運命と出会う
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時間はお昼時を過ぎ、客足が落ち着いて来た頃。ごはん処Luckyでミゼルは友人の来店を今か今かと待ち侘びていた。
同年代で腕の立つ賞金稼ぎらしい同性の友人に遊びに行くと言われたのはつい先日のことである。
拠点らしい拠点を持たない彼女は連絡が雑で一週間と経たず連絡が来るときもあれば、酷いときには3ヶ月程連絡が来ないときがある。
このご時世に連絡がつかないことが何を意味するか知らない訳では無いだろうに。特にアンタは賞金稼ぎなんてしてるんだ!とぷりぷり怒れば、育ての親がこんな感じだったといつもの平静なトーンで返され肩を落としたことが何度あっただろう。
それはさておき、そのマイペースでドライな友人をしつこく誘いに誘ってようやくご来店を取り付けたのが二週間前。
「今レゴラ島に着いた」と連絡が入ったのが30分前である。
それからは平時はちょっとなよなよしてるけどとっても優しいカウンター担当の夫がソワソワするあたしを見てグラスを拭きながら苦笑いする程には落ち着いていない。
常連客にもいつも以上に落ち着きがないねぇなんて笑われる。楽しみなんだから仕方無いだろ!
そうしてまた、カランカランとドアベルが鳴り、ウェイターのあたしはテーブルを拭いていた手を止めて笑顔を作って入り口に振り返る。
「はいよ!いらっしゃ、」
「来ました」
賞金稼ぎらしく、左手に取手も鞘も何もかもが真っ白な刀を手にした彼女はなんてこと無いように普通に右手をあげてやって来た。
雪のような銀色のミディアムボブに群青色の猫目は半年前と変わっていないことに安心……ってそうじゃなかった。
「遅い!!!」
「それは客引き上手な商人に言ってほしい…」
フゥ、やれやれと言い訳をしながら肩を落とす友人にあたしの中のスイッチがオンに切り替わる。
港からこの店まで30分も掛からないのはこの島に住んでるあたしがよく知っている。そして、彼女がそんじょそこらの商人なんかよりも口達者なのもよーーく知っている。
「口応えしない!!」
「はいはい…」
「ハイは、」
「一回ね、了解了解」
「言葉変えりゃ良いってもんじゃないよ!!」
「ミゼルは相変わらずお母さんねぇ…」
「誰のせいだい!」
「わたしかな」
あたしの口撃なんてどこ吹く風。カウンターに座っても?と首を傾げてあたしが答える前にスタスタとカウンターへ。聞いた意味とは。
相変わらず肝が座っているというかなんというか。あたしも肝っ玉なんて言われはするがここまででは無い。多分。
いや、アイラの場合は関心がないことにはとことん興味を示さないだけか。……それはそれで腹立たしい。
ちょっと一言物申したいと口を開こうとすると、またもやドアベルが来客を告げるので一時小言はお預けだ。
公私の分別を弁えるのが出来る女なのだ。
ミゼルが来客対応に入ったことを横目にアイラはカウンター席の隅へと腰掛けた。
カウンターでは争いを好まない性格をそのままま写し取った優男、ミゼルの夫がグラスを片手に柔らかな笑みを浮かべている。
「アイラ、いらっしゃいませ。
それと久しぶり。よく来てくれたね」
「旦那さんも久しぶり。
聞いてたとおりいいお店ね」
そう言ってアイラは店内を見回す。
木製でモダンテイストのどこか懐かしい趣のあるごはん処だ。敷居も高過ぎず、低過ぎず客層も幅広い彼等らしいお店だった。
「ふふ、ありがとう。何にする?」
「…じゃあ、この旦那さんのオススメで」
メニューの1番上に書いてあるオムライスとサラダのセットのメニューそのままを指差せば彼は恥ずかしいなぁと頬を掻く。
これはオムライスをメニューに載せるとき、そのままでは味気がないからと彼がオムライス好きなのをいい事にそのまま命名したのだとミゼルから聞いている。ちなみにその下のウェイターのオススメは、ミゼルの好きなシーフードカレーである。
「かしこまりました。
…あんな事を言ってるけどミゼルは君が来てくれて喜んでること分かってあげてね」
「うん。知ってる」
相変わらずお互いがお互いを大好きな夫婦だなぁと早速チキンライスから取り掛かり始めた男を頬杖をついて眺める。
こういう夫婦を理想の夫婦というのだろう。……きっといい両親になるに違いない。声には出さずともアイラは思った。
「ちょっと!一体なんだい!アンタら!!」
アイラが二人の子供は幸せなんだろうなぁと思いながら、出されたお冷を口に含んだときだ。ミゼルの怒髪天を衝くような怒声が店内に響き、思わず振り返る。
ミゼルは短気ではあるがこうも当たり散らすような怒りをぶつける人間ではない。すると、如何にもな格好をした海賊二人組が何やらミゼルにいちゃもんをつけているようだった。
「なに?あれ」
「あぁ…彼等以前から来られてるんだけど、ちょっとタチが悪くて…」
「へぇ…」
困った顔をした旦那さんとアイラの視線の先にはスープに虫が入ってたんだがどうしてくれるとニヤニヤ笑いながら言い募る男達がいた。
あの様子を見るに間違いなく自作自演だがそれを言ってしまえばあの手の馬鹿共は、あの店の飯には虫が入っているだのなんだのと嘘八百の噂を流しかねない。
飲食店でその手の噂は致命的である。
何がどうあってミゼル達に突っ掛かっているかは知りはしないが、ここは友人の店である。
「アイラ?」
「わたしがなんとかするまでにオムライスよろしく」
アイラは普段なら絶対にしない喧騒の渦中へ首を突っ込みに、席を立つのだった。
同年代で腕の立つ賞金稼ぎらしい同性の友人に遊びに行くと言われたのはつい先日のことである。
拠点らしい拠点を持たない彼女は連絡が雑で一週間と経たず連絡が来るときもあれば、酷いときには3ヶ月程連絡が来ないときがある。
このご時世に連絡がつかないことが何を意味するか知らない訳では無いだろうに。特にアンタは賞金稼ぎなんてしてるんだ!とぷりぷり怒れば、育ての親がこんな感じだったといつもの平静なトーンで返され肩を落としたことが何度あっただろう。
それはさておき、そのマイペースでドライな友人をしつこく誘いに誘ってようやくご来店を取り付けたのが二週間前。
「今レゴラ島に着いた」と連絡が入ったのが30分前である。
それからは平時はちょっとなよなよしてるけどとっても優しいカウンター担当の夫がソワソワするあたしを見てグラスを拭きながら苦笑いする程には落ち着いていない。
常連客にもいつも以上に落ち着きがないねぇなんて笑われる。楽しみなんだから仕方無いだろ!
そうしてまた、カランカランとドアベルが鳴り、ウェイターのあたしはテーブルを拭いていた手を止めて笑顔を作って入り口に振り返る。
「はいよ!いらっしゃ、」
「来ました」
賞金稼ぎらしく、左手に取手も鞘も何もかもが真っ白な刀を手にした彼女はなんてこと無いように普通に右手をあげてやって来た。
雪のような銀色のミディアムボブに群青色の猫目は半年前と変わっていないことに安心……ってそうじゃなかった。
「遅い!!!」
「それは客引き上手な商人に言ってほしい…」
フゥ、やれやれと言い訳をしながら肩を落とす友人にあたしの中のスイッチがオンに切り替わる。
港からこの店まで30分も掛からないのはこの島に住んでるあたしがよく知っている。そして、彼女がそんじょそこらの商人なんかよりも口達者なのもよーーく知っている。
「口応えしない!!」
「はいはい…」
「ハイは、」
「一回ね、了解了解」
「言葉変えりゃ良いってもんじゃないよ!!」
「ミゼルは相変わらずお母さんねぇ…」
「誰のせいだい!」
「わたしかな」
あたしの口撃なんてどこ吹く風。カウンターに座っても?と首を傾げてあたしが答える前にスタスタとカウンターへ。聞いた意味とは。
相変わらず肝が座っているというかなんというか。あたしも肝っ玉なんて言われはするがここまででは無い。多分。
いや、アイラの場合は関心がないことにはとことん興味を示さないだけか。……それはそれで腹立たしい。
ちょっと一言物申したいと口を開こうとすると、またもやドアベルが来客を告げるので一時小言はお預けだ。
公私の分別を弁えるのが出来る女なのだ。
ミゼルが来客対応に入ったことを横目にアイラはカウンター席の隅へと腰掛けた。
カウンターでは争いを好まない性格をそのままま写し取った優男、ミゼルの夫がグラスを片手に柔らかな笑みを浮かべている。
「アイラ、いらっしゃいませ。
それと久しぶり。よく来てくれたね」
「旦那さんも久しぶり。
聞いてたとおりいいお店ね」
そう言ってアイラは店内を見回す。
木製でモダンテイストのどこか懐かしい趣のあるごはん処だ。敷居も高過ぎず、低過ぎず客層も幅広い彼等らしいお店だった。
「ふふ、ありがとう。何にする?」
「…じゃあ、この旦那さんのオススメで」
メニューの1番上に書いてあるオムライスとサラダのセットのメニューそのままを指差せば彼は恥ずかしいなぁと頬を掻く。
これはオムライスをメニューに載せるとき、そのままでは味気がないからと彼がオムライス好きなのをいい事にそのまま命名したのだとミゼルから聞いている。ちなみにその下のウェイターのオススメは、ミゼルの好きなシーフードカレーである。
「かしこまりました。
…あんな事を言ってるけどミゼルは君が来てくれて喜んでること分かってあげてね」
「うん。知ってる」
相変わらずお互いがお互いを大好きな夫婦だなぁと早速チキンライスから取り掛かり始めた男を頬杖をついて眺める。
こういう夫婦を理想の夫婦というのだろう。……きっといい両親になるに違いない。声には出さずともアイラは思った。
「ちょっと!一体なんだい!アンタら!!」
アイラが二人の子供は幸せなんだろうなぁと思いながら、出されたお冷を口に含んだときだ。ミゼルの怒髪天を衝くような怒声が店内に響き、思わず振り返る。
ミゼルは短気ではあるがこうも当たり散らすような怒りをぶつける人間ではない。すると、如何にもな格好をした海賊二人組が何やらミゼルにいちゃもんをつけているようだった。
「なに?あれ」
「あぁ…彼等以前から来られてるんだけど、ちょっとタチが悪くて…」
「へぇ…」
困った顔をした旦那さんとアイラの視線の先にはスープに虫が入ってたんだがどうしてくれるとニヤニヤ笑いながら言い募る男達がいた。
あの様子を見るに間違いなく自作自演だがそれを言ってしまえばあの手の馬鹿共は、あの店の飯には虫が入っているだのなんだのと嘘八百の噂を流しかねない。
飲食店でその手の噂は致命的である。
何がどうあってミゼル達に突っ掛かっているかは知りはしないが、ここは友人の店である。
「アイラ?」
「わたしがなんとかするまでにオムライスよろしく」
アイラは普段なら絶対にしない喧騒の渦中へ首を突っ込みに、席を立つのだった。