Another(pkmn シゲル夢)
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トキワシティ トキワジム。
カントー版挑戦者を勝たせる気のないジムとまで言われているそのジムは基本的に暇である。
というのも協会では推奨するジムバッジルートなるものが存在するのだが、そのルートでトキワジムがカントーでは八つ目のポケモンジムに認定されていることが大きな要因である。協会が推奨するのはそれが順当なレベル順ということで推奨しているわけだ。
なので、次のポケモンリーグが半年どころか一年先の現在、トキワジムに挑戦するのはよっぽどの物好きだと言える。
因みにトキワジムに限らず、その他のジムでもそうだが挑戦者が来ない日は暇なことが多い。ジムリーダーが挑戦者からのバトルだけでなく書類仕事や町の治安維持も仕事のうちであるのは割と有名な話だ。
言葉にすれば難しいように聞こえるが溜め込むことがなければ然程机仕事も多くはなく、問題が起こらなければ治安維持業務もそう難しいことではない。
そんな今日も平和なトキワジムで一人のジムトレーナーが仰々しい扉からひょっこり執務室を覗き見て、主のいない部屋を見て首を傾げていると教育係のベテラントレーナーが通りかかったのでラッキーと目を光らせて尋ねた。
「先輩、ツヅリさんがどこにいるかわかります?」
「?さっき仕事するからって部屋にいるだろ?いないのか?」
「さっき見たときはいなかったんですよ〜」
先月トキワジムでジムトレーナーデビューした新人ちゃんに答えたのはベテラントレーナー。新人ちゃんの教育係でもある。
副業でそこそこ売れている小説家もしているツヅリは挑戦者を待っている時は小説のネタを書き留めたり、書いたりしている。
今日は後者で執務室にいるから何かあったら呼んでね、とベテラントレーナーは直々に言われたのだが…?
「なんかあったのか…?」
「あ、先輩!」
「どうした?」
「わざとらしく飾られていたピッピ人形がこんな物を…!」
確かに、執務室の前には一昔前に流行った特大ピッピ人形がデデーン!と鎮座して首からベテラントレーナー君へ。と自分に宛てられた手紙が提げられていた。
なんとなーく嫌な予感がして、視界に入れないようにしていたが新人がフリスビーを投げられたガーディ宜しく取ってしまったので嫌々ながらも読む。
「えー何何…?
…"やっぱりネタ探しにマサラまで行くので挑戦者を勝ち上がらせることはないように。万が一不測の事態以外で呼び戻すことがあった場合……お前の給料50%OFFだからな、肝に銘じておくように byツヅリ"」
「わぁ!先輩めっちゃ信頼されてるじゃないですか!スゴイ!」
「オイ、新人。何をどうしたらそう見えるんだ…」
いっそ清々しいほどのパワハララブレターにベテラントレーナーは項垂れるしかなかった。
場所は変わってマサラタウン。
マサラの名が表すように見渡す限りの真っ青な緑、道は舗装されず土が剥き出し、上を向けば青空がこれまた広大に広がる。
その自然の中では人のポケモンと野生のポケモンすらも共存している。
ここは始まりの町、近代とは程遠い穢れ無き白の町である。
真偽の程は定かではないが……かつてあの伝説のポケモン ミュウが住んでいた、とも言われている。
そんな自身の故郷へベテラントレーナーにジムを押し付けたツヅリは、足を運んでいた。
ツヅリがジムを預かるトキワシティもそれなりに田舎の部類ではあるが、マサラタウンはそれ以上に何もない。
あるのは緑に土にたまに人様の家時々人馴れした野生のポケモンである。
まぁ、何もないからこそ行き詰まったり、息抜きしたい時、気分転換したい時にマサラタウンほど適する場所はないとツヅリは思っている。
旅に出る前はそんなこと欠片も思っていなかった。
でも、旅に出て今まで当たり前だと思っていたことが、実は当たり前なんかじゃなくて、どれだけ自分が愛されていたとか守られていたとか、故郷が自分にとって如何に大切な場所なのかを思い知った。
地方によってまちまちだが、カントー地方では10歳になるとポケモントレーナーとして認められ、御三家と呼ばれるポケモンを1体貰い受け、旅立つことができる。
ツヅリもそうだったように10歳になった従弟である少年とその幼馴染は、フシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲの中から1体選びもうすぐ旅立つ。
その予定の日まではもう1週間を切っている。
どんなトレーナーになるか楽しみであるが、人としてもどんな成長をするのか楽しみだ。
それを後見人のハナコやオーキド博士に言ったところ、自分が旅立つ時もそんな気持ちだったと言われて嬉しいような恥ずかしいようなそんな気分である。
マサラタウンのど真ん中の土嚢を歩いていると前方にマサラタウンで一番大きな建物、風車のついた研究所ーーオーキド研究所が見えてきた。
マサラタウンで一番と言っても一軒家より少しばかり大きな研究所なので、研究所自体は他の地方の研究所と大差ない。が、この見渡す限りの圧倒的敷地面積で他には無い特徴である。
「あれ、ツヅリ姉さん…何やってるの、こんな所で。ジムは?」
振り返るとキョトンとした将来性抜群の茶髪の男の子がいた。
顔良し頭良し家柄良しの三拍子揃ったオーキド博士の孫であり、従弟の幼馴染シゲルである。
「リフレッシュしに来た」
「……またサボり?程々にしないと怒られるよ」
「大丈夫大丈夫」
「こんなに説得力のない大丈夫初めて聞いたよ」
「良い経験になって良かったね」
「……姉さん?」
「冗談だよ」
小さく笑うと弱冠10歳にしては哀愁漂う深い深いため息を溢される。
うーーん、手厳しい。
「若者がそんなため息ついてると老けるよ」
「誰がそうさせてるの…」
再度ハァァとシゲルは米神を抑えてため息をついた。
幼馴染といい目の前の人といいどうしてこの血縁は……。
頭が痛いシゲルであった。