Another(pkmn シゲル夢)
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その数日後の話である。
朝、子供がいるとは思えないほど美人なハナコさん(ツヅリ母の妹さん)の美味しいご飯をその息子であり、従弟である少年とツヅリは食べていた。
皿の上には、レストランオーナーお手製のきつね色に焦げたトースト、ベーコンエッグ。別皿の中にはフルーツヨーグルト。
流石料理人。見目も味も抜群なそれらに舌鼓を打ち、対面の少年も笑顔になった所でツヅリはさり気なく切り出す。嫌とは言わないだろうが念の為である。
「ね、サトシ。今日予定ある?無かったら私に付き合ってほしいんだけど」
「ん〜、ツヅリねーちゃんのポケモンとあそぶ予定ならあるけど…なんで?」
「ちょっと友達になってほしい子がいてね」
友達!?と目を輝かせた彼にポケモンと勘違いしているような気がしないわけでもないが大した理由じゃないのでツヅリは頷いた。
パンに塗られたジャムで口を汚している目の前の少年の名はサトシ。
ツヅリの従弟ではあるが、ツヅリは弟だと思っているし、本当の家族のように育ってきた少年である。
シゲルのことをオーキド博士に気に掛けると言ったがさて、何をすべきだろうと考えて思いついたのが友達を作ることだ。それも肩書も何も関係のない友達。
意外と子供というのはそういう自分にはないものには敏感で、更にそれがポケモン研究の権威の孫ともなれば尚更だろう。
周りから謂れもない誹謗中傷、それに類するものは想像している以上にストレスになる。いくらシゲルが礼儀正しい少年だとしてもそれは変わらない。いや、聡明そうな彼だからこそ余計にプレッシャーにもなっているかもしれない。
だから、お節介かもしれないが、肩書も何も気にせず、打算無しに対等の関係を築けるできる同年齢の誰かが必要だと思うのだ。
そこでツヅリが思ったのが目の前にいるサトシである。
天真爛漫で素直なサトシは身内の贔屓目無しに性格的に問題はない。
が、彼はマサラタウンで孤立している。
片親というのもあるが…大きな要因はポケモンとすぐ打ち解けることのできる特技にあった。子供は良くも悪くも自分とは違うものを【異質】と捉え、嫌煙する。ツヅリ達トレーナーや大人達からすれば誇るべき天性の才であるが、それが他の子どもたちに遠ざけられる要因となっていた。
ならば、2人を会わせてみようとツヅリは考えた。
シゲルにとってもサトシにとってもお互いに悪いことではないと思うのだ。突き詰めれば共に抱えている悩みは一緒。
自分自身を見てくれる誰か。それを2人は無意識的に求めている。
「会ってくれる?」
「うん!」
どんな奴なんだろうなぁ…!と目をキラキラさせて期待に胸をふくらませるサトシに若干の罪悪感を感じながらツヅリは「会ったときのお楽しみね」と口にした。
ツヅリはサトシと手を繋いで、オーキド研究所に続く道を歩いていた。
その間サトシは口が閉じることなく、今日の晩ご飯(まだお昼ご飯すらまだなのに)の話に始まり、まだ見ぬパートナー、夢の話、そしてツヅリの旅の話をせがんだり。
どうやらツヅリが思っている以上にサトシははしゃいでいて、まだ見ぬ友達が楽しみなんだなぁ、と弟に笑った。
そうしていると目的のオーキド研究所へ到着する。
庭に放されているポケモン達に手を振るサトシから本題の前にいなくならないよう手を握っていると先にシゲルが気付いて声を掛けてきた。
「ツヅリさん」
「あ、シゲル。おはよう」
「おはよう」
オーキド研究所の前には既にシゲルがスタンバっており、先日よりは自然な笑みを浮かべて待っていた。
シゲルと会ってからというものオーキド研究所に通い詰めていたことが功を奏したのか。
それともただ単に自分に構い倒すしつこいツヅリに根負けしたのか。
シゲルはツヅリをさん付けではあるが名前を呼ぶ程には打ち解けていた。
「ツヅリねーちゃん、誰?」
「朝言ったでしょ?サトシにあって欲しいって言った子。シゲルっていうの」
シゲルを見てマサラタウンにこんな子いたっけ?と首を傾げるサトシにそうツヅリは答える。
「シゲル、時間取ってくれてありがとう。この子、私の従弟で弟のサトシ。
良かったら仲良くしてくれる?」
「別に良いけど」
仕方ないな、とそっぽを向いて答えるシゲルにありがとうと言うと、今度は今朝言った友達が人間だったことに驚き、嬉しそうにするサトシへ尋ねた。
……結果は聞かなくても見えているが。
「サトシも友達になってくれない?」
「うん!
おれ、サトシ!よろしくな、シゲル!」
「よろしく、サトシ」
手を取り合い、まずまずのスタートを切った2人の少年の様子にツヅリは笑みを浮かべた。
「サトシ、シゲルはねオーキド博士のお孫さんなんだよ」
「ちょっと…」
「え!?すげぇな!!」
「……」
まさかのカミングアウトに白い目を向けたシゲルだったが
ーーツヅリからすればそういうことは後になればなるほど言いにくくなると分かっているし、サトシが心無いことは絶対に言わないと確信があった故の発言だーー
思いもよらないサトシの純粋すぎるその言葉に閉口した。
「きみは…」
「なに?」
「…いや、なんでもない」
モゴモゴと口ごもるシゲルにサトシは首を傾げたが元から考えることは苦手なサトシだ。サラッと受け流してツヅリに尋ねた。
「ふぅ〜ん?
ツヅリねーちゃん!シゲルと一緒にねーちゃんのポケモンとあそんで来てもいい?」
「良いよ。裏山の奥には入らないことと怪我に気を付けてね」
「うん!行こうぜ、シゲル!」
「あ、まってよ!」
「お昼ご飯までには研究所に帰ってきてね」
「は〜い!」
「サトシ!はやい!」
「ひんじゃくだな〜!」
「だれが貧弱だ!」
言い合いながら庭へと駆けていく少年2人を見送ってツヅリはう〜ん、と背伸びをして深呼吸をした。
「思ってた以上に上手く行ったな…」
サトシのカンストコミュ力のお陰か…なんて思いながらツヅリはオーキド研究所へ入っていくのであった。
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