわ!」
ヴォルストランサーが輝く。
炎属性と地属性が組み合わさった溶属性の波動をデュエルギアに流し込んでいるのだ。
ガリーナ:「私の溶岩で、必ず捕獲するわ!ステルク・ラヴァー!!」
ヴォルストランサーを突き出し、溶岩でできた球体を生成し、それをドミナシオンに向かって放ち攻撃する。
その頃、身を隠すキャットちゃんたち。
静香:「みんな、ケガはない?」
静香が、みんなの安否を確認する。
龍可:「はい、大丈夫です」
レミ:「キャットちゃん、アドレーの様子はどう?」
キャッシー:「まだ気絶しているわ。相当、体力を消耗しているんだと思う」
アドレーの額を触るキャットちゃん。
すると、そこに―。
梨香:「みんなー!」
梨香が手を振って、こちらに近づいてきた。
レミ:「梨香!」
龍可:「よかった、梨香も無事だったのね」
レイドが出したモンスターたちを相手にしてから、連絡が取れていなかったので、物凄く心配していたが、元気な梨香を見れて、みんなホッとした。
レミ:「カードの方は?」
梨香:「ガッチャ、みんな取り返したわ」
そう言って、5枚のカードを手に取り、みんなに見せる。
梨香:「それよりも、ドミナシオンの復活を止められなかったのね」
静香:「あともう少しで止められたんだけど…」
表情を暗くする静香。
その表情を見た梨香が、みんながどれだけ頑張ったのか想像が着いた。
梨香:「そうですか。プラントの人たちは?」
ドミナシオンの力を手に入れようとしていたプラントのメンバーが、周りにいないことをに気付いていた梨香が質問した。
キャッシー:「私たちが、ドミナシオンから離れるときは、ほとんどがやられていたわ。向こうの人たちも、ドミナシオンを見て驚いていたわ」
ドミナシオンが暴れている方を見つめるキャットちゃん。
ここからでも、ドミナシオンが確認できる。
レミ:「予想外だったんでしょうね、ドミナシオンの力が」
プラントのメンバーも、開いた口が開かないほど驚いていたのをレミは覚えていた。
アドレー:「う…うぅ」
アドレーの身体が動く。
キャッシー:「アドレー」
アドレーに呼びかけるキャットちゃん。
アドレーは少しずつ目を開いた。
アドレー:「お姉ちゃん…」
目の前にいるキャットちゃんを見て、そう呼ぶアドレーは少しずつ起き上がった。
キャッシー:「よかった、あれからずっと気絶していたのよ」
アドレー:「僕は…、そうだ…。頭の中に薄気味悪い声が聞こえて、身体の中にあるエネルギーが、宝玉と共鳴して、そのまま吸い取られて…はっ!ドミナシオンは!ドミナシオンはどうなったの!?」
慌ててキャットちゃんに聞くアドレー。
キャットちゃんは、ある方向の遠くを見つめた。
その方向を見るアドレー。
アドレーは目を丸くした。
巨大な蜘蛛が、森を破壊している姿が目に映ったからだ。
アドレー:「あれが…ドミナシオン…」
自然と立ち上がったアドレー。
一歩ずつ前へ歩き、そして、膝を地面につけた。
アドレー:「僕の所為だ。僕が、ここに来たから、こんなことに…」
自分を責めるアドレー。
龍可:「あなたの所為じゃないわ」
梨香:「そうよ。アドレーは、抱えていた悩みを解決するために、ここに来ただけでしょ?ドミナシオンは復活しちゃったけど、これであなたの身体の中にあったはずの謎のエネルギーは消えたじゃない」
アドレーを励ます龍可と梨香。
アドレー:「でも、お姉ちゃんたちを巻き込んじゃった!」
涙を流すアドレー。
キャッシー:「そんなこと、気にしなくていいの!あなたは、何も悪くない、自分を責めちゃダメ」
キャットちゃんが、そう呼びかけるが、アドレーの表情は変わらなかった。
キャッシー:「ねえ、アドレー。私たちは、あれをどうにかしたい。何か、パパからドミナシオンについて聞いていない?どんな小さなことでもいいから」
アドレーの両肩を持ち、そう聞いたキャットちゃん。
だが自分を責め続けるアドレーから返事はなかった。
沈黙が続く中、キャットちゃんはついに、手を出してしまった。
パチーン!
アドレーの頬を平手で叩いた。
キャッシー:「目を覚ましなさい!アドレー!」
キャットちゃんの喝が入った。
アドレーは叩かれた頬を押さえながら、キャットちゃんの顔を見た。
その表情は、初めて見る表情だった。
あまりにも真剣な表情を自分に向けているため、アドレーは動揺してしまった。
キャッシー:「自分を責め続けたって、何も解決しないわよ!一刻も早く、あいつを止めないと、エルフェンの森はおろか世界が危ないんだから!」
キャットちゃんの言葉を聞いて、下を向くアドレー。
自分が、ここにいる所為で、この事態を招いた。自分には、その責任がある。
だから、落ち込んでいる場合じゃないことは、自分だって理解している。
キャッシー:「お願い、アドレー。あなたの力が必要なの。なんでもいいから、パパから、あいつについて、何か聞いていたら、思い出してほしいの」
優しい言葉でキャットちゃんは、アドレーと言葉を交わす。
今、僕がしっかりしないとダメなんだ。
アドレーは涙を拭いた。
アドレー:「パパが調べていたのは、宝玉の存在と、その力について、ドミナシオンのことはおそらくそこまで詳しくなかったと思う。でも、宝玉に眠る力が巨大なものだと言うことは理解していたみたい」
実の父が、宝玉に眠る力のことを、自分に語ってくれた時のことを思い出す。
アドレー:「パパが死んだ前日、僕はパパから、その力について、奇妙な話しを聞いたの。当時は、何のことだがさっぱりだったけど、今
ドミナシオンを見て、分かった気がするよ」
暴れるドミナシオンを見てアドレーはそう言った。
レミ:「パパはなんて言ったの?」
アドレー:「宝玉に眠る力は、本当の完全復活まで、それなりの時間がかかるみたいなんだ。その間は、アラクネーの宝玉に眠るエネルギーを一定に保つことで、完全復活に近い姿を保てるらしいんだ」
龍可:「そのエネルギーって言うのは、あなたの身体の中にあったエネルギー物質のこと?」
アドレー:「おそらく。けど、何らかの方法で宝玉に何でもいいからエネルギーを送り、一定に保っているエネルギーを、超えてしまうと、エネルギーバランスが崩れ、宝玉に眠る力は消えるはずだっていってた」
梨香:「宝玉に向かって何でもいいからエネルギーを送るね。あまり簡単な話じゃなさそうね」
静香:「それに、アラクネーの宝玉も、あれが復活したときにどこかに吹き飛んでしまったみたいだし」
ドミナシオンが復活したとき、復活したときの衝撃でアラクネーの宝玉は、どこかへ吹き飛んでしまったため、今どこに宝玉があるのかは誰もわからなかった。
だが…。
キャッシー:「見つけるのは大変かもしれないけど、宝玉が飛んだ方向なら見えたわ」
静香:「それホント!?」
キャッシー:「はい、この眼で見ました。少なくとも、今ドミナシオンが暴れている方向ではないです」
龍可:「なら、急いで宝玉を探しましょ!」
龍可たちがアラクネーの宝玉を探しに動き出そうとするが―。
梨香:「でも見つけたとして、一体、その宝玉にどうやってエネルギーを送るの?」
梨香が一番気になっていた質問をぶつけた。
レミ:「何言ってるの、梨香」
キャッシー:「私たちには、これがあるでしょ」
そう言って、キャットちゃんは右腕につけているデュエルギア”キャットネイル”を見せた。
梨香:「そうか!」
静香:「デュエルギアね」
レミ:「ええ、デュエルギアから放たれる攻撃は、エネルギーそのもの。それを宝玉にぶつけ続ければ、ドミナシオンを止められるはずよ」
キャッシー:「そうと決まれば、急いで宝玉を探しに行きましょ」
キャッシーが立ち上がり、行動を開始しようとする。
アドレー:「で、でも、本当に止められるかわからないよ!」
自分が言ったことが本当に正しいことなのか、それがわからなかったアドレーは、キャットちゃんたちを止める。
キャッシー:「わからなくても、その可能性に賭けてみるだけよ」
アドレー:「お姉ちゃん…。どうして、そこまで、あいつを止めようとするの?」
キャッシー:「私がフロンティアのメンバーだからよ。困っている人達がいれば、それを助けるのがフロンティアの、特に私たちがいるSOA特務隊の役割。それにこれ以上悲しみを広めたくないわ。あいつを倒して、みんなでいっぱい喜びましょ」
ウインクをして、笑顔でそう言ったキャットちゃん。
アドレー:「喜び…」
レミ:「さあ、行きましょ。急がないと、手遅れになっちゃうわ」
龍可:「復活は止められなかったけど、今度は必ず止めて見せましょ」
キャッシー:「行くわよ、アドレー」
キャットちゃんがアドレーに手を差し伸べる。
アドレー:「うん」
元気よく頷き、アドレーはキャットちゃんの手を握り、みんなと一緒にアラクネーの宝玉が吹き飛んだ方へ向かった。
その頃、ドミナシオンと戦っているガリーナは、窮地に立たされていた。
ドミナシオンが吐いた糸から脱出するアントンとラーヴル。
ラーヴル:「隊長!」
ガリーナの横に立つラーヴルとアントン。
アントン:「こいつ、よくもやりやがったな!」
プロミネンス・トレンチガンの銃口をドミナシオンに向けるアントン。
ラーヴル:「落ち着け、アントン!さっきと同じことを繰り返す気か」
その言葉を聞いたアントンは、銃口を下ろす。
確かに、このままやっても、また捕まるだけだ。
アントン:「チッ、どうすればいいんだよ」
ガリーナ:「私たちの同時攻撃で、動きを鈍らせるわ」
アントン:「つまり、あれをやるんだな?」
アントンがそう聞くと、ガリーナは「えぇ」と返事を返した。
3人は、それぞれ攻撃体勢に入った。
ラーヴルは身体中に流れる電流を放出し、放出した電流で生成した竜が天へと舞った。
アントンは、プロミネンス・トレンチガンから炎の銃弾を放つ、その銃弾は炎の竜となって、天を駆ける。
ガリーナ:「悪を飲み込みし、溶の力。炎と雷の力を加え、その身に宿せ!」
ヴォルストランサーに溶属性を流し込み、槍は赤く輝く。
そして、ヴォルストランサーから赤い光が放出し、目の前に溶岩でできたゴーレムが現れた。
ガリーナ:「タイラント・ゴーレム!」
溶岩のゴーレムは空を舞う炎のドラゴンと雷のドラゴンを、その拳に宿し、ドミナシオンに、強烈な一撃を喰らわせる。
ガリーナ:「インフラマトリ・サンダー・ブレイク!」
溶岩の炎と雷の拳がドミナシオンにヒットした瞬間、物凄い爆風が発生した。
ドミナシオン:『ぬおおおお…、貴様ら、よくも…!』
タイラント・ゴーレムの強烈な拳を受けながら叫ぶドミナシオン。
その頃、キャットちゃんたちは、最後にアラクネーの宝玉を見たアテーナーの池に再び訪れていた。
ドミナシオンが復活したと同時に、池はその原形を失っていた。
レミ:「ここもかなり荒れちゃったわね。それで、宝玉が飛んだ方向はどっち?」
キャッシー:「あっちよ」
キャットちゃんが指を指した方へ、みんなは走った。
幸いにも、ドミナシオンが動いた方向ではなかった。
キャッシー:「吹き飛んだ時の高さからして、おそらくこの辺にあるはずよ」
静香:「みんなで探しましょう」
静香の意見にみんなが賛成し、静香、龍可、キャットちゃん、梨香、レミ、そしてアドレーが宝玉探しを開始した。
茂みの中から岩の下、隅から隅まで辺りを探す。
宝玉の大きさは野球ボールより少し小さいぐらいの大きさだ。
もしかしたら、もしかするとすぐに見つかるかもしれない。
そんなことを思いながら探していたが、ここは森の中、現実は甘くはなかった。
梨香:「そっち、あったー?」
レミ:「ないわ。龍可の方は?」
龍可:「私のところもない」
静香:「私のところもないわ」
みんなが立っていた場所に宝玉はなかった。
アドレー:「お姉ちゃん、ここからアラクネーの宝玉を見つけるのは、苦戦するかもしれない」
軽く弱音を吐いたアドレー。
キャッシー:「確かに、こっちに飛んできているのは見たのよ。だから、近くにあるはず」
手を汚しながら、キャットちゃんは宝玉を探す。
もしかしたら見つからないかもしれない宝玉を必死に探すキャットちゃんの姿を見て、みんなも諦めず探すのを再開した。
そして、10分ほどが経過したときだった―。
ピカーン
キャッシー:「ん?」
目の前で光った何かを恐る恐る手に取るキャットちゃん。
軽く土が被っていたので、それを簡単に取った。
キャッシー:「あ、あったー!」
キャットちゃんの、その言葉を聞いたみんなが「え?」という表情をして、キャットちゃんの元に駆け寄る。
キャットちゃんの手には、宝玉の中心部に蜘蛛の形をした模様がある宝玉。そう、アラクネーの宝玉だった。
探していたものが、遂に見つかったのだ。
梨香:「よかったー。このまま見つかれないんじゃないかなって思っていたわ」
レミ:「そうね。でも、休んでいる暇はないわ」
静香:「早く、その宝玉にエネルギーを送りましょう。みんなでありったけのエネルギーを!」
静香がそう言うと。
キャッシー:「はい!」
キャットちゃんが大きな声で返事をした。
第8ED『あしあと《Clair(クレア)》』
次回予告
ナレーション:ドミナシオンを止めるべく、その身に宿るデュエルエナジーを宝玉にキャットちゃんたちだった。
自分のありったけのエネルギーを宝玉に送り、ドミナシオンの実体化状態を消滅させようとする。
しかし、それを察知したドミナシオンが、キャットちゃんたちに牙を向く。
キャットちゃんたちはドミナシオンを止めることができるのか!
アドレー:次回、遊戯王5DXAL「ドミナシオンを止めろ!謎のモンスター顕現」
アドレー:「キャッシーお姉ちゃん!僕信じているから!」