Another(pkmn シゲル夢)
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ツヅリ 14歳
シゲル 5歳
出会いの話
ツヅリが故郷マサラタウンを旅立ち、リーグを終えると帰るを繰り返して4年。
その間に多くの仲間とライバルがツヅリにはでき、バトルに勝ち、負けそしてそれらと同じ数だけ別れも経験した。
4年の間に巡った地方はカントー・ジョウト・ホウエン、そして今回、北国シンオウ地方である。
そして今日はそのシンオウ地方スズラン大会が終わり、マサラタウンへ帰ってきたのだが…………帰ってきて早々ツヅリは目の前の光景に眉根を寄せ、その元凶達の後ろに立った。
「…何やってるの」
「ゲッ!ツヅリねーちゃん!」
「何でいるんだよ!?」
「ゲッて何?帰ってきたからいるの、悪い?」
自分達が悪い自覚があるらしいやんちゃ小僧2人はツヅリに見つかると途端あたふたと焦った。
マサラタウンの人口は少ないので必然的に子供も少なくなり、同い年の子供が揃えば奇跡だ。なので遊び相手になる子供達の年は多少前後することがままあるし、お互いを知らないマサラタウンの子供はいない。
加えてツヅリはオーキド研究所に離されている多くの地方のポケモンを持っているトレーナーだ。彼らや野生のポケモン達と遊ぶ事が日常の子供達が知らないわけがなかった。
一方のツヅリは、シンオウ地方のポケモンのデータを今か今かと待ちわびるオーキド研究所員から控えめで遠回しの催促が来る前に行かないとなぁと考えていると
1人の少年をマサラタウンガキ大将とその舎弟が寄って集っていたのである。
田舎によくある「や〜い余所者〜!」というやつだ。
マサラタウンに小さな頃からいるツヅリにその少年は見覚えがなかったので恐らくそういうことだろう。
マサラタウンの大人はよそから来た人にもとても寛容的であるが…子供は良くも悪くも純粋なのでそういう事態が起こりやすい。
「だってねーちゃん!コイツさぁ!」
ビシィとガキ大将に指を差された少年は何か物言いたげだったが顔をムッとさせるだけで何も言わず、だんまりを決め込む。
ツヅリが見たところ4、5歳位に見えるが随分と大人しいというか状況が分かってる子だなぁと感心しながら、ハイハイとガキ大将達を受け流して背を押す。
理由は分からないがお互いこれ以上一緒にいても喧嘩にしかならないだろう。
幸い、この二人は単純なお子様である。
「コウタ、ミキト…宿題は?したの?」
「ウッ!母ちゃんみたいなこと言うなよ!ツヅリねーちゃん!!」
「明日!する予定なの!!」
「してないんだ…へぇ~」
「な…なんだよ」
たじろぐ2人にやっぱりな、と思いながらわざとらしく「残念だな〜」と言う。
もう一度言う。このお子様達は単純なのだ。
「宿題やってるいい子にはシンオウで仲間になった子と遊んでもいいよって言おうと思ったのにな〜」
「えっ!?」
「新しいポケモン!?」
途端、目を輝かせ寄ってくる2人。
しかし。
「でもコウタとミキトは宿題やってない悪い子だしな〜」
あ〜あ、残念だな〜とわざとらしくまた言えばガキ大将コウタとその舎弟ミキトは顔を見合わせ。
「宿題!」
「やってきます!!」
「オーキド研究所ね」
「「わかった!!」」
そう言うや否や2人はムクホークから逃げるミミロルの如く走り去った。
いや、簡単な頭でとても助かる。
やれやれ、と肩をすくめるとツヅリは今まで黙り込み2人と対峙していた少年と同じ目線になるように屈み込む。
「ごめんね。あの子達根は悪い子じゃないんだけど」
「…、だいじょうぶです」
茶髪で快活そうに見えるその少年は目を彷徨わせるとコクリと頷く。
見たところ本当の弟の…家族同然に育った従弟と年も変わらないように見える。こんな年頃で敬語を使えるとは…。
ツヅリは軽く感動した。
「私はツヅリ。マサラタウンに住んでるトレーナーだよ、よろしくね」
「シゲルです」
「シゲルね。
最近引っ越してきたの?」
「はい。色々あっておじい様にお世話になることになって一週間くらいまえに…」
「へぇ…」
随分としっかりした子だなぁと返された返事に感想を持つ。
その上祖父を【おじい様】なんて。自分でも言わない。
シゲルの聡明さを少しだけ従弟に分けてやってほしい…と思ったが、あの子が大人しくなったらなったで心配になるのでやっぱりやめた。
ツヅリは、さてと言うと折っていた膝を伸ばして立ち上がる。
「私はオーキド研究所に行くけどシゲルはどうする?家送って行くよ」
「いえ…だいじょうぶです」
「ん?」
「ぼくの家…オーキド研究所なので」
「……え?」
ツヅリは衝撃の一言で固まった。
え?家ってなに???どういうこと???
つまり、こういうことらしい。
「なるほど…シゲルはオーキド博士のお孫さんですか」
「うむ」
「確かにちょっと似てますね」
「ほほ」
研究所内で放されているツヅリのポケモン達を楽しそうに見ているシゲルをその更に後ろからオーキド博士とツヅリは見ていた。
割と大型が多いツヅリの手持ちポケモンであるが全く臆することなく近付いていくシゲルにオーキド博士から脈々と受け継がれた血を見た。
驚いたことになんと、シゲルはオーキド博士の実の孫らしい。
あのガキンチョ2人が躍起になって突っかかっていたのはもしかするとその辺も関係しているかもしれないとそれを聞いてから思った。
いや、それにしても。
「オーキド博士って独身かと思ってました」
その一言に尽きる。
全く女の影のおの字も出ていないオーキド博士である。まさか奥さんがいて子供がいて孫がいるとは。
「娘夫婦揃ってトキワシティにおったんじゃがな、ちと色々あってシゲルをワシが引き取ることになったんじゃよ」
「…」
色々、の部分が気になるがそれはデリケートエリア。赤の他人が首を突っ込んでいいことではないし、すくなからずツヅリも覚えがあったので他人事のようには思えなかった。
「ツヅリ、マサラにいる間だけでもあの子を少し気に掛けてくれんか?」
「…断らないっていうか、断れないって分かっててそういうこと言うんだからズルいですね」
「大人はズルい生き物なんじゃよ」
「そーですか。別に構いませんけどね」
ニッコニコ笑うオーキド博士に息を吐いて了承する。
親元から離されて生活を送る。決してそれはツヅリにとって他人事ではないのだ。
「すまんが、頼んだ」
「はい。
さて、皆出てきて」
話も一旦終わり、オーキド研究所へ来た目的…シンオウで仲間になった5体をオーキド博士に紹介するため、彼らのボールを庭へと投げる。
「えん!」
「かぁ!」
「れんとら!」
「がぶ!」
「ふわ〜」
「ほぅ!
エンペルトにドンカラス、レントラー、ガブリアス、フワライドか」
因みにドンカラスはジョウト地方で仲間入りしていたヤミカラスが闇の石に触れ、ドンカラスに進化したのである。
「皆、長旅ご苦労様。ここがポケモンセンターで言ってたマサラタウン。私の故郷ね。
で、皆のことを触りたそうにしてるこのおじいさんがオーキド博士」
「初めまして、わしはオーキド。
マサラタウンでポケモンの研究をしておる。ツヅリのポケモンも預っておるので今日からここで暮らしてほしい」
シンオウ地方よりカントー地方は穏やかな気候だ。特にこのマサラタウンは一年を通して春を思わせる気候である。
突然の環境の変化で戸惑うことが長年の経験から予想できるのでオーキドは勿論、ツヅリも暫くはマサラタウンでゆっくりするつもりだ。
とは言ってもツヅリの仲間達は気の良いポケモン達も多く、一部戦闘狂がいるが世話焼き気質な子達が多数なのでそんなに心配はしていない。
唯一の心配といえば。
「がぶ?」
「(カイリュー絶対許さないマンのガブリアスとおちょくること大好きなカイリューが同じ区画に住むことがねぇ…)」
ガブリアスの特性・鮫肌を体当たりで体感するオーキド博士とそれに「何考えてるんだ?この人間?」みたいな顔をするガブリアス。
同じドラゴンタイプ同士仲良くしてほしいところであるがガブリアスの過去を考えるとどう考えても衝突が目に見えてわかる。
「荒れるねぇ…庭が」
「え〜ん?」
「エンペルト、もしものときはガブリアスのこと頼むよ」
「えんぺ!」
まかせとけ!と胸を張るエンペルトに出来れば任せるような事態にならないことを祈るばかりのツヅリである。
おまけ
その日もまた性懲りもなくカイリューとガブリアスの喧嘩は、2体を宥めるチルタリスを他所に勃発した。チルタリスの胃はキリキリと痛んだ。なぜ僕がこんな目に…。
数日前のツヅリの予想は的中で、シンオウ組が研究所の庭に仲間入りしてから彼ら2人は顔を合わせるなり方や喧嘩、片や面白可笑しくおちょくり会って間もなく開始のゴングがなったのである。
その日はウインディの龍の波動によってお仕置きを受けたのだが、そんなもので止まる2体では無かった。
それからほぼ毎日のように2体の喧嘩であり、傍迷惑な遊びが続いている。
「がぶりぃぃぃあす!!」
「りゅ〜!りゅ〜!!」
ドラゴンエリアに落ちる流星群にまたかよ〜と研究所の誰もが思ったが、誰もが我関せず。
何故なら下手に手を加えれば激化するし、なんなら既にその仲裁役という名の制裁役は決まっていたためである。
「えんぺー!!!!」
「がぶ…」「りゅ…」
「エンペルトは頑張っとるのぅ」
「真面目ですからね…」
エンペルトが放った特大級吹雪は研究所にいたオーキド博士とツヅリにも見えてそれを観察しながら2人はお茶を啜った。
トレーナーが優雅に茶をしていることなんて知らないおちょくりドラゴン カイリューとそれに腹を立てて大暴れしていたガブリアスはというと、吹雪というか豪雪にガタガタ震え、ぱたんと倒れた。
新入りのエンペルトではあるが、普段は真面目でとても優しいことは既にポケモン達に知れ渡っている。
普段怒らない奴ほど怖いのだ。エンペルトを怒らせないように気を付けよう。
研究所の庭にいるポケモン皆の心が一つになった瞬間だった。