第115話:『執念を砕け 一星VSオズボーン』
ジャンク・ヴィクトリー-スターダストは突撃で黒い光を貫いた。
黒い光は爆発。
そして、デュエルバトルフィールドシステムの起動が止まっていく。
要塞から出ていた敵ロボット軍団が次々と停止していく。
シルク:「これは!」
ラリー:「敵が止まっていく…!」
アリスター:「はぁ、決着がついたようだな」
クレイヴン:「ああ」
デュエルバトルフィールドシステムの軌道を停止したことで、フィールドに召喚されていたモンスターたちが消えて行く。
その頃、会場の外で無数のウングリュックを相手に戦っていたフロンティアのメンバーは…。
ボマー:「はあ!」
両手でガトリングガンタイプのデュエルギアを手に持って弾丸を連射して近づく敵を倒すボマー。
別方向から近づくウングリュックに気づくのが遅れてしまう。
しかし、鬼柳がインフェルニティ・パイソンから弾丸を放ち、ボマーに近づく敵の頭を貫いた。
ボマー:「助かった、鬼柳」
鬼柳:「気にするな。それにしてもキリがないな」
結界から次々と出てくる敵に対し、フロンティアメンバーの体力も限界が近づいていた。
愛:「はぁはぁ、このままじゃ、私たち…」
シェリー:「流石に、戦い続けるのは無理があるわね…」
息を切らしながら愛とシェリーは口にする。
すると、突然、目の前にいたウングリュックが消えた。
パティ:「え?」
スライ:「消えた?」
目の前にいた敵が消えたことで驚くパティたち。
目の前にいたウングリュックだけじゃない。
今、結界から出ようとしているウングリュックでさえも消えた。
イェーガー:「ど、どうなっているのですか…!?」
次々とウングリュックが消えて行くのを見て驚愕するイェーガー。
ナーヴ:「中で何かあったのか…!」
ナーヴが会場を見る。
一連の出来事の主要人物であるオズボーンは、デュエルバトルフィールドシステムの近くで倒れていた。
第7OP『二つの未来《黒田倫弘》』
第115話:『執念を砕け 一星VSオズボーン』
オズボーンを倒した一星とジャンク・ヴィクトリー。
オズボーン:「お、おのれ…」
床に倒れていたオズボーンが苦しそうに起きあがる。
オズボーン:「まさか、私が…こんな目に…」
一星:「諦めろ。お前の計画はもう終わりだ」
オズボーン:「いや、まだだ。まだ、パンドラの箱は消えていない…」
オズボーンは何処から出したのかデュエルディスクを手に付ける。
しかも、デュエルアイ付きのデュエルディスクだ。
ラリー:「あの男、まだやろうとしているのか」
オズボーンの悪あがきを見て、そう口にしたラリー。
その様子はラリーだけじゃなく、クレイヴンやアリスターたちも見ていた。
そして、チャンピオン・名人いや、四大神王者のスターリングは、物陰に隠れてみていた。
オズボーン:「私は己の執念を貫く。ノルマンディーカンパニーを世界の頂点に立たせて、多元世紀をコントロールするのだ。平和な世界にな…」
一星:「お前も平和を望む者か…」
オズボーン:「俺の執念を止めたければ、力づくで止めてみろ!」
デュエルアイを取り付けて、デュエルディスクを展開する。
アリスター:「悪あがきを!」
アリスターがオズボーンに近寄ろうとするが、それを一星が止める。
一星:「ここは、俺に任せてくれないか?」
アリスター:「一星…」
一星:「あの男の執念は本物だ。その執念は、俺が砕く。だから任せてくれ」
一星は前に出る。
ミッションウォッチを起動させて、粒子化していたデュエルディスクを腕に填めて起動する。
そして、デュエルアイも左目に取り付けた。
オズボーン:「私が勝ち、再びパンドラの箱の能力を復活させる!」
一星:「そんなこと、俺が絶対にさせない!」
一星がデュエルディスクを起動させる。
「「デュエル!!!」」
両者の「デュエル」と言う掛け声と共に、デュエルが開始された。
両者
LP4000
ナーヴ:「ラリー!」
ナーヴを初め、アキや愛、外で戦っていたフロンティアのメンバーたちが走ってきた。
ラリー:「ナーヴ!みんな」
愛:「これ、どういうこと?どうして一星がデュエルを!?」
デュエルディスクを構える一星を見て、慌てた様子で愛がラリーに聞いた。
ラリー:「…パンドラの箱の力を使って、世界を変えようとするオズボーンの執念。一星はそれを打ち壊そうとしているんだ」
デュエルする一星の方を見てラリーは語った。
アキ:「一星、あなた…」
心配そうな顔でアキは一星を見つめる。
自分がいることがバレないように、物陰に隠れているスターリング。
心配そうな表情をするアキを見た後、デッキから5枚のカードを引く一星に視線を変えた。
スターリング:「安心しろ、アキ。あいつは必ず勝つ。絶対にな」
小さい声でスターリングは呟いた。
その頃、結界の外にいるみんなも、先ほどまでとは違い、慌てずその場に立っていた。
なぜなら、さっきまで結界の範囲が少しずつ広くなっていたはずが、今は全然広がっていなかったからだ。
斎王:「さっきまで広がっていた結界が、今では、こんな静かに…」
鮫島:「一体、中で何が起きているというのだ…」
外でも、いきなり収まった結界の範囲増幅に緊張感が走っていた。
中で何かあったのかと疑問を抱く者たちも数人出てきた。
一星VSオズボーン デュエル開始
1ターン
オズボーン:「私が先行だ!ドロー!」
オズボーンが先行を取り、カードをドロー。手札が6枚になる。
オズボーン:「マジックカード”災いの復活扉”を発動!!」
オズボーンのフィールドに3つの人間に倍のサイズのあるトーチが現れ、先端に火が付いた。
オズボーン:「自分フィールド上にモンスターが存在しない場合のみ、このカードは発動できる。ライフを半分払うことで、手札に存在する”ダーク・ヘルケイター”、”魔界のデューザ・サイボーグ”、”邪眼の魔剣ザビ・キラー”の3体を特殊召喚する!!」
オズボーン
LP4000 → 2000
オズボーンのライフが半分になり、手札5枚の中から3枚を右手に持つ。
オズボーン:「”ダーク・ヘルケイター”!」
赤いマントに黒いボロボロの翼。頭部に黄色い角が生えており、尻尾もあるモンスターが現れる。
ダーク・ヘルケイター
LV7 攻撃力2700
オズボーン:「”魔界のデューザ・サイボーグ”!!」
黒い頑丈な鎧を付けた闇戦士で背中には機械でできた羽がついていた。
魔界のデューザ・サイボーグ
LV7 攻撃力2700
オズボーン:「”邪眼の魔剣ザビ・キラー”!!」
赤い眼が鍔についた刀を2本持つ邪眼の魔剣ザビ・キラー。
邪眼の魔剣ザビ・キラー
LV7 攻撃力2700
ザビ・キラーの肩や膝、肘、胸元にある目が一星を睨みつける。
しかし、一度戦ったのある敵、全然動揺しなかった。
一星:「大会に出てきた闇のモンスターのパレードだな」
フィールドに現れた3体のモンスターを見て、一星は呟いた。
まさか、あのとき戦ってきたモンスターたちが、この事件に関わっているとは思いも寄らなかった。
オズボーン:「魔界のデューザ・サイボーグの効果発動!このカードが召喚、特殊召喚に成功したとき、手札を1枚墓地へ送ることで、デッキから1枚ドローする!」
オズボーンは手札を1枚墓地へ送り、デッキから1枚ドローする。
オズボーン:「私は、これでターンエンド」
オズボーンのターンが終了した。
シェリー:「攻撃力2700のモンスターがいきなり3体も…」
ミスティ:「向こうは最初から本気のようね」
ジャック:「これにどう対抗するつもりだ?一星」
この状況、完全に一星に不利だ。
みんな、それを理解している。
だが―。
クレイヴン:『デュエルは始まったばかりだ。そうだろ?一星』
少しにやけた表情でクレイヴンは一星を見つめる。
2ターン
一星
LP4000
オズボーン
LP2000
一星:「俺のターン!ドロー!」
一星がカードをドローし、手札が6枚になる。
手札を確認する一星。すぐに行動に移した。
一星:「手札からモンスター1体をコストに―」
手札からモンスターカード1枚を墓地へ送った一星。
このコストによりフィールドにカードを出した。
一星:「マジックカード”ワン・フォー・ワン”を発動!デッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚する!現れろ!”チューニング・サポーター”!!」
フライパンを被り、マフラーのようなものを首に巻いた小さいロボットが現れる。
チューニング・サポーター
LV1 守備力300
一星:「更にチューナーモンスター”ジャンク・シンクロン”を召喚!」
オレンジ色の鎧をつけ、エンジンの電動機を背中に背負うチューナーモンスターが現れる。
ジャンク・シンクロン
LV3 攻撃力1300
アリスター:「チューナーモンスター…」
早美:「この流れ、どうやらシンクロ召喚するみたいだね」
一星とデュエルバトルしてきたみんなにも一星がやろうとしていることに気が付いていた。
一星:「ジャンク・シンクロンの効果発動!このカードが召喚に成功したとき、墓地からレベル2以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる!俺はワン・フォー・ワンのコストで墓地へ送った”クイック・ウォリアー”を特殊召喚!!」
どことなくスピード・ウォリアーに似た、そのフォルム。
しかし、これはスピード・ウォリアーではなく、クイック・ウォリアーである。
クイック・ウォリアー
LV2 守備力300
ボマー:「レベルの合計は6」
鬼柳:「やる気だな」
一星がやろうとしていることに察しが付いた鬼柳たち。その予想は的中した。
一星:「レベル1のチューニング・サポーターとレベル2のクイック・ウォリアーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!!」
ジャンク・シンクロンが3つのリングとなり、2体のモンスターを包む。
一星:「集いし希望の星が、勝利を手にする戦士となる!光差す道となれ!」
3体のモンスターが一つになる。
一星:「シンクロ召喚!現れろ!!”ジャンク・ヴィクトリー”!!」
青とオレンジの鎧を纏う戦士。デュエルバトルカーニバル選手権中、ずっと一星と共に戦っていたシンクロモンスターが姿を現す。
ジャンク・ヴィクトリー
LV6 攻撃力2300
一星:「シンクロ召喚の素材となったチューニング・サポーターの効果によりデッキから1枚ドローする!」
手札を1枚補充する一星。
一星:「更に俺はマジックカード”シンクロ・リボーン・サモン”を発動。このカードは自分がシンクロ召喚に成功したターンに発動できるマジックカードだ。この効果により、シンクロ召喚に使用したモンスター1体を守備表示で特殊召喚する!俺はクイック・ウォリアーを復活させる!」
クイック・ウォリアーが再び姿を現した。
クイック・ウォリアー
守備力300
オズボーン:「どれだけモンスターを出そうと、私のモンスターに敵う攻撃力を持ったモンスターはいない!」
一星:「ジャンク・ヴィクトリーは仲間たちとの絆で、その力を発揮させる!ジャンク・ヴィクトリーは、自分フィールド上に存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!俺の場にいるレベル2のモンスターはクイック・ウォリアーのみだが、その攻撃力は800!よって、ジャンク・ヴィクトリーの攻撃力は800ポイントアップする!」
ジャンク・ヴィクトリー
LV2300 → 3100
オズボーン:「攻撃力3100…」
一星:「ジャンク・ヴィクトリーで、まずは邪眼の魔剣ザビ・キラーに攻撃する!!」
ジャンク・ヴィクトリーがザビ・キラーに攻撃を仕掛けようとする。
一星:「スクラップ・ボルトォ!」
両腕に溜めた電流を、ザビ・キラーに向けて放った。
ザビ・キラーに電流が接近する。
しかし―。
オズボーン:「ダーク・ヘルケイターの効果発動!ペルソネル・エスパス!!」
赤いマントを使って体を隠し、その場から消えたダーク・ヘルケイター。
しかし、どこから現れたのか、ザビ・キラーの前に突然姿を現した。
オズボーン:「相手が私のフィールド上に存在するモンスターに攻撃したとき、1ターンに1度、攻撃対象をダーク・ヘルケイターに向けることができる!」
赤いマントを使って、身を守るダーク・ヘルケイター。
オズボーン:「更に、この効果を使用したとき、ダーク・ヘルケイターは戦闘で破壊されずプレイヤーが受けるダメージも0となる」
一星:「っ!」
オズボーン:「更にこの瞬間、前のターン、魔界のデューザ・サイボーグの効果で墓地へ送ったマジックカード”災いの連鎖”の効果を発動!」
墓地からカード効果を使用するオズボーン。
オズボーン:「自分フィールド上に存在するモンスターの効果が発動したとき、このカードを除外することで、相手のライフを1500減らすことができる。更に、自分フィールド上に存在する最も攻撃力が高いモンスターよりも、高い攻撃力を持つモンスターが相手フィールド上に存在する場合、更に1000ポイントのダメージを与える!」
オズボーンの3体のモンスターはどれも攻撃力が2700。一星のジャンク・ヴィクトリーは、効果で攻撃力が3100までアップしているため、オズボーンのどのモンスターよりも攻撃力が高い。
オズボーン:「2500ポイントのダメージを受けろ!」
一星:「ぐわあ!」
一星の身体に衝撃波が走る。
愛:「一星!」
イェーガー:「いきなり2500のダメージも…」
一星
LP4000 → 1500
一星:「くっ、ワンターンで形勢を逆転されるとはな」
一星がオズボーンの顔を見る。
一星:『それだけ、パンドラの箱の力を利用したようだな…』
オズボーンの執念を改めて身に感じた一星。
一星:「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」
一星はカードを2枚伏せてターンを終えた。
オズボーン:「もう終わりか?私の計画を止めるのではなかったのか?そんな腰抜けでは、私のライフに手は届かないぞ!」
オズボーンがデッキの上に指を置いた。
3ターン
一星
LP1500
オズボーン
LP2000
オズボーン:「私のターン!」
オズボーンがカードをドローする。
オズボーン:「この瞬間、邪眼の魔剣ザビ・キラーの効果発動!ドローフェイズに引いたカードを墓地へ送ることで、デッキからモンスター1体を選択し、手札に加える!」
オズボーンはたった今引いたカードを墓地へ送り、新たなモンスターカード1枚を手札に加えた。
オズボーン:「ダーク・ヘルケイター、魔界のデューザ・サイボーグ、邪眼の魔剣ザビ・キラー、この3体の真の姿を見せてやろう」
一星:「真の、姿…?」
3体の闇のモンスターが魔法陣となり、一つになる。
オズボーン:「私はこの3体をリリースし、モンスターを特殊召喚する!!」
オズボーンのフィールドに展開されている魔法陣の中から何かが出てくる。
スターリング:「あれが、奴の切札か…」
デュエルを見ていたスターリングが呟く。
オズボーン:「現れろ!”魔械剣竜-アインデュナメール”!!」
身体の所々がサイボーク化されており、手には剣を持っている黒き悪魔の竜がオズボーンの場を支配した。
魔械剣竜-アインデュナメール
LV10 攻撃力4000
一星:「魔械剣竜-アインデュナメール…」
そのモンスターから放たれる気迫に圧倒されてしまう一星。
オズボーン:「アインデュナメールの効果発動!手札を全て墓地へ送ることで、相手フィールド上に存在するカードを全て破壊する!」
オズボーンは手札にある2枚のカードを墓地に捨てた。
オズボーン:「デストロイ・エンドホール!」
アインデュナメールの力によって、フィールド頭上に魔法陣が現れ、そこから放たれた光が一星のフィールド一掃した。
タカ:「一星のフィールドががら空きに!」
氷室:「マズイ!奴のフィールドにはアインデュナメールがいるぞ!」
一星に危険が迫る!!
オズボーン:「私の勝ちだ!これで、私の野望は、再び始まる!魔械剣竜-アインデュナメールでダイレクトアタック!!ギガ・デビル・パラディ!!」
アインデュナメールは口から粒子を一気に放出し、一星に迫る。
シルク:「一星君!」
アリスター:「奴の執念を砕くと言ったのは、お前の方だぞ!ここで終わるはずないよな!」
アリスターが一星に大きな声でそう叫んだ。
一星:「当たり前だ!」
アリスターの言葉にそう答えると、一星の前にシールドを手に持ったジャンク・ヴィクトリーが突然現れ、アインデュナメールの攻撃を受け止める。
オズボーン:「何!?」
一星:「俺はアインデュナメールの効果で墓地へ送られたトラップカード”ジャンク・アブソーブシールド”の効果を墓地より発動!伏せていたこのカードが相手のカード効果によって破壊され、墓地へ送られたターンに、相手モンスターから直接攻撃の宣言をされたとき、墓地に存在する「ジャンク」「ニトロ」「ターボ」いずれかの名がついたモンスター1体を効果を無効にして墓地より特殊召喚し、このカードを装備する!」
つまり、突然フィールドに現れたジャンク・ヴィクトリーが手に持つシールドはジャンク・アブソーブシールドだということだ。
ジャンク・ヴィクトリー
攻撃力2300
オズボーン:「くっ、ならアインデュナメールでジャンク・ヴィクトリーを葬るまでだ!攻撃力は、こちらが上だからな!」
アインデュナメールが口から放つ粒子光線の出力を上げる。
一星:「無駄だ!ジャンク・アブソーブシールドの効果により、1ターンに1度、装備モンスターが攻撃対象になったとき、その攻撃を無効にし無効にした数値500ポイントにつき”ジャンク・アブソーブカウンター”を一つ置く!アインデュナメールの攻撃力は4000。それを無効にしたということは8つのカウンターがシールドに置かれたということだ!」
アインデュナメールの攻撃を吸い取ったジャンク・アブソーブシールド。
それを見たオズボーンが悔しそうな顔をする。
オズボーン:「だが、魔械剣竜-アインデュナメールの効果により、相手がトラップカードの効果を発動したとき、相手に1000ポイントのダメージを与える!」
アインデュナメールは剣を振り、その斬撃が一星を襲う。
一星:「うっ」
一星
LP1500 → 500
オズボーン:「私はこれでターンエンドだ!」
自信満々にターン終了の宣言をしたオズボーン。
スライ:「ライフ残り500…」
パティ:「これ、マズイんじゃないの…?」
ボブ:「だ、大丈夫なのか?」
一星を心配する声が聞こえてきた。
クロウ:「心配するな」
パティ:「え?」
クロウ:「あいつの顔を見てみろ」
パティたちはクロウの言う通り、一星に顔を見る。
真剣な眼差し。こんな状況でも、あんな目をするなんて…。パティたちはそう思った。
オズボーン:『不動一星。こいつ、なんて目をするんだ』
一星の眼差しを見るオズボーン。
オズボーン:『アインデュナメールを前にして、まだ諦めていないのか…!』
少し動揺してくるオズボーン。
勝っているのは、自分の方だ。だが、なぜか自分は焦っていた。何故だかわからないが、変な胸騒ぎがしていた。
一星は自分のデッキを見つめる。
一星:『あいつの執念を砕く。俺が今一番やるべきことだ。だから、俺に貸してくれ。お前たち!』
一星はデッキの上に指を置く。
4ターン
一星
LP500
オズボーン
LP2000
一星:「俺の、ターン!」
一星がカードを引いた。
そのカードを確認する一星。
一星:「やっと来てくれたな。この窮地を逆転するカード…!」
オズボーン:「何…!」
一星:「お前の執念、砕かせてもらおう!」
自信満々に一星は言った。
その表情を見ていたスターリング。
フッと笑った。
スターリング:「決着はついたようだな…」
一言そう言った。
一星:「”シンクロン・エクスプローラー”を召喚!」
赤いボディのロボットがロボットが現れる。
シンクロン・エクスプローラー
LV2 攻撃力0
一星:「シンクロン・エクスプローラーが召喚に成功した時、自分の墓地の”シンクロン”と名の付くモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。甦れ!ジャンク・シンクロン!」
シンクロン・エクスプローラーの身体の真ん中の空洞からジャンク・シンクロンが出てきた。
ジャンク・シンクロン
攻撃力1300
オズボーン:「新たなシンクロモンスターを出す気か…!」
一星:「更に、ここで前のターンにアインデュナメールの効果で墓地へ送られたトラップカード”シンクロ・エマージェンシー”の効果を発動!」
前のターンで一星のリバースカードが破壊された枚数は2枚。1枚はジャンク・アブソーブシールド。そして、もう1枚は、このカード”シンクロ・エマージェンシー”だということだ。
一星:「このカードと、フィールド上と墓地からチューナー1体を含むモンスター2体以上を除外することで、シンクロ召喚を行う!」
オズボーン:「冥府からシンクロ召喚の素材を選択するだと…!」
一星:「俺は、墓地のレベル2クイック・ウォリアーとフィールドのレベル2シンクロン・エクスプローラーに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!!」
ジャンク・シンクロンが3つのリングとなり、2体のモンスターを覆う。
一星:「集いし星の輝きで、地上の薔薇が開花する!光差す道となれ!シンクロ召喚!天空を舞え!”エトワール・ローズ・ドラゴン”!!
エトワール・ローズ・ドラゴン
LV7 攻撃力2400
エトワール・ローズ・ドラゴン。一星のエースモンスターでもある竜だ。
オズボーン:「くっ、シンクロモンスターが2体…。だが、この瞬間、アインデュナメールの効果発動!1ターンに1度、相手フィールド上にレベル6以上のモンスターが召喚、特殊召喚されたとき、そのモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
アインデュナメールが雄叫びを上げて、口から放った粒子がエトワール・ローズ・ドラゴンに迫りくる。
オズボーン:「これで、その竜は消え、お前は2400ポイントのダメージを受けてくたばる!私の勝ちだ!」
自分の勝利を確信したオズボーンが嬉しそうに言う。
一星:「嘗めるな!エトワール・ローズ・ドラゴンの効果発動!このカードをリリースすることで、その効果を無効にし除外する!!エスペラント・ミストラル!!」
エトワール・ローズ・ドラゴンが場から消え、フィールドに残した粒子がアインデュナメールが放った粒子を受け止めて、一星を守った。
オズボーン:「効果を無効にされたが、アインデュナメールは相手のカード効果によって、フィールドから離れることはできない。それは除外も例外ではない!」
一星:「なるほど、戦闘で破壊する方法しかそいつを倒すことはできないということか。ならば除外されたエトワール・ローズ・ドラゴンの効果発動!自分の墓地に存在するモンスターカード1枚を除外することで、このカードをフィールド上に特殊召喚する!」
チューニング・サポーターを墓地から除外し、エトワール・ローズ・ドラゴンがフィールドに舞い戻る。
エトワール・ローズ・ドラゴン
攻撃力2400
オズボーン:「モンスターを復活させようと、アインデュナメールを倒すことは不可能だ!」
一星:「今のままではな」
オズボーン:「何…?」
一星:「この瞬間、永続トラップ、ジャンク・アブソーブシールドの効果発動!このカードに乗っているジャンク・アブソーブカウンターを全て取り除き、取り除いたカウンター1つにつき、自分フィールド上に存在するモンスター1体の攻撃力を300ポイントアップする!」
ジャンク・アブソーブカウンターの真ん中の部分が展開され、8つの光の球がエトワール・ローズ・ドラゴンに吸収された。
一星:「取り除いたカウンターは8つ!よって、エトワール・ローズ・ドラゴンの攻撃力は2400ポイントアップ!」
エトワール・ローズ・ドラゴンの攻撃力が上昇した。
エトワール・ローズ・ドラゴン
攻撃力2400 → 4800
オズボーン:「こ、こ、攻撃力4800だと…!!」
一星:「デュエルの幕引きだ!エトワール・ローズ・ドラゴンで魔械剣竜-アインデュナメールに攻撃!リュエール・デゼトワール!!」
エトワール・ローズ・ドラゴンは口から粒子を放ち、アインデュナメールを粉砕した。
オズボーン:「ば、バカな…。私の切札が!!」
オズボーン
LP2000
モンスターを戦闘で破壊したが、オズボーンのライフは減らなかった。
一星:「どうやら、そいつには、戦闘で破壊されたとき、プレイヤーが受けるダメージを0にする効果があるみたいだな」
デュエルアイを通し、モンスターの分析結果が表示され、一星は左目に映るデータを見て言った。
一星:「だが、俺の場には、まだジャンク・ヴィクトリーの攻撃が残っている!行け!ジャンク・ヴィクトリー!プレイヤーにダイレクトアタック!スクラップ・ボルト・クラッシュッ!!」
両拳に電流を溜め、その状態でオズボーンを殴り飛ばす。
オズボーン:「ぐわああああああ!」
オズボーン
LP2000 → 0
オズボーンのライフ0を確認。
デュエルに勝利したのは、一星だ。
そして、会場を包み込んでいた結界いや、パンドラの箱が消えて行く。
明日香:「結界が…」
珠里:「消えて行くわ!」
パンドラの箱が消えて行くのを目にして驚く明日香達。
色葉:「中で、何かあったみたいね」
慎也:「よし、中に行くぞ!」
慎也たちが完全に結界が消えたことを確認し、会場内に入った。
エマリー:「やったわ!」
龍亜:「一星の勝ちだ!」
一星の勝利に喜ぶみんな。
その姿を、離れた場所からスターリングが見ていた。
スターリング:「よくやったな、一星」
そう言い残し、スターリングは、その場を後にした。
結界が消えた後の輝きが、会場内を照らす。
そして、みんなの側に1人の男性が倒れていた。
ブリッツ:「おい、あいつは!」
ラリー:「秘書のクラーク!」
倒れていた男の正体は、自分の身体を犠牲にして、この現象を起こした張本人クラークだった。
ナーヴの近くにいたシュミットは、クラークの身体に触る。
すると、シュミットが首を横に振った。
シュミット:「残念だが、息はない。もう死んでるよ」
ナーヴ:「そうですか」
少し残念そうにナーヴはそう言った。
シュミットの近くにいたマーサが死んだクラークに両手を合わせる。
オズボーン:「なぜだ、なぜだ、なぜだ!なぜ、私が負けなければいけないのだ!なぜ!」
悔しいの気持ちで所為で我を忘れるオズボーン。
そんなオズボーンに一星は近づいた。
一星:「罪を認めろ、オズボーン。お前は、負けたんだ」
オズボーン:「私はお前に負けてなどいない!」
一星:「違う。お前は俺に負けたんじゃない。お前はお前自身の執念に負けたんだ」
オズボーン:「な…に…」
一星の言っていることが理解できないオズボーンがいきなり大人しくなった。
一星:「国家政府を消し、自身が世界の頂点に立つ執念。それは、お前自身を変えていった。そんな執念で変わるお前は人間として弱いだけだ。俺に、いや…、俺たちに勝てるはずがない」
オズボーン:「……」
一星:「罪を認め、全てをやり直せ。オズボーン」
オズボーン:「わ、私は…」
両手をつき、下を向いて悔しそうな顔をするオズボーン。
いろいろあったが事件は解決した。
死亡したクラークは、ネオコーポレーションシティの救急車で持ち運ばれた。
警察官:「行くぞ」ネオコーポレーションシティ所属の警察官たちが、オズボーンに手錠をかけて連れていく。
百々原:「君たちの働きで、外の被害も最小限に抑えられた。礼を言おう」
フロンティアの元帥にして、ネオコーポレーションシティの市長を務める百々原が一星を初め、この事件で戦ってくれた大会の出場者たちに礼を言った。
シルク:「僕たちは当然のことをしたまでですよ。お礼を言われることじゃありません」
早美:「それに、今回、事件解決に導いたのは、一星です。我々は何も…」
全ては一星のおかげだと言い張るシルクたち。
一星:「いや、みんなのおかげで俺はオズボーンを止めることができた。俺だけの力じゃないさ」
自分だけの手柄ではないと、一星はそう言った。
アリスター:「何はともあれ、事件は解決したんだ。俺は本部に戻って報告する」
一星:「アリスター…」
アリスター:「今回は、お前のおかげで事件は解決した。これ以上、オズボーンを警戒することはないだろう。ジェームズ総帥には、そう伝えとく。だが、俺はサイファーの人間だ。今後は敵として現れることもある。覚えておけ、一星。じゃあな」
アリスターはそう言い残し、その場を後にする。
クレイヴン:「なんだ?あいつ」
アリスターの態度が気に入らなかったのか、少し怒りを感じたクレイヴン。
一星:「まあいいさ」
アリスターが去って行くのを見て、一星はフッと笑った。
百々原:「みんなもご苦労だった。今日はゆっくり休んでくれ」
クロウ:「なんか色々あって疲れちまったな」
カーリー:「一星の優勝祝いにぱあっとパーティでもやるつもりだったけど」
ミスティ:「それは明日ね」
雑賀:「流石に、今日は疲れた。先にあがらせてもらうぜ」
雑賀は氷室と共に、その場を後にする。
パティ:「龍可、私たちも帰るわ」
龍可:「明日のパーティ、どうするの?」
ボブ:「勿論、行くに決まってるだろ!」
ボブは嬉しそうにそう答えた。
龍可:「スライはどうするの?」
龍可の質問にスライは黙っていた。
天兵:「ホント、素直じゃないよね、スライって」
面白うそうに笑って天兵は言った。
アキ:「さあ、帰りましょう」
一星:「そうだな」
一星はアキと愛と共に本部へ帰った。
みんなが帰ろうとしている中、慎也が百々原に近づいて話しかける。
慎也:「色葉も言っていましたが、今回会場を覆ったものがパンドラの箱だとすると、四大神王者は動いていたかと思われます。現に、自分は、ここでNo.3のスターリングに会っていますし…」
百々原:「あぁ、少し話しもしたかったが、もう追うことは困難だろ。また次の機会にするさ」
慎也:「遊馬の方はどうしたんですか?」
百々原:「別の任務で、外に出ている。なに、修行の方はうまくいったよ」
慎也:「そうですか」
慎也は百々原との話しを終え、この会場を出る。
百々原:『君も、ここに来ていたのか…』
百々原が心の中で呟いた。
その頃、メガネをかけた謎の男性は、段々と会場から遠ざかって行く。
その頃、ラリー、ナーヴ、タカ、ブリッツは、本部に戻る前に食事を済ませようと街中を歩いていた。
タカ:「さぁて、何を食べよっかな」
目に入る食事のサンプルを見ては歩き見ては歩きを繰り返すタカ。
ブリッツ:「おーい、何にするか決まったか?」
タカ:「今日は、色々あったし、一星が優勝しためでたい日だからな。少し豪華に食べたいな」
ブリッツ:「そんなにお金はないぞ」
ブリッツはタカにそうツッコミを入れた。
ラリー:「あーあ、一星が優勝するところ見逃しちゃったな」
ナーヴ:「まあ、仕方がないさ。あんなことがあったんだからな」
残念そうな顔しながら歩くラリーに、隣を歩くナーヴはそう言った。
人が沢山歩く歩道。前から後ろから途切れることなく人が歩いている中、ナーヴたちの前から1人の男性が歩いてきた。
ナーヴたちはそれに気づいていない。
楽しそうに話しを続けるナーヴたち。
そんなナーヴたちに近づいてくる男性の左頬にはマーカーが刻まれていた。
サングラスをかけて素顔を隠す、その男は、先ほどまで会場にいたチャンピオン・名人こと四大神王者スターリングだった。
楽しそうに話しながら歩くナーヴたちに段々近づくスターリング。
そして、スターリングはナーヴの左横を素通りした。
ナーヴ:「え?」
今、自分の左横に歩いた人の顔を一瞬見たナーヴ。
すぐに、その場に立ち止まり、後ろを振り向いた。自分の横を通り過ぎた人は、もういなかった。いや、人が多すぎて見失ってしまったのだ。
ラリー:「ん?どうした、ナーヴ」
いきなり立ち止まったナーヴに声をかけるラリー。
ナーヴ:「……」
さっき、自分の横を通った男の左頬にあったマーカー。
ナーヴはそれに見覚えがあった。
ナーヴ:「いや、何でもない」
ナーヴはラリーたちに誤魔化して、再び歩き出す。
ナーヴ:『まさかな…』
ナーヴは心の中でボソッと呟いた。
その頃、スターリングは――。
今は人が全然いない公園の洗面所の蛇口を捻り、手を洗った。
すると、次の瞬間、髪の毛に触り、被っていたものを取った。
そう、カツラをつけていたのだ。
スターリングは、蛇口から出る水で顔を洗う。
???:「こんなところで顔を洗うなんて」
後ろから聞こえる女性の声。
由加:「誰かに見られたら、どうするの?」
スターリング:「由加か。無事だったようだな」
顔を洗いながらスターリングは言った。
由加:「当然でしょう。あんな力じゃ、私を倒すことはできないって。とりあえず、国際空港にいたオズボーン派の社員たちは、全員拘束したみたいよ。ヨーロッパの本社にもフロンティア側からSOA隊2係が向かっているみたいだし、全員捕まるのも時間の問題のはずよ」
スターリング:「そうだな」
蛇口を捻り、水を止める。
由加:「オズボーンが落ちたことで、ライナー・リッグが社長になるでしょう。そうしたら、ノルマンディーカンパニーは、昔の会社に戻るんじゃない」
由加の話しを聞きながら、スターリングは持っていたタオルで顔を拭いた。
スターリング:「由加、もう一つ仕事を頼んでいいか」
由加:「?」
スターリング:「お前にしか頼めない頼みだ」
タオルを拭きながらスターリングは言った。
由加:「今度は、どんな頼みかしら?」
スターリングはタオルで顔を拭き終わり、素顔を見せる。
由加:「遊星兄さん」
かつて破滅する未来からやってきた敵から、故郷ネオ童実野シティを救った伝説のデュエリスト。
その時に名づけられた名前は”ネオ童実野シティの救世主”。
男性の名前は…、不動遊星――
次回予告
ナレーション:オズボーンが逮捕され、次々とオズボーン派の社員が取り押さえ、ノルマンディーカンパニーに平穏が戻ってきた。
それから数日、アキは久しぶりに実家に戻り、両親と楽しい一日を送っていた。
その日の帰りに、謎の人物が現れ、彼女に刃を向ける。
この男の正体は…!
アキ:次回、遊戯王5DXAL「過去の刺客 紅の危機」
アキ:「刃を向けてくるんだったら容赦はしないわ!」
遊戯王5DXAL豆知識コーナー!!
一星:「今回の事件で突然現れた”パンドラの箱”は世界精霊大戦の時にも現れ、国会議事堂とホワイトハウスを覆ったという歴史が残っている。あの大戦争で出てきたものが、この世界に現れるとは誰も思わなかっただろう。だが、これはもしかしたら今後の悲劇の前兆かもしれない」