しょうがないから
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「ここね…」
アイラは、今廃港となって使われていない元北の港に来ていた。
お話(物理)でチンピラ海賊から聞き出した内の一つである。
廃港というのは本当のようで昼間にも関わらず人の気配は殆どせず、あちらこちらにコンテナや廃船となった船が乱雑に捨てられている。まともに出港できる船はチンピラ海賊の塒船だけのようだ。
それにしても、嫌われ系海賊がいかにも好きそうな場所だと思いながらアイラは「で?」と言って振り返った。
「何でいるの」
「?」
「…なに?その何言ってるんだ?みたいな顔。こっちがしたいんだけど。
鋼で精神コーティングでもされてる?」
「いや〜」
「褒めてない」
呆れた視線の先にいるのは、照れたようにオレンジのテンガロンハットの上から頭を掻く先程別れたはずのエースと彼を必死に説得しようとしているデュースだ。
アイラが廃港を探索し、船の様子を覗っていた時に背後から人の気配がしたので勢い良く振り返ると何故かこの二人ーーご機嫌なエースと疲れた顔のデュースーーがいたのである。
何故ここが。というか何故ここにいるのか正直言って分からないアイラはエースに尋ねたのだがエースはと言うとヘラリと笑うばかり。
「エース、アイラもこう言ってんだ。帰ろう、な?」
「ほら、相棒もこう言ってるんだから」
「けどよ、おれ達友達だろ?なら助ける理由は十分だ」
「…本気で言ってる?」
いつ友達に。名前知ってたら友達認定ですか。
色々と言いたいことはあるのだが、まずアイラの口から出たのは正気か否かを問う言葉だった。
いくらチンピラ崩れの弱小海賊とは言え海賊は海賊。一歩間違えれば命を落とすことだって有り得る。
なのにこの青年はただお互い名前を知っている、友人だからという理由だけで共にーーアイラはまだ何も言っていないがーー乗り込むのだと言う。
酔狂にも程がある。どこまでお人好し…いや、ここまで来るとただの馬鹿である。
アイラは呆れて果て、思わず天を仰いだ。20年生きてきて本物の、真性の馬鹿に出会ったのは生まれて初めてだ。
仰いだアイラに何を勘違いしたのかエースは満点の笑みを浮かべる。
「おれもデュースも強ェから心配すんなって!」
「見ればわかる…」
エースの身体つきや歩き方、視線の送り方、師がいるのかどうかは分からないが戦い慣れしているのは見ていればわかった。
デュースもエース程では無いがそれなりにといったところだろうか。
「だってよ、デュース。良かったな」
ばしばし肩を叩いてくるエースに今度はデュースが肩を落とした。
賞金稼ぎに弱くないって言われてるのは嬉しいけど、そうじゃなくて。
「そうじゃねぇだろ…」
「大変ね、本当に…」
「?」
何も分かっていなさそうな船長に向かって成人組は深い深いため息をつくのだった。
「火拳!」
廃港に碇泊してある唯一の巨船。そこは今天候によるものではない、嵐に見舞われていた。
またの名を自業自得という。
エースが向かってくる三下共に拳を突き出し炎と共に撃ち出し、焼き払っていく。
アイラとデュースはたまにそれから逃れたラッキーボーイを打ち取る簡単な流れ作業担当だ。
また一人、撃ちもらした海賊を相棒を使うことなく床に沈めるとアイラは前方で暴れるエースを見て喜々を隠さずに同じ作業にあたっていたデュースに言った。
「能力者がいると楽出来て良いわ」
「概ね同感だが…能力者に驚かないんだな」
最初こそ少し驚いていたようだが、それ以外特に目立つアクションなく至って普通のアイラに逆にデュースが驚いたくらいだ。
4つの海では"偉大なる航路"なんて夢物語、増してや悪魔の実などただの伝説である。
実際、デュースもエースがメラメラの実の能力者にならなければ信じていなかっただろう。
だから、デュースからするとアイラの反応の方が不思議だった。
それ故の問だったが、逆に何言ってるのと言わんばかりの顔を返されて思わずたじろいでしまう。
「賞金稼ぎなんてやってるとたまに標的が能力者っているの。
それに"偉大なる航路"に能力者なんてその辺にゴロゴロいるんだから珍しくもないわよ」
「ゴロゴロ…」
とんでもない情報にデュースはオウムのように繰り返した。
新米とはいえ海賊なのだ。きっと時期が来れば"偉大なる航路"に入ることもあるだろう。
事前に"偉大なる航路"の情報が知れたのは嬉しいが、そういう情報はちょっといらなかったのかもしれない。
「海に嫌われるってデメリットを差し引いても能力者ってメリットの方が大きいから海軍やら海賊からすれば喉から手が出るほど欲しいのよ。手っ取り早く強くもなれるし」
「随分詳しいんだな」
「…わたし、生まれは"北の海"だけど、育ちは"偉大なる航路"みたいなものだから」
「ヘェ…」
態々入って行って出てきたのか、とは思うがデュースは言うことはしなかった。
こんな世の中だ。
特に海賊やら賞金稼ぎやらそういう自由業に括られる生業につく人間や、そうでなくても腹に一物抱えた人間はこの海には数多くいる。
デュースやあのエースもその一人だ。お互い父親に思うところがある人間同士である。
なので、アイラに何か人には言えない事情があってもおかしくはないし、詮索する気など毛頭なかった。
「アイラ!デュース!早く行こうぜ!」
「ちょっと、エース。そんな大きな声出したら」
「おい!いたぞ!!」
「げっ」
どう考えてもエースの大声で場所を特定した系チンピラの登場だ。
折角せっせか片付けたゴロツキお掃除はこれで振り出しである。
「お約束過ぎて笑いも起きないわ」
「ははは…まぁ、エースだからな」
「おい!アイラ!デュース!そろそろ話してないで手伝え!」
「さて、行くか」
「しょうがない…」
やれやれ、と重い腰を上げた二人はとりあえず、手身近なチンピラを蹴って殴りつけた。
アイラは、今廃港となって使われていない元北の港に来ていた。
お話(物理)でチンピラ海賊から聞き出した内の一つである。
廃港というのは本当のようで昼間にも関わらず人の気配は殆どせず、あちらこちらにコンテナや廃船となった船が乱雑に捨てられている。まともに出港できる船はチンピラ海賊の塒船だけのようだ。
それにしても、嫌われ系海賊がいかにも好きそうな場所だと思いながらアイラは「で?」と言って振り返った。
「何でいるの」
「?」
「…なに?その何言ってるんだ?みたいな顔。こっちがしたいんだけど。
鋼で精神コーティングでもされてる?」
「いや〜」
「褒めてない」
呆れた視線の先にいるのは、照れたようにオレンジのテンガロンハットの上から頭を掻く先程別れたはずのエースと彼を必死に説得しようとしているデュースだ。
アイラが廃港を探索し、船の様子を覗っていた時に背後から人の気配がしたので勢い良く振り返ると何故かこの二人ーーご機嫌なエースと疲れた顔のデュースーーがいたのである。
何故ここが。というか何故ここにいるのか正直言って分からないアイラはエースに尋ねたのだがエースはと言うとヘラリと笑うばかり。
「エース、アイラもこう言ってんだ。帰ろう、な?」
「ほら、相棒もこう言ってるんだから」
「けどよ、おれ達友達だろ?なら助ける理由は十分だ」
「…本気で言ってる?」
いつ友達に。名前知ってたら友達認定ですか。
色々と言いたいことはあるのだが、まずアイラの口から出たのは正気か否かを問う言葉だった。
いくらチンピラ崩れの弱小海賊とは言え海賊は海賊。一歩間違えれば命を落とすことだって有り得る。
なのにこの青年はただお互い名前を知っている、友人だからという理由だけで共にーーアイラはまだ何も言っていないがーー乗り込むのだと言う。
酔狂にも程がある。どこまでお人好し…いや、ここまで来るとただの馬鹿である。
アイラは呆れて果て、思わず天を仰いだ。20年生きてきて本物の、真性の馬鹿に出会ったのは生まれて初めてだ。
仰いだアイラに何を勘違いしたのかエースは満点の笑みを浮かべる。
「おれもデュースも強ェから心配すんなって!」
「見ればわかる…」
エースの身体つきや歩き方、視線の送り方、師がいるのかどうかは分からないが戦い慣れしているのは見ていればわかった。
デュースもエース程では無いがそれなりにといったところだろうか。
「だってよ、デュース。良かったな」
ばしばし肩を叩いてくるエースに今度はデュースが肩を落とした。
賞金稼ぎに弱くないって言われてるのは嬉しいけど、そうじゃなくて。
「そうじゃねぇだろ…」
「大変ね、本当に…」
「?」
何も分かっていなさそうな船長に向かって成人組は深い深いため息をつくのだった。
「火拳!」
廃港に碇泊してある唯一の巨船。そこは今天候によるものではない、嵐に見舞われていた。
またの名を自業自得という。
エースが向かってくる三下共に拳を突き出し炎と共に撃ち出し、焼き払っていく。
アイラとデュースはたまにそれから逃れたラッキーボーイを打ち取る簡単な流れ作業担当だ。
また一人、撃ちもらした海賊を相棒を使うことなく床に沈めるとアイラは前方で暴れるエースを見て喜々を隠さずに同じ作業にあたっていたデュースに言った。
「能力者がいると楽出来て良いわ」
「概ね同感だが…能力者に驚かないんだな」
最初こそ少し驚いていたようだが、それ以外特に目立つアクションなく至って普通のアイラに逆にデュースが驚いたくらいだ。
4つの海では"偉大なる航路"なんて夢物語、増してや悪魔の実などただの伝説である。
実際、デュースもエースがメラメラの実の能力者にならなければ信じていなかっただろう。
だから、デュースからするとアイラの反応の方が不思議だった。
それ故の問だったが、逆に何言ってるのと言わんばかりの顔を返されて思わずたじろいでしまう。
「賞金稼ぎなんてやってるとたまに標的が能力者っているの。
それに"偉大なる航路"に能力者なんてその辺にゴロゴロいるんだから珍しくもないわよ」
「ゴロゴロ…」
とんでもない情報にデュースはオウムのように繰り返した。
新米とはいえ海賊なのだ。きっと時期が来れば"偉大なる航路"に入ることもあるだろう。
事前に"偉大なる航路"の情報が知れたのは嬉しいが、そういう情報はちょっといらなかったのかもしれない。
「海に嫌われるってデメリットを差し引いても能力者ってメリットの方が大きいから海軍やら海賊からすれば喉から手が出るほど欲しいのよ。手っ取り早く強くもなれるし」
「随分詳しいんだな」
「…わたし、生まれは"北の海"だけど、育ちは"偉大なる航路"みたいなものだから」
「ヘェ…」
態々入って行って出てきたのか、とは思うがデュースは言うことはしなかった。
こんな世の中だ。
特に海賊やら賞金稼ぎやらそういう自由業に括られる生業につく人間や、そうでなくても腹に一物抱えた人間はこの海には数多くいる。
デュースやあのエースもその一人だ。お互い父親に思うところがある人間同士である。
なので、アイラに何か人には言えない事情があってもおかしくはないし、詮索する気など毛頭なかった。
「アイラ!デュース!早く行こうぜ!」
「ちょっと、エース。そんな大きな声出したら」
「おい!いたぞ!!」
「げっ」
どう考えてもエースの大声で場所を特定した系チンピラの登場だ。
折角せっせか片付けたゴロツキお掃除はこれで振り出しである。
「お約束過ぎて笑いも起きないわ」
「ははは…まぁ、エースだからな」
「おい!アイラ!デュース!そろそろ話してないで手伝え!」
「さて、行くか」
「しょうがない…」
やれやれ、と重い腰を上げた二人はとりあえず、手身近なチンピラを蹴って殴りつけた。