Smile Again
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「フロイド、最近機嫌がいいですね。考案したリンゴのカスタードパイの売れ行きが好調だからですか?」
「アズールと一緒にしないでくれるー?ちょっとね、朝から癒し効果抜群のもの見てるからさ、オレ機嫌いいんだよね」
「勤務中にどれだけ機嫌が悪くなっても朝に近づくにつれ、機嫌がよくなるのはいいことです」
好き放題言ってくれるもんだとフロイドはいつもの飴を口に含む。コロコロを口の中で転がし、舐め飽きるとガリガリと嚙み砕く。機嫌がいいときに食べる飴はさらに美味い。
「それで?甲斐甲斐しいウツボのお前はこれからどうするのです?まさか彼女にこっそり花を届けて満足・・・というわけではないでしょうね」
「うーん・・・、小エビちゃんがオレのしたことで笑ってくれるならそれでいいって言うか・・・」
「フロイド、知っているかもしれませんがユウさんはモテますよ」
「知ってっし!・・・でも、今はまだ駄目。花への警戒心はなくなったけど、オレへの警戒心がなくなったわけじゃねぇから」
本当にあのフロイドか?と二人は顔を見合わせる。
慎重過ぎる行動にフロイドのユウへの気持ちの大きさを垣間見た二人は静かに傍観することにした。
「それはそうと、フロイド。今夜はラウンジを早めに切り上げて、仕事を頼みます」
「……はぁい」
あの一件以来の仕事。いい加減対価ぐらいすんなり払って欲しいものである。
身の丈以上のものを欲しがるなんてほんと馬鹿だとフロイドは呆れ、そして早朝に花を用意してすぐにオンボロ寮に届けようと、滞納者をいたぶるのは最小限に留めることにした。
荒んだ心はあの子の笑った顔が癒してくれる。
「小エビちゃん、明日の朝も楽しみにしててね」
雑魚一人なんてフロイドの足元にも及ばない。
きゅっと絞めてきゅっと捻ればあっという間。
すぐに終わらせて花の用意に行ける。そう思っていた。
「あー・・・くっそ。しくった・・・、オレかジェイドが来るの知ってたのか大人数で待機してやがった・・・」
痛めた利き腕を抑え口端に付いた血を手の甲で拭う。赤く付いた手の甲を見て舌打ちするといつものところへ向かう。最初は植物園で摘んでいたが、さすがに何本も摘んでいると管理人にバレる。先生にまで伝わるとさらに面倒ごとになる。それを避けるためにフロイドはこっそりと学園を抜けて早朝から開いている花屋を見つけそこで買わせてもらっていた。
ユウと一緒にカフェに行った時に見掛けた花を持った女性。以前ラウンジに届けられた花の包み方と同じだった為、それに見覚えがあったフロイドはネットで調べ、花市場から仕入れて店まで持って帰ってきた店主に頭を下げて購入させてもらっていた。
「兄ちゃん!?その怪我は!?」
花売りが似合う気のよさそうな白い髭が似合う老店主は咄嗟に手当てが出来る応急処置セットを取りに店内に入ろうとする。
「爺さんオレは大丈夫、ちょっとヘマしただけだから・・・・。それよりも今日のオススメの花を教えてよ。前も言ったけどオレ花にあんま詳しくないんだよね」
「・・・わかったよ。そういえば、兄ちゃんは人魚って言ってたな。そこまで大丈夫というなら私は何も言わないが・・・、そんなになってまで花を届けられる女の子は凄い愛を貰っているなぁ」
「オレが勝手にしてるだけ。でも、その子貰ったら嬉しそうな顔してんだよね。オレがした
ことで笑ってくれるなら怪我なんてなんてことないから」
「ははっ!いい男なのは顔だけじゃないなぁ!ほら、今日はこの白い花だ。この花は特別な花で種に元々微量な魔力が宿っていな。魔力がある者がこの花に魔力を注ぐと花びらの色が変わる代物だ。プロポーズに使うやつもいるぞ?」
わざとらしいウインクをする老店主にフロイドはそんな段階じゃねぇし!と少し頬を染める。その後の花の説明を聞く限り、この花には魔力を持たない人間が手にしても害がある花ではなかった。前は魔力感知をグリムに頼んでいたようだが、今はそれも省かれている。フロイドが魔力を込めたところできっとユウは気づかないだろう。
「じゃぁ、それ頂戴。いつもの一本ね」
「はいよ、いつもありがとう」
「ん、こちらこそぉー。じゃぁ、早速・・・」
花の茎の部分を軽く握り、んっ!と魔力を込めると無垢だった白はじわじわと絵の具の色が画用紙に染み出すようにその色に染めていく。
「おぉ!これは見事に美しい色だ!」
老店主の歓喜にフロイドはその色になった花を眺めながら照れくさそうにした。
ユウに喜んで欲しい。ただそれだけを願った。
無茶をして急いで学園に戻ってきたせいで腕の痛みは増していた。人魚に戻って療養した方が完治は早い。それでも自分の寮よりも今はオンボロ寮へ行くのが先。
そろそろユウがオンボロ寮から出て登校する時間。時間に真面目なユウはいつも同じ時間に出てくるのだ。そのおかげでフロイドはタイミングよく玄関前に花を置ける。
それにしても今回の花はあからさまな色になったわけで、もしかしたら何か気づかれるかもしれない。バレてしまうとこれからの花だって飾ってもらえなくなるのではと少し不安になる。
「あれ?小エビちゃん・・・もう、玄関出てる?いつもより早いじゃん。・・・ってか、あの男誰・・・」
オンボロ寮の周りに生えている草に身を潜め、気配をスッと消す。
玄関前にはキラキラした笑顔で笑っているユウがヘラヘラと鼻を伸ばした男と談笑していた。フロイドは飛び出してしまいそうな気持ちを抑え、耳を澄ます。
「い、いやぁーー!!バ、バレてしまったぁ!!」
「こんな時間にオンボロ寮を通る人なんていないから、人影が見えたので思い切って声掛けてみてよかったです!いつも置いてくれる花、あなたが置いてくれたんですね!」
「そ、そうなんだよー!いやぁー恥ずかしいなぁ!」
————は??
「てっきり私は妖精さんの仕業かなぁと思ってたので、びっくりです。いつも素敵なお花を届けてくれてありがとうございます!」
————違う・・・違う・・・違う!!
「今はあまり時間がないのでよければ放課後オンボロ寮でお茶しませんか?お礼もしたいのでクッキーも焼きますね」
「え!?俺をオンボロ寮に入れてくれるの?君の近くにいつも怖い奴いたじゃん、大丈夫なの?」
「え、誰の事ですか?そんな事よりも今まで頂いたお礼をしていだけですし気にしないでください」
「あ、ううん。へ、へぇー・・・女の子一人の寮にねぇ・・・ははっ!」
————ふっっっざけんな!花は全部オレが用意して小エビちゃんに届けたものだし!あいつの今の顔絶対何か企んでるだろ!?小エビちゃんお人好しだから気づいてねぇ!!
「あ、あのさ・・・、一緒に俺とこのまま登校しない?」
「いいんですか!じゃぁ、急いで用意してきますね!あ、グリム・・・急いで起こさなくちゃ・・・!」
まるで好きな人に対するようなユウの態度にフロイドは沸々としてくる。
しかしそれ以上にヘラヘラとしている男の方だ。どういう理由でオンボロ寮の近くにいたのか不明だが、フロイドが甲斐甲斐しく通っていたオンボロ寮へのお届けものをあっさりとその男は自分だと言い切っていた。
朝の登校、放課後のオンボロ寮でのお茶会にユウ手作りのクッキー。いつもいるマブたちではない男がオンボロ寮に入ろうとしている。
どうみても信頼に値しない男だとフロイドはその場から立ち上がった。
ユウに嫌われるかもしれない。でも、ユウが泣くようなことがあれば尾びれを切ったって後悔しきれないのだ。
優先するのは自分の立場よりも大好きなユウ。
「なぁ・・・、お前さぁ」
「フ、フロイド・リーチ!?さ、最近は監督生の周りにいないって聞いてたのに・・・」
「あー、そう。そう言う事?オレが小エビちゃんと一緒にいなくなったから近づこうとしたわけねぇ。早くからオンボロ寮に覗きにでもしに来たの?分かるよぉ、小エビちゃん小さくて可愛いもんねぇ。好きになっちゃうよねぇ。でもさ・・・、小エビちゃんはオレのもん。鼻の下伸ばしてオンボロ寮に入ろうなんて、嘘までついて・・・・ま、もう分かるよなぁ!!」
男の肩を掴むと鳩尾にフロイドは思いっきり膝を入れた。
何かが潰れたような声を上げると男はごろごろと地面を転がり、はくはくと口から涎を垂らしながらのたうち回る。
瞳孔が細くなったフロイドと目が合った男はポロポロと涙を流し出した。
「フロイド先輩!!!何してるんですか!!!」
こうなることは分かっていた。
ジェイドやアズールみたいにうまく立ち回るなんてフロイドには出来ない。すぐにでもこの男を排除しなければ、きっと放課後のユウは一生物の傷を負っていたかもしれない。
花を贈って笑ってもらって、いつかフロイドは自分が怖くない人魚だと認識してほしいと思っていた。そもそも花を贈るなんてらしくなかったのだ。
昨夜の仕事で腕は痛い、でも心はもっと痛い。
「フロイド先輩その人になんてことするんですか!この人はフロイド先輩と違って優しくて、私にいつも花を贈ってくれるような心の綺麗な人なんですよ!」
あー、痛い。足先から泡になりそう。
「ぼ、暴力ばかりするフロイド先輩なんて・・・!!」
その先の台詞は聞きたくなかったなぁ。あは・・・。
なんで小エビちゃんが泣くんだよ。
——小エビちゃんは笑って。オレは、もう疲れちゃった。
「アズールと一緒にしないでくれるー?ちょっとね、朝から癒し効果抜群のもの見てるからさ、オレ機嫌いいんだよね」
「勤務中にどれだけ機嫌が悪くなっても朝に近づくにつれ、機嫌がよくなるのはいいことです」
好き放題言ってくれるもんだとフロイドはいつもの飴を口に含む。コロコロを口の中で転がし、舐め飽きるとガリガリと嚙み砕く。機嫌がいいときに食べる飴はさらに美味い。
「それで?甲斐甲斐しいウツボのお前はこれからどうするのです?まさか彼女にこっそり花を届けて満足・・・というわけではないでしょうね」
「うーん・・・、小エビちゃんがオレのしたことで笑ってくれるならそれでいいって言うか・・・」
「フロイド、知っているかもしれませんがユウさんはモテますよ」
「知ってっし!・・・でも、今はまだ駄目。花への警戒心はなくなったけど、オレへの警戒心がなくなったわけじゃねぇから」
本当にあのフロイドか?と二人は顔を見合わせる。
慎重過ぎる行動にフロイドのユウへの気持ちの大きさを垣間見た二人は静かに傍観することにした。
「それはそうと、フロイド。今夜はラウンジを早めに切り上げて、仕事を頼みます」
「……はぁい」
あの一件以来の仕事。いい加減対価ぐらいすんなり払って欲しいものである。
身の丈以上のものを欲しがるなんてほんと馬鹿だとフロイドは呆れ、そして早朝に花を用意してすぐにオンボロ寮に届けようと、滞納者をいたぶるのは最小限に留めることにした。
荒んだ心はあの子の笑った顔が癒してくれる。
「小エビちゃん、明日の朝も楽しみにしててね」
雑魚一人なんてフロイドの足元にも及ばない。
きゅっと絞めてきゅっと捻ればあっという間。
すぐに終わらせて花の用意に行ける。そう思っていた。
「あー・・・くっそ。しくった・・・、オレかジェイドが来るの知ってたのか大人数で待機してやがった・・・」
痛めた利き腕を抑え口端に付いた血を手の甲で拭う。赤く付いた手の甲を見て舌打ちするといつものところへ向かう。最初は植物園で摘んでいたが、さすがに何本も摘んでいると管理人にバレる。先生にまで伝わるとさらに面倒ごとになる。それを避けるためにフロイドはこっそりと学園を抜けて早朝から開いている花屋を見つけそこで買わせてもらっていた。
ユウと一緒にカフェに行った時に見掛けた花を持った女性。以前ラウンジに届けられた花の包み方と同じだった為、それに見覚えがあったフロイドはネットで調べ、花市場から仕入れて店まで持って帰ってきた店主に頭を下げて購入させてもらっていた。
「兄ちゃん!?その怪我は!?」
花売りが似合う気のよさそうな白い髭が似合う老店主は咄嗟に手当てが出来る応急処置セットを取りに店内に入ろうとする。
「爺さんオレは大丈夫、ちょっとヘマしただけだから・・・・。それよりも今日のオススメの花を教えてよ。前も言ったけどオレ花にあんま詳しくないんだよね」
「・・・わかったよ。そういえば、兄ちゃんは人魚って言ってたな。そこまで大丈夫というなら私は何も言わないが・・・、そんなになってまで花を届けられる女の子は凄い愛を貰っているなぁ」
「オレが勝手にしてるだけ。でも、その子貰ったら嬉しそうな顔してんだよね。オレがした
ことで笑ってくれるなら怪我なんてなんてことないから」
「ははっ!いい男なのは顔だけじゃないなぁ!ほら、今日はこの白い花だ。この花は特別な花で種に元々微量な魔力が宿っていな。魔力がある者がこの花に魔力を注ぐと花びらの色が変わる代物だ。プロポーズに使うやつもいるぞ?」
わざとらしいウインクをする老店主にフロイドはそんな段階じゃねぇし!と少し頬を染める。その後の花の説明を聞く限り、この花には魔力を持たない人間が手にしても害がある花ではなかった。前は魔力感知をグリムに頼んでいたようだが、今はそれも省かれている。フロイドが魔力を込めたところできっとユウは気づかないだろう。
「じゃぁ、それ頂戴。いつもの一本ね」
「はいよ、いつもありがとう」
「ん、こちらこそぉー。じゃぁ、早速・・・」
花の茎の部分を軽く握り、んっ!と魔力を込めると無垢だった白はじわじわと絵の具の色が画用紙に染み出すようにその色に染めていく。
「おぉ!これは見事に美しい色だ!」
老店主の歓喜にフロイドはその色になった花を眺めながら照れくさそうにした。
ユウに喜んで欲しい。ただそれだけを願った。
無茶をして急いで学園に戻ってきたせいで腕の痛みは増していた。人魚に戻って療養した方が完治は早い。それでも自分の寮よりも今はオンボロ寮へ行くのが先。
そろそろユウがオンボロ寮から出て登校する時間。時間に真面目なユウはいつも同じ時間に出てくるのだ。そのおかげでフロイドはタイミングよく玄関前に花を置ける。
それにしても今回の花はあからさまな色になったわけで、もしかしたら何か気づかれるかもしれない。バレてしまうとこれからの花だって飾ってもらえなくなるのではと少し不安になる。
「あれ?小エビちゃん・・・もう、玄関出てる?いつもより早いじゃん。・・・ってか、あの男誰・・・」
オンボロ寮の周りに生えている草に身を潜め、気配をスッと消す。
玄関前にはキラキラした笑顔で笑っているユウがヘラヘラと鼻を伸ばした男と談笑していた。フロイドは飛び出してしまいそうな気持ちを抑え、耳を澄ます。
「い、いやぁーー!!バ、バレてしまったぁ!!」
「こんな時間にオンボロ寮を通る人なんていないから、人影が見えたので思い切って声掛けてみてよかったです!いつも置いてくれる花、あなたが置いてくれたんですね!」
「そ、そうなんだよー!いやぁー恥ずかしいなぁ!」
————は??
「てっきり私は妖精さんの仕業かなぁと思ってたので、びっくりです。いつも素敵なお花を届けてくれてありがとうございます!」
————違う・・・違う・・・違う!!
「今はあまり時間がないのでよければ放課後オンボロ寮でお茶しませんか?お礼もしたいのでクッキーも焼きますね」
「え!?俺をオンボロ寮に入れてくれるの?君の近くにいつも怖い奴いたじゃん、大丈夫なの?」
「え、誰の事ですか?そんな事よりも今まで頂いたお礼をしていだけですし気にしないでください」
「あ、ううん。へ、へぇー・・・女の子一人の寮にねぇ・・・ははっ!」
————ふっっっざけんな!花は全部オレが用意して小エビちゃんに届けたものだし!あいつの今の顔絶対何か企んでるだろ!?小エビちゃんお人好しだから気づいてねぇ!!
「あ、あのさ・・・、一緒に俺とこのまま登校しない?」
「いいんですか!じゃぁ、急いで用意してきますね!あ、グリム・・・急いで起こさなくちゃ・・・!」
まるで好きな人に対するようなユウの態度にフロイドは沸々としてくる。
しかしそれ以上にヘラヘラとしている男の方だ。どういう理由でオンボロ寮の近くにいたのか不明だが、フロイドが甲斐甲斐しく通っていたオンボロ寮へのお届けものをあっさりとその男は自分だと言い切っていた。
朝の登校、放課後のオンボロ寮でのお茶会にユウ手作りのクッキー。いつもいるマブたちではない男がオンボロ寮に入ろうとしている。
どうみても信頼に値しない男だとフロイドはその場から立ち上がった。
ユウに嫌われるかもしれない。でも、ユウが泣くようなことがあれば尾びれを切ったって後悔しきれないのだ。
優先するのは自分の立場よりも大好きなユウ。
「なぁ・・・、お前さぁ」
「フ、フロイド・リーチ!?さ、最近は監督生の周りにいないって聞いてたのに・・・」
「あー、そう。そう言う事?オレが小エビちゃんと一緒にいなくなったから近づこうとしたわけねぇ。早くからオンボロ寮に覗きにでもしに来たの?分かるよぉ、小エビちゃん小さくて可愛いもんねぇ。好きになっちゃうよねぇ。でもさ・・・、小エビちゃんはオレのもん。鼻の下伸ばしてオンボロ寮に入ろうなんて、嘘までついて・・・・ま、もう分かるよなぁ!!」
男の肩を掴むと鳩尾にフロイドは思いっきり膝を入れた。
何かが潰れたような声を上げると男はごろごろと地面を転がり、はくはくと口から涎を垂らしながらのたうち回る。
瞳孔が細くなったフロイドと目が合った男はポロポロと涙を流し出した。
「フロイド先輩!!!何してるんですか!!!」
こうなることは分かっていた。
ジェイドやアズールみたいにうまく立ち回るなんてフロイドには出来ない。すぐにでもこの男を排除しなければ、きっと放課後のユウは一生物の傷を負っていたかもしれない。
花を贈って笑ってもらって、いつかフロイドは自分が怖くない人魚だと認識してほしいと思っていた。そもそも花を贈るなんてらしくなかったのだ。
昨夜の仕事で腕は痛い、でも心はもっと痛い。
「フロイド先輩その人になんてことするんですか!この人はフロイド先輩と違って優しくて、私にいつも花を贈ってくれるような心の綺麗な人なんですよ!」
あー、痛い。足先から泡になりそう。
「ぼ、暴力ばかりするフロイド先輩なんて・・・!!」
その先の台詞は聞きたくなかったなぁ。あは・・・。
なんで小エビちゃんが泣くんだよ。
——小エビちゃんは笑って。オレは、もう疲れちゃった。