箱庭の番人
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気を取り直して五条は今この場にいない保護者に話を聞こうと尋ねた。
「ね、千花の保護者?と話すことはできる?」
「?いいですよ。
いーちゃーん」
「呪術師が何の用や」
先程まで影もなかった呪霊がただ一つ、千花の呼び掛けに応えて少女の影から現れた。
狐の面をかぶった、隠す気もない呪力とそれを表す九つの尾と耳ーー九尾の狐。間違いない。五条が追っていた特級呪霊だ。
渋々出てきた彼女はぶっすーーと顔が隠れていても分かるほど不機嫌な声音で五条に問うた。
「先に言うとくけど隣町の阿呆みたく人間食べとらんからな、うちは」
「それは知ってる。原因不明の病院送りが多いことも。
で、何でこの子に憑いてる?何が狙いだ」
「他人に、それも呪術師に言うようなことはない」
「ざんねーん!呪術師は人を呪いから守ることが仕事なんだ」
「……」
「……」
両者の睨み合いが続き、相手が引く素振りも見せないためこれは実力行使になるか?と思っていたときである。
ぽやや〜ん、ほんわか〜した声が緊迫した場を溶かした。
「前世からの約束なんだって」
「はい?」
呪術というオカルトな世界に見を投じている五条さえも聞き慣れない言葉に、どこから調達したのか地面にお尻をつけないために拵えた大きめの石の上にしゃがんだ千花が五条を見上げて言った。
千花的には特に知られようと問題はないという認識なのだろう。
が、いろははそうじゃない。何が嬉しくて呪術師なんぞに旦那様との思い出を語らなきゃならんのか!!
いろはは悲鳴を上げた。
「ちょぉ!旦那様!」
「大丈夫だって、五条さん悪い人には見えないし…」
「そういう問題やないの!」
「そ?」
「そうやの!」
「で、前世って?」
「なんか前世のわたしといーちゃんが死んだ後も一緒にいようねって約束したから今も一緒にいるらしいです」
「〜〜っ!正確には前前前世やけどな!!」
「マジか」
「マジですねー」
予想よりもスケールがデカイ話にうーん、と五条は唸った。
何でも無いように千花は約束と語るが、これは大分まずい。
呪われているよりも何重にも質が悪いものだ。
最初は祓ったら終わりと考えていたが、呪霊はコミュニケーション普通に取れる知性高めの特級だから何するかわからないし、かと言って祓えば一般人の千花がどうなるか分からないし、しかも本人じゃない本人が呪霊と契約はしてるし。
う〜〜ん。
「千花って呪術師興味ない?」
「呪術師?」
「ちょ、待ちなや!」
「君には聞いてないんだけど」
「うちもあんたには言うてへんわ!」
「君たちの契約云々は置いといて、その力人の為に役立ててみない?」
「無視すんな!」
シャーッと猫のように威嚇する保護者(笑)は置いといて、五条は目を丸くする千花に問い掛けた。
「人の役…立てるんですか?わたしが?」
「できるよ。君たちの力なら」
上の方は煩いだろうが、とは言わずに五条は頷いた。そのあたりはどうとでもなる。
意思疎通ができる特級呪霊を難なく使役…ではないがそれに近い状態に置き、呪霊と魂を縛り合っても尚意識を万全に保っている精神力。放置するほうがどうかしている。
まぁ、高専としても見つけてしまった以上放ったらかしは出来ないので嫌でも来てもらうしかない。
が、この笑顔見る限り心配をするだけ無駄か。
「行きます!」
「エッ嘘やろ!!?」
「さぁて、旦那様は行くらしいからキリキリ頑張ってね」
「うるさい!!
な、旦那様考え直そう?な??」
「……いーちゃんは嫌なの?」
「ヴッ」
いろはを見上げ、千花は彼女のなけなしの良心に訴え掛けた。その人味はウルウルと潤んでいる。
我が旦那様ながらいろはのことを良く分かっている。こうすれば、はいとしか言えないことを…!!
いろはは基本的に千花の全肯定botと言っても過言ではない。
なのでなんやかんや言いつつも結局は折れるのである。
「〜っ!もう!!しょうがないお人やね!!いつもいつも!!」
「えへへ、いーちゃんありがとう」
それを目の前で見た五条は言った。
「いろは、君チョロすぎ」
「うるさい!あんたは黙っとれ!!」