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第80話:『裏切り者のマーガレット』








ツバキと分かれたあと、哲平と合流したという連絡を受け、ジムと本田は下の階に向かっていた。



ジム:「!」
ジムは壁を見た。


いろんなところに亀裂が入っている。

しかし、その亀裂は徐々に広がっていた。


本田:「どうした?」

ジム:「ここに入っている亀裂…。さっきMeたちが上に来た時よりも広がっている…」


本田:「おいおい、変なこと言うなよ。いくら、いろんなところでドンパチやっているとはいえ、そう簡単に崩れないだろう…」
少しビビる本田。

自分の目で、壁に入っている傷を見る。


ジム:「だといいんだが…」
ジムはボソッと不吉なことを言ったのであった。









第5OP『D-tecnoLife《UVERworld》』







第80話:『裏切り者のマーガレット』









蛍光灯がチカチカと点滅する廊下を一人で歩くセルビアの戦闘部隊隊長のゼツラ。

いや、セルビアのボスである月荒を殺した以上、その肩書きはもう昔の話しである。


今は、フレシャス財団に寝返った身である。



ビシッ!


壁に亀裂が入った。


ゼツラ:「!」
その亀裂が入った壁を丁度見ていたゼツラ。


ゼツラ:「……」
無言で、その亀裂を見ていた。









その頃、小鳥と合流した遊馬一行は、孫の元へと急いでいた。



アリト:「遊馬、お前、孫がどこにいるかわかっているのか?」

遊馬:「いや、知らねえ」
遊馬の答えに、アリトは「はあ!」と大きな声で叫んだ。


オボミ:『バカユウマ、バカユウマ!』
オボミが遊馬に悪口を言うときのセリフだ。

昔は、いつも名前に”バカ”だの”アホ”だのをつけて呼ぶ時が多かった。


舞:「じゃあ、今、どこに向かっているのよ」
舞が問いかける。


少しだけ沈黙が続いた。


遊馬:「分かるんだ」

小鳥:「え?」

遊馬:「分かるんだよ。あいつの居場所が何となく。いや、正確には、あいつが持っているデスリングの闇の力って言った方が正しいかもな」
舞の問いに遊馬が言った答えは、何となく理解できた。



レベッカ:「そういえば、四大神王者の中にはデスリングを持っている人がいるって言っていたわね。もしかして、その所為?」

遊馬:「かもしれないですね」
四大神王者の中にはデスリングを持つ者がいる。それは、小鳥と合流する前に遊馬から聞いたことだった。

それが誰なのかはあえて問わないが、身近にデスリングを持つ者がいれば、嫌でもリングの力を感じるであろう。


みんなはそう思った。




ビシッ


壁に亀裂が入った。


遊馬:「!」
少し小走りで進んでいた遊馬一行だったが、戦闘の遊馬がその場に止まった。



隼人:「どうしたんだな?」

剣山:「急ぐんじゃなかったザウルスか?」
いきなり止まった遊馬に言葉をぶつける剣山。




遊馬が近くの壁に触れる。







触れた壁にビシビシっと亀裂が入った。



遊馬:「これは、やばいかも…な」



小鳥:「え?」
遊馬が言った言葉に疑問を抱く小鳥たちだった。







一方で、外の戦闘では…。



徳山:「いけええ!」
隠密剣士部隊隊長の徳山が攻撃指示を出す。



敵は勿論、セルビアとフレシャス財団の者たちだった。


さっき出してきた戦車は大破し、今はバズーカ砲なんてものを持っていた。

そのほとんどが、デュエルギアとかではなく、本物のバズーカ砲だった。



フレシャス財団隊員A:「くらええ!」
バズーカ砲を発射し、隠密剣士部隊数人を襲った。


それに続くように、バズーカ砲を持つ敵が次々と打ってくる。


徳山:「こんなところで、連発して…!」
バズーカ砲の攻撃を躱す徳山。


流れ球はセルビアの基地の壁に当たる。


激しい戦闘の末にできた亀裂が大きくなる。



セルビア隊員A:「打ちまくれえ!」

セルビア隊員B:「殺せえ!!」
セルビアの隊員たちも攻撃を仕掛け続ける。



その攻撃は隠密剣士部隊に当たるものもあれば、当たらないものもある。


そして、当たらないものは基地の壁に当たったる、その周囲の地面に穴を開ける。





すると、そのとき!



ゴオオオオオオ!



いやな音が鳴り響く。



徳山:「何だ…!」
奇妙な物音に驚く徳山。







建物内




獏良:「じ、地震…!」
いきなりの揺れに驚く獏良たち。


杏子:「みんな、床を見て!」
杏子の言う通り、床を見る獏良、ヨハン、藤原は驚いた。

床に大きな亀裂が入ったからだ。


藤原:「ここは危険です!」

ヨハン:「早くここから離れるんだ!」
4人は、この場から急いで離れた。







凌牙サイド


凌牙たちがいる場所も床に亀裂が入っていた。


Ⅳ:「おいおい、こいつは!」
Ⅳが驚くのも束の間、亀裂は広がり、床が崩れていく。



璃緒:「きゃあ!」
崩れた床に落ちそうになる璃緒だが…。


凌牙:「璃緒!」
凌牙が璃緒の腕を掴んだ。

璃緒:「凌牙!」

Ⅳ:「急いで、引き上げるぞ!」
Ⅳも凌牙の腕を掴み、一緒に璃緒を引き上げた。





ジムサイド



ジム:「!」

本田:「お、おい!やばくないか!」
ジムと本田が立っている場所も床が崩れ始め、2人が落ちる。


本田:「うわあああ!」


ジム:「スカルキング!」
ジムは古生代化石騎士スカルキングを呼び出した。

スカルキングは下に落ちる本田とジムを抱き抱える。


本田:「た、助かった…」
ホッとする本田。


スカルキングはが崩れた床の瓦礫をうまく使って、下に降りる。







丁度、その頃、セルビアの基地の様子を外から見ていた者たちがいた。


それは司令ヤバと共にいるチャーリーや未来たちだった。



襲ってきたフレシャス財団の者たちは、全員倒した後だった。



団体のリーダーだった男は縄に縛られていた。



だが、縛られるリーダーを見る者は誰もいなかった。


みんな、セルビアの基地が倒壊する様子を見ていた。


双六:「なんてことじゃ…」

アーサー:「激しい戦闘に耐えきれなかったのか…!」
驚く双六たち。


明里は「お父さん、お母さん」と呟く。

あそこには潜入した父、一馬とレイドに連れ去られた母の未来がいる。2人のことが心配だったんだ。


その様子を見るチャーリーが、前を歩く。


ヤバ:「貴様、どこへ行く!」
チャーリーの行動を見ていたヤバが引き止める。


チャーリー:「ここにいる敵は倒したんだ。だったら、もうここにいる意味はない。俺は向こうに行くぜ」
向こうと言うのはセルビアの基地のことだった。


チャーリー:「あとは、自分自身で守るんだな」
チャーリーはそう言って、基地に向かって走る。


明里:「チャーリー…」
明里はボソッと名前を呼ぶ。

隣に来た春が「行っておいで」と言ってくれた。

その言葉に頷く明里はチャーリーを追う。







外から見れば、建物の端の方だけ崩れ続けるセルビアの基地。


その丁度、端に当たるところにドロワ、アンナ、Ⅲの3人がいた。



ドロワ:「手を離すな!」

Ⅲ:「はい!」
ドロワとⅢは落ちそうになるアンナの腕を掴んでいた。



アンナ:「は、早く引っ張ってくれ!」
怖がるアンナが暴れる。


Ⅲ:「暴れないで、アンナ!」
Ⅲが注意するが、その声はアンナに聞こえていない。


そして、ドロワとⅢがいる床にも亀裂が入る。


ドロワ:「ま、マズい!」
ドロワがそう言うが、時すでに遅し。3人共、下に落ちる。


アンナ:「うわああ!」

瓦礫と共に下に落ちるドロワ、アンナ、Ⅲ。




???:「スカイ・ペガサス!」
誰かの叫び声が聞こえたと同時に、羽のついた白い馬、いわゆる伝説の生き物ペガサスが、その背中にドロワたち乗せた。


”No.44白天馬スカイ・ペガサス”が3人を助けたのだ。


スカイ・ペガサスは宿主の元に3人を連れてきた。


小鳥:「ドロワさん、アンナ、Ⅲ!大丈夫!?」
さっき思わぬ事態で分かれてしまった小鳥が目の前にいたことに驚くドロワたち。


ドロワ:「小鳥!無事だったのか」

小鳥:「はい。レイドに連れ去られたみんなも遊馬のおかげで無事ですよ」
小鳥の視線の先には遊馬が立っていた。


Ⅲ:「遊馬…!君がどうしてここに!」


遊馬:「その反応、もう聞き飽きたぜ。それより、早くここから離れるぞ!」
遊馬の言う通り、この場を離れるみんな。






しばらくして、建物の崩壊は止んだが、この崩壊で基地の3割が崩れた。






その頃、スカルキングのおかげで無事に下まで降りられたジムと本田。

役目を終えたスカルキングは消えた。


ジム:「Thank you、スカルキング」
自分のモンスターにお礼を言うジム。



本田:「ここ何階だ?」
本田が周りを見て呟く。


ジム:「おそらく地下だろう」

本田:「どうしてわかるんだ?」
本田が質問すると、ジムの目線は上を向いていた。

本田も上を見る。

本田:「あぁ、外の光」
上を見てすぐに分かった。

外の光が上から差し込んでいる。

つまり、1階より下ということになる。


ブシュー!

機器類の音がいきなり聞こえた。


それに驚く2人は音がした方を見る。

ジムに至っては、剣タイプのデュエルギア”スカルキングスラッシャー”を出し、警戒する。



音がした方には扉があった。


幸いにも、さっきの倒壊で崩れてはおらず、瓦礫も周辺に落ちている感じで通れないわけではなかった。



ジムは、その扉をゆっくりと開ける。



中から照明の光が、見えてくる。






中に入った2人。




部屋の中は明るく、いろんな機器類が陳列している。


周りを見る本田だったが、ジムだけは目の前だけを見ていた。


ジム:「……」
少しだけ驚くジム。


なぜなら、目の前にあるのは、世界中に点在する謎の石版とも言われるもの、”神秘の石版”だったからだ。


ジム:「なぜ、これがここに…!」
神秘の石版とは、謎だらけで、石版に書かれている文字は全て古代文字のような形をしており、ほとんどの者が読めないでいる。



???:「こいつは珍客だ」
部屋の中に響く男性の声。


その声の主が2人の前に現れた。



本田:「誰だ?お前?」

マーガレット:「セルビア所属、マーガレット・ジムラだ」
白衣を着た茶髪の男性が名前を名乗った。


ジム:「セルビアの?」

マーガレット:「と言っても、今の俺は、もうフレシャス財団の一員になるんだろうがな」

ジム:「組織を裏切ったのか?」
ジムがマーガレットに問う。


マーガレット:「自分の意志でな。月荒元一、あの男の下じゃ、俺の研究の妨げになるからな」
ジムの問いに即答するマーガレット。



ジム:「そう簡単に組織を裏切るのか!ユーは!」
少しだけ激怒するジム。


マーガレット:「おいおい、マジになるなよ。お前には関係ないだろう」


ジム:「それに、なぜ、ここに神秘の石版がある」
ジムは一番気になった問いをぶつけた。


マーガレット:「あぁ、こいつな。こいつが俺の研究さ」

ジム:「何?」

マーガレット:「俺の研究は、この石版についてだ。こいつがどんな成分でできているのか、どのような文字を書かれているのかをな。俺は昔から、こういったオカルト系が好きでね。つい、研究したくなる。ま、月荒の元ボスには、そんな研究するなって怒られてたけどな」
自分に対して怒ってくる月荒の顔を思い出すマーガレット。

思い出すたびに怒りが増して来る。



マーガレット:「好きなことさせてくれってんだよ。思い出すたびに腹が立ってくる」
頭を掻くマーガレットに対し、ジムは少しずつ前に出る。




ジム:「ユーは本当にフレシャス財団に寝返るつもりか?」
マーガレットに問いかける。


マーガレット:「どういう意味だ?」

ジム:「ユーから殺意が感じられない。戦う気迫が感じられないからだ」


マーガレット:「俺の人生は、今はこいつのたまにある。戦いよりも研究だからな。セルビアを裏切り、フレシャス財団に入ったのは、友の誘いがあったからだ」
マーガレットが言った言葉に、本田が「友?」一番気になった単語を口にする。


マーガレットの友。それは、大学時代からの腐れ縁、ゼツラ・ジ・クリスのことだった。

ジムたちにあえて名前は出さなかったが、マーガレットにとって、ゼツラは互いに信頼できる仲だった。



マーガレット:「セルビアとかフレシャス財団とか俺にとってはどうでもいいことだ。だが、俺の前に現れた以上、お前たちを見逃すわけにはいかない」
マーガレットは鞭タイプのデュエルギアを手元に出す。


本田:「俺たちとやる気だな」
本田もやる気全開だったが、ジムがそれを止める。


ジム:「ここは、ミーがやる。ユーは手出ししないでくれ」
そう言ってジムは前に出る。


本田は「お、おい…!」と戸惑ってしまうが、ジムはそんなことお構いなく行ってしまった。




マーガレット:「お前が相手か?」

ジム:「1on1だ。全力で行かせてもらう!」

マーガレット:「その言葉、後悔するなよ!」
鞭タイプのデュエルギアを振り回し、床に鞭の先が打たれる。





ジムはスカルキングスラッシャーを構える。


マーガレットは鞭をコントロールし、ジムに攻撃を仕掛ける。



ジム:「スカルスラッシュ・ヒゥロント!!」
スカルキングスラッシャーから地面を走る衝撃波を放つ。


衝撃波はマーガレットに段々近づいて行く。



マーガレット:「いい攻撃だが、無駄だ」
マーガレットは鞭をコントロールしながら振り回し、衝撃波に対して鞭を連続で打つ。

少しずつ衝撃波は弱くなり、最終的にマーガレットに届くことはなかった。




本田:「あの鞭で、ジムの攻撃を弱らせるとはすげえな」
マーガレットがやったことに驚く本田。



ジム:『少し手こずりそうだな』
ジムは、心の中で呟いた。








その頃、デスリングの力を操る孫は…。



孫:「まだ、宿主となる俺に逆らうか」
指にはめるデスリングを見て呟く孫。孫は、ツバキと戦っている中、血のデスリングを完全に物にしたと思っていたが、突然、胸が苦しくなり、戦闘から一度離脱したのだった。



『血を…よこせ』
また、あの声だ。しつこく頭の中に呼びかけてくる。


『血を…』


孫:「もういい!血はあとでやる!その代わり、俺に力を寄こせ!」
血のデスリングに呼びかける孫。もし周りに誰かいれば、こいつ何してんだ?って反応だ。


『血を…』
血のデスリングについているルビーから真っ赤な水分がポタポタと流れ出す。


『血を…』
続いて血のデスリングが赤く光る。


『血を…寄こせ!!!!』
大きな声が孫の頭に響いた。



孫:「うおおおおお!」
血のデスリングから出た赤い…いや、どす黒いとも言えるオーラが孫を包み込む。



身体中の血管が浮き出て、所々服が少しだけ敗れる。



眼から赤い涙を流す孫。苦しんでいるようにも見えるが、孫は笑っていた。



『血をたぎらせよ…。人間…。全ては…。世界のために!』
孫の背後に現れた亡霊が、不気味な声で言い放つ。


亡霊は、その後、孫の身体に乗り移った。




孫:「ククク、血祭りの時間だ」
覚醒した血のデスリングは、孫の身体を徐々に蝕む。



時々、赤い涙を流す孫の目は、普通の目に見えたが、殺意が沢山湧いた目であった。




孫:「待っていろ。今、血を集めてやる。ははははははは」
孫が高笑いする。





その声は、セルビアの基地、全体に響いた。



不気味な笑い声。その笑い声にこもった殺意が、この周辺にいる者たちの心を動揺させた。









第5ED『言葉のいらない約束《sana》』







次回予告

ナレーション:遂に、デスリングの力に乗り込まれてしまった孫。

力を手にした孫は、力を使うべく行動を開始する。

その頃、結衣の前に再びゼツラが現れる。

一度、ゼツラに敗北している結衣。ついに、リベンジの時!


結衣:次回、遊戯王5DXAL「リベンジバトル!結衣VSゼツラ」


結衣:「今度は絶対に負けないから!」
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