『血をたぎらせよ…。人間…。全ては…。世界のために！』
孫の背後に現れた亡霊が、不気味な声で言い放つ。


亡霊は、その後、孫の身体に乗り移った。




孫：「ククク、血祭りの時間だ」
覚醒した血のデスリングは、孫の身体を徐々に蝕む。



時々、赤い涙を流す孫の目は、普通の目に見えたが、殺意が沢山湧いた目であった。




孫：「待っていろ。今、血を集めてやる。ははははははは」
孫が高笑いする。





その声は、セルビアの基地、全体に響いた。



不気味な笑い声。その笑い声にこもった殺意が、この周辺にいる者たちの心を動揺させた。









第5OP『D-tecnoLife《UVERworld》』







第８１話：『リベンジバトル！結衣VSゼツラ』






不気味な笑い声と殺意が、セルビア基地の周辺にいる皆に恐怖を与える。



遊馬サイド



崩壊した床を見下ろしていた遊馬が、何かを感じ取った。


いや、遊馬だけではなかった。


剣山：「な、何だドン…！今の感じは！」


ラリー：「なんていうんだろう。まるで、全身が握り占められているような…」


タカ：「それに、さっきの笑い声は…！」
感じ取った何かに怯える皆が、少しだけ恐怖感を与えていた。


Ⅲ：「遊馬、今のって…」
Ⅲの言葉に遊馬は何も答えなかった。しかし、その表情は、周りを心配させるような表情だった。


遊馬：『まさか、デスリングの力を最大限まで解放したのか…。そんなことすれば、リングに精神を喰われる…！人間じゃいられなくなるぞ』
冷汗を搔きながら、心の中で遊馬は呟いた。

最悪の事態だとわかったからだ。







その頃、崩壊した場所のすぐ側に居たフレシャス財団に寝返ったゼツラは…。


ゼツラ：「全壊がしなかったか」
ゼツラはそう言って、基地の高い階から飛び降りた。


ゼツラ：『デスリングの力を解放したな』







ヤバサイド


倒壊した基地を周辺で見ていたヤバたち。

しかし、そんなことはどうでもよかった。


一番、気になったのは、一瞬だけ感じ取った異様な殺意の方だった。



ヤバ：「この感じは、デスリングによるもの…！」


鮫島：「つまり、敵の親玉はデスリングの力を使ったということですか…？」
鮫島の質問に、ヤバは目を閉じて頷く。



羽蛾：「チッ、手遅れだったってわけか。僕たちの戦いが水の泡だな」

竜崎：「そうや、そうや！何のために、ワイらが、ここで戦ったんや！」
わけのわからない文句を言いながら地べたに座る羽蛾と竜崎に、春が頭をポンポンと叩いた。






羽蛾：「いてっ！」

竜崎：「何すんや！婆さん！！」
頭を押さえながら春を見る羽蛾と竜崎に対し、表情は笑っているものの、春はもの凄く怖い目で2人を見つめた。


春：「何ぶつぶつ文句言っているんだい？」
春の気迫に恐怖する2人。


トメ：「しかし、さっきの怖い感じはなんだったんだい？」

鮫島：「トメさん、さっきも言いましたが、デスリングの力ですよ」
さっき自分が、そう言ったにも関わらず、それを聞いていなかったトメであった。


カーリー：「でも、これってマズいんじゃない？」


深影：「デスリングの力が解放したってことは、孫は力を手にしたってことですよね」
あまり言いたくないことを口にする深影に矢薙が、「最悪じゃな」とため息をつきながら口にする。









ラフェールサイド


1人行動していたラフェール。

さっきの倒壊で瓦礫の下敷きになるが、幸いにもそんなに重い瓦礫が自分の上に降って来なかったため、何とか瓦礫を避けながら立ち上がることができた。


ラフェール：「まさか、こんな目に遭うとはな」
自分の不幸を自覚したかのような口調で話すラフェール。


ゾッ！

異様な殺気を感じ取ったラフェール。


ラフェール：「な、なんだ…。今のは…！」
その感じた殺気に少しだけ驚く。


すると、そこに…。


アメルダ：「ラフェール！」
アメルダとシェリー、万丈目、鉄男、徳之助がやってきた。



鉄男：「大丈夫ですか？」
ラフェールの体を見た鉄男がすぐに声をかけてきた。


ラフェール：「ああ、心配はいらん。かすり傷だ。それよりも、今の感覚は…」
ラフェールが言った言葉にシェリーたちが反応した。



シェリー：「やはり、あなたも感じたのね。奇妙な殺気を」

ラフェール：「それを言うってことは、お前たちも…？」
ラフェールの質問にシェリーや徳之助、万丈目が頷いた。



万丈目：「これは俺の推測だな。もしかしたら、今の感覚は…」

ラフェール：「デスリングの力によるもの。そうだな？」

万丈目：「あぁ」

ラフェール：「我々の任務は、デスリングの回収が優先だったが、もしデスリングの力が解放されたとなれば、回収は難しい」


徳之助：「ってことは破壊するしかないウラ」
SOA特務隊は回収を優先だったが、最悪デスリングの破壊を命じられている。今は後者の方を進めるしかないとラフェールたちは判断した。







ツバキサイド





孫を追跡するツバキと哲平。


追跡中に、基地の倒壊が始まり、目の前の床が崩れてしまった。


哲平：「こんなときに…！」


ツバキ：「別の道で行きましょう」
ツバキがそういうと、哲平は「ああ」と返事をし、別ルートの下の階まで降りようとする。



廊下を走っている途中に、戦いで倒した敵が瓦礫の下敷きになっているを見てしまったツバキたち。


敵とは言え、助けたいが、今は孫を追うのが優先だ。

なぜなら、ツバキも哲平も、他の皆と同じで感じていたからだ。


血のデスリングの力を…。


ツバキ：「さっきのがデスリングの力ですか？」

哲平：「おそらくな。デスリングは力を最大限、もしくはそれに近いほどの力を解放したとき、膨大な闇を放出すると言われている。そして、闇の力を手にするんだ」


ツバキ：「精神を喰うほどの危険な指輪と聞いていますが、そもそもデスリングは何故できたんですか？」
ツバキの質問に哲平は「さあな」と言う。

しかし、続けて話しを続けた。


哲平：「ただ、もしかすると、デスリングも世界にとって重要なものかもな。慎也が、ある人から聞いた言葉だ」

ツバキ：「ある人？」

哲平：「お前のオヤジさんだよ」
ツバキのオヤジ。つまり、武藤遊戯のことだ。


哲平：「俺は慎也ほど、四大神王者の人たちに接触はしていないが、あの人達もデスリングについてそれなり情報を持っているらしい。それに、慎也の話しによれば、リーダーの遊戯さんはデスリングの一つを持っているらしいからな」
哲平の言葉にツバキが少し驚く。






ツバキ：「お父さんが、デスリングを…！」

哲平：「あぁ、何のデスリングを持っているのかは聞いていないが、そうらしい」

人間の精神をも喰らうデスリングを父が持っているなんて知らなかったツバキ。


なぜ、そんなリングを父が持っているのか気になるが、哲平に聞いても首を横に振られただけだった。


哲平：「それよりも早く急ごう。デスリングの力を解放したとなれば、そう時間はない」
哲平が走るスピードを少し上げる。

哲平のスピードに合わせるツバキ。この戦いを終わらせるために、2人は孫の元へ急ぐ。






結衣サイド



結衣：「海馬さん！海馬さん！」
海馬とモクバ、オブライエンと行動を共にしていた結衣。


しかし、さっきの倒壊の所為で床は崩れ、そのおかげで海馬たちとはぐれてしまった。


結衣：「！」
さっきと同じだ。また、嫌な殺意を感じた。


結衣：「海馬さんたちなら大丈夫よね」
結衣は、この場を後にしようとする。




と言っても来た道は瓦礫によって塞がれ、進もうとする道は、崩れている。


残っている道は、上に上がる事。

幸いにも、瓦礫が積み上がっている影響で、それをうまく使えば、上には行けそうだった。


結衣：「考えても仕方ないわね」
結衣は上に上がろうとする。

だが、そのとき！


シュタッ！


誰かが上から降って来て、崩れる床のすぐそばに着地する。


ノースリーブで、右腕全体に入墨が彫られている男性。



結衣：「あなたは…！」

ゼツラ：「フッ、また会ったな」
余裕そうな顔でそう言った。結衣の前に現れたのは、ゼツラだった。



結衣：「あなたが、どうしてここに…！」
警戒する結衣。


ゼツラ：「俺がどこにいようが関係ないだろう」
怖い目で結衣を見るゼツラ。

だが、結衣にとって、これはチャンスだった。結衣は、一度、この男に敗北している。リベンジバトルができるからだ。



マイデッキを手に取る結衣。


ゼツラ：「リベンジ戦と言うわけか。あのとき、余計な邪魔が入ったせいで、お前を殺し損ねたからな」


結衣：「それにあなた、私にこう言ったわよね。首を洗って待っていろって」
ゼツラには、結衣に対してそう言った覚えがあった。

結衣：「ここで、逃げたら男じゃないわよ」

ゼツラ：「いいだろう。お前のリベンジ受けてやる。だが、俺には時間がない。やるなら」
そう言ったゼツラは剣タイプのデュエルギアを手に出す。

ゼツラ：「こっちで殺してやる」
怖い目で結衣を睨みつける。

少しだけ怯えてしまった結衣。この人とデュエル以外で戦うのはやばいと思った結衣だったが、手に出したデッキを仕舞い、自分もデュエルギアを出した。


フェンリル・マジシャン・ガールの短い杖タイプのデュエルギア”オプスキュリテ・ステッキ”を手に取る。


対するゼツラは、アギャーラ・プルーマの剣タイプデュエルギア、”ブレード・アギャーラン”を構える。



ゼツラ：「ここで、お前の命を奪ってやる」



結衣：「今度は絶対に負けないから！」
結衣にとってはリベンジ戦。2人の戦いが始まる。


結衣：「ゲリ・バァァストッ！！」
黒いオーラでできた狼の顔を敵に向けて飛ばす。

狼の顔をしたオーラは口を大きく開けて、ゼツラに迫る。


ゼツラ：「ウィン・トルード！！」
風の斬撃をブレード・アギャーランから飛ばした。

2人の攻撃はぶつかり、両方ともかき消された。






ゼツラが目視できないほど、白煙が立つ。


しかし、ゼツラは、辺りに立つ白煙の中からいきなり現れて、結衣に接近する。


そして、ブレード・アギャーランを振り下ろす。


結衣：「っ！」
結衣はオプスキュリテ・ステッキで受け止めるが、パワー負けして吹き飛ばされる。


結衣：「きゃあ！」
崩れかけている壁に背中を思いっきりぶつける。



ゼツラ：「どうした？俺にリベンジして勝つんじゃなかったのか？」
そう言いながら容赦ないゼツラは、結衣にブレード・アギャーランを振り下ろした。



結衣：「フレキ・ムーロ！」
黒いオーラでできた狼の顔が現れ、それが防壁となって、結衣をガードした。


その間に、オプスキュリテ・ステッキの先端をゼツラの腹に近づける。


ゼツラ：「！」
ゼツラは急いで下がった。

同時に、結衣がオプスキュリテ・ステッキから黒い魔力の球を放つ。

ゼツラに当てるつもりだったのだが、向こうの動きの方が早く当たることはなかった。


ゼツラ：「数時間前にあったときとは気合の入れ方が違うな」

結衣：「一度、負けてるからね。最初から100％の力をぶつけてるのよ！」
結衣がゼツラに向かって全力で走る。


結衣：「フェンリル・マジシャン・ガール。私の声に応えて…！」
オプスキュリテ・ステッキが輝く。

いや、魔力を溜めているのだ。


ゼツラ：「！」
ゼツラはブレード・アギャーランを構え、両者のデュエルギアがぶつかり合う。


ぶつかった衝撃で、周りに散乱する瓦礫たちが吹き飛ぶ。


ゼツラ：『キング・オブ・デュエリストの娘だけはあるな。デュエルの実力も大したものだが、こちらの技術もそれなりに身につけているということか。だが…』
ゼツラは足を踏ん張り、結衣を押し返す。

結衣：「ッ！」
ゼツラの押し返しに耐える結衣。


ゼツラ：「パワーは俺の方が上だ。こいつの、デュエルギアは魔力による近接中距離タイプの攻撃と自分の身を守る防御ぐらいしかできない。それに、他のデュエルギアは出せないようだしな。なら、魔力を出させなければ、いいだけだ」
腕に力を入れ、結衣を全力で押し出す。


結衣も全力でそれに耐えきっていた。









杏子サイド


杏子、獏良、ヨハン、藤原は、モクバからの通信を受けていた。


杏子：「え！結衣が！」


モクバ：『ゴメン。さっきの基地の崩壊に巻き込まれて、結衣とはぐれちまったんだ。俺たちも、巻き込まれて少しだけ下の階に来ちまったし』
少しだけ顔に傷を負ったモクバが杏子に申し訳なさそうに言う。


杏子：「モクバ君たちが悪いわけじゃないわ。それより、あなたたちがさっきまでいた場所教えてくれない」

モクバ：『あぁ、わかった』
そういって、モクバが自分とオブライエン、海馬、そして結衣がいた場所の座標を杏子のミッションウォッチに送信した。

その座標を見た杏子たち。


藤原：「うん？これって」

獏良：「僕たちがいる場所から近いね」
獏良の言葉にモクバが「何…！」と少し予想外だったかのような口調で言う。


ヨハン：「俺たちが、そこに行ってみよう。もしかしたら、あなたの娘がいるかもしれない」
ヨハンが言った言葉に、杏子が頷いた。


杏子：「そうね。ここには、私たちが行くわ。モクバ君たちはやるべきことをやって」
杏子がそう言うと、モクバは「わかった」と言って通信を切った。



獏良：「急ごう。結衣ちゃんを捜しに」

皆は結衣がいるかもしれない場所に向かう。


杏子：『結衣、無事でいて。それにツバキも…』
最愛の子供たちを心配する杏子。





その頃、ツバキは、哲平と一緒に孫を追っていたが、完全に見失ってしまった。



哲平：「完全に見失ってしまったな」


ツバキ：「えぇ、でも、まだかすかに感じます」

哲平：「デスリングの殺気って奴か？」
哲平の質問にツバキが頷く。






哲平：「確かに、さっきの奇妙な雄叫びと言い、何か嫌な気配は感じるな」


ツバキ：「この邪悪ともいえる殺気は、絶対に血のデスリングによるものです」


哲平：「なぜわかる？」
自分も感じている殺気がデスリングによるものだと言い張るツバキに対して、難しい質問を投げた。


ツバキ：「父に似ているんですかね」

哲平：「？」


ツバキ：「父は今まで、凶悪な敵と何回か戦ったことがあるって母から聞いています。そのとき父が感じた敵の気迫が僕や姉さんに染み付いているんです。だから、姉さんもわかるんですよ。目の前にいる敵が危ないとかが…」
遺伝によって伝わっているのか、父遊戯が感じた敵のプレッシャー、殺意と言ったものが自分や姉さんには染み付いている。

ダイシャラス王国での戦いのときも、王子であるバギーが危ないってことは最初に接触したときからわかっていた。






そして、結衣は、その危ないとわかっている敵と戦っているのであった。

全力でゼツラのパワーに耐えきる結衣。

少しずつ、後ろへ押されていく。

ゼツラ：「わかっただろ？この状態では魔力は出せない。つまり、攻撃ができない。もうお前の負けだ」
ゼツラがその鷲のような目で結衣を睨みつけながら言う。

絶体絶命の結衣？なのか、口がにやけていた。


ゼツラ：「？」

結衣：「わかってないのはあなたの方よ」
結衣が余裕があるような顔でゼツラに話しかける。


ゼツラ：「意味が分からないな。この状況で、そんな口が聞けるとは」

結衣：「本当のことを言ってまでよ。その理由の一つ。いつ私が負けましたって言った？そして、その理由二つ。この距離で攻撃できないなんて私一言も言ってないわよ」
二つの理由を語りゼツラを少しだけだが小ばか口調で言う。

だが、ゼツラにはさっきから気になっていたことがあった。それは、結衣が持っているオプスキュリテ・ステッキが輝いていることだ。


結衣：「私の攻撃準備は整っているのよ。あなたが、この距離にいる時点でね！」
結衣がそういうと、オプスキュリテ・ステッキの輝きがゼツラを一瞬で包み込み、その間に結衣は下がった。


ゼツラ：「！」
輝きと共に、ゼツラは水色のバリアの中に閉じ込められた。


ゼツラ：「こいつは…！」


結衣：「ディスティグレイション。これが、技名よ。あなたに、この技が耐えきれるかしら？」
ゼツラを包み込むバリアから狼が生成された。


遠吠えを上げる狼たち。その数は十数匹いた。


ゼツラ：「くっ」
初めて、顔色を変えたゼツラ。少し、あの女を侮っていたような顔をする。


結衣：「ディスティグレイション。つまり、自壊。受けなさい！」
バリアから生成された狼たちが一斉にゼツラに襲いかかる。


最初に襲いかかってきた狼をブレード・アギャーランを斬り倒すが、すぐさま背後から別の狼が腕にかみつき、更に別の方から連続で狼たちが襲いかかってきた。



ゼツラ：「ぐっ！」
咬まれた腕から血が出る。


結衣：「少し残酷な攻撃かもしれないけど、私もまだ死にたくないからね。早いとこ終わらせるよ！」
更に狼をバリアから生成し、ゼツラを襲う。


20匹を越えた狼に襲われるゼツラの姿は見えなかった。





結衣がゼツラと戦っている間に、フロンティアのみんなは、セルビアとフレシャス財団の勢力の半分以上を倒していた。

出てくる敵が減っているからだ。



孫を追う者も増えていた。





セルビア&フレシャス財団の戦いもついに終盤戦となる！！！！










第5ED『言葉のいらない約束《sana》』







次回予告

ナレーション：ゼツラを追い込む結衣。

しかし、ゼツラは更なる力を発揮し、結衣に襲いかかる！

両者譲ることのない戦闘の末、勝利を手にするのはどちらなのか！

ゼツラと結衣の戦闘に終止符が打たれる！

結衣：次回、遊戯王５ＤＸＡＬ「決着！結衣VSゼツラ」

結衣：「あなたの負けよ…。ゼツラ」




遊戯王５ＤＸＡＬ豆知識コーナー！！



結衣：「私が愛用する”フェンリル・マジシャン・ガール”の杖タイプデュエルギア”オプスキュリテ・ステッキ”は魔力の力を使えば、攻撃も防御もできる優れものよ。新必殺技”ディスティグレイション”は、英語で自壊を意味するから、私もあんまり好きじゃない攻撃なのよね」