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「・・・・やば、今月の支払い大丈夫かな」
学園を卒業して数年。稀にみる個性揃いの学友にもまれた元監督生のユウは当時に比べてすっかりメンタルも体力も否応なしに強くなっていた。先に卒業した彼氏のアズールは着々とその頭脳をもって商人のスキルを上げていくし、今でも面白がりその左右を譲らない双子も付いていく。そんなアズールの元に彼女であるユウは当たり前のように付いていくのだろうと誰もが思った。担任のクルーウェルだって身元引受人がアズールになるだろうと自分の同僚と彼女は安泰だななんて飲み会でこぼしていたほど。
「え?私一言もそんなこと言ってませんよ?卒業したら自立しますから」
ユウからそんな言葉が出たのは卒業する三日前。
そんな馬鹿な!とマブや先生、そしてオンボロ寮にあるユウの荷物を先に引き取りにきたアズール本人。
いや、そうなのだ。ユウはアズールと付き合っているとは言っていたが誰にもアズールのお世話になると言っていないし、何なら何故自分は進路相談をされないのだろうと不思議に思っていたぐらいであり、卒業三日前にしてその理由が明らかになっていた。
「小さな会社なんですけど、先日内定貰ったので私は就職します!」
アズールは泡を吹く勢い膝を折った。
自分が一年先に卒業した間に彼女は守られてばかりの女性じゃなくなっていた。
しかしそれはそれで、強く美しいと思ったし僕に相応しい女性ですと眼鏡のブリッジを上げる。
——アズール先輩がいないと生きていけないのでよろしくお願いします
そんな言葉を期待していたなんて言うのはアズールの秘密だ。
「給料日まであと三日なんだけど・・・もやし生活かなぁ」
きちんとユウは正社員として勤務していて安定した給料をもらっている。一人生活する分には問題ない。しかしユウは学生の頃の名残で貯金癖があった。
定期預金。この世界にもそういったものがあると知ったユウは大半をそれに回している。
散財して借金して・・・というわけではない。
「あ、パスタがあった」
もやしが駄目というわけではないが、主食とするには些か物足りない。細い帯に包まれた細長い黄色い束が輝いて見える。今夜はこのパスタを食べようと鼻歌を歌いながら深めの鍋に水を入れてコンロに火を付ける。チチチッ、チチチッと着火。少し古いコンロは火を付けるのでさえ一手間。
「よし!お湯が沸くまでどうしようかな」
換気扇を回し、鍋底がふつふつとするのを待つ。
本来ならお湯が沸くまでに食材を切ったりするが、生憎もやししかないのでまな板も包丁も使わない時短料理なのだ。
「あれ?アズール先輩から着信があった」
仕事用の鞄にスマホを入れっぱなしだったユウは愛しのアズールからの着信に折り返し電話をした。なんだかんだ適度な距離を保って二人は愛を育んでいる。
「もしもし、ユウさん?もう帰宅してますか?」
「はい。スマホ鞄に入れっぱなしで着信に気づきませんでした」
「そんな事だろうと思っていましたよ・・・。ほんと心配していいのか、しなくていいのか」
「そこは一応心配してください。か弱い彼女ですよ?」
鍋に入っていた水が沸いたのを確認すると肩と顔の間にスマホを挟み込んでパスタの帯を外す。慣れた手つきでパラパラと広げ、トングでパスタをお湯に浸からせた。
「か弱い・・・ですか。先日あの双子に僕を休ませるように仕組んだのはどこの誰ですか?あの二人を脅しかけるなんて貴女ぐらいなもんですよ」
「ふふっ。珊瑚の海に知り合いが増えたので、リーチ先輩方のお父様と繋がることが出来ましてね」
長年彼らと繋がっていると両親たちとも顔見知りになる。物怖じしないユウの態度にアズールの母親や双子たちの両親にも気に入られるほどの鉄のハート。双子のお父様にご相談すれば後の祭りというわけだ。具体的な内容はアズールは聞いていないが、暫くは仕事が捗り一週間ほどまとまった休暇が取れた。
「“か弱い”彼女を僕も怒らせないようにしないといけませんね」
「私はそんなすぐには怒りませんよ?・・・・あぁ!!!」
「どうしました!?」
突然のユウの大きな声にアズールも声を上げる。
「すみません。パスタを茹でてまして・・・吹きこぼれました・・・。えーん、コンロがぁぁぁ」
「な、なるほど。ほら、すぐに拭かないと」
スマホをスピーカーにしますね!とカウンターに置くとユウは追加のキッチンタオルを取りにパタパタとスリッパを鳴らす。通話口から遠ざかるユウのスリッパ音にこういう少しドジなところがアズールは可愛いと思っていたりする。本人に言うと口を尖らすから伝えることはないけども。時々聞こえる慌ただしそうにしているユウの声にアズールは少し癒されていた。
学園を卒業して数年。稀にみる個性揃いの学友にもまれた元監督生のユウは当時に比べてすっかりメンタルも体力も否応なしに強くなっていた。先に卒業した彼氏のアズールは着々とその頭脳をもって商人のスキルを上げていくし、今でも面白がりその左右を譲らない双子も付いていく。そんなアズールの元に彼女であるユウは当たり前のように付いていくのだろうと誰もが思った。担任のクルーウェルだって身元引受人がアズールになるだろうと自分の同僚と彼女は安泰だななんて飲み会でこぼしていたほど。
「え?私一言もそんなこと言ってませんよ?卒業したら自立しますから」
ユウからそんな言葉が出たのは卒業する三日前。
そんな馬鹿な!とマブや先生、そしてオンボロ寮にあるユウの荷物を先に引き取りにきたアズール本人。
いや、そうなのだ。ユウはアズールと付き合っているとは言っていたが誰にもアズールのお世話になると言っていないし、何なら何故自分は進路相談をされないのだろうと不思議に思っていたぐらいであり、卒業三日前にしてその理由が明らかになっていた。
「小さな会社なんですけど、先日内定貰ったので私は就職します!」
アズールは泡を吹く勢い膝を折った。
自分が一年先に卒業した間に彼女は守られてばかりの女性じゃなくなっていた。
しかしそれはそれで、強く美しいと思ったし僕に相応しい女性ですと眼鏡のブリッジを上げる。
——アズール先輩がいないと生きていけないのでよろしくお願いします
そんな言葉を期待していたなんて言うのはアズールの秘密だ。
「給料日まであと三日なんだけど・・・もやし生活かなぁ」
きちんとユウは正社員として勤務していて安定した給料をもらっている。一人生活する分には問題ない。しかしユウは学生の頃の名残で貯金癖があった。
定期預金。この世界にもそういったものがあると知ったユウは大半をそれに回している。
散財して借金して・・・というわけではない。
「あ、パスタがあった」
もやしが駄目というわけではないが、主食とするには些か物足りない。細い帯に包まれた細長い黄色い束が輝いて見える。今夜はこのパスタを食べようと鼻歌を歌いながら深めの鍋に水を入れてコンロに火を付ける。チチチッ、チチチッと着火。少し古いコンロは火を付けるのでさえ一手間。
「よし!お湯が沸くまでどうしようかな」
換気扇を回し、鍋底がふつふつとするのを待つ。
本来ならお湯が沸くまでに食材を切ったりするが、生憎もやししかないのでまな板も包丁も使わない時短料理なのだ。
「あれ?アズール先輩から着信があった」
仕事用の鞄にスマホを入れっぱなしだったユウは愛しのアズールからの着信に折り返し電話をした。なんだかんだ適度な距離を保って二人は愛を育んでいる。
「もしもし、ユウさん?もう帰宅してますか?」
「はい。スマホ鞄に入れっぱなしで着信に気づきませんでした」
「そんな事だろうと思っていましたよ・・・。ほんと心配していいのか、しなくていいのか」
「そこは一応心配してください。か弱い彼女ですよ?」
鍋に入っていた水が沸いたのを確認すると肩と顔の間にスマホを挟み込んでパスタの帯を外す。慣れた手つきでパラパラと広げ、トングでパスタをお湯に浸からせた。
「か弱い・・・ですか。先日あの双子に僕を休ませるように仕組んだのはどこの誰ですか?あの二人を脅しかけるなんて貴女ぐらいなもんですよ」
「ふふっ。珊瑚の海に知り合いが増えたので、リーチ先輩方のお父様と繋がることが出来ましてね」
長年彼らと繋がっていると両親たちとも顔見知りになる。物怖じしないユウの態度にアズールの母親や双子たちの両親にも気に入られるほどの鉄のハート。双子のお父様にご相談すれば後の祭りというわけだ。具体的な内容はアズールは聞いていないが、暫くは仕事が捗り一週間ほどまとまった休暇が取れた。
「“か弱い”彼女を僕も怒らせないようにしないといけませんね」
「私はそんなすぐには怒りませんよ?・・・・あぁ!!!」
「どうしました!?」
突然のユウの大きな声にアズールも声を上げる。
「すみません。パスタを茹でてまして・・・吹きこぼれました・・・。えーん、コンロがぁぁぁ」
「な、なるほど。ほら、すぐに拭かないと」
スマホをスピーカーにしますね!とカウンターに置くとユウは追加のキッチンタオルを取りにパタパタとスリッパを鳴らす。通話口から遠ざかるユウのスリッパ音にこういう少しドジなところがアズールは可愛いと思っていたりする。本人に言うと口を尖らすから伝えることはないけども。時々聞こえる慌ただしそうにしているユウの声にアズールは少し癒されていた。
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