第96話:『ダーク・ヘルケイターの絶望!』
会場に急ぐ一星とラリー。
ラリー:「早く!一星」
一星:「分かっています!そんなに慌てないでくださいよ。シルクさんのバトルはさっき始まったばかりですから」
2人は前大会準優勝のシルクのバトルを見るために会場へと急いでいたのだ。
因みに、一星は、このシルクに予選1回戦目でバトルし、撃破している。
そして、デュエルバトルの楽しさを教えてくれた師匠的存在でもある。
ラリー:「分かってるけどよ、やっぱり序盤から見たいんだ。シルクさんのバトルは。これからのバトルの参考にするためにもさ」
2人は廊下を走る。
そして、会場を照らす明りが目の前に見えてきた。
会場に入る一星とラリー。
『DuelBattle End! DuelBattle End!』
いきなりデュエルバトルの終了を知らせる音声。
会場が静まり返っていた。
シルクは両手でフィールドシステムにつけ、下を向いていた。
MC:「……、しょ、勝者、セーブル・シック!!」
MCが勝者の名を呼ぶ。
あの前大会準優勝者のシルクが負けた。
こうもあっさり…。
会場にいる、みんなは声が出ないほど驚く。
ラリー:「あのシルクさんが、負けるなんて…」
一星:「相手は一体…」
シルクの前に堂々と立つ1人の男。
巨大ディスプレイには、リプレイされたバトルが映っていた。
第6OP『ハートウェーブ《福圓美里》』
第96話:『ダーク・ヘルケイターの絶望!』
ラリー:「あれが、シルクさんを倒した選手…」
緑色の長髪で、手に指を沢山つけている。
そして、リプレイで映っているバトルを見て、シルクが使うモンスター”カオス・ゴッデス-混沌の女神-”が瞬殺されているのがすぐに分かった。
そのカオス・ゴッデスを倒したモンスターを見る。
赤いマントに黒いボロボロの翼。黄色い角が生えており、尻尾もある。
見た目からして悪魔族モンスターだろう。
一星:「初めて見るモンスター…、こいつは一体…!」
そのモンスターを見たことがなかった一星が口を開く。
すると次の瞬間、MCの声が鳴り響く。
MC:「さあ、予選も遂に最終局面!見ろ!選手のみんな!君たちが最後に戦う敵は、こいつらだ!」
巨大ディスプレイに対戦表が映る。
不動一星VSセーブル・シック
なんと一星、予選最後の相手は、あのたった今シルクを破ったセーブルだった。
一星:「俺の最後の敵はあいつか…」
会場の中に立つセーブルを見る一星。
MC:「みんな、明日もいいバトルを期待しているぞ!!」
今日のバトルは全て終わった。
一星とラリーは、急いでシルクの元へ行く。
ラリー:「シルクさん!」
しばらく走っていると、目の前にシルクが見えてきた。
シルク:「ラリー君、一星君…。2人ともどうしたんだい?」
2人の名を呟くシルク。
笑って口を開くシルク。
だが、目は笑っていなかった。
悲しい、悔しい。この二つの言葉が目に込められている。
一星:「何があったんですか?あなたほどの人が…」
一星が聞くと、シルクの表情は変わった。
シルク:「化け物だよ。あんなモンスターを見るのは初めてだ」
よほど敵が使っていたモンスターが恐ろしかったのか、シルクは体験した恐怖を2人に教える。
シルク:「セーブル・シック、あの人は只者じゃない。あんなモンスターをああも操るなんて…」
ラリー:「セーブル・シックが使っていた、ボロボロの赤いマントを被るモンスター…あれは一体…」
シルク:「名前は”ダーク・ヘルケイター”。それ以外はわからない。序盤どう出てくるか分析するつもりだったけど、敵の攻撃は素早く、気付いた時にはカオス・ゴッデスはやられていた」
戦っていたシルクでさえ、相手の力がわからないとは、よほど謎に包まれたモンスターなのだろうと思った一星。
シルク:「一星君」
一星:「?」
シルク:「やられた僕が言っても、説得力はないかもしれないけど、たとえどんなモンスターでも不死身なんてものはない。必ず倒せる策はあるはず。僕の分まで頑張ってくれ」
シルクが一星の肩を掴んでそう言った。
シルク:「それじゃあ」
シルクは、この場を後にしようとする。
ラリー:「シルクさん!」
ラリーがシルクを止めようとする。
しかし、一星がラリーを止める。
一星:「今はそっとしておきましょう」
ラリー:「一星…」
一星:「シルクさんの手、震えていました」
さっき肩を掴まれたときに気付いてしまったのだ。
シルクの手は震えていたことに。
それは、恐怖の震えなのか、それとも悔しさに現れた震えなのかわからない。
でも、震えていたことに変わりはない。
一星:「あの人なりに、気持ちの整理をつける時間を与えた方がいいでしょう」
一星の言う通りだ。前大会準優勝者のあの人が負けたのだ。
プライドだってあるはずだ。
ラリー:「そうだな。一星の言う通りだな」
ラリーはシルクを止めるのをやめる。
一星:「セーブル・シック、そしてダーク・ヘルケイターについて分析したいです。ラリーさん、すいませんが手伝ってくれませんか?」
ラリー:「お安い御用だ、一星」
一星はラリーの力を借りて、敵の分析を開始するのであった。
とあるホテルのフロント。
オズボーン:「いい成果を出しているようだな。段々、使い慣れてきたようだし、この調子で次も勝ってくれ」
椅子に座るノルマンディーカンパニーの社長オズボーン。
セーブル:「あぁ、わかっている。あんたとは金の取引をしているからな。その分は、ちゃんと働くつもりだ」
オズボーンの向かいに座っているのは、シルクに勝ち、一星の次の対戦者であるセーブルであった。
オズボーン:「期待しているぞ。セーブル」
オズボーンがそう言うと、セーブルは立ち上がり、この場を後にする。
セーブル:「よく知らんが、この大会は以外と面白い。それもこれも、あの男から譲ってもらった、このカードのおかげか」
セーブルが手に持つカード。
それはダーク・ヘルケイターのカードだった。
セーブル:「これからもいい暇つぶしができそうだな」
セーブルはニヤッと笑ってホテルを出る。
セーブルがホテルを出たことを確認するオズボーン。
オズボーン:「クラーク」
秘書のクラークがオズボーンの後ろに来る。
クラーク:「はい、社長」
オズボーン:「いい男に、あのカードを渡したな。褒めてやる」
クラーク:「勿体ないお言葉です。私はカードを渡しただけ。あのカードを生み出した、オズボーン社長こそ素晴らしいですよ」
社長のすばらしさを褒めるクラーク。
その言葉を聞いたオズボーンはフッと笑う。
オズボーン:「最初は心配したが、徐々に使い慣れているようだ。そして同時にあのカードも本来の力を覚醒しつつある」
クラーク:「本来の力を覚醒したとき、あの男は、その力を扱えるのでしょうか?」
オズボーン:「それは、今後のあいつの力次第だ。まあ、その時はあまり期待していないがな。クラーク使えなくなれば、捨てればいいことだ」
クラーク:「酷いお方だ」
オズボーン:「お前も同じことを考えていただろう」
そう言って、2人は笑う。
その二人の姿を物陰から見ている人がいた。
眼鏡をかけた男性が、2人の姿を凝視する。
その目線に気付かず、2人は、その場を後にする。
その頃、一星とラリーは、セーブルの今までバトルのビデオを見ていた。
一星:「やはり、大会序盤のバトルと、シルクさんの時のバトルを見比べると大きく違いますね」
ラリー:「ああ、まるで別人、いやモンスターが別物に見えるぜ。だが、少なくともずっと使っているモンスターは、このダーク・ヘルケイターというモンスターだ」
ビデオを一時停止し、画面に映るダーク・ヘルケイターを指さすラリー。
一星:「大会中、モンスターを入れ替えることは反則。破れば、即失格です。それにもしこれが序盤で使っていたモンスターではないとなれば、フィールドシステムが反応して警告を出すはずです」
ラリー:「分からないことだらけだな」
後頭部に手を回し、背もたれにのしかかるラリー。
すると、2人の手元に飲み物が置かれた。
マーサ:「ほれ、飲みな。元気出るよ」
ラリー:「マーサ…!?」
いきなり目の前に現れたマーサに驚くラリー。
マーサ:「そんなに驚くことないだろう。ただ飲み物持ってきただけだろ」
一星:「いただきます」
一星はマーサが持ってきてくれた飲み物を飲む。
マーサ:「一星は、冷静だね。お父さんと同じで」
一星:「おいしい紅茶ですね」
マーサがくれたのは紅茶だった。
とてもおいしく休憩するときにはばっちりな味だった。
マーサ:「そうだろう!リンデンっていうハーブを使っているからさ」
ラリー:「リンデン?」
マーサ:「ああ、気持ちをゆったり落ち着かせる、甘い香りがするハーブさ」
ラリー:「へえ」
ラリーは話しを聞いて、紅茶を一口飲む。
ラリー:「おいしい…」
紅茶の味に、つい本音がぽろっと出てしまった。
マーサ:「何か悩んでいるみたいだね」
一星:「え、えぇ、まあ」
マーサ:「ずっと悩んでいたって仕方ないよ。時間は限られているんだから」
一星:「……」
マーサ:「当たって砕けろ。ぶち当たって、その場に留まっていても何も変わらないよ」
マーサが自信満々にそう発言する。
ラリー:「マーサ、その発言古いよ」
ラリーはそう言うと、マーサはラリーの耳を引っ張る。
ラリー:「いてててて」
マーサ:「なんか一体かい?ラリー」
ラリー:「いい、痛いって、マーサ!耳、引っ張るな!!」
耳に感じる痛みに叫ぶラリー。
一星:「そうですよね」
一星が、口を開いた。
マーサとラリーは、一星を見る。
一星:「考えてわからないんだったら、動けばいいだ。セーブルが使うダーク・ヘルケイターは確かに強いけど無敵じゃないはず。本番、俺は奴と戦って見つけます。奴に勝てる策を。それを証明します。マーサさん、ありがとうございます」
一星はマーサにお礼を言って部屋を出る。
部屋に取り残された二人。
マーサ:「私、何か変なこと言ったかい?」
ラリー:「少なくとも、マーサが言ったことが古いっていうのは確か…」
マーサ:「ん?」
怖い顔でラリーを見つめ、耳を引っ張る。
ラリー:「いててててて、痛い!マーサ!痛いって!!!」
ラリーは再び、叫ぶのであった。
フロンティア本部の敷地を歩く一星。
星空を見上げる。
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シルク:「たとえどんなモンスターでも不死身なんてものはない。必ず倒せる策はあるはず。僕の分まで頑張ってくれ」
あの時、シルクは俺の肩を強く掴んで、そう言ってくれた。
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一星:「そうだ、たとえどんなモンスターでも、倒せる策は必ずある。それが神であっても」
一星はジャンク・ヴィクトリーのカードを出す。
一星:「一緒に見つけよう、ジャンク・ヴィクトリー。あいつに勝てる方法を」
一星はジャンク・ヴィクトリーのカードを見て、そう呟く。
その後、一星はジャンク・ヴィクトリーのカードの後ろに重ねていたカードをずらす。
一星:「勝つためだ。お前も、頑張ってもらうぞ」
一星が持つもう一枚のカード。
真のエースモンスター。
星と薔薇の名を合わせ持つドラゴン――――
そして…。
第5回デュエルバトルカーニバル選手権の予選もいよいよ大詰めとなった。
ラリー:「いけ!!ワンショット・ナイト!!」
ラリーのワンショット・ナイトが敵モンスターを倒す。
『DuelBattle End! DuelBattle End!』
MC:「勝者!!ラリー・ドーソン!!」
会場に大きな歓声が沸いた。
MC:『ラリー・ドーソンは、予選での敗北結果はありません。よって、早くも決勝トーナメント進出が決定だ!』
歓声と拍手が会場に鳴り響く。
ナーヴ:「初めて出場したのによくやるぜ!」
タカ:「ずっと夢見ていたからな、この大会に出ることを」
ブリッツ:「その言葉が、ラリーに勇気を当て得ているのかもな」
ラリーの決勝トーナメント進出を喜ばしく思うナーヴたち。
ラリーは一星の元へ歩く。
一星:「決勝トーナメントおめでとうございます」
ラリー:「ありがとう、一星。そして、先に行って待っているよ」
一星:「はい、俺も必ず行きます、決勝トーナメントに!」
一星はそう言って、デュエルバトルフィールドシステムがある場所まで歩く。
MC:『さあ!デュエルバトルカーニバル選手権予選最後の試合だ!』
一星とセーブルがデュエルバトルフィールドシステムを挟んで向かい合って立つ。
MC:「予選最終バトルを戦うデュエリストは、謎に包まれたダーク・ヘルケイターのカードを操るセーブル・シックと、救世主・不動遊星の息子、不動一星だ!」
MCが両選手の名前を叫び、会場が盛り上がる。
2人の手には、ターミナルペットが持たれている。
会場の高い位置から、ノルマンディーカンパニーの社長オズボーンと、秘書のクラークが眺めていた。
オズボーン:『高額な額を支払って、お前はこの大会に出ているんだ。期待に応えてくれよ。人形さん』
オズボーンがニヤッと笑う。
秘書クラークの手には裏取引と書かれた証明書を持っていた。
その証明書にはセーブルの名が書いてあった。
一星:「一つ聞かせてほしい。ダーク・ヘルケイター。そのカードをどこで手に入れた?」
初対面のセーブルに単刀直入に気になることを聞いた。
セーブル:「なぜ、そんなことを気にする。俺が、このカードをどこで手に入れたかなんてどうでもいいだろう」
一星の問いにシラを切るセーブル。
一星:「あくまでしらを切るつもりということか。まあいい、わからなければ、勝って聞くまでだ」
セーブル:「お前にそれができるのか。この悪魔の鬼神ダーク・ヘルケイターに勝つことなんて、お前には遠い夢に過ぎない」
落ち着いた口調、そして不気味な眼差しで一星を見る。
MC:『さあ、予選最終試合の開始だ!』
『field system standby』
デュエルバトルフィールドシステムが起動する。
緊張している所為か、起動音がいつもより大きく聞こえた感じがした。
『Terminal PET setup』
一星がターミナルペットをセットする。
チラッとセーブルを見ると、セーブルは既にターミナルペットをフィールドシステムにセットしていた。
一星:『不気味な人だ』
心の中で一星は呟いた。
『Review Terminal PET』
両者のターミナルペットのセットを確認したフィールドシステム。
『yuseiParticle Spread』
遊星粒子が散布される。
『Stage ”City”』
フィールド内に高層ビルが立ち並ぶ町が展開される。
『Monster Call!』
両者のモンスターがフィールド内に召喚される。
一星はジャンク・ヴィクトリー。セーブルは、あのダーク・ヘルケイターをそれぞれ召喚した。
一星:『これに勝てば、決勝トーナメント進出!負けられない!』
『DuelBattle START!!!』
MC:「予選最終バトル!スタートだ!」
MCの合図でデュエルバトルがスタートし、ジャンク・ヴィクトリーが先制して攻撃を仕掛ける。
一星:『あのカードにどんな力があるのか、それを見極める!』
一星が心の中で呟く。
一星:「先手必勝!仕掛ける!サポートカード”シンクロ・ストライカー・ユニット”!”ハイソリッド・ユニゾン・ランチャー”!!」
いきなり2枚のサポートカードを使用する一星。
ジャンク・ヴィクトリーが両手にランチャー砲を手にする。
ボマー:「いきなり2枚同時のサポートカード発動!!?」
エマリー:「何をする気なの…!?」
鬼柳:「初手から勝負に出るつもりか…!」
一星が2枚同時にサポートカードを使用したことに驚くみんな。
会場も盛り上がる。
セーブル:「いきなり大技を出すつもりか…」
落ち着いた口調で、セーブルはそう言った。
一星:「ここまでしないと、そのカードは倒せないからな。行くぞ!ターゲット、ロックオン!!」
ジャンク・ヴィクトリーがダーク・ヘルケイターに標準を合わせる。
一星:「シンクロ・ストライカー、ハイソリッド・ユニゾン・ランチャー!ダブルシュゥゥート!!」
2砲からビームを放ち、ダーク・ヘルケイターに迫る。
そして、2つのビームはダーク・ヘルケイターの直撃したのか、周りに爆炎が舞う。
MC:「おおっと、ジャンク・ヴィクトリーの攻撃がダーク・ヘルケイターに直撃!いきなり勝負あったか!?」
ダーク・ヘルケイターの状況が確認できないMCは一星の勝利を予想してしまう。
アキ:「一星の勝ちなの…」
シェリー:「いえ、勝負の判定は下されていないわ」
シェリーの言う通りだった。
もし、倒したのであれば、その時点で「DuelBattle End」のコールが鳴り響くはず。
だが、それが鳴らないということは、まだやられていないということだ。
すると、突然、背後から攻撃が襲いかかり、ジャンク・ヴィクトリーに直撃する。
一星:「ジャンク・ヴィクトリー!?なんだ!」
ジャンク・ヴィクトリーの後ろを確認する一星。
そこには、目の前にいたはずの、ダーク・ヘルケイターがいた。
セーブル:「サポートカード”ウンオルドヌングガン”」
ダーク・ヘルケイターの手には、砲身が長いリボルバータイプの銃が2丁握られていた。
ダーク・ヘルケイターはウンオルドヌングガンを発砲し続け、ジャンク・ヴィクトリーのヒットポイントを減らす。
MC:『おおっと!ダーク・ヘルケイターは健在だ!』
愛:「い、いつの間に背後に回っていたの!?」
ミスティ:「確かに攻撃は当たっていたはず…!?」
カーリー:「一体、どんな手品を使ったの!見逃しちゃったんだから!」
会場のみんなも驚く。
セーブル:「混乱するがいいさ。どうせ、お前じゃ、このダーク・ヘルケイターに手も足も出ない」
その言葉を聞いた一星が、歯を立てる。
一体、何をしたのか…!
理解に苦しむ一星だった。
第6ED『Imagination > Reality《AiRI》』
次回予告
ナレーション:ダーク・ヘルケイターの力に圧倒される一星とジャンク・ヴィクトリー
そして、セーブルは新たな力を覚醒させ、ダーク・ヘルケイターを進化させるも、セーブル自身も性格が豹変し別人のようになってしまう。
危険を迫られたとき、遊星粒子を通じ、一星とジャンク・ヴィクトリーが同調する!?
一星:次回、遊戯王5DXAL「遊星粒子を通じて!同調する力!」
一星:「ジャンク・ヴィクトリー、今のお前は俺と一心同体だ!」