泡沫の色
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『わぁ!小エビちゃんを助けるフロイドって王子様みたい!』
『んー・・・王子様が人を蹴り飛ばしたり授業サボったりするかなぁ』
『だって、暴力も大好きな小エビちゃんを守る為にでしょ?やっぱり王子様だよ!』
柔軟でいてそれでいて素直なようで、少しズレている少女。ユウの話に興奮してくれているようで、少女の足の上には白い砂が被っている。砂を払ってあげようと手を伸ばすと海風が吹いて砂はハラハラと元にいた場所に帰っていく。風が少し冷たいように感じたユウは自分が羽織っていたカーディガンを少女にかけてやる。
『お姉さん、ありがとう!お話の続き聞かせてくれる?』
ユウは優しく頷くと少女から目の前の水平線へと視線を移した。
*****
『小エビちゃんも運命の王子様ってやつを信じる?』
ゴーストのお姫様の件が終わって暫く経ったある日の晩。パルクールの練習に飽きたとフロイドはオンボロ寮にいきなり押し掛け、監督生を強制的に学園内のプールまで連れてきた。
まさか泳げとは言われないだろうと、監督生は靴を脱ぎ裾を捲って足だけ浸かる。
人工的なプールは海と違い、白く泡立つさざ波も生き物の息吹も感じられない。代わりに感じられるのは監督生の隣に座るフロイドの体温。
冷たい夜の水に反して、監督生は顔周りだけ熱くなっていた。
『・・・何故、そんなことを聞くのですか?』
『うーん、あの時は色々面倒くせぇって思ったけど・・・小エビちゃんも女の子だしぃ・・・そういう人を待ってたりするのかなって』
後ろに手を付き、足を伸ばしたフロイドは随分と慣れた二本足を交互に上下させ水面を蹴る。フロイドの足から離れた水しぶきは、少し先の水面に映る月にぽたぽたと落ちて月の形を歪ませた。
『歌をハモってくれなくても、剣を持っていなくてもいい。授業をすっぽかしてでも助けに来てくれて、一緒に面白い事をしようって、小さな発見を共有しようとしてくれたり・・・・・・・・・眠れずに窓辺で1人で泣いていた私に気付いて、パルクールの練習に飽きたから!とかって理由付けて、私を連れ出してくれる・・・・・・そんな、フロイド先輩が好きです』
『・・・あれぇ?バレてた?』
『だって・・・フフっ、寮服じゃ・・・パルクール出来ないでしょう?』
あ・・・とフロイドは自分の格好を思い出す。契約者への”お願い”の仕事の帰りにふらりとオンボロ寮へ立ち寄ってみると、さすがに寝ているかと思いきや、月を見上げながら泣いている監督生の姿が月光に照らされていて、フロイドはいても立ってもいられず連れ出したのだ。
『俺・・・かっこ悪ぃし、だせぇー・・・』
フロイドはボスッとハットを監督生に被せて誤魔化す。監督生はハットを被り直し、珍しく赤面しているフロイドを見ようとするも、フロイドの大きな手で顔を押されてしまい監督生の視界はすぐに遮られてしまった。
『ってか、小エビちゃん・・・シレッと俺に告ってなかった?』
───フロイド先輩が好きです。
『あ、あれぇ?バレました?』
わざとらしく言ってみるが、照れ隠しであり監督生は空恥しく目線を逸らす。
そして、ずっと耐えていた目尻も気が緩み涙が頬を伝ってしまった。
『ちょっ・・・小エビちゃん!何でまた泣くの?あ、いつまでも水に浸かって冷たかった?!それとも、気づかないうちに怪我した?!』
『ち、違っっ・・・』
フロイドは監督生が泣くところを今夜初めて見た。
不良のような生徒に理不尽な対応をされても、勉強についていけなくても泣くことはなかった。どんなにフロイドが無茶苦茶に連れ回しても最後は笑ってくれる監督生。いつも目で追いかけいて、遠くても視界に入れば、驚かせてでも監督生の瞳に映りたかった。
『小エビちゃん・・・泣かないでよ。あっ、これあげる!!小エビちゃんに持ってて欲しい!!小エビちゃんを想って錬金術で混ぜてたら飛び出してきたんだけど、めちゃくちゃ綺麗だから!』
ポケットから無造作に取り出すと横に座る監督生に握らせる。しゃくりながら手の中に収まる固形物を見るとその美しさに涙は引っ込む。
『それ、”泡沫のサファイア”っていうんだって。イシダイ先生が教えてくれたぁ。普通のサファイアは透明度が高いほど高価らしいんだけど、それ・・・よぉく見てみて?』
『・・・・・・水が入ってるみたいに泡がぷくぷくしてる。吸い込まれそうな深い青色ですね・・・』
『そう!凄く珍しくて錬金術でしか作れない人工宝石。それでも配合が難しくって中々お目にかかれないぐらい珍しいんだって!俺天才じゃ~ん!』
『へぇ!!フロイド先輩は天才です!嬉しい・・・ありがとうございます!それにしても、ほんと綺麗・・・アズール先輩が欲しいって言いそうですね』
小エビちゃんにあげるから、アズールにはやらねぇ~とケタケタと笑うフロイド。
夜の暗闇の中のわずかな月の光でも分かるぐらい、泡沫のサファイアは輝く。
『その宝石の石言葉教えてあげるね。”儚げな慈愛”だってさ。・・・・・・小エビちゃんにピッタリじゃん』
『ど、どういうことですか?』
『小エビちゃん、元の世界に帰るんでしょ?』
『んー・・・王子様が人を蹴り飛ばしたり授業サボったりするかなぁ』
『だって、暴力も大好きな小エビちゃんを守る為にでしょ?やっぱり王子様だよ!』
柔軟でいてそれでいて素直なようで、少しズレている少女。ユウの話に興奮してくれているようで、少女の足の上には白い砂が被っている。砂を払ってあげようと手を伸ばすと海風が吹いて砂はハラハラと元にいた場所に帰っていく。風が少し冷たいように感じたユウは自分が羽織っていたカーディガンを少女にかけてやる。
『お姉さん、ありがとう!お話の続き聞かせてくれる?』
ユウは優しく頷くと少女から目の前の水平線へと視線を移した。
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『小エビちゃんも運命の王子様ってやつを信じる?』
ゴーストのお姫様の件が終わって暫く経ったある日の晩。パルクールの練習に飽きたとフロイドはオンボロ寮にいきなり押し掛け、監督生を強制的に学園内のプールまで連れてきた。
まさか泳げとは言われないだろうと、監督生は靴を脱ぎ裾を捲って足だけ浸かる。
人工的なプールは海と違い、白く泡立つさざ波も生き物の息吹も感じられない。代わりに感じられるのは監督生の隣に座るフロイドの体温。
冷たい夜の水に反して、監督生は顔周りだけ熱くなっていた。
『・・・何故、そんなことを聞くのですか?』
『うーん、あの時は色々面倒くせぇって思ったけど・・・小エビちゃんも女の子だしぃ・・・そういう人を待ってたりするのかなって』
後ろに手を付き、足を伸ばしたフロイドは随分と慣れた二本足を交互に上下させ水面を蹴る。フロイドの足から離れた水しぶきは、少し先の水面に映る月にぽたぽたと落ちて月の形を歪ませた。
『歌をハモってくれなくても、剣を持っていなくてもいい。授業をすっぽかしてでも助けに来てくれて、一緒に面白い事をしようって、小さな発見を共有しようとしてくれたり・・・・・・・・・眠れずに窓辺で1人で泣いていた私に気付いて、パルクールの練習に飽きたから!とかって理由付けて、私を連れ出してくれる・・・・・・そんな、フロイド先輩が好きです』
『・・・あれぇ?バレてた?』
『だって・・・フフっ、寮服じゃ・・・パルクール出来ないでしょう?』
あ・・・とフロイドは自分の格好を思い出す。契約者への”お願い”の仕事の帰りにふらりとオンボロ寮へ立ち寄ってみると、さすがに寝ているかと思いきや、月を見上げながら泣いている監督生の姿が月光に照らされていて、フロイドはいても立ってもいられず連れ出したのだ。
『俺・・・かっこ悪ぃし、だせぇー・・・』
フロイドはボスッとハットを監督生に被せて誤魔化す。監督生はハットを被り直し、珍しく赤面しているフロイドを見ようとするも、フロイドの大きな手で顔を押されてしまい監督生の視界はすぐに遮られてしまった。
『ってか、小エビちゃん・・・シレッと俺に告ってなかった?』
───フロイド先輩が好きです。
『あ、あれぇ?バレました?』
わざとらしく言ってみるが、照れ隠しであり監督生は空恥しく目線を逸らす。
そして、ずっと耐えていた目尻も気が緩み涙が頬を伝ってしまった。
『ちょっ・・・小エビちゃん!何でまた泣くの?あ、いつまでも水に浸かって冷たかった?!それとも、気づかないうちに怪我した?!』
『ち、違っっ・・・』
フロイドは監督生が泣くところを今夜初めて見た。
不良のような生徒に理不尽な対応をされても、勉強についていけなくても泣くことはなかった。どんなにフロイドが無茶苦茶に連れ回しても最後は笑ってくれる監督生。いつも目で追いかけいて、遠くても視界に入れば、驚かせてでも監督生の瞳に映りたかった。
『小エビちゃん・・・泣かないでよ。あっ、これあげる!!小エビちゃんに持ってて欲しい!!小エビちゃんを想って錬金術で混ぜてたら飛び出してきたんだけど、めちゃくちゃ綺麗だから!』
ポケットから無造作に取り出すと横に座る監督生に握らせる。しゃくりながら手の中に収まる固形物を見るとその美しさに涙は引っ込む。
『それ、”泡沫のサファイア”っていうんだって。イシダイ先生が教えてくれたぁ。普通のサファイアは透明度が高いほど高価らしいんだけど、それ・・・よぉく見てみて?』
『・・・・・・水が入ってるみたいに泡がぷくぷくしてる。吸い込まれそうな深い青色ですね・・・』
『そう!凄く珍しくて錬金術でしか作れない人工宝石。それでも配合が難しくって中々お目にかかれないぐらい珍しいんだって!俺天才じゃ~ん!』
『へぇ!!フロイド先輩は天才です!嬉しい・・・ありがとうございます!それにしても、ほんと綺麗・・・アズール先輩が欲しいって言いそうですね』
小エビちゃんにあげるから、アズールにはやらねぇ~とケタケタと笑うフロイド。
夜の暗闇の中のわずかな月の光でも分かるぐらい、泡沫のサファイアは輝く。
『その宝石の石言葉教えてあげるね。”儚げな慈愛”だってさ。・・・・・・小エビちゃんにピッタリじゃん』
『ど、どういうことですか?』
『小エビちゃん、元の世界に帰るんでしょ?』