第109話:『準決勝決着!そして、決勝へ』
会場内を包む輝き。
それは徐々に収まってきた。
マーサ:「なんて眩しい光なのさ!」
シュミット:「目に悪い」
目を擦るマーサとシュミット。
シェリー:「それよりも」
イェーガー:「バトルはどうなったのですか…!?」
みんながバトルフィールドを確認する。
宙に浮かぶ両者のモンスター。
身体中傷だらけだ。
しかし、よく見ると、さっきまでジャンク・ヴィクトリーはブラック・ローズ・ドラゴンの力を受け継いだ姿になっていたはずだが、今は元の姿に戻っていた。
エマリー:「ジャンク・ヴィクトリーの姿が…」
口を押さえながら、エマリーは呟いた。
鬼柳:「まさか、一星が負けたのか…」
龍可:「そんな…」
誰もが一星の敗北だと思い込んでしまった。
一星:「はぁ、はぁ」
早美:「はぁ、はぁ」
両者、激しい戦闘の末、息がすごく荒れている。
早美:「キミとジャンク・ヴィクトリーの絆、確かに見せてもらったよ…。死力を尽くしたバトルだ。お互い悔いはないだろ?」
一星:「はぁ、ああ…」
早美:「選手代表として言わせてもらおう。おめでとう、この勝負は、君の勝ちだ」
早美がそう言うと、サンクチュアリ・ドラゴン・ナイトは全身に纏われていた鎧が砕け散り、そしてフィールドから消えた。
サンクチュアリ・ドラゴン・ナイトのヒットポイント0を確認。
『DuelBattle End! DuelBattle End!』
バトル終了のコールが鳴り響く。
第7OP『二つの未来《黒田倫弘》』
第109話:『準決勝決着!そして、決勝へ』
会場内が沈黙する。
巨大画面には一星の顔写真と共に「WINNER」のいう文字が書かれていた。
MCは空いた口が閉じなかったが、状況を見て我に返る。
MC:「じゅ、準決勝第1バトルけっちゃーく!!激戦を繰り広げ、勝利を手にしたのは、ふどーういっせーい!!」
勝者の名前を大きな声で叫ぶMC。
会場が大きな歓声で広がる。
ナーヴ:「あいつ、やりやがった!!?」
ラリー:「やったぜ!一星!!」
パティ:「決勝戦進出よ!!」
ボブ:「ああ!」
みんなが喜ぶ。
愛:「やったよ!ママ!!一星がやったわよ!」
アキ:「ええ、そうね」
母に抱き付く愛。
嬉しさのあまりにアキは少しだけ涙を流した。
ミスティ:「泣くのは、早いんじゃない?」
隣にいるミスティがアキの涙を見てそう言った。
アキは、涙を拭きながら「そうね」と呟く。
一星と早美のバトルをカメラ越しから見ていた名人。
名人:「フッ、いいバトルだったぞ。2人とも」
2人のバトルを見て満足した名人。
すると、左手首につけている腕時計、いやミッションウォッチが音を鳴らす。
メール受信の音だ。
ホログラムを出し、メール内容を確認する。
差出人には、”由加”と書かれていた。
≪バトル見てた?一星、勝ったわよ。よかったわね≫
と本文には書かれていた。
メールを読み終えた名人は、椅子から立ち上がる。
名人:「おめでとう、一星。最後のバトル、もしかしたら俺は見届けることができないと思うが、正々堂々悔いのないバトルにするんだぞ」
そう言って、名人は部屋を出た。
バトルを終えた一星。
ターミナルペットをフィールドシステムから取り外し、手元に持つ。
一星:「ご苦労だったな、ジャンク・ヴィクトリー」
ターミナルペットの中にあるジャンク・ヴィクトリーのカードに向かって、一言そう言った。
早美:「キミの強さ、キミとモンスターとの絆、見せてもらったよ」
一星の元に早美が近づいてきた。
早美:「このバトル、僕は、一生忘れることのないバトルになるだろう」
一星:「それは俺もそうだ。いいバトルをありがとう」
早美:「リベンジさせてもらうよ、いつかまた」
一星:「その時を楽しみにしている」
早美:「決勝、頑張って」
一星:「ありがとう」
2人は握手を交わした。
その姿を見て、会場内にいるみんなは拍手を2人に送った。
会場内にいたクレイヴン・エレクトロ。
少し前に一星とデュエルバトルしたときのことを思い出す。
あのときは全然相手にならなかった。だが、今のバトルであいつは成長していることに気付く。
いや、決勝トーナメントから始まってから薄々気付いていた。
あいつはバトルするたびに成長していると…。
クレイヴン:「あのときは話にならなかったが、今回は楽しませてくれそうだな」
そう言って、クレイヴンは会場中央にあるフィールドシステムに向かって歩き出す。
MC:『さあ、続いては準決勝第2バトルだ!』
会場に新たな歓声が沸く。
特別席にいるオズボーン。
後ろにクラークが現れた。
オズボーン:「フィールドシステムの吸収力は上げれそうか?」
クラーク:「少し手こずっていますが、明日の決勝戦には間に合います」
オズボーン:「そうか、急いでくれ」
クラーク:「承知しています。それから、先ほど、あの方が到着したそうです」
オズボーン:「やはり、サイファーとフロンティアが動き出しているのか?」
クラーク:「アリスター・イドロが意識不明の重体になってから、サイファー本部で動きがあると監視していた仲間からの情報です。それに、アリスター・イドロはバトルする前に不動一星と接触しています。もし、2人がそれぞれ組織の方に話しを進めているとなると…」
オズボーン:「ヨーロッパの本社に捜査が入ると言いたいんだな?」
オズボーンがギロッとクラークを見る。
クラーク:「はい」
オズボーン:「資料は既にこちらに運んできているから問題ないが、監禁していたあの男を見つけられては困るからな」
クラーク:「既に、この会場の人気のない部屋を一つ見つけましたので、しばらくはそこに監禁しておこうかと」
オズボーン:「そっちの方は、お前に一任しておく。くれぐれも用心しろよ。あの男は、この会場の図面を目にしている奴だ。地下のことも知っているはずだ。見つからないように」
クラーク:「はっ」
クラークは頭を下げて、部屋を出る。
同時に、会場内が盛り上がる。
『DuelBattle End! DuelBattle End!』
MC:『決勝戦進出2人目が決定したぞ!ウィナー!クレイヴン・エレクトロ!!勝ったのは、やはりこの男だ!!』
前大会の優勝者。誰もが予想していた。
この人は、必ず決勝戦まで勝ち上がってくると…。
一星:「やはり、あの人が決勝戦まで勝ち上がってきたか」
勝者のクレイヴン・エレクトロを見て、一星が呟く。
クレイヴン・エレクトロの勝利を見ていたクロウたち。
ラリー:「やっぱり、あの人は強い」
クロウ:「あぁ、ヒットポイントもほとんど削られていなかったからな」
雑賀:「一星は一度だけ、あいつにコテンパンにされている…。正直、勝てる見込みはないと思っていたが…」
氷室:「大丈夫だろ。あいつだってかなり成長しているんだ。前と同じ結果にはならないさ」
一星の強さを見てきた氷室。
次のバトルも一星が勝つことを信じる。
MC:『さあ、今日は準決勝のみでバトルは終了だ!明日の午後、遂に決勝戦が開始するぞ!みんな楽しみに待っていてくれ!!』
まだ昼ぐらいだが、今日のバトルは終了だ。
みんなが会場から出る。
愛:「みんなで一星を迎えに行きましょう」
エマリー:「賛成」
愛の提案にエマリーが賛成し、皆が一星がいる場所へ向かう。
ブリッツ:「俺たちも行くか」
タカ:「そうだな」
ブリッツ、タカ、ナーヴ、ラリーたちもみんなの後を追う。
???:「ラリー君」
背後から自分の名前を呼ばれ、咄嗟に後ろを振り向く。
ラリー:「あ、あなたは…!」
シルク:「久しぶりだね、ラリー君」
爽やかな笑顔で、挨拶してきたのは、予選で一星に敗北してしまったシルク・ガーフィールドだった。
ラリー:「シルクさん。あなたも、準決勝見てたんですね」
シルク:「予選で負けたとはいえ、やっぱり僕に勝った一星くんが気になったね」
ラリー:「そうですか。一星を応援してくれるんですか?」
シルク:「勿論だよ、彼は初心者にも関わらず、ここまで這い上がってきたからね。そんな彼に興味を持たないなんておかしいよ」
シルクは予選で一星に負けている。
悔しい気持ちもあったが、勝負は勝負。強い者が勝つのは当たり前のことだ。
彼は僕より強かった。それだけのことだ。
ラリー:「そうですね。俺も、一星とバトルして気付きました。あいつには、デュエルバトルのセンスがあることに…」
決勝トーナメントで一星に敗北したラリー。
いつも、特訓の中ではほとんど自分が勝っていたが、大会では負けてしまった
特訓していく中、気付いてはいた。一星は強敵を倒していく中でどんどん強くなっていると…。
その頃、一星はアキや愛たちと合流していた。
みんなによくやったなと頭を撫でられ、髪がくしゃくしゃにされた。
ラリー:「成長期ってやつですかね」
一星はまだ若い。まだ、成長する年だ。
シルク:「そうだね。でも、次の相手はホントに今まで以上の強敵になるはずだ」
ラリー:「前の大会の優勝者クレイヴン・エレクトロ。今大会の優勝候補にも上がっています」
クレイヴンという男は、底知れない力を持っている。
さっきの準決勝バトルもどう見ても本気のバトルをしていなかった。
シルク:「彼は本当に強い。僕も前の大会でコテンパンにされたからね」
ラリー:「そうか。シルクさんは第4回大会の準優勝、決勝でクレイヴン・エレクトロとバトルしているんですよね」
第4回デュエルバトルカーニバル選手権の優勝候補はクレイヴン・エレクトロ。
そして、準優勝はシルク・ガーフィールド。
つまり、シルクが優勝の王冠を手に入れられなかったはクレイヴンに負けたからだ。
シルク:「彼と初めてバトルして負けた時、今後、この男に勝てる人なんているのかって考えちゃったよ。前の大会でも、今回の大会でも本気を出さないで、余裕で戦っていたあの男にね」
過去のことを思い返しながらシルクは語った。
シルクの考えはラリーも同じだった。
シルク:「でもね、一星君のバトルをずっと見てて思ったんだ。もしかしたら、彼ならクレイヴンに勝てるかもしれないって」
ラリー:「え?」
シルク:「勿論確証はないよ。でもね、彼の成長ぶりから見て、僕はそう思ったんだ。それに、初めて一星君とバトルして、僕は今までで最高のバトルだったんだ。僕とそんなバトルをしてくれた一星君には、ぜひ優勝してほしいんだ」
ラリー:「シルクさん」
シルク:「だから、これを彼に渡してほしいんだ。ありがた迷惑かもしれないけどね」
シルクはラリーにあるものを渡す。
シルク:「彼によろしく伝えてほしい。必ず、勝っててね」
一星宛に言伝をラリーに託したシルク。
その日の夜
一星:「シルクさんが、そんなことを…」
ラリー:「お前を応援しているのは、俺たちだけじゃない。シルクさんや、この大会を見て、お前のファンになった人達、沢山の人々が応援しているんだ」
アキ:「みんなの応援に応えなきゃね」
優しい言葉を送るアキ。
ナーヴ:「それで、その人から何をもらったんだ?」
話しの中で、ラリーがシルクからもらったものを追求するナーヴ。
ラリー:「これさ」
と手元に持っていたものは小さく薄長い何かだった。
ミゾグチ:「メモリーですか?」
ラリー:「ああ、この大会中のクレイヴン・エレクトロがバトルした時の映像が記録されたメモリさ」
それは一星にとってうれしいものだ。
これで、クレイヴン・エレクトロが使うヨルムンガンド・マグライオンのバトルを分析することができる。
鬼柳:「いい仕事してくれるな」
エマリー:「でもありがたいことよね。これで相手を分析できるんだし」
愛:「そうね」
一星:「ラリーさん、すぐにその映像を見せてください」
一星はラリーにメモリの映像を見せてほしいとお願いする。
ラリー:「ああ、わかった。準備するから手伝ってくれ」
そう言ってラリーは、みんなの力を借りてディスプレイとパソコンを用意し、記録映像を大きなディスプレイに表示する。
ラリー:「まずは、予選1回戦の映像だ」
いきなりディスプレイに出てきたのは、ヨルムンガンド・マグライオンに向かって突っ込む敵モンスターの背後だった。
ジャック:「あれが、前大会の優勝者にして、今大会の優勝候補に上がっているクレイヴン・エレクトロが使用するモンスター”ヨルムンガンド・マグライオン”か」
獅子の兜をかぶり、大蛇の身体の模様をモチーフにした鎧を着用するモンスターを見て、ジャックは口にした。
知っている顔のモンスターならまだしも、ジャックにとってクレイヴンは赤の他人。
だが、それでもジャックがクレイヴンのモンスターを見て、口を開いたということは、モンスターが相当強いということだ。
そして、ジャックの感は当たった。
なぜなら、今の映像の中で、ヨルムンガンド・マグライオンに突っ込む敵モンスターが、突如地面から現れた火柱に飲み込まれて敗北したからだ。
氷室:「今のは、あのとき一星とバトルしたときに見せた―」
デュエルバトルするなら、ほぼいつも行っている店で一星が初めてクレイヴンとのバトルで見せた技だった。
雑賀:「一発で相手を負かすほどの力とはな、油断できない男だ」
ラリー:「これに続いて予選バトルは全て、敵を1発KOで倒している。しかも、サポートカードはほとんど使っていない」
クロウ:「予選は、決勝トーナメントへ向けての肩慣らしってところか」
一星:「決勝バトルロイヤルはどうなんですか?あのときは、5人で同時にバトルする形式でした。前大会の優勝者であるクレイヴンが相手となると、他の4人は一時的に手を組んでクレイヴンを倒そうとすると思いますが」
ラリー:「お前の予想は的中している。決勝バトルロイヤルでクレイヴンを除く4人は一時的に手を組みクレイヴンを倒すことに専念していた。しかし、結果はこうだ」
クレイヴンが決勝バトルロイヤルで戦ったフィールドは高層ビルが立ち並ぶ街だった。
しかも、雪が降っている。
そして、そんな中ヨルムンガンド・マグライオンは槍を持って、敵4体を相手にしていた。
4体のモンスターは、一斉にヨルムンガンド・マグライオンに攻撃を仕掛けるが、全員が返り討ちに遭い、敗北している。
スライ:「今の攻撃…」
ボブ:「全然、動きが見えなかったぞ」
天兵:「スピードにも優れているモンスターということか。ジャンク・ヴィクトリーもかなりスピードに長けてると思うけど、映像を見る限り、向こうの方が上手かもね」
ヨルムンガンド・マグライオンのスピードにこう評価してしまう天兵。
一星:「スピードバトルに持って行くのは、マズイってことか」
愛:「ラリーさん、決勝トーナメントの映像はあるんですか?」
ラリー:「勿論だ。だが、結果的に予選と変わらず、サポートカードはあまり使っていない」
決勝トーナメント時のクレイヴンがバトルしているときの映像を見る一星達。
だが、ラリーの言う通りで、サポートカードは全然使用していない。
決勝トーナメントということもバトル時間は予選に比べ少し長いがそれでも10分以内には蹴りをつけている。
クロウ:「サポートカードを使わないはおろか、ダメージもほとんど受けていねえとはな」
シェリー:「どう?映像を見た感想は?」
シェリーが椅子に座る一星に聞く。
一星:「はっきり言って勝てる気がしないです」
龍亜:「本当にはっきり言ったな」
と一星にツッコミを入れる龍亜。
一星:「ですが、100%と言うわけではないです。今のバトルを見て、サポートカードは全然使っていなかったですが、攻撃パターンは単調みたいですし、慎重にいけば、それに対応できます」
今まとめていることを口にする一星。
一星:「俺が一番気になるのは、あの時のバトルのことです」
一星が初めてクレイヴンと遭い、クレイヴンが名人と戦っていたときのことを思い返す。
一星:「あのとき、クレイヴンはとてつもない技を放とうとしていました」
あの時、お店の店長がフィールドシステムの電源を切らなければ、その技を見れたかもしれない。
一星:『あの時、どんな技を放とうとしていたんだ。間近で見ていた俺には少しわかる。あの技はとてつもない大きな攻撃だってことが』
両手で手指を組み、強く両手を握った。
一星:「俺も、それ相当の準備をする必要がありますね」
一星は立ち上がる。
ナーヴ:「行けるのか?一星」
一星:「行けるのか?じゃなく行ってみせますよ。みんなの応援を裏切りたくありませんからね」
一星はみんなに笑って答えた。
どうやら、一星は一星なりに考えがあるようだなと、みんなは思った。
アキ:「明日は、みんな一緒に全力で応援するから頑張ってね」
一星:「ああ、心配しなくても、絶対に勝って見せる」
一星は、みんなにそう誓った。
次の日の午後
MC:「第5回デュエルバトルカーニバル選手権の会場にいる皆さん、第5回デュエルバトルカーニバル選手権の会場をテレビから見ている皆さん、大会は昨日、準決勝バトル2バトルが終了しました。そして、今日いえ、今から頂点を決める決勝戦が始まろうとしています。出場選手1000人以上、その中から決勝まで這い上がってきた、この2人が優勝カップをかけて争うぞ!!」
MCの頭上にある巨大ディスプレイが起動する。
MC:「今大会初出場ながら、激戦を潜り抜け、ここまで這い上がってきたルーキー、ふどーういっせーい!!」
一星の顔写真が巨大ディスプレイに映る。
MC:「そして、前大会の優勝者にして今大会でも優勝候補に上がっている最強の男クレイヴン・エレクトロォォ!!」
続いてクレイヴンの顔写真が映り、2人の顔写真の間に”VS”の文字が入る。
MCが更に2人のことを解説する中、一星とクレイヴンはそれぞれ今から行われるバトル会場に入ろうとしていた。
クレイヴン:『さあ、今度こそお前は俺を楽しませてくれるだろうな』
会場に向かいながら、クレイヴンは笑みを浮かべながら言った。
その笑みは、人を見下したりバカにしたりするような笑みじゃない。身体がウズウズしてこれから遊びを楽しみにしている子供のような笑みだった。
一星:「遂に、勝負を決するときだ」
一星は口に出して、そう言った。
自分のターミナルペットを手に取り、「よろしく頼むぞ」と一言付け足す。
そして、2人が会場内に入り、観客の前に姿を現す。
MC:『さあ、これから優勝争いをする2人の選手が入場したぞ!』
2人を見て、観客席から歓声が飛んでくる。
エマリー:「出てきたわ!」
パティ:「一星!頑張れ!!」
龍可:「応援してるから!!」
一星を全力で応援する仲間たち。
雑賀:「そういえば、ラリーたちはどうした?」
いつものメンバーの中で、タカ、ブリッツ、ナーヴ、ラリーの4人の姿がなかった。
牛尾:「遅れてくるそうだ。タカが寝坊したらしい」
風間:「おいおい、このバトルを楽しみにしてたんじゃないのか?」
とツッコミを入れる風間。
いつもいるはずの4人の代わりに、今回は風間、ハラルド、ブレイブ、ドラガンの4人が来ていた。
ブレイブ:「さあて、どんなバトルを見せてくれるんだ?一星の奴は」
クロウ:「あいつは、今までのバトルですげえ強くなってきた。今のあいつなら、クレイヴンと渡り合えるはずだ」
雑賀:「だが、クレイヴンの力もまだ未知だ。油断はできない」
一星の勝利を信じる者もいれば、少しだけクレイヴンを警戒する者もいた。
MC:『決勝戦を始める前に、今大会の主催者であるノルマンディーカンパニー社長オズボーン・セーブルよりご挨拶があります』
MCがそう言うと、オズボーンがフィールドシステムの近くに立つ。
一星:『オズボーン…、あんたが何かを仕掛けてくるなら、もうこの決勝戦しかない。なにを考えているのか知らないが、もし周りに迷惑をかけるようなことをするなら、俺はあんたを全力で止める…!』
オズボーンをじーっと見つめながら、一星は呟く。
オズボーン:「会場にいる皆さま、そしてカメラ越しの皆さま、第5回デュエルバトルカーニバル選手権もいよいよ決勝戦のみとなりました。1000人以上の出場者の中から、ここまでたどり着いた2人の選手に大きな拍手を与えてください」
オズボーンがその場で拍手をし、会場にいるみんなも釣られて拍手する。
オズボーン:「さて、これから最後のバトルが行われるのですが、今年のバトルは今まで以上の大会になったことでしょう。ですから、決勝戦を盛り上げるために、少しだけルールを変えたいと思います」
突然のルール変更に、決勝戦でバトルする一星とクレイヴンが、「何?」と少しだけ動揺した表情をする。
MCを含む会場にいるみんなも動揺し、会場内がざわざわしてきた。
オズボーン:「まず、サポートカードの制限枚数を7枚から10枚に増大します。そして、その10枚の内4枚までモンスターカードを入れられます。モンスターによるサポートカードに、使用時間の制限はありません。そして、制限時間は30分。この30分でバトルを行い、最後まで立っていたモンスターが勝者となります」
ルール変更の説明をするオズボーン。
一星:「いきなりルール変更するとはな」
クレイヴン:「フッ、今年の大会、前の大会と同じでつまらない敵ばっかりで反吐が出たが、出場したのは正解だったようだな」
10枚のカードを手にし、ターミナルペットにセットする。
オズボーン:「突然のルール変更に動揺させて申し訳ございません。ですが、決勝戦のために用意した特別なルールです。これで、バトルは更に盛り上がるでしょう!不動一星選手、クレイヴン・エレクトロ選手、両者の健闘を祈っています!皆さんを盛り上げるバトルをどうかよろしく!」
オズボーンの挨拶が終了したとともに、会場にいる観客から大きな拍手が贈られた。
オズボーン:『さあ、お二方のバトルから生まれたデュエルエナジーを頂きます』
後ろを振り向き、みんなに見えないように不気味な笑みを見せて呟いた。
クレイヴン:「フッ」
一星:「よし、これで」
両者とも、ターミナルペットの準備が完了したようだ。
2人の様子を見ていたMCが「うん」と頷いた。
MC:「大変お待たせしました!どうやら、2人の準備が整ったようだ!第5回デュエルバトルカーニバル選手権決勝戦をこれより始めます!」
MCが決勝戦開始の合図をした。
『field system standby』
デュエルバトルフィールドシステムが起動する。
『Terminal PET setup』
両者、ターミナルペットをフィールドシステムにセットする。
『Review Terminal PET』
フィールドシステムが両者のターミナルペットがセットされたことを確認した。
『yuseiParticle Spread』
遊星粒子が散布される。
『Stage ”Lunar surface”』
決勝戦の舞台は月面。つまり宇宙だ。
綺麗な地球が目の前に見える。
『Monster Call!』
両者のモンスターが月面の上に現れる。
しかし、いつもと違い、お互いかなり離れた場所にモンスターが呼び出された。
一星のジャンク・ヴィクトリーは、大きなクレーターのど真ん中に現れ、クレイヴンのヨルムンガンド・マグライオンは、地割れがある場所の近くに現れる。
『FinalDuelBattle START!!!』
決勝戦デュエルバトル開始のコールが鳴り響く。
一星:「さあ、行くぞ!ジャンク・ヴィクトリー!!」
ジャンク・ヴィクトリーが飛び、行動を開始する。
遂に、決勝戦が開幕した!
第7ED『Last Moment《SPYAIR》』
次回予告
ナレーション:第5回デュエルバトルカーニバル選手権決勝戦が遂に始まった!
そんな大切な日に遅れて会場に到着してしまったラリーたち。
だが、ラリーたちはこれから悲劇が起きることを知ってしまった…。
オズボーンの本当の狙いを、オズボーンが何を目的に大会を開催したのかを…。
誰も知らない場所で、決勝戦は盛り上がるのであった。
ナーヴ:次回、遊戯王5DXAL「3対3の決勝戦!裏で捕えられた男!」
ナーヴ:「それが、大会の真実だったって言うのか!」