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第83話:『破壊せよ!血のデスリング』





いきなり、投降したマーガレットに驚くジムと本田。



研究室にあった椅子に座り込みジムに背を向ける。




マーガレットの目線には研究していた神秘の石版がある。



マーガレット:「ゼツラが敗れたようだ」
表情を緩めて、そう言った。


本田:「何…!」
一瞬、動揺した本田。

嘘をついているに決まっている。そう思った本田だが、ミッションウォッチに通信が入った。



獏良:『連絡。結衣ちゃんと杏子ちゃんが、ゼツラを撃破。繰り返します。結衣ちゃんと杏子ちゃんがゼツラを撃破』
通信の声は獏良だった。仲間全体に向けた通信のようだ。

しかし、結衣と杏子がゼツラを撃破…!


本田:「お、おい…!マジか!?」
まさか、女性がゼツラを倒したことに驚く本田。


マーガレット:「おいおい、女に負けるとは、カッコ悪いな」


ジムがマーガレットの後ろに立つ。


マーガレット:「ほら、早く殺せ。俺はもう戦わない」
目を瞑って言うマーガレット。


ジムの手に武器は持っていなかった。


マーガレットの横に立つジム。


ジム:「武器を持たないものに、武器を向ける趣味はないんだ」
神秘の石版を見上げながらジムはそう言った。




マーガレット:「フッ、優しい奴だ」


一応、念のため、逃げられないようにマーガレットの手足をロープで縛る本田。


ジムも本田も、ここにずっといるわけにはいかない。

何か連絡があったら、すぐにそこに向かう必要があった。








第5OP『D-tecnoLife《UVERworld》』








第83話:『破壊せよ!血のデスリング』








フレシャス財団の隊員たちが敵を捜しに道を走る。




フレシャス財団隊員A:「くそっ、さっきまでここにいたはずだったが、完全に見失ってしまったようだな」


数人のフレシャス財団の隊員はさっきまで戦っていたフロンティアの兵士たちを捜していた。




フレシャス財団隊員B:「別の場所を捜しに行こう。ここにいたって意味がない」


フレシャス財団隊員A:「そうだな」
兵士たちは、この辺に敵がいないことを確認し、別の場所へと向かった。




すると、その途中、ゾッとする嫌な空気を感じた。



フレシャス財団隊員C:「なんだ…!今のは!」


フレシャス財団隊員B:「さっきと同じ感覚だな…!はっ!」
兵士たちは、後ろに何かいることに気付き、パッと振り向いた。


そこには、知っている顔の人物が立っていた。



フレシャス財団隊員A:「何だ、ボスじゃないですか。こんなところで何しているんですか?」
自分たちのボスの顔を忘れるはずがない。


孫に近づく隊員たち。



すると、そのとき!



フレシャス財団隊員A:「ぎゃあああ!」
隊員の中でも先頭に立っていた一人が孫が持つ槍タイプのデュエルギアに腹を斬られた。


斬られた男は地面に倒れる。









フレシャス財団隊員B:「ボ、ボス!何を!?」
味方が斬られたことに、心臓が止まるほど驚いた隊員たち。




孫:「血を、血を寄こせ…」
槍タイプのデュエルギアはどす黒いオーラに纏われていた。



孫:「血を、よこせーーーー!」
顔の血管が浮かび上がっていた。



いきなり、大声で叫び出す孫に、隊員たちは発狂しかできなかった。







十数秒後……



孫の周りに、傷だらけの人間が沢山倒れていた。



孫:「これで、血を手に入れられる…」
不気味な笑みと共に、血のデスリングが赤く輝く。


すると、周りに飛び取る血をデスリングが吸収した。



孫:「だが、まだだ。まだ、足りぬ」
眼から赤い涙を流す。





それから、孫は、味方だけでなく、味方につけたセルビアの兵士たちも次々と斬り付けていった。








その頃、ゼツラに勝利した結衣達は…。




結衣:「痛たっ…」
頬を押さえる結衣。


藤原:「大丈夫かい?」


結衣:「うん、何とかね」
結衣は笑って答えた。


笑っていれば、少しで痛みを和らげられるからだ。


ヨハン:「しかし…」
ヨハンが杏子を見る。


杏子:「ん?どうしたの?」


ヨハン:「杏子さんって、強いんですね。あのゼツラを一瞬で」
倒れるゼツラを見てさっき見せられた杏子の力に改めて驚愕した。



杏子:「よしてよ。結衣が戦って、あの男の体力を削っていたから勝てたのよ。全部、結衣のおかげよ」
杏子が結衣の頭を撫でる。


結衣:「もうやめてよ、ママ。私、もう子供じゃないんだから」

杏子:「あら、そうだったわね。ごめん」
結衣の頭から手を離す杏子。


「あ」と結衣が言葉をこぼす。

本当はもっとなでなでしてほしかったと内心思っていたからだ。





ヨハン:「それよりも、早く孫を見つけねえとな」

藤原:「そうだね。立てるかい?」
藤原が結衣に聞く。


結衣:「うん、大丈夫。少し休んだから、もう平気よ」
結衣が立ち上がる。



杏子:「さっき、ツバキから地図が送られてきたわ。どうやら、哲平と一緒に、孫を追っているみたい」

獏良:「今、敵の親玉に一番近いのは、その2人みたいだね」

杏子:「とりあえず、これを辿っていきましょう」
ミッションウォッチから地図のホログラフィックを出した。


赤く光る場所が、さっきツバキが通った場所だ。

つまり、孫もここを通っていることになる。




結衣:「早く行きましょう。ツバキたちだけじゃ、危ないわ」

獏良:「そうだね」
そう言って、5人はこの場を後にし、ツバキたちを追う。









仲間や同盟組織の隊員たちを次々と斬り殺す孫。




孫:「まだだ。まだ足りない。真の力を手にするには、もっと力を!」
孫が叫ぶ。



すると、そこに…!



ツバキ:「ようやく見つけたぞ!孫!」


孫:「あぁ?」


ツバキと哲平の2人が孫の前に立つ。


ギロッとした目で孫は2人を見た。



孫:「またお前か。よほど死にたいようだな」
孫から解き放たれる邪悪な力が二人の身体に染み渡る。


哲平:「これが、血のデスリングの力なのか…!」
身体中に伝わる邪悪な力に一瞬腰が抜けそうなほど驚いた。



ツバキ:「さっきまでとは何かが違う…!」
ついさっき孫と戦っていたツバキだったが、今目の前にいる孫はさっきまでと何かが違うことに気付く。


どす黒い闇のオーラ。それが孫の身体を蝕んでいる。




フレシャス財団隊員:「うう…、ボス…」
孫の足元に倒れるフレシャス財団の隊員が孫の足首を掴む。


孫:「なんだ?お前?まだ。俺に血をくれるのか?」
孫がそう言うと、足首を掴んで来た部下の背中を槍タイプのデュエルギアで思いっきり斬り付けた。



孫がやったことに驚きを隠せないツバキと哲平。



斬られた敵は、完全に気を失った。


ツバキ:「自分の味方を…!」


哲平:「血のデスリングに支配されているのか…!」
哲平がそういうと、孫が「違う!」と否定した。



孫:「俺は、このデスリングを完全に支配している!これは俺の意志だ!血のデスリングは血を欲している。血を寄こしてくれるなら誰だっていいんだよ!」


哲平:「こ、こいつ…」

ツバキ:「さっきまでと性格が違う。意識はあるようだけど、徐々にデスリングに精神を奪われている…!」
自分が気付いていないうちに、デスリングに支配されていく孫を見るツバキ。




孫が「うおおおおお」と雄叫びを上げる。


カラスが飛びまわる。




哲平:「これ以上は、手が付けられなくなる!そうなる前に!」


ツバキ:「デスリングを破壊する…そうですね?」


哲平:「ああ!」
聖刻龍-ウシルドラゴンの大剣タイプのデュエルギア”ウシルバスター”を手に取る哲平が、孫に向かって攻撃を仕掛ける。


その間に、ツバキは仲間たち全員に通信で呼びかける。




ツバキ:「こちら、ツバキ。敵のボス、孫を発見!」








ツバキの通信を受信する仲間たち。






明里、チャーリーサイド




ツバキ:『敵のボス、孫を発見!』

明里がツバキからの通信を聞いていた。



明里:「チャーリー」


チャーリー:「あぁ、俺たちもそこに行くぞ。マイハニー」

明里:「その呼び方、やめてよね!」
と、こんなときでもツッコミを入れる明里であった。





杏子サイド



杏子:「ツバキ、ツバキ!」
杏子がツバキに呼びかける。


ツバキ:『お母さん』


杏子:「あなた、無事なの?」
ツバキの安否を気にかける杏子。


ツバキは「うん」と無線の向こうで頷いた。






ツバキ:「でも、孫はデスリングに支配されかけられているみたい。回収は厳しいかもしれない」
ツバキが、目の前にいる孫を見て今の状況を説明する。




この通信は、全送信しているので、みんなにもツバキと杏子の会話は聞いていた。


ツバキ:「哲平さんと決めて、デスリングは破壊を優先することにしたよ」



哲平と孫のデュエルギアがぶつかり合い、哲平が押し飛ばされた。


哲平:「くっ」
ツバキの元まで飛ばされた哲平。


ツバキ:「哲平さん!」
哲平の肩を掴み、身体を起こすのを手伝った。


哲平:「デスリングの力の影響か、並みの人間の力じゃないな」
切れた唇を右手の甲で拭いた。


ツバキ:「来れる人は、急いで、転送した場所まで来て。流石に、2人じゃ厳しいかもしれない」
ツバキが応援を要請する。



孫:「消えろ!クズども!!」
孫が槍タイプのデュエルギアから黒い斬撃を放ち、ツバキと哲平に攻撃する。


ツバキは急いで通信を切り、2人は斬撃を躱す。






杏子:「ツバキ!ツバキ!」
いきなり通信が切れたことに戸惑う杏子。



ヨハン:「向こうは、戦闘に入っているみたいだな」

獏良:「急ごう」
杏子、獏良、ヨハン、藤原、結衣は、急いでツバキたちの元へ向かった。








ジムサイド



本田:「俺たちも急ぐか」

ジム:「そうだな」
本田とジムが、この研究室を出ようとする。


本田:「ぜってえ逃げるんじゃねえぞ!」
本田が拘束しているマーガレットに警告する。


マーガレット:「今更、逃げやしねえよ」
マーガレットは目を瞑って言った。もうやる気はないようだ。


2人は、この部屋を後にする。







その頃、ツバキの通信を聞いて、送られた座標の元へ向かうベクター、ドルべ、ミザエル、雑賀、氷室、トロン、等々力、闇川、六十郎たち。



氷室:「こっちだ」
氷室が廊下の角を曲がる。


すると、目の前にフレシャス財団の隊員たちが待ち受けていた。



フレシャス財団隊員:「いたぞ!」
敵に見つかってしまった。


氷室:「チッ、ここにもいたか!」

ベクター:「うるさい虫共だ。片付けてやるよ」
戦いを楽しむベクターが笑って言う。


ドルべ:「今は、応援に行くのが先決だ」

ミザエル:「ここで時間を潰している時間はない」


雑賀:「こっちだ」
雑賀が別ルートを見つけ、みんなをそちらに誘導した。







その頃、カイト、ハルト、フェイカー、一馬、ゴーシュ、Ⅴたちは…。



凌牙:「カイト」
凌牙、璃緒、Ⅳ組と合流した。


カイト:「凌牙」

Ⅴ:「3人共無事だったか」
Ⅴが3人の安否を確認した。

璃緒は「はい」と返事をした。



Ⅳ:「通信は聞いたな?」

ハルト:「うん、ボスを見つけたって」

フェイカー:「デスリングの回収は、困難のようだな」

一馬:「それほど、敵さんは強いということだ」

ゴーシュ:「急ごうぜ。ここでチンタラしている暇はねえ」
ゴーシュの後をみんながついて行く。







遊馬サイド



遊馬:「孫の奴、デスリングを操れると思っているのか」
遊馬の言葉に、みんなが疑問を抱く。


Ⅲ:「どういうことだい?それは?」


遊馬:「デスリングが人間に求めているものが何か知っているか?」


翔:「そんなの分かるわけないよ」
翔が当たり前のことを口にする。


遊馬:「デスリングが人間に求めているもの。それは、心の闇だ」

セイコ:「心の闇?」

遊馬:「心の闇が大きければ大きいほど、デスリングに精神が食われやすくなるんです。デスリングの力を操るにはある一定の心の闇を持ち、そして、闇を操る技術が必要なんです」
遊馬が自分が知っているデスリングの情報を話す。






遊馬:「ツバキの話しを聞けば、孫は精神をデスリングに支配されかけているって言っていた。つまり、血のデスリングの力欲しさに闇の心が大きくなり、精神が食われているんだ。正直、自身で止められるほどのものじゃない」


ラリー:「止める手段はないのか?」
ラリーが遊馬に聞く。


少し沈黙する遊馬。


アストラル:『遊馬、もう言うしかない』
アストラルが現れ、遊馬に話す。


アリト:「止める方法、一応あるんだな?」
遊馬に問うアリト。


遊馬はミッションウォッチを出す。


遊馬:「この近くにいる仲間たちの回線を教えてくれ」
これを言うってことはつまり、遊馬は、仲間たち全員に通信を送ろうとしていることになる。









孫と戦闘するツバキと哲平



哲平:「デスリングを破壊する!闇の斬撃!ダークウシルザンパー!!」
哲平の身体から闇属性の波動がウシルバスターに流れ、黒い斬撃を孫に向けて放った。


斬撃は、孫にヒットし風圧で後ろに吹き飛ばされる。


孫:「ぐわっ!」
背後の木が次々と倒れる。



飛ばされた孫を追うツバキと哲平。

周りに砂ぼこりが立つ。


孫は倒れた木を自力で退かし、立ち上がる。



孫:「こんなもので、俺に勝てると思うなよ!うおおお!」
血のデスリングが赤く輝き、孫の身体についた傷が見る見る治っていく。



哲平:「これが、血のデスリングの再生能力か…!」
回復していく孫の傷を見て、少し驚く哲平。


この時代、デュエルモンスターズの力で再生能力を持っているのは、そう珍しくないが、それとは比にならないほど、再生スピードが速かった。


孫:「人間の血を沢山吸い取ったんだ。吸い取れば吸い取るほど、再生能力のスピードは速い!そして、それは力へとなるのだ!」
槍タイプのデュエルギアを持ち、2人に接近する。


ツバキ:「くっ!」
ツバキは、シュヴァルツ・ロッドを持って前に出る。


哲平:「よせ!ツバキ!」

ツバキ:「僕が隙を作ります!その間に、哲平さんは攻撃してください!」
哲平の警告を無視し、前に出るツバキは、シュヴァルツ・ロッドで孫の槍タイプのデュエルギアを受け止める。


孫:「そんな貧弱な力で勝てると思うなよ」
孫はツバキを蹴り飛ばした。


ツバキ:「ぐはっ!」
ツバキは少しだけ吹き飛ばされ、地面に倒れた。


哲平:「ツバキ!くそっ!」
哲平は先ほどと同じ黒い斬撃ダークウシルザンパーを孫に向かって飛ばす。


孫:「同じ攻撃が何度も通用すると思ったか!」
孫が持つ槍タイプのデュエルギアが赤く輝き、槍から赤い斬撃を飛ばし、哲平の攻撃を打ち消した。


哲平:「くっ」


孫:「フッ…ん?」
攻撃を打ち消した孫は一瞬笑ったが、目線を変えると…。



ツバキ:「もらったよ!スクリュー・シュバルツ・マジック!!」
ネジのように螺旋状の形をした魔力をシュヴァルツ・ロッドから放ち、孫にヒットする。


孫:「ぐはっ!」
口から血を少し吐き出した孫。


孫:「無駄だ。どんな攻撃も、俺の力の前には無力そのものだ!」
血のデスリングの破壊に失敗。

ましてや、血のデスリングによって再び身体が再生する。


孫:「うわああ!」
しかし、さっきまでとは様子が違った。

哲平:「なんだ・・・!?」

ツバキ:「これって、再生しているの…!」
孫の身体中の血管が浮き出て、目から大量の赤い涙が出てきていた。



そして、孫の身体が血のデスリングから出た赤いオーラに包まれる。


オーラは半透明で、中にいる孫の様子は見えていた。




ツバキ:「一体、何が…」
孫の様子を見るツバキ。


すると、ミッションウォッチに通信が入った。仲間たち全員に送る通信回線のようだ。


だが、見たことがない回線だった。とりあえず、回線を開いてみた。




遊馬:『ツバキ、哲平、聞こえるか?』



哲平:「その声は…!」
声を聞いた哲平とツバキが驚く。









第5ED『言葉のいらない約束《sana》』







次回予告

ナレーション:血のデスリングの力によって、身体が豹変した孫。

それを止める手段を遊馬はツバキたちに伝える。

その話しを聞いたツバキは、最後の戦いに足を踏み入れるのであった!


ツバキ:次回、遊戯王5DXAL「VS孫 襲いかかる血界モンスターの能力!」


ツバキ:「お前に勝って、この戦いを終わらせる!」
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