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「いただきます!」
てんやわんやしながらユウのパスタはなんとか完成した。
アズールとは今もスピーカーで繋いだまま。ちなみにアズールの夕飯はチキンサラダ。昼間は取引先との会食で重めな食事を取ったからだと言う。
「んー!シンプル!!」
「ユウさん、何パスタを作ったのですか?」
「もやしパスタです」
「・・・・・・味付けは?」
「塩コショウです!あ、バターも入ってます!隠し味です!」
どんなアピールだとアズールは口に含みかけのサラダを元の位置に戻す。アズールは知っている。給料日前にユウがもやしメインの食事をしていることを。スマホのカレンダーを確認すると彼女の給料日があと三日もあることも。
ユウの生きる道を否定するわけではないが、こういうことが度々あるからアズールはさっさとユウを自分の巣穴に迎え入れたかったのだ。彼女がそれを苦に思っておらず助けを求めないのが歯がゆく思う。頼られない頼りない彼氏だと思われているのかと一時期蛸壺にこもり自問自答したものだ。
そもそもここでお金を渡して解決して喜ぶような女ならアズールはこんなにもユウを愛していない。
「料理は素材の味を生かすのも大事ですね。まぁ・・・でも少し物足りないでしょうから余っているトマトを今からそちらに持って行きます。彩も必要でしょう」
別の料理なんて持って行かない。その代わり少しでも腹の足しになりそうな物を持って行けてついでにユウと会う口実にもなる。サラダの材料となる生野菜のストックがたくさんあるアズールは冷蔵庫からいくつか取り出すと袋に詰めた。
「え?アズール先輩悪いですよ!」
「悪くないから安心しなさい。一分以内に向かいます」
「また転移魔法使うー・・・。ブロットぉ」
「暫く大きな魔法使わないからいいんです」
「お待たせしました」
「早っ!!!」
スマホの通話口から自分の声が聞こえ変な感じがする。いつまでもスマホに繋いでいても仕方ないので通話オフ。
アズールは地べたに足を崩して座って食べているユウの目の前のもやしパスタが目に入り、なんてこった・・・と頭を押さえそうになった。シンプルがいいがシンプル過ぎる。
「ユウさん、流石に三日間とも全てもやしは・・・」
「アズール先輩からするとやっぱヤバイですよね。でも今材料がほんとなくて・・・、あと三日ですから!」
アズールからお裾分けしてもらったたくさんのトマトを早速ユウはキッチンでカットする。
そこから見えるアズールは珍しそうにもやしパスタを眺めており、ユウのフォークで少し突いていてどんな気持ちで見ているのやらと苦笑い。
トマトと分けてもらったとはいえ女子力に欠けるパスタには違いない。
他に何かあれば良かったのだが、どう探してないものはない。
「・・・・・蛸足が、ある」
「あ、貴女ねぇ・・・とんでもない事言わないでください!パスタに入れようと考えてましたね!?」
「じょ、冗談ですって!」
思わず呟いてしまった案にアズールはぎょっとした顔で思い切りユウの方を見た。さすがのユウも彼氏の足を食べるなんてことはしない。
「(そういえば蛸墨って食べられるのかな?イカ墨が食べられるなら蛸も・・・)」
手足を食べるわけじゃないし、墨なら貰えるかもしれない・・・とユウはカットし終わったトマトを皿の上に乗せてアズールの横に座る。
しかし、いくら彼女でも墨を吐いて?とは言えない。蛸の人魚相手に墨を吐いてとお願いするのはこの世界的にどういった意味合いがあるのか不明だ。もしかすると侮辱するようなことかもしれない。
「な、なんですか?僕の顔をじーっと見て」
「あ、や・・・美しいお顔だと・・・」
「あ、ありがとうございます」
愛する人に顔を見つめられ、美しいと賛辞を述べられるとアズールもまんざらでもない。
咄嗟に顔を褒めたユウは嘘はついていないもんと一瞬目を泳がせた後ふと思った。
墨は口から吐くわけだから、口の中に墨袋みたいな器官があるのかもしれないと。
なんとかして口の中を見せてもらえないだろうかと考えた結果・・・。
「先輩・・・あーーーー」
「・・・何です?僕はウツボじゃないので・・・、えっと、求愛ですか?」
突然口を大きく開けた愛しいユウに戸惑う。ウツボは口を開けると求愛ではあるが蛸はそういうわけではない。もしユウが蛸の人魚への求愛が同じくソレだと思っているなら勘違いなわけだが、男アズールはそれでも愛する彼女がそうしているなら応える。
「あ、あーーー」
「・・・うーん・・・。わかんない」
アズールは照れながら口を開けたのに当の本人は分からないと首を掲げる。
分からないのはアズールの方だというのに。
「これは直接確認するしかないか・・・」
うーん。と顎に手を置いてユウはごちる。
「先輩、キスしましょう!」
「は?え・・?キス!?」
付き合いたての初々しい関係ではないとはいえ、普段ユウからそのキスをいう言葉を聞くことはほぼない。だいたいはアズールからそういう雰囲気に持って行って蛸足を絡めていくわけだ。そんなユウからキスがしたいと強請られて断るはずもない。
暫く電話ばかりで会うのも実は久しぶりであり、アズールとしてはこのまま持ち込みたい所存。
「アズール先輩、失礼しますね」
膝立ちになりそのままズルズルとアズールに近づいて、その柔らかな髪に手を通す。いつもより積極的なユウにアズールは胸が高鳴っていた。求めるのも好きだが求められるのもいいと違う扉が開いてしまいそうで。
「ん・・・」
アズールの顔を両手で添えてそっと上を向かせると唇を重ねる。普段しないキスの仕方だ。
そのままユウは舌を出してアズールの内側の唇を撫で舐めると、嬉しくて口角を緩めながらアズールはそれを受け入れた。
「(あぁ・・・ユウさんが僕を求めてくれている!!)」
求められたかった形は違えど、アズールにしてみれば結果オーライ。
深く捻じ入れられたユウの小さな舌は内側の頬や上顎、アズールの下の裏までなぞる。
「(積極的ですね・・・、このまま押し倒してしまうのは惜しい・・・)」
されるがままアズールはユウの腰に手を回し、本能になんとか今は耐えるんだとこんな所で過去にユウに褒めてもらった努力を見せ、せめてものとしてユウの腰を撫でるだけで留まらせる。
うーん・・・墨袋は口の中じゃないのかな?なんてユウが思っているとは知らずに。
それでも小さなリップ音は止むことなくアズールの手は次第に開いたり閉じたりする。
「(耐えろ・・・耐えろ・・・。あぁ・・・、あぁー、ユウさん可愛い、大好きです!!)」
「(もう・・・無さそうだし、キスはこのぐらいに・・・・・っ!!??)」
どぷっと何かがユウの口の中に入り込み思わずアズールから離れるとアズールの口端から黒いものが垂れていた。ついでに言うと、アズールは顔面蒼白である。
「す、すみませ・・・、あぁ・・・僕としたことがつい興奮してしまって・・・」
未だに口の中にあるそれはアズールの——墨だ。口の周りが真っ黒になってしまったユウをアズールは拭いながら何度も謝罪していた。
「・・・・・・」
「・・・ユ、ユウさん?」
何も言わずにユウはすっと立ち上がると未だ顔面蒼白のアズールはもしかすると・・・と不安がよぎる。愛する人になんてことをしてしまったのだろうか、嫌われてしまったと。
興奮しすぎてしまったとはいえ、二度とこんな不快なことをしませんからとユニーク魔法に誓うので許してほしいと泣きそうになった。
「ほ、ほんとすみません・・・ユウさん、あの・・・」
「ズルズルズルズルーーー」
「・・・・はい?」
突然ユウはフォークを持つと、もやしパスタを勢いよく口の中に吸い込ませた。意味がわららずアズールはぽかんとその様子を見ていて、ユウはその間も黙々とパスタを食べて、そして白い皿は少し黒く汚したものの綺麗にパスタはなくなった。
「・・・・美味しい!!!蛸墨パスタ!!!もう一回キスしてください!」
ぱぁっと満面の笑顔で言われアズールの優れた頭でも付いていけない。
ただ一つ言えるのは自分の吐き出したものをごっくん!美味しい!と歓喜しながら飲み込んだ大好きな彼女に、アズールはどことは言わないがそっと両手で隠した。
FIN
てんやわんやしながらユウのパスタはなんとか完成した。
アズールとは今もスピーカーで繋いだまま。ちなみにアズールの夕飯はチキンサラダ。昼間は取引先との会食で重めな食事を取ったからだと言う。
「んー!シンプル!!」
「ユウさん、何パスタを作ったのですか?」
「もやしパスタです」
「・・・・・・味付けは?」
「塩コショウです!あ、バターも入ってます!隠し味です!」
どんなアピールだとアズールは口に含みかけのサラダを元の位置に戻す。アズールは知っている。給料日前にユウがもやしメインの食事をしていることを。スマホのカレンダーを確認すると彼女の給料日があと三日もあることも。
ユウの生きる道を否定するわけではないが、こういうことが度々あるからアズールはさっさとユウを自分の巣穴に迎え入れたかったのだ。彼女がそれを苦に思っておらず助けを求めないのが歯がゆく思う。頼られない頼りない彼氏だと思われているのかと一時期蛸壺にこもり自問自答したものだ。
そもそもここでお金を渡して解決して喜ぶような女ならアズールはこんなにもユウを愛していない。
「料理は素材の味を生かすのも大事ですね。まぁ・・・でも少し物足りないでしょうから余っているトマトを今からそちらに持って行きます。彩も必要でしょう」
別の料理なんて持って行かない。その代わり少しでも腹の足しになりそうな物を持って行けてついでにユウと会う口実にもなる。サラダの材料となる生野菜のストックがたくさんあるアズールは冷蔵庫からいくつか取り出すと袋に詰めた。
「え?アズール先輩悪いですよ!」
「悪くないから安心しなさい。一分以内に向かいます」
「また転移魔法使うー・・・。ブロットぉ」
「暫く大きな魔法使わないからいいんです」
「お待たせしました」
「早っ!!!」
スマホの通話口から自分の声が聞こえ変な感じがする。いつまでもスマホに繋いでいても仕方ないので通話オフ。
アズールは地べたに足を崩して座って食べているユウの目の前のもやしパスタが目に入り、なんてこった・・・と頭を押さえそうになった。シンプルがいいがシンプル過ぎる。
「ユウさん、流石に三日間とも全てもやしは・・・」
「アズール先輩からするとやっぱヤバイですよね。でも今材料がほんとなくて・・・、あと三日ですから!」
アズールからお裾分けしてもらったたくさんのトマトを早速ユウはキッチンでカットする。
そこから見えるアズールは珍しそうにもやしパスタを眺めており、ユウのフォークで少し突いていてどんな気持ちで見ているのやらと苦笑い。
トマトと分けてもらったとはいえ女子力に欠けるパスタには違いない。
他に何かあれば良かったのだが、どう探してないものはない。
「・・・・・蛸足が、ある」
「あ、貴女ねぇ・・・とんでもない事言わないでください!パスタに入れようと考えてましたね!?」
「じょ、冗談ですって!」
思わず呟いてしまった案にアズールはぎょっとした顔で思い切りユウの方を見た。さすがのユウも彼氏の足を食べるなんてことはしない。
「(そういえば蛸墨って食べられるのかな?イカ墨が食べられるなら蛸も・・・)」
手足を食べるわけじゃないし、墨なら貰えるかもしれない・・・とユウはカットし終わったトマトを皿の上に乗せてアズールの横に座る。
しかし、いくら彼女でも墨を吐いて?とは言えない。蛸の人魚相手に墨を吐いてとお願いするのはこの世界的にどういった意味合いがあるのか不明だ。もしかすると侮辱するようなことかもしれない。
「な、なんですか?僕の顔をじーっと見て」
「あ、や・・・美しいお顔だと・・・」
「あ、ありがとうございます」
愛する人に顔を見つめられ、美しいと賛辞を述べられるとアズールもまんざらでもない。
咄嗟に顔を褒めたユウは嘘はついていないもんと一瞬目を泳がせた後ふと思った。
墨は口から吐くわけだから、口の中に墨袋みたいな器官があるのかもしれないと。
なんとかして口の中を見せてもらえないだろうかと考えた結果・・・。
「先輩・・・あーーーー」
「・・・何です?僕はウツボじゃないので・・・、えっと、求愛ですか?」
突然口を大きく開けた愛しいユウに戸惑う。ウツボは口を開けると求愛ではあるが蛸はそういうわけではない。もしユウが蛸の人魚への求愛が同じくソレだと思っているなら勘違いなわけだが、男アズールはそれでも愛する彼女がそうしているなら応える。
「あ、あーーー」
「・・・うーん・・・。わかんない」
アズールは照れながら口を開けたのに当の本人は分からないと首を掲げる。
分からないのはアズールの方だというのに。
「これは直接確認するしかないか・・・」
うーん。と顎に手を置いてユウはごちる。
「先輩、キスしましょう!」
「は?え・・?キス!?」
付き合いたての初々しい関係ではないとはいえ、普段ユウからそのキスをいう言葉を聞くことはほぼない。だいたいはアズールからそういう雰囲気に持って行って蛸足を絡めていくわけだ。そんなユウからキスがしたいと強請られて断るはずもない。
暫く電話ばかりで会うのも実は久しぶりであり、アズールとしてはこのまま持ち込みたい所存。
「アズール先輩、失礼しますね」
膝立ちになりそのままズルズルとアズールに近づいて、その柔らかな髪に手を通す。いつもより積極的なユウにアズールは胸が高鳴っていた。求めるのも好きだが求められるのもいいと違う扉が開いてしまいそうで。
「ん・・・」
アズールの顔を両手で添えてそっと上を向かせると唇を重ねる。普段しないキスの仕方だ。
そのままユウは舌を出してアズールの内側の唇を撫で舐めると、嬉しくて口角を緩めながらアズールはそれを受け入れた。
「(あぁ・・・ユウさんが僕を求めてくれている!!)」
求められたかった形は違えど、アズールにしてみれば結果オーライ。
深く捻じ入れられたユウの小さな舌は内側の頬や上顎、アズールの下の裏までなぞる。
「(積極的ですね・・・、このまま押し倒してしまうのは惜しい・・・)」
されるがままアズールはユウの腰に手を回し、本能になんとか今は耐えるんだとこんな所で過去にユウに褒めてもらった努力を見せ、せめてものとしてユウの腰を撫でるだけで留まらせる。
うーん・・・墨袋は口の中じゃないのかな?なんてユウが思っているとは知らずに。
それでも小さなリップ音は止むことなくアズールの手は次第に開いたり閉じたりする。
「(耐えろ・・・耐えろ・・・。あぁ・・・、あぁー、ユウさん可愛い、大好きです!!)」
「(もう・・・無さそうだし、キスはこのぐらいに・・・・・っ!!??)」
どぷっと何かがユウの口の中に入り込み思わずアズールから離れるとアズールの口端から黒いものが垂れていた。ついでに言うと、アズールは顔面蒼白である。
「す、すみませ・・・、あぁ・・・僕としたことがつい興奮してしまって・・・」
未だに口の中にあるそれはアズールの——墨だ。口の周りが真っ黒になってしまったユウをアズールは拭いながら何度も謝罪していた。
「・・・・・・」
「・・・ユ、ユウさん?」
何も言わずにユウはすっと立ち上がると未だ顔面蒼白のアズールはもしかすると・・・と不安がよぎる。愛する人になんてことをしてしまったのだろうか、嫌われてしまったと。
興奮しすぎてしまったとはいえ、二度とこんな不快なことをしませんからとユニーク魔法に誓うので許してほしいと泣きそうになった。
「ほ、ほんとすみません・・・ユウさん、あの・・・」
「ズルズルズルズルーーー」
「・・・・はい?」
突然ユウはフォークを持つと、もやしパスタを勢いよく口の中に吸い込ませた。意味がわららずアズールはぽかんとその様子を見ていて、ユウはその間も黙々とパスタを食べて、そして白い皿は少し黒く汚したものの綺麗にパスタはなくなった。
「・・・・美味しい!!!蛸墨パスタ!!!もう一回キスしてください!」
ぱぁっと満面の笑顔で言われアズールの優れた頭でも付いていけない。
ただ一つ言えるのは自分の吐き出したものをごっくん!美味しい!と歓喜しながら飲み込んだ大好きな彼女に、アズールはどことは言わないがそっと両手で隠した。
FIN
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