ダンジョンのご案内が届きました
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
腹の虫が鳴き出す正午。
学食に向かうユウの真上に一通の紙飛行機が飛んできた。首が痛くなる程見上げていると、ずっと旋回していてどうしたものかと思えば、グリムが肩から飛び跳ね両手でキャッチした。
『空想ダンジョンのサンプルのご案内?』
グリムにお礼を言い、紙飛行機を広げると文字が浮かび上がる。
魔法が使えないユウは、きっとこの手紙の受取人は自分ではないだろうと捨てる訳にもいかず、学園長の元へ向かった。
ぐぅぅとユウの腹の虫はまだ鳴いている。
*****
「学園長~失礼しまーす」
重量感のある扉を両手で広げる。
グレートセブンの肖像画が空間に飾られている中央で学園長は作業をしていて、ユウの存在に気づくと顔を上げた。
「おや、監督生のユウくんじゃないですか。どうしました?また厄介事ですか?」
「厄介事を押し付ける側の人がよく言いますよ・・・。これ・・・、手紙?が私の元に届いたのですがきっと私宛ではないですよね?」
スっと手紙を差し出すと学園長は長い爪で挟むようにして受け取った。
顎に手を置き、うーんと唸りながら一読すると手紙を返されてしまい、何となくユウは受け取ってしまう。
「たまにあるんですよねぇ・・・。授業の一環で、教材として使用して欲しいという営業。大体は私宛に届くのですが・・・今回は直接生徒に届いた・・・というわけですね」
「百聞は一見にしかずってやつですか」
「そうです。私に届いても蹴られると思ったのでしょう。生徒に実際体験してもらい、その結果を私に見てもらいたかったようですね」
こういう教材は高いんですよねぇと学園長は口を尖らせているように見える。
名門校が資金繰りに苦労しているとは思えないが、ユウはどっちにしても自分には関係ない話だなと手紙をポケットにしまった。
「では、大事な手紙でもないようなので、私は学食に戻ります。このままでは私もグリムも食いっぱぐれますので」
学園長の前で大きな腹の虫が鳴きそうになり、ユウはグッと腹に力を入れる。
腹を空かせたまま午後の授業を迎えるのは耐え難い。それに今日はユウが食べてみたかったデラックスメンチカツがあるのだから。
時計をちらりと横目で見ると、今ならまだ間に合いそうだと胸を撫で下ろす。
踵を返して、扉へ向かうと扉が自動で開く。自動ドアだっけ?とユウが足を止めると忙しない足音がいくつが聞こえた。
「「「「学園長~!!!」」」」
自動ドアになったのかと思ったら、魔法で開けられていたようだ。仮にも学園長室なのにとユウが苦笑いしていると、めんどくせぇ~!と魔法で扉を開けたフロイド。大事な手紙が学園長宛にあります!と優等生デュース。レオナさんの代わりに来ただけっス!とおつかいに出されたラギー、その様子に笑いながら入ってくるカリムがいた。
「今度は君達ですか・・・。一体何事です?!」
────ほんとに厄介ごとが起きそう
ユウはグリムと顔を見合わせ、お互い腹ぺこの腹を摩った。
*****
「・・・・・・ということで、我が校には関係ないので気にしなくても宜しいです」
余程仕事が溜まっていたのか、はたまた学園長なりに嫌な予感がしているのか自分の生徒を早々に追い出そうとする。
「えー!なにそれ!すっげぇ楽しそうじゃん!」
「何だ?よく分かんねぇけど、楽しいことは大好きだぞ!!」
学園長にポイント稼げると意気揚々にしていたデュースとラギーをよそに、愉快組の2人は意気投合した様子。
ユウはどっちにしても自分には関係ない話だろうと、静かに会釈してその場を去ろうとするもフロイドに腕を捕まれる。
「ね?楽しそうだよね、小エビちゃん?」
有無を言わせない笑顔にギリっと強めに腕を握られ、ユウは冷や汗をかきながら何度も頷く。
「君達、面白がってますがこれはサンプルとはいえ空想ダンジョンです。何が起こるか私にも分かりませんし、危険です。そんな危険な場所に我が校の生徒を送り込むわけには・・・」
「えーっと、何なに?ここに代表者がサインをしてぇ、魔法石をかざして念じればいいのかぁ。参加者は最高5人・・・あはぁ!丁度人数いるじゃん!」
手紙の詳細を読みながらマジカルペンでフロイドは人数を数える。
ユウは勿論グリムとセット。
学園長の話はもう誰も聞いていない。
「はいっ!代表者とかめんどくせぇけどオレがサインしたよー!皆オレの近くに寄って寄って~」
「ちょっ!!フロイドくん!オレ、レオナさんに頼まれただけだから!!」
「リーチ先輩、俺エース待たせてるので・・・」
「あっはっは!ラギーもデュースも行けばきっと楽しいぜ!」
カリムに背中を押されたラギーとデュースはおっとっと!とフロイドの近くに寄せられる。
ユウに関してはフロイドの横に待機させられていて、諦めるようにラギーとデュースに優しい眼差しを送った。
「じゃぁ、しゅっぱーつ!!」
フロイドの楽しそうな声を合図にマジカルペンを手紙の上に置く。
魔法石に反応した手紙から5つの魔法陣が現れ、5人を囲むと順番に手紙の中へ吸い込んでいった。
「というわけで、君達は午後の授業を・・・・・・って、あれ?皆さん?・・・・・・あぁっっ!!また勝手に!!」
学園長がヒラヒラと落ちてきた手紙を拾い上げると、サンプルのご利用ありがとうございます。という文字が書いてあった。
1/4ページ