ダンジョンのご案内が届きました
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ユウが呼び出した矢印が出現し、しばらく経つ。
くっきりと姿を表していた矢印は段々と薄く消えかかっていた。
「これ・・・消えそうなんですけど・・・大丈夫ですかね?」
電球の球が切れるようにチカチカと点滅し出す。矢印に指をさし一同に問うも分かるはずもなく、皆肩をすくめる。
背の高い草を手で避けた先に、フロイドとラギーがクンッと鼻を鳴らす。2人はニッと歯を出して笑うと、大きく草を掻き分け門を開けるようにユウに景色を見せた。
『・・・森・・・抜けた?!でも・・・ここは・・・あっ!』
点滅していた矢印は最後の方向をさすと、ゴーストのように消えてしまった。
きっとこの先がゴールなんだろうとユウは直感する。しかし、その先はどうすればいいのか分からない。
だだっ広い窪んだ道がどこまでも続いていて、水平線ならぬ土平線。
「げぇ・・・まだまだ道あるじゃん!さすがのオレも疲れたんだけどぉ」
「俺も・・・体力には自信があったんだけどな」
「あ~ダダ働き感のあるこの状況しんどいッスね」
途中から歩き出したユウや絨毯に乗ってるカリムやグリムはまだしも、初めから歩いている3人はそこそこ疲れているらしい。
ここまで来るのに、幾度となく巨大昆虫に見舞われその都度魔法で撃退していた。
体力、想像力が乏しくなる。
「ハッハッハ!まぁ、お前たちはずっと歩いてるもんな!ほら、水出してやるからさ!美味い水だぜ?」
絨毯の上で胡座をかき、水芸を披露する。各々はコップを魔法で取り出すと、カリムはチョロチョロ~と狙い通りに注いでいく。
氷で冷やしたわけではないのに冷たく、そしてジャミルお墨付きの美味しい水なのだ。
「うっま!!アジーム先輩の水うっま!」
おかわりください!とデュースがコップを差し出すと、カリムは嬉しそうに再び注いだ。
私もおかわりしようかな?そう思い、ユウもコップを差し出そうとすると背中を誰かがツンツンとつつく。
「小エビちゃん~」
「あ、フロイド先輩もおかわりですか?」
フロイドのコップを受け取ろうとすると、コップは頭上に上げられる。その際、ぴちゃっと音がなり水はまだ入っているようだった。
じゃぁ、何だろうとフロイドを上目遣いで見ると嬉しそうにニコニコとしている。
「オレ、いいこと思いついちゃった!はいっ!みんなはオレに注目~!!」
大口を開けて、真上から水をサバっと入れるとフロイドの喉仏がゴクリと動く。
フロイドの掛け声で視線は一気に集まった。
「オレ、思い出したんだわ!この道の窪みとラッコちゃんの水を見てね。このでっかい窪みの道とラッコちゃんのユニーク魔法で川を作ろ!」
「は?いやいや~フロイド君冗談きついっスよ~」
「あぁ・・・スカラビアの件の時か・・・。あの後、ユウから聞いたけど俄に信じにくいな」
ラギーとデュースは、そんなまさか~と半信半疑。風呂程度の水ならともかく、相手は川。
当時の当事者たちの4人は、思い出したかのように手を叩く。百聞一見だろうとカリムは絨毯から飛び降りる。
「熱砂の憩い、終わらぬ宴!歌え、踊れ!枯れない恵!(オアシスメイカー!)」
詠唱を終えると、あの時のようにどこからともなく雨が降る。その雨は不思議と窪みの上だけで、ユウたちには一切かからない。
両手を上げ、雨乞いのように空を見上げるカリムにユウは本当に英雄に思えた。
水害になりそうな勢いの水はかさを増してどんどんと溢れてくる。
フロイドのラッコちゃん、もういいんじゃね?でカリムは手を下ろすとあっさりと雨は止んだ。
緩やかな川の流れを見ていたラギーとデュースはただただ驚いていた。
「あの時よりも川が出来るの遅くなかったです?いや、あの時よりも大きい川ですけど・・・」
「まぁな!ここはブロット関係なくて体が軽い分、魔法の力加減が難しくてな~。元々少量の魔力で水が出せる分、勢いでやると・・・1面海が出来ると思ってさ!」
カリムは軽い感じで笑い飛ばすが、ユウは青ざめる。何も考えてないようで、考えてくれているカリムに、熟慮の精神があって良かったと本気で思った瞬間だった。
「さて、皆さん・・・ここからどうしましょうか」
川を渡ることは決定事項。
問題はどうやって渡るか。
フロイドは今回も人魚の姿に戻り、カリムは今回は絨毯に乗る。グリムもきっと今いる場所から降りることはないだろう。
ユウとラギーとデュースの3人はうーんと唸る。
選択肢として、1人はフロイドの背中、もう1人は人数的にギリギリの魔法の絨毯。最後は・・・イカダ。最も危険。
「えーっと、公平にジャンケンしましょうか?」
「ユウいいのか?お前女の子だし、絨毯の方がいいんじゃないか?」
「デュース・・・アイラブマブ!王子!・・・でも、ありがとう。やっぱ公平にジャンケンにしよ?」
「うわぁ・・・ユウくんのそーいうとこっスね・・・」
「・・・?じゃぁお二人共、ジャンケンしますよ!」
ジャンケンの掛け声は元の世界と同じ?と疑問を持ちつつ、3人はジャンケンをする。
ポン!を最後に出された結果はユウの一人勝ち。
2人はユウをカリムの絨毯に乗るように促していると、目の前で巨大扇風機の強ほどの風が吹く。
「おい、お前ら・・・小エビちゃんはオレんとこだろ?ヤローは乗せたくねぇっての」
不屈そうに川から捕食者が睨む。抵抗反発するものなら、引きずり込まれそうな雰囲気でイラつくフロイド。
「あ、じゃ・・・じゃぁ、今回もフロイド先輩のお背中お借りしまーす!」
またもやユウは生贄。両手で合掌する2人を横切り、ユウがフロイドの所へ行くとフロイドの機嫌はすぐによくなる。
濡れないようにしようね~とフロイドは指でユウを型どるとユウは薄紫色の膜で覆われる。防水魔法かな?とユウは思った。
「ユウくんがフロイドくんの所に行ったってことは~シシシッ!俺がカリムくんの所!」
「あっ!ブッチ先輩狡いっす!!」
「いやいや、俺の方が先輩っスからねぇ!」
「くっ・・・ここで上下関係出されるとは・・・」
体育会系のデュースはそういう関係を重んじる。
無理矢理だなぁ・・・とユウはフロイドに抱きしめ元い、締められながら思った。魔法のおかげで濡れもしないしあまり痛くないのだけど。
「ねぇ、デュース・・・イカダ作れる?」
「さぁ・・・そんなの作ったことないな」
「よねぇ。魔法で作る?」
「うーん、操縦性もイカダだとなさそうだし・・・あっ!いい事思いついた!」
再び森の方へ足を向け、手前の大きな大木に目を向ける。ググッと握り拳を作り、セイッ!!と魔力を込めた正拳突きをかますと太い木にヒビが入る。ヒビは木の重さに耐えきれずゆっくりと割れ、丈の長い草をクッションにして倒れた。
「よし・・・!ブッチ先輩手伝ってもらっていいですか?」
「え、俺?!はいはい、分かりやしたよ!」
ご指名のラギーは口を尖らせながら、絨毯の上からデュースの元へピョン!と飛び降りる。
ユウからは2人が何しているのかは分からなかったが、何かを作っていることだけは分かった。
「ねぇ・・・まだぁ?オレ、暇なんだけど・・・」
「フロイド先輩、すみません。もう少し待ってください」
「んー、小エビちゃんがいるからいいけどねぇ」
フロイドは腹の上にユウを乗せ、背泳ぎの状態でくるくると回りながら暇を持て余す。
ユウはカリムが作った川の先に目を向ける。きっとここもそれなりに長い道のりなんだろうと。
そして、ダンジョンはいつまで続くのか・・・面白半分に来たものの、本当に学園に戻れるのか。
先の見えない不安にユウは唇に力を入れた。
「・・・大丈夫だよ、小エビちゃん。オレらそこそこやれるし、ちゃーんと守ってあげる!それに小エビちゃんのおかげで進めてるじゃん」
「はいっ。ありがとうございます」
よしよしと頭を撫でられ、悪い気はしない。足でまといになる自分を元気づけてくれるフロイドに、ユウは素直に感謝した。
「ユウ!!出来たぞー!!」
デュースとラギーが作っていたものが出来た。
さぁ、川を下ろう。
*****
「・・・・・・?これは何?」
「アハハ!何か凄いな!」
ずりずりとデュースとラギーか引きずって持って来た物。大型のタイヤを模した円型の丸太に後部には背もたれのような曲線。先にはT字型のハンドルが付いている。
「時間かけたらもっとより近づけれんだけどなぁ・・・これはお手製のマジカルホイールだ!」
胸に手をあて、どうだ!とデュースは胸を張る。
ユウはマジカルホイールを見たことないが、バイクのようなものだと想像する。かなり簡易的ではあるが、イカダよりは確かに安定性はある。
「シシシッ!ユウくん、何それって顔してるっすよ?」
「え?!そ、そんなつもりありませんよ!2人ともお疲れ様です!ねぇ、デュース、マジカルホイールって何色?色付けたほうが、よりそう見えない?」
「それもそうだな・・・俺のカラーなら・・・それ!」
デュースが魔法をかけると、マジカルホイールもどきは黒くなる。
「へぇー・・・サバちゃん、色変え魔法上手くなってんじゃん!」
「あの時はあざっした!!」
なんの事か分からないユウだが、どうやらデュースは成長したようでユウも嬉しくなる。
*****
「はははー!!おらぁ!ぶっ飛ばせー!!」
「ねー・・・小エビちゃぁん、サバちゃんって運転で性格変わるタイプなの?」
「み、みたいですね・・・」
ユウはマジカルホイールもどきに乗っているデュースの姿が昔見たヤンキーのように見えた。白い特攻服に派手な装飾で煌びやかなヤンキー。あとでエースに見せてあげようと、ユウはこっそり写真を撮った。
フロイドの背中に乗せてもらいながら川を下っていると、フロイドとラギーが同じタイミングで「あっ」と声を出す。
2人は耳がぴくりと動いた。
「・・・なんか近づいてるっスね」
「まぁた、ウザイやつらが追いかけてきてんじゃん!小エビちゃん、しっかりオレにしがみついてて!!」
ギザ歯を出してまだ見ぬ何かに威嚇をする。ユウには川の音しか聞こえないが、耳のいい2人には何か聞こえたよう。
「なんか追いかけて来てるのか?っしゃ!煽れるものなら煽ってみやがれ!」
デュースはエンジン全開!と魔法でブーストをすると大きな水しぶきを上げて前を走って行った。
その水しぶきがフロイドに思い切りかかったものだから、フロイドは青筋を立てていた。
「おぉー!なんかデッカイ魚が飛びながらこっちに来るぜ!」
「カリムくん!絨毯揺らすの勘弁して・・・」
「ぎゃ!!フロイド先輩みたいな歯の魚がいっぱいいる!!」
「ちょっ・・・小エビちゃん、オレの歯とあの雑魚と一緒にしないでくれる?!」
ピラニアのような見た目の魚・・・巨大な魚が、水面から出たり飛んだりして一行を追いかける。
水さえなかったこの地に何故魚が現れたのかユウは不思議だったが、空想空間なら有り得るのかと自分で自分を納得させた。
「やぁ!!噛まれるー!!」
「雑魚が!!散れっ!」
フロイドの尾びれで強い一撃を与えると魚は川の外へ放り投げられた。ラギーやカリムも風の魔法を駆使して魚を川の外へやる。川の外へ飛ばされた魚は煙のようにフッと消えていく。
「あっ!!デュース!!そっちに1匹行ったよ!!」
「あぁん?生意気な魚だ・・・っらぁ!!」
先を行っていたデュースの元へ魚が大きく飛び跳ね、ユウの頭上を抜ける。
デュースはオラァ!と口が悪いまま。ぐんっとマジカルホイールもどきの重心を変えウィリーをしたおかげで、デュースに当たらずに魚は水面へと戻る。すくさまデュースがドリフトで魚に体当たりをすると、魚は川の外へ放り出され消えた。
「へー!デュースってマジカルホイールの扱いが上手いんだな!絶妙な魔法力でコントロールしてるぜ」
「どっかの族みたいでおっかないっスけどね・・・」
「やっと雑魚がいなくなって清々する~。ザバちゃん、やるじゃん!」
「ウッス!」
ビシッと親指を立てるデュースにユウは笑顔で親指を立てた。
「おい、カリム・・・なんか先が怪しいんだゾ?」
ずっとカリムの股の間で大人しくしていたグリムが口を開く。小さな手をふるふると震えさせながら先を指している。
「!?みんな、この先に滝がある!!止まれ!」
「はぁ?!ラッコちゃん、急に言われても無理なんだけど!!小エビちゃん大丈夫?!」
「はい!もしかしてここのゴールなんじゃ・・・」
滝に近づくにつれ川の勢いは増す。人魚のフロイドも流れに抵抗するが、ユウを背中に乗せているため動きに限界がある。
デュースも先程までの勢いはなくなり、いつものデュースに戻り慌てていた。
慌てているデュースの不安さラギーは仕方ないっスね!とデュースの後ろに飛び乗る。立ち乗りをしているが、バランス感覚の優れているラギーには朝飯前。
「フロイド先輩!滝に落ちちゃう!」
「・・・くそっ!ラッコちゃん!小エビちゃんを任せた!!」
「え?・・・ひゃぁ!!」
尾鰭でユウを巻き付けると、絨毯までユウを投げ飛ばす。カリムがユウを受けとめると、フロイドはにっこり笑う。もう、滝は目の前。デュースのマジカルホイールもどきは元々木で作られたのだから、魔力を込めればホウキのように飛べる。絨毯にいるユウたちは1番安全。
フロイドはホウキもなければ、絨毯にいるわけでもない。
「お前ら!!マジで小エビちゃん守れよ!!じゃねぇと・・・帰ったら締める!!」
「フロイド先輩ーー!!」
「ユウ!危ないんだゾ!!アイツは人魚だ!滝に落ちたぐらいじゃ・・・なんともないんだゾ!たぶん・・・」
絨毯から身を乗り出すユウにグリムは制服を引っ張る。ユウはただ落ちていくフロイドを無力に見ることしか出来なかった。
【巨大昆虫の森と巨大魚の川】合格?
to be continued
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