ダンジョンのご案内が届きました
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蔓の迷路を抜け、一同は次のダンジョンへと向かっていた。最初に来た時と同じように虹色の空間を漂うが、最初と違うのはユウが怪我をしたこと。グリムを庇い、受身を取れずに転んだことにより腕や足を怪我をする。傷は治癒魔法でほぼ治せたが、捻った足までは治りきらなかった。
「フロイド先輩、すみません」
「いいのいいの!そんな足じゃ歩きにくいでしょ?他のやつならともかく、小エビちゃんだからおんぶしてあげる!」
お荷物過ぎる・・・とユウが凹んでいるとマブダチの1人のデュースが肩をポンと叩いた。気にするなよ?と言った無言の笑顔がユウの心を軽くさせる。グリムにも気にしないようにと言葉をかけようとすると、ユウの肩の上で鼻ちょうちんで寝ていた。
「そーっスよ?ユウくんの案で脱出出来たわけだし、気にすることないっス!グリムくんなんか、既に何にも気にしてないし」
「はい・・・」
「そうだぞ!そういや、ここって魔法の絨毯って来れるのか?」
「あぁ・・・あの空飛ぶ絨毯ですよね?アルアジーム先輩が呼べばすぐ来る・・・のか?」
「じゃぁ、試しに呼んでみるか!」
カリムが息を吸い、大きな声で魔法の絨毯を呼ぼうとすると遮るようにユウが声を上げた。
「次のダンジョンに出るみたいです!」
*****
「草・・・木・・・花だ!!あっはっは!!」
「ラッコちゃん・・・うるさい。次は何なの?草がボーボーですっげぇでかい木ばっか!」
「それに・・・生き物の臭いがするッスよ」
「・・・皆さん、これって周りが大きいんじゃなくて・・・私たちが小さいんじゃ・・・」
ユウの言葉に全員の視線が集まる。
今、ユウ達がいるのは何年にも渡って作られた年輪が広がる切り株の上。
心が落ち着くような木の香りに、身の丈以上に伸びた草、御伽噺のような大木があちらこちらに立っている。
空想ダンジョンだが、ラギーのいうように生き物の鳴き声や物音が聞こえていた。
「と、とりあえず何処かに避難しませんか?何か嫌な予感がします」
隠れる場所がない平らな切り株。生き物がいると言うのが事実なら、小さい自分達は立場的に不利と考える。
ブゥン・・・
羽の擦れる音が聞こえると目の前に黒い影が掠める。次に目にしたのは大きな蜂がカリムを連れ去って行く後ろ姿だった。
「ぎゃー!!カリム先輩!!」
「うげぇ!気持ち悪い蜂がいるじゃん・・・」
「リーチ先輩!そんな呑気な事言ってる場合じゃないです!」
「おぉ?!お前、デッカイ蜂だなぁ!俺と遊びたいのか?」
当の連れ去られているカリムはふわふわと笑っている。そうしている間に蜂は段々と上昇していき、ユウは焦り出す。フロイドの肩を揺らし、何とかして下さい!と懇願すると、フロイドは仕方なさそうに風の魔法を放つ。
しかしユウを背負っていてバランスが取りにくく、魔法は僅かにズレる。
「おまぬけさん♪」
くるんっと回りながらラギーはフロイドのあとに追い魔法を放つと、蜂の羽に当たりブブッと短い羽音を鳴らすとカリムを離した。
「ま、待って!!ホウキもないのに、あの高さから落ちたらカリム先輩怪我じゃ済まないよ!!カリム先輩!!!」
「ちょっ!小エビちゃん、暴れたら落ちるから!ラッコちゃんなら大丈夫だって!」
「何でですか?!」
「おーい!魔法の絨毯~!!」
カリムは落ちながら両手を広げると、魔法の絨毯を呼びかける。空間の狭間から少し飾り紐を出し、カリムを見つけると嬉しそうに揺れながら落ちていたカリムをすくい上げた。
「よっしゃー!ここでもアルアジーム先輩の魔法の絨毯が来れたんだな!」
「これラッコちゃんの転移魔法じゃね?ブロット関係ないからこの空想空間に来れたんだろうねぇ」
「こんな異次元空間みたいな場所に転移魔法なんて、普通なら相当ブロット溜まるッス」
シシシッと笑うラギーだが、ユウはこのご都合空間に感謝する。そして、魔法石がなくても魔法が使えることも。
カリムの救出も終え、ユウはカリムの絨毯に乗せてもらい奥へと進んでいくことにした。
「あ、そうそう・・・コバンザメちゃんさぁ・・・さっき俺の事まぬけって言ってなかったぁ・・・?」
はるかに蜂よりも恐ろしいフロイドの誤解を解くのに、ラギーが必死になったのは言うまでもない。
*****
グギュルルル・・・
「な、何だ!?またデカい虫か?!」
拳をバンッと手のひらに打ち付けて周囲を見回すデュース。ユウとデュースを除いたメンバーはニヤニヤと笑っている。
「デュース・・・ごめん。私のお腹が鳴った」
「俺様もなんだゾ・・・。ちくしょー!昼飯食べられなかったから腹減ったー!」
背中とお腹がくっつくゾ・・・と摩っているがグリムはまん丸としている。
結局学園長のところに行ってから何も食べられず、空腹のままここに来たのだ。
何か食べ物はないのかとグリムは鼻をピクピクと動かし、微かに食べ物の匂いのするラギーへ体が向く。
「おい、お前何か持ってるのか?持ってたら俺様によこせ!」
「ちょ・・・グリム!そんな失礼な言い方・・・」
「あーバレた?俺、レオナさんのお使いのついでにデラックスメンチカツサンド買ってたんスよ」
ラギーの手の上にキラキラと見える特別仕様のサンドが現れると、ユウとグリムは喉が鳴る。見せびらかしのようにグリムの前に差し出せば、頂き!とグリムは飛び掛るが、俊敏のラギーは難なくかわす。
「甘いッスねぇ~!今度、俺の代わりにレオナさんのお使い行ってくれるなら・・・あげてもいいっスよ?」
「そんな事お易い御用なんだゾ!だから、寄越せ~」
「シシシッ、必死すぎ!ほら、ユウくん!2人で分けて食べてよ」
ラギーはポイッとメンチカツサンドを弧を描くようにして、ユウの方へ投げた。
落とさないようにわたわたと受け取とると、グリムは魔法の絨毯に飛び乗り、早く開けるんだゾ!と急かす。ご丁寧におしぼしまで付いていて、手を軽く拭き、反対側でグリムの手を拭いてやる。
そんな世話をしているユウを見ていた一同はグリムを羨ましく見ていた。
「・・・なんか、食べにくいんだゾ?」
*****
「小エビちゃん、足痛むの?」
「んー、少しだけです。だから大丈夫です」
無意識に捻った足を摩っていたユウにフロイドが気付き声をかけるも、ユウはパッと手を離し視線を進行方向に向ける。
何でもない様に振る舞うユウにフロイドは口を膨らませ、皆の前に立ち塞がり手を広げた。
「みんなストップ!!」
「フロイド先輩?」
「みんな、小エビちゃんの足治そ!!小エビちゃん、痛いの我慢してる!」
「え、ユウ・・・まだ痛かったのか・・・ダチなのにごめん」
「や、大丈夫ですよ!魔法の絨毯に乗せてもらってますし」
「そういう問題じゃないの!こんなに草や花があるし皆で薬草集めればいいじゃん」
「おぉ!そうだな!で?何を集めたらいいんだ?」
「カリムくん・・・同じ2年じゃん」
「はは!ド忘れしたぞ!毒消しなら完璧なんだけどなぁ!」
「・・・カリム先輩、笑えない」
一同は先に進むことを一旦中断し、ユウの足を治すことにした。魔法薬学の得意な片割れがいるフロイドは、ジェイドが言ってた~を繰り返しながらメンバーに指示していく。その薬草が見つからなければ、じゃぁアレ!と応用していき天才ぶりも発揮する。炙り、乾燥させないといけないものは炎を加減する。洗う、溶かさないといけないものはカリムの水。電気ショックを与えて変化させるキノコ等。
あれよあれよと下準備をしていく。
「いでよ!大釜!」
デュースお得意の魔法で大釜を出し、下準備をした材料を入れデュースが気合いで混ぜ、フロイドが魔法を込める。
「いい感じじゃん!サバちゃん、しっかり混ぜてよ~」
「や、やってます!」
「おーい、ユウ!もうすぐで薬出来るからなー!」
「みんな・・・ほんと、ありがとう・・・」
なんだかんだ良いヤツらなんだゾ?とグリムはユウに寄り添う。グリムもね?と言いたかったが、天邪鬼なグリムなので心で伝える。
ガサガサ・・・
「ちょ・・・待って・・・嫌な予感が・・・」
「俺様もなんだゾ・・・?」
ユウとグリムは機械仕掛けのように後ろを振り向く。
草陰から飛び出してきたのは先程の蜂のような、巨大なカマキリだった。
鋭利な鎌がきらりと光るとカマキリは鎌を振り下ろし、その風はかまいたちとなる。
「「ギャーー!」」
「バインドザハート!!!」
「フ、ロイドせんぱぁぁい・・・ありがとうございますぅ・・・」
フロイドのユニーク魔法でかまいたちは横の大木に飛ばされ、大木は見事に真っ二つに切れていた。それを見ていた一同は思わず自分の腹を触る。
「フ、フロイド先輩!!!」
「あぁ!またぁ!?バインドザハート!!!コバンザメちゃん達!オレこっちで忙しいんだからそっちで小エビちゃん達を何とかしといて!」
錬成に魔法をかけつつ、反対の手でユニーク魔法を繰り出すフロイド。
「ハハハ、フロイドくんすげーッスね・・・」
「おーい!魔法の絨毯!ユウ達を安全な所へ!」
カリムの指示で魔法の絨毯はユウとグリムをカマキリの元から距離をとる。
「さぁて・・・、君はここにいるべきじゃないっスよ?俺達は餌じゃないから。ここは俺たちの縄張りっス!ラフウィズミー!!!」
ピタリと動きが止まった巨大なカマキリは動きを止め、進行方向を変えて歩き出す。ラギーのユニーク魔法がうまくいったようだった。
その間にフロイドとデュースは薬を完成させ、巨大な虫がまた襲来する前に移動した。
*****
「うぅ・・・不味い・・・」
「我慢我慢!これ飲んで少ししたら足も治るからね~」
ヨシヨシとフロイドに頭を撫でられながら、ユウは小瓶に入った気味の悪い色の薬を飲む。正直吐き出したいところだが、みんなの努力を無駄にすることが出来ず、ユウ!行きます!と残ってた半分を一気に飲んだ。
足の痛みは少なくなる。
しかし、口の中は死んだ。
「うぇ・・・。あの、ここのゴールって何処なんでしょう?広すぎてゴールになりそうな場所もありませんよ?」
「だよなー?全員が魔法の絨毯乗れたら空から行けるんだけど、流石に無理だ!」
「いくら魔法が使い放題とはいえ、ブロットとは関係なく疲労する・・・」
デュースが肩を回すと、ゴリッと音が鳴る。
それはさっきの錬成の時にひたすら混ぜていたからでは?とユウは思う。
自分の為にしてくれていたと思うとツッコミも入れられない。
「俺、ずっとここにいるの嫌っスからね?」
「じゃぁ、聞いてみますか?」
「「「「誰に?」」」」
「え?この空想のダンジョンにですよ?ほら、学校の教材って分からないところってヒントだったり、解き方が書いてあるじゃないですか?サンプルとはいえ、教材なんですし・・・ありそうじゃないですか?」
「・・・出た。今回2回目のユウの突拍子もない発言なんだゾ」
グリムはぼそりと呟く。
一同は今回はさすがにその方法は無理では?とざわつく。
「あのーー!!ここのゴールの行き方のヒントってぇーーありますかぁぁーー!!!??」
ユウは手でメガホンを作り、天に向かって叫んだ。辺りの鳥は飛んでいき動物たちが騒ぎ出す。ユウはセベクか?!とデュースにツッコミを入れられるが、誰もこの案に賛同しなかったから仕方がない。
ヒューーン
最初に見た紙飛行機が空から落ちてくる。ユウが受け取ると白い矢印に変身し、方位磁石のように矢印が進む道を示していた。
「小エビちゃん!すっげぇ!」
「うわー・・・ユウくん、なんと言うか凄いっスね」
「ふふっ・・・先輩方?もっと褒めてくれてもいいですよ?さぁ!私の足も治ったことですし、出発です!!」
またもやチートのような矢印の登場に、改めて魔法士の卵達はユウの存在をたくましく感じた。
蜂、カマキリ退治に薬草による薬の調合。
このダンジョンのゴールを目指し、一同はまだまだ進んで行く。
【巨大昆虫の森と〇〇〇〇】続行中
