第69話:『罠の先にあるもの』
レイド:「油断大敵だよ、剣代ちゃん」
剣代:「何…?」
剣代がそういうと、足元がいきなり爆発した。
剣代:「うわああ!」
剣代は地面に倒れる。
剣代:「なんだ?」
セイコ:「きゃああああ!」
未来:「は、離しなさい!」
セイコと未来の声。
よく見ると、2人の背後に2体のモンスターがいた。
翔:「セイコさん!」
翔が近づこうとするが、前と後ろに別のモンスターが現れ、挟まれてしまう。
そして、他の者たちも別のモンスター軍団に囲まれてしまった。
レイド:「すぐ終わりだろうが、第2ラウンドの始まり、始まり!」
不気味な笑みを見せるレイド。
レイドが出したと思われるモンスターたちが、翔や剣山、風間達を襲う。
翔:「うわっ!」
風間:「がはっ!」
殴られ、蹴られ、力尽きる皆。
イェーガー:「ひええ!」
イェーガーは頭を掴まれ、拘束された。
剣代が立ち上がり、皆を助けようとするが、目の前に炎が燃え盛ったようなマスクを付けた赤い戦士が銃口を向けて立ちふさがる。
レイド:「俺が持っていた大いなる力のE・HERO。誰も、10枚しか持っていないなんて言ってないよね、剣代ちゃん」
レイドが笑って言う。
剣代:「レイド、貴様!」
剣代がレイドに向かおうとするが、炎が燃え盛ったようなマスクを付けた赤い戦士”大いなる力のE・HEROツァイト・フォイアー”が剣代の後頭部に銃口を当てる。
身動きが取れない剣代。
獅子の模ったマスクを付けた赤い戦士”大いなる力のE・HEROメラー・スインガ”と、白銀で狼のマスクを付け、鋭い爪を持った”大いなる力のE・HEROウォルフ・ゼィルヴェル”が翔を拘束する。
胸に隼のモチーフにしたマークを赤いスーツにつけ、ハヤブサのようなマスクを被った戦士”大いなる力のE・HEROルブルム・ファルコー”と、胸にライオンをモチーフにしたマークを黄色いスーツにつけ、ライオンのようなマスクを被った戦士”大いなる力のE・HEROライオン・ジョーヌ”が、隼人を拘束する。
黒と金のスーツを身につけた戦士”大いなる力のE・HEROキング・スヴァルトゥル”が手に持つロッドで剣山の首を軽く締める。
銀色のスーツを身に纏う”大いなる力のE・HEROエレクト・シルバー”が手に持つ特性のセイバーの刀身をレベッカの首に当てる。
白いスーツに右拳に電気が流れている”大いなる力のE・HEROベヤズブレイク”がキャットちゃんの髪を左手で引っ張る。
ナイフを手に持つ金色スーツの戦士”大いなる力のE・HEROゴールド・ヒンメル”と銀色スーツを身に纏う女戦士”大いなる力のE・HEROシルバー・ルフト”が舞の前後でナイフを構える。
緑のスーツに手裏剣マークのマスクを付けた”大いなる力のE・HEROシュリケンニンジャ”が右手に刀を持ち刀身を右京の前に構え、左手でアリトの首を軽く締める。
パトカーのサイレンのようなランプが耳元についた赤い戦士”大いなる力のE・HEROパトラール”が、2丁の銃の銃口をラリーとタカの後頭部に当てる。
黒い爪のような形が白衣に模られたスーツを身につける”大いなる力のE・HEROサフェードキラー”が羽ペンの形をした剣の先で風間の顎をくいっと少し上に持ち上げる。
魔法使いのようなマント身に付けた金色の戦士”大いなる力のE・HEROマジックスヴィエート”がランプの形をした銃を手に持ち、イェーガーの首を絞め、銃口をこめかみに当てる。
赤いスーツを身に纏い、額のライトを光らせる”大いなる力のE・HEROアドヴェンレッド”がセイコを拘束。
アドヴェンレッドに似ているがスーツが桃色の女戦士”大いなる力のE・HEROアドヴェンピンク”が未来を拘束。
銀色のスーツを身に纏い、手に持つ銃でオボミの動きを止める”大いなる力のE・HEROアドヴェンシルバー”。
合計17体もの大いなる力のE・HEROが、剣代たちの動きを止める。
剣代に銃口を向けているツァイト・フォイアーが銃で剣代の後頭部を殴り、地面に倒れさせる。
その姿を見たレイドが前を歩く。
剣代は仲間たちの姿を見る。
皆が身動きが取れない状態で人質になっていた。
レイド:「さあて、今回はここまでかな。撤収だ!」
レイドがそういうと、剣代を除き仲間たちは大いなる力のE・HEROに拘束され、連行される。
レイド:「あいつらの命を助けたかったら、セルビアに基地に来なよ、剣代ちゃん。待ってるから。それと、さっき剣代ちゃんたちが倒したHEROたちはあげるから」
剣代:「なん…だと」
レイド:「それじゃあね」
仲間たちを連れ去り、レイドは、この場を去る。
翔:「離してよ!」
隼人:「離すんだな!!」
舞:「ちょっと!どこ触ってんの!」
みんなが大声で言うが大いなる力のE・HEROは容赦なく、みんなを連行する。
剣代は少しずつ意識を失う。
第5OP『D-tecnoLife《UVERworld》』
第69話:『罠の先にあるもの』
???:「剣代…剣代…!」
剣代と大声でしゃべりかける女性の声が聞こえた。
明日香:「剣代!」
剣代は目を覚まし、目の前に母の姿があった。
自分は今、母の膝の上に顔があった。
剣代:「母…さん」
明日香:「剣代…よかった…本当に…」
剣代の頬を触る明日香。
剣代は少しずつ意識を取り戻していく。
同時に、今まで何があったのかを思い出した。
剣代:「はっ!みんなは!」
剣代が咄嗟に起き上がったとき、目の前にいたのは哲平やヨハンたちだった。
周りにも一緒に来た仲間たちがいた。
哲平:「俺たちが来た時には、お前しかいなかった」
剣代:「そ、そんな…」
梨香:「お兄ちゃん、これ」
梨香が剣代の前に出したのはレイドが置いて行った大いなる力のE・HERO10枚のカードだった。
哲平:「何があったんだ?」
哲平が剣代に聞く。
剣代は今までの出来事を漏らさず話した。
哲平:「そうか、じゃあ、みんなは…」
珠里:「パパのカードを持っていたなんて」
鮫島:「私たちも知らない、E・HEROがまだ存在していたとは…!」
学生時代の十代をよく知る鮫島でさえ、把握していないモンスターだったようだ。
剣代はレイドが残した10枚のカードを手に持っていたが、その手に力が入る。
剣代:「俺の所為で、みんなが…」
責任を感じる剣代。
そんな剣代を見た明日香も、元気をなくす。
哲平:「剣代、お前が悪いわけじゃ…」
哲平が剣代の横で腰を下ろす。
剣代:「いえ、俺がしっかりしていれば、翔さんも剣山さんたちも、連れていかれずに済んだんだ」
自分を責める剣代。
ツバキ:「剣代…」
クロノス:「シニョール剣代…、自分を責め過ぎなのノーね」
クロノスが剣代に声を掛ける。
クロノス:「誰も、シニョールを責めたりしないノーね」
チャーリー:「そうだ。誰にだって失敗はあるさ。なあ、明里」
明里:「あんたはいつも失敗してるでしょ」
チャーリー:「あれ、そうだっけ?」
チャーリーに突っ込みを入れる明里。
明里:「でも、チャーリーの言う通りよ。人間は沢山失敗して、成長していくもの。完璧な人間なんていないわ」
一馬:「問題は、連れていかれてしまった未来たちの方だ」
春:「敵さんが、皆に手を出さなければいいが…」
城之内:「早く目的地の場所に行こうぜ!舞たちはそこにいるんだろう!」
城之内が右拳を左掌にぶつけて言う。
ハラルド:「クズクズしていると手遅れになるかもしれない」
Ⅴ:「そうなる前に、皆を助けなくては」
さっきよりもやる気を出すみんな。
すると。
哲平:「待ってくれ、みんな」
哲平が口を開く。
哲平:「やる気を出すとこ悪いが、途中から合流する十天老士のヤバ・レイ氏が間もなく到着する。まずは、司令となるヤバ氏に状況を説明して、今後の作戦を立てる。まずは、車まで戻るぞ」
今回の作戦の司令となる十天老士のヤバ・レイ。その方が間もなく到着するとの連絡を受けていた哲平が、皆に車に戻るように指示を出す。
その頃、セルビアの基地では…
レイド:「さあ、入ってもらおうか」
連れ去った舞や翔たちを独房に誘導する。
対抗できないみんなは、言われるがままに独房に入った。
特に手錠などはされていないので、手足の自由は効く。
しかし、デュエリストの武器でもあり魂でもあるデッキと、フロンティアの隊員なら持っているミッションウォッチを没収され、反撃は困難だった。
みんなが独房に入ったことを確認し、扉を閉めるレイド。
鍵を閉め、門番に鍵を渡す。
そして、みんなから没収したデッキやミッションウォッチを近くのテーブルに置く。
レイド:「そんじゃ、俺は旦那に報告してくるから、後よろしくね」
レイドが後のことは門番たちに任せ、この場を去ろうとする。
翔:「ちょっと待って」
翔がレイドに声を掛ける。
翔:「どうして、殺さないの?」
翔がレイドに問いかける。
レイド:「フッ、それじゃあつまんないっしょ。ゲームが」
剣山:「ゲーム…?」
レイド:「戦いって言うのはゲームそのものさ。デュエルモンスターズと同じだよ」
独房の檻に顔を近づける。
未来:「あなたは、戦争をゲームとしか見ていないの?」
レイド:「当たり前っしょ。今回は、剣代ちゃんが、ここまで来て、お前らを助けてゲームクリア。ま、ここまで来るのに大変だろうけどな」
レイドが大いなる力のE・HEROのカード数枚を手にして言う。
隼人:「十代のカード…」
レイド:「ほしいよな。遊城十代のカード。何たって”英雄の神”なんて言われた男のカードなんだ。売ったら、相当な値打ちだからな」
剣山:「それはアニキのカードのものドン!返すザウルス!」
剣山が檻の間から手を伸ばし、レイドは捕まえようとするが、レイドは一歩後ろに下がり、躱した。
そして、剣山の画面にグーでパンチをお見舞いした。
翔:「剣山君!」
倒れた剣山を心配する翔。
レイド:「おっと、最初に手を出してきたから、つい手が」
レベッカ:「ちょっと、あんたいきなり!」
舞:「最低ね。あんた!」
レイド:「独房の中で言っても、怖くないねぇ」
レイドが、この部屋を出ようとする。
イェーガー:「皆さん、必ずここに来ます」
レイド:「ん?」
イェーガー:「そして、今度は必ずミッションを成功させます。必ずです」
レイド:「フッ、楽しみにしてるよ。そんじゃあ」
レイドが部屋を出る。
その頃、セルビアのボス月荒、フレシャス財団のボス孫、そして、刈間九十九という名でセルビアの基地に潜入した遊馬は3人で話していた。
デスリングのことで、話しが盛り上がる月荒と孫。
それを見る遊馬。
九十九:『本当にデスリングのことを研究しているんだな。目当ては、デスリングに眠る闇の力。そして、それを使って戦争を終結させるか…』
下唇を噛む遊馬。
九十九:『沢山の血を流すことが戦争の終結に繋がると本当に思っているのか?それじゃあ、国家政府の思うつぼじゃねえか』
心の中でそう呟く遊馬だった。
孫:「どうかしたか、刈間殿」
遊馬の様子がおかしいことに気付く孫。
九十九:「え?あ、いえ、何でもないです」
直ぐに誤魔化した遊馬。
すると、そこに。
レイド:「入るぜ、旦那」
レイドが入ってきた。
月荒:「誰だ?」
孫:「私が雇っている者です。FBIに指名手配されている連続殺人犯レイド」
孫がレイドを紹介する。
月荒:「すごいお方を雇っているんですね」
月荒が少し汗を流して驚く。
レイドが椅子に座る。
レイド:「はあ、疲れた。あ、そうだ。この基地に向かっているフロンティアの奴らに会ってきたぜ」
九十九:「!」
月荒:「大組織フロンティア。デスリングを奪いに行動を開始したか」
孫:「それで仕留めたのか?」
レイド:「仕留めようと思ったんだけど、簡単に仕留めちゃ楽しくねえから、数人こっちに連れてきたわ」
レイドがそういうと、近くに置いてあったリモコンを使って、特大のモニターの電源をつける。
付けた瞬間、モニターには、独房の様子が映し出された。
九十九:『!!?』
遊馬は驚いた。
そこには、実の母、未来や友達であるキャットちゃんや、アリト、中学時代にお世話になった教師、右京が映っていたからだ。
他のメンバーたちも、ダイシャラス王国で見た顔ばっかりだった。
風間やラリー、タカ、剣山が檻に向かって体当たりをして独房から出ようとしているのが、モニター越しでわかる。
月荒:「なぜ、殺さない?」
レイド:「これはゲームなんだ。これぐらいしなきゃゲームはつまらない。そうだろ?」
月荒:「こちらに向かっていたフロンティアの使者はあそこにいる奴らで全員か?」
レイド:「いや、他にも沢山いるさ。楽しいゲームがこれから始まるぜ」
孫:「はあ、好きにしろと言ったが、まさか、こう出るとはな」
月荒:「勝手に独房も使って、好き勝手な奴だ!」
月荒が立ち上がり、近くにある電話を取る。
月荒:「こちらに敵が攻めて来ようとしている。各自、戦闘準備に入れ!今すぐにだ!」
月荒がそういうと、電話を切った。
月荒:「奴らはデスリングを狙ってきている。あなたの部下にも手伝ってもらいますよ」
月荒が孫に言う。
孫:「いいでしょう。デスリングを奴らに渡すつもりはない。それは私も同じ気持ちです」
孫が立ち上がる。
同時にレイドも立ち上がった。
遊馬はモニターに映る未来たちを見る。
九十九:『母ちゃんたちがいるってことは、父ちゃんや姉ちゃんも、ここに向かってきているのか?』
遊馬が立ち上がろうする。
月荒:「刈間殿」
月荒が遊馬に声をかけてきた。
月荒:「あなたは、ここにいてください。勝手に動かれても困りますので」
月荒はそういうと、見張りを残して部屋を出る。
3人の見張りが部屋に残った。
九十九:『見張りが3人。下手に動けないか』
遊馬が椅子に腰かける。
すると…。
アストラル:『動かないのか?遊馬』
アストラルの声が頭の中に聞こえた。
遊馬:『この状況だ。変に動いて、母ちゃんたちに手を出されても困るしな』
アストラル:『どうするつもりだ?』
遊馬:『今、フロンティアの仲間たちが、ここに来ているみたいだし、様子を見て時が来たら動くさ』
遊馬はそう言って、特大のモニターを見る。
アストラル:『昔と違って、考えて動くようになった、君は』
遊馬:『俺だって成長しているんだぜ、アストラル』
アストラル:『そうだったな』
遊馬は、時計を見た。
そして、椅子に深く座り、じーっと待つことにした。
その頃、哲平達の元に、今回の任務の司令となるヤバ・レイが到着した。
車から降りたヤバ。
ツバキは息を飲んだ。
片目を無くしており、目つきの悪い細い目で、周りを見渡したからだ。
フロンティア上層部の一人とは言え、こうやって目の前に現れたのは初めてかもしれない。そう思ったツバキであった。
ヤバ:「状況を教えろ」
ヤバが哲平に聞く。
哲平は事のあらすじを全て話した。
ヤバ:「お前がいて、こんな様とはな」
哲平:「申し訳ございません」
ヤバ:「まあいい、状況は理解した。直ちに、任務を遂行する。大事なのはデスリング奪還の任務だ。連れ去られた奴らのことは後にしろ」
ヤバがそういうと、数名が激怒して前に出た。
凌牙:「連れていかれたみんなを放って置けって言うのか!?」
ハルト:「任務遂行と一緒に探すだけでもいいんじゃ」
ヤバ:「ダメだ。それでは、任務に支障が出る。1度失敗している任務だ。2度の失敗は許されない」
ヤバが言った言葉に、ツバキが口を開く。
ツバキ:「最初の任務失敗は僕にあります。任務は僕と哲平さんが遂行しますので、他のみんなはせめて仲間の救出を!」
ヤバ:「一度失敗しているボンクラを信じるほど、俺はバカじゃない」
ヤバがそういうと、ツバキは悔しい気持ちになった。
更に、息子がそう言われたことに母、杏子が前に出た。
杏子:「一度の失敗で、そこまで言う必要あるの!あなただって失敗する事あるでしょう?」
ヤバ:「俺は自分で手を汚すようなことはしないんでな。ここ最近は失敗なんてものはしていない。お前たち一緒にするな」
そんなことを言われ、周りのみんなが心の中で怒りを覚える。
ヤバ:「それよりも…」
ヤバが剣代を見る。
ヤバ:「拘束しろ」
ヤバがそういうと、ヤバが乗ってきた車の中から数名の隊員たちが剣代を拘束した。
剣代:「何済んだ!?」
???:「動くな。ヤバ司令の命令だ」
長い金髪で、背丈が長いジャケットを着た男が、剣代に向けて剣を突き出す。
明日香:「剣代!?」
珠里:「お兄ちゃん!?」
明日香たちが剣代に近づこうとするが、同じくヤバと一緒に来た男たちに剣を突き出され、剣代に近づけさせないようする。
ヤバ:「よくやった。徳山」
ヤバが剣代を拘束した男の名を呼ぶ。
徳山:「ご命令ですので」
徳山長秀。フロンティア隠密剣士部隊の隊長だ。
哲平:「何をするつもりです、司令。それになぜ、隠密剣士部隊を!?」
隠密剣士部隊とは、フロンティアにある部隊の一つであり、剣の使い手が集まる部隊で接近戦を得意とする部隊だ。
ヤバ:「敵はセルビアとフレシャス財団の両軍を相手にするからな。俺の権限により、今回の任務に、隠密剣士部隊を参入した。それと…」
剣代を見るヤバ。
ヤバ:「この男は、任務から外す」
剣代:「!!?」
ヤバ:「こいつの所為で戦力が低下した。そんな奴がいては、足手まといだ」
ヤバが剣代に近づく。
すると、頭をバシッと叩いた。
明日香:「ちょっと!息子になんてことをするの!」
明日香がヤバに近づいて怒る。
ヤバ:「英雄の神の息子とはいえ、強さはただの人間か。父親みたいな素晴らしい力がないとは、つまらんな男だ」
明日香:「なんですって…」
明日香の怒りが爆発しそうになる。
ジュンコ:「も、ももえ、ちょっとまずいんじゃない?」
ももえ:「明日香さんを怒らせたら…」
吹雪:「明日香、その辺に」
吹雪が明日香の肩を掴む。
明日香:「兄さんは黙ってて」
怒りを表情に出す明日香の顔を見て、吹雪の後ろにいた恵美と亜美が驚く。
恵美:『明日香さん、怒らせると手付けられないのよね』
亜美:『誰かが、この場を収めないと』
本音を心の中で漏らす2人。
明日香:「十代だって、ただの人間だったわよ」
ヤバ:「奴は精霊と融合し、常人ではない力を手にした男。それをただの人間だとどう捉える?奴は、正真正銘の、化け物だ」
ヤバが言った”化け物”と言う言葉に、明日香の怒りは頂点を超えた。
明日香がヤバに怒りを浴びさせようとしたとき。
哲平:「その辺でいいでしょう。我々は、任務中。これ以上、話しを長くすれば任務に支障が出るのでは?」
哲平が明日香の前に現れ、2人の話しに割り込んだ。
ヤバ:「それもそうだな。任務の編成などは移動中に伝える。天上院剣代は、俺が乗ってきた車両に乗せて拘束させたもらうぞ」
哲平:「はい」
哲平が返事をすると、明日香の方を振り向いた。
明日香の手は震えていた。
哲平:「気持ちはわかるが、今は耐えてくれ」
哲平が明日香にそういった。
剣代は、徳山を先頭に隠密剣士部隊に連行された。
梨香:「お兄ちゃん」
連行される兄を見た梨香が悲しい表情をする。
レミ:「剣代さんならきっと大丈夫よ、梨香」
梨香:「…そうだね。レミ、ありがとう」
自分を元気づけさせてくれたレミに礼を言う梨香。
レイ:「十天老士って、本当に嫌な人ばかりなんだね」
マルタン:「宝井さんの時も酷かったですが、今回はもっとひどいですね」
レイとマルタンがヤバの後ろを姿を見てぶつぶつ呟く。
ツバキが剣代の連行される姿を見る。
哲平:「いくぞ、任務続行だ」
ツバキに声を掛ける哲平。
みんなが移動していた車に戻る。
数時間後、ヤバを司令にしたフロンティアの隊員たちは、セルビアの基地の近くまで来ていた。
目視できるほど、基地は目の前にある。
ヤバ:「では、作戦を伝える」
ヤバが今いる場所は、ヤバが乗ってきた車が引っ張っていたトレーラーの中。
中は、管制室みたいに機械類が沢山並んでいた。
その中には、ヤバの他にもヤバと一緒に来た1人の隊員。
それと、双六、アーサー、鮫島、影丸、トメさん、深影、カーリー、矢薙、マーサ、シュミット、明里、春がいた。
深影、カーリー、明里は椅子に座り、パソコン機器を触っていた。
そして、近くに剣代が座っていた。
任務から外されたことで、行動に宣言がついてしまったのだ。
ヤバ:「皆も知っている通り、任務はデスリングの奪還だ。しかし、デスリングがある場所は、今のところ分かっていない。よって、いくつかのチームに分かれ行動し、まずは敵からデスリングの所在を突き止めろ」
無線で既に所定の位置にいる皆に、任務の説明をするヤバ。
それを聞いている皆。
すると、徳山が無線でヤバに問いかける。
徳山:「司令。敵を捕え、デスリングの所在を聞き出した後はどうします?」
徳山の質問にヤバは…。
ヤバ:「敵に勝手な動きをされても面倒だ。敵は情報を聞き出し次第、殺せ」
ヤバの言葉に、徳山をはじめとする隠密剣士部隊以外の隊員たちが驚く。
藤原:「殺すって…」
ボマー:「そう簡単に…」
ヤバが言った言葉に動揺する皆。
ヤバ:「余計な情は捨てろ。これは戦争なのだ。情けは不要だ。でないと、自分が死ぬことになるぞ」
ヤバがそういうと、ヤバの近くにいた深影やカーリーたちがヤバを嫌そうな目で見る。
ヤバ:「合図があるまで、皆動くな」
ヤバがそういうと、トレーラーの扉が開いた。
中に入ってきたのはツバキだった。
ヤバ:「武藤ツバキ、貴様、所定の場所につけと命令したはずだ?」
ツバキ:「用が済んだら、戻ります。少しぐらい許してください」
ツバキはそう言って、剣代の前に立つ。
剣代:「ツバキ…」
ツバキ:「ゴメン、少し話がしたくて」
剣代:「なんだ?こんな俺に話しって?」
ツバキ:「確認なんだけど、剣代、失敗を恐れていないよね?」
剣代:「え?」
ツバキ:「いや、レイドの戦いの後から、いつもの君じゃないと思って」
剣代:「それは…」
剣代が下を向く。
すると、ツバキが剣代の背中に触れる。
ツバキ:「気持ちはわかるけど君らしくないよ」
剣代:「ツバキ…」
ツバキ:「失敗すれば、挽回すればいい。チャーリーや明里が似たようなこと言ってたでしょ」
確かに人間は失敗していく生物だ。だが、失敗をしていくからこそ、成長していくもの。
チャーリーと明里は、そんなことを言っていたことを剣代は忘れていない。
ツバキ:「話はそれだけ、僕は行くよ」
そう言って、ツバキはこの場を去ろうとする。
ツバキ:「あ、最後に言うの忘れてた」
ツバキは再び剣代の方に振り向いた。
ツバキ:「待ってるから」
剣代:「!」
ツバキはそう言い残し、トレーラーから出た。
剣代:「フッ、ツバキの奴…」
レイドの戦いの後、初めて笑った剣代であった。
十数分後
ヤバ:「時間だ。敵を出迎えるぞ!」
ヤバがそういうと、徳山率いる隠密剣士部隊が行動を開始する。
徳山:「隠密剣士部隊の名のもとに行くぞ!」
徳山の指示で、隠密剣士部隊が行動を開始する。
哲平:「SOA特務隊も動くぞ」
ミッションウォッチを通して、無線で仲間たちに指示を出す哲平。
フロンティアの隊員たちがセルビアの基地に向かって突入を開始した。
セルビア部下:「敵だー!敵だー!」
セルビアの部下が大声で叫び敵が来たことを知らせる。
望遠鏡で敵が何者かを確認する。
望遠鏡で見た徳山を見たセルビアの部下は…。
セルビア部下:「あれはフロンティア隠密剣士部隊隊長の徳山長秀!敵はフロンティアだー!」
敵がフロンティアだと知らせ、セルビアの基地が慌ただしくなる。
レイド:「おっ、来たな」
レイドが持っていたペットボトルを投げて立ち上がる。
ゼツラが部屋を出た。
すると、目の前にフレシャス財団のボス、孫が立っていた。
孫:「行く前に、俺の話しを聞いてはくれないか」
孫がゼツラに話しを持ちかけた。
その頃、月荒は基地の屋上にいた。
月荒:「デスリングは俺のものだ。絶対に渡しはしない!さあ、来い!フロンティア!」
月荒が大声でそう叫んだ。
ついに、3つの組織のぶつかり合いが始まる。
次回予告
ナレーション:遂に、デスリングを巡った戦いがセルビアの基地で始まった。
両者、一歩も引かずに戦いが繰り広げられる中、結衣の前に、ポールを暗殺し、御伽達を苦しめたゼツラが現れる!
ゼツラとデュエルする結衣だが、鷲の突風が結衣を襲う!
結衣:次回、遊戯王5DXAL「結衣VSゼツラ 鷲の強風」
結衣:「御伽さんたちの仇、撃たせてもらうわ!!」