Smile Again
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「グリム、私の分のパイ食べていいよ」
「いいのか!?オレ様、遠慮って言葉知らねぇからもう返してやらねぇんだゾ!」
本日の安価お手頃Cランチにはミートパイが皿に盛られていた。お手頃だというのにボリューミーで、飛行術のあとのランチなら本来はぺろりと平らげてしまう。
タイミングが悪かったのかパイだ。
中身も形も違うのにパイというだけであの時一緒にフロイドと麓の街に降りた時に案内されたカフェでの静かで楽しいひと時を思い出すのと同時に、昨日のフロイドの仕事の現場を目撃してしまった衝撃で食欲は一気になくなっていしまっていた。
「おい、ユウ。朝から顔色悪いぞ?しっかり食わねぇと昼からの授業もこなせないぞ」
「うん、そうなんだけどね。今日はちょっとあまり食欲無くて・・・ありがとうデュース」
「はいはい、いい子ちゃんデュースは黙ってな。ユウ、ちょっとオレらの方見て」
「・・・・あっははは!!ちょっと!エースってば何してるのよ!!」
「お、おい!エースやめろ!」
「デュースくーん、よく似合ってるぞー、あははっ!」
「あははは!!お腹痛――い!!」
「フロイド、昨日の仕事は少しやりすぎだ。違反者とはいえ殺してしまっては元も子もない。全く・・・フロイドのせいで僕のブロットが少したまってしまいました」
「ごめんてー」
「アズールの治癒魔法のおかげで彼の顔はほぼ元に戻りましたね。さきほど、対価を頂けたのでもう彼には用がありません」
マフィアの隠ぺい工作の会話にしか聞こえないオクタヴィネルの三人の会話に廊下を歩く人々は道を譲る。
昨日の一件で三人は食堂へ行くのがいつもより遅れてしまっていた。
「あー、腹減ったぁ。・・・・あ、小エビちゃんがいる」
「ほんとユウさんたちはいつでも賑やかですね。彼女の笑い声がここまで聞こえますよ」
やれやれとアズールはすっかり出来上がってしまった食堂の行列に並ぶ。
フロイドは大笑いしているユウをじっと見る。エースが用意したのであろう変顔眼鏡をデュースにかけてそれを見たユウがお腹を押さえながら笑っているのだ。自分といる時は比較的上品に笑っているイメージで、同学年の親友といるとあんなに砕けて笑っているのかと悔しさが沸く。
「オレ、ちょっと列抜けるからオレの分も頼んどいてー」
「あ!こらっ、フロイドっ!!」
「おやおや、何やら面白そうな展開の予感がします」
「・・・僕には面白い展開になる気がしません」
大きくため息を付きながらアズールはフロイドの分のトレーを持ち上げた。
「小エビちゃん、なぁにしてんの?ちょー、楽しそうに笑ってんじゃん」
るんるんと目を細めてユウの横にいたグリムをひょいっと抱えてグリムのいた場所にフロイドが座る。当のグリムはユウに貰ったパイを口に含んでいて大きな塊を飲み込みそうになり咽ていた。
「あ、フロイド先輩・・・・」
突然現れたフロイドにユウはすんと笑顔が消える。フロイドが来たからと言って困るような話でも内容でもない。誰が見ても笑って終わるだけの内容なのに、なぜかどう答えればいいのか分からなくなったのだ。
「どうしたの小エビちゃん?顔色あんま良くないじゃん。さっき笑ってたときはいい顔してたのに」
「あ、あんまり食欲がないせいかもしれません・・・」
「えー・・・、んじゃオレが食欲沸くようなメニューご馳走してやろっか?丁度新作のデザート考えてたんだよねー!ほら、この前一緒に食べたアップルパイあるじゃん?それでリンゴを使ったデザートを作ろうと思って!」
「あ・・・、えっとお気持ちだけ頂きますね。私、次の授業当番なのでお先に失礼します」
「そっかー。うん、気が向いたらいつでも言ってよ」
ぺこりと軽く頭を下げるとフロイドの膝に座っていたグリムをそっと抱きかかえ、今度は自分が座っていたところに座らせる。これ以上はここにいるつもりはないと言われたようで、フロイドの眉は八の字に下がった。
「・・・なぁ、エース。ユウって今日当番だっけ?」
「シーーーー!!!!」
慌ててエースはデュースの口を押さえ、ユウのさっきの態度にフロイドが自分たちに八つ当たりしないだろうかとゆっくりと横目でフロイドを覗き見る。
しかし憂さ晴らしとは縁遠い、項垂れるような今にも泣いてしまいそうな、そこには失恋した人魚がそこにいた。
昼食後、フロイドは勿論授業に出席する気分にはなれず、お気に入りの木の上で昼寝をしていた。テストがあった気がするが今はそれどころではない。
「小エビちゃんのあの怯えた目・・・。絶対あの一件のせいじゃん。あんなにケラケラ笑ってたのにオレが来た瞬間に笑わなくなるとか・・・・ショック過ぎるし」
フロイドの大きな巨体を支える幹に縋るよう腕を回しあの時のユウの目を思い出す。まるで自分がフロイドにそうされるかのような。例えユウがそうだったとしてもフロイドがユウに手を上げることなんて有り得ない。なんなら肩代わりをしてやってもいいほど。
大きな口を開けてケラケラ笑うのも、カフェでおしとやかに微笑む姿もフロイドはもう知ってしまっている。どの笑い方をしたって、笑わせるのは自分でありたい。
「・・・・よぉし、やるかぁ!」
薄いパジャマを脱いで制服に着替え、今日も遅刻をしないようにバッチリ準備をする。
オンボロ寮にいるゴーストたちにもいつも偉いねと褒めてもらい、えへへと得意げ。
しかし二階はグリムのふなぁーー!!という声が下の階まで聞こえてきて、ユウは寝坊助親分に肩を下げる。
「グリムー、遅刻しちゃうよー!早くー!」
「ま、待って欲しいんだゾ!!朝メシのトーストだけは絶対食ってやるー!」
寝坊しても食い意地が張っているグリムにユウは仕方がないなぁ・・・と、ひとまず外の空気でも吸おうかと玄関の扉を開けた。
冬の朝の匂いは好き。だけども学園内は空調が一定。寒いのは苦手だけど、扉を開けた瞬間に切り替わる冬の朝の風情がいい。
「・・・・・・花?」
冬の匂いでもなく、空気の匂いでもなくそこには少しだけ香る小さな花がぽつんを置かれてあった。
「なんでこんなところに花があるの?飛んできた・・・にしては大きいし・・・」
オンボロ寮付近には生えていない花。どこからか飛んできたにしては茎は細くない。人の手が加わって茎が切られている。落とし物とも考えにくいそれにふとユウは何か悪戯の魔法がかけられているのではないかと、触れようとした手を止めた。
「子分、お待たせなんだゾー!って、お前何してんだゾ?」
「やっと来た!グリムあのね、この花から何か魔力感じたりする?」
「魔力―?んー、そんなものは感じられねぇな。ただの花なんだゾ!」
「良かった!普通のお花なら触れても大丈夫そうね」
そう言うと、ユウがしゃがんで両手をそっと抱き上げるようにして花を持ち上げる。
しっかりとした茎に、ぴんと張った花びら。まだまだ元気な状態だけど、このまま置いておくには忍びない。お洒落な花瓶なんてないけど、急いでキッチンに戻ってコップに水を張ってあげたほうが良さそう。
「ふふっ、新鮮なお水をあげようね」
「おいっ、子分!遅刻するんだゾ!」
「急いで行くから先に行っててー!」
にこにことしながらキッチンへと消えていったユウに今度は立場が変わったグリムはその小さな腕を組んで鼻から息を漏らしていた。
「・・・・魔力はない・・・・けど、匂いはしたんだゾ」
オレ様は気遣いの天才!とグリムは仕方のない子分をきちんと待って、そしていつかその花の持ち主からきっちり礼を貰おうと、頭の中で早速リストを作り出したのだった。
「いいのか!?オレ様、遠慮って言葉知らねぇからもう返してやらねぇんだゾ!」
本日の安価お手頃Cランチにはミートパイが皿に盛られていた。お手頃だというのにボリューミーで、飛行術のあとのランチなら本来はぺろりと平らげてしまう。
タイミングが悪かったのかパイだ。
中身も形も違うのにパイというだけであの時一緒にフロイドと麓の街に降りた時に案内されたカフェでの静かで楽しいひと時を思い出すのと同時に、昨日のフロイドの仕事の現場を目撃してしまった衝撃で食欲は一気になくなっていしまっていた。
「おい、ユウ。朝から顔色悪いぞ?しっかり食わねぇと昼からの授業もこなせないぞ」
「うん、そうなんだけどね。今日はちょっとあまり食欲無くて・・・ありがとうデュース」
「はいはい、いい子ちゃんデュースは黙ってな。ユウ、ちょっとオレらの方見て」
「・・・・あっははは!!ちょっと!エースってば何してるのよ!!」
「お、おい!エースやめろ!」
「デュースくーん、よく似合ってるぞー、あははっ!」
「あははは!!お腹痛――い!!」
「フロイド、昨日の仕事は少しやりすぎだ。違反者とはいえ殺してしまっては元も子もない。全く・・・フロイドのせいで僕のブロットが少したまってしまいました」
「ごめんてー」
「アズールの治癒魔法のおかげで彼の顔はほぼ元に戻りましたね。さきほど、対価を頂けたのでもう彼には用がありません」
マフィアの隠ぺい工作の会話にしか聞こえないオクタヴィネルの三人の会話に廊下を歩く人々は道を譲る。
昨日の一件で三人は食堂へ行くのがいつもより遅れてしまっていた。
「あー、腹減ったぁ。・・・・あ、小エビちゃんがいる」
「ほんとユウさんたちはいつでも賑やかですね。彼女の笑い声がここまで聞こえますよ」
やれやれとアズールはすっかり出来上がってしまった食堂の行列に並ぶ。
フロイドは大笑いしているユウをじっと見る。エースが用意したのであろう変顔眼鏡をデュースにかけてそれを見たユウがお腹を押さえながら笑っているのだ。自分といる時は比較的上品に笑っているイメージで、同学年の親友といるとあんなに砕けて笑っているのかと悔しさが沸く。
「オレ、ちょっと列抜けるからオレの分も頼んどいてー」
「あ!こらっ、フロイドっ!!」
「おやおや、何やら面白そうな展開の予感がします」
「・・・僕には面白い展開になる気がしません」
大きくため息を付きながらアズールはフロイドの分のトレーを持ち上げた。
「小エビちゃん、なぁにしてんの?ちょー、楽しそうに笑ってんじゃん」
るんるんと目を細めてユウの横にいたグリムをひょいっと抱えてグリムのいた場所にフロイドが座る。当のグリムはユウに貰ったパイを口に含んでいて大きな塊を飲み込みそうになり咽ていた。
「あ、フロイド先輩・・・・」
突然現れたフロイドにユウはすんと笑顔が消える。フロイドが来たからと言って困るような話でも内容でもない。誰が見ても笑って終わるだけの内容なのに、なぜかどう答えればいいのか分からなくなったのだ。
「どうしたの小エビちゃん?顔色あんま良くないじゃん。さっき笑ってたときはいい顔してたのに」
「あ、あんまり食欲がないせいかもしれません・・・」
「えー・・・、んじゃオレが食欲沸くようなメニューご馳走してやろっか?丁度新作のデザート考えてたんだよねー!ほら、この前一緒に食べたアップルパイあるじゃん?それでリンゴを使ったデザートを作ろうと思って!」
「あ・・・、えっとお気持ちだけ頂きますね。私、次の授業当番なのでお先に失礼します」
「そっかー。うん、気が向いたらいつでも言ってよ」
ぺこりと軽く頭を下げるとフロイドの膝に座っていたグリムをそっと抱きかかえ、今度は自分が座っていたところに座らせる。これ以上はここにいるつもりはないと言われたようで、フロイドの眉は八の字に下がった。
「・・・なぁ、エース。ユウって今日当番だっけ?」
「シーーーー!!!!」
慌ててエースはデュースの口を押さえ、ユウのさっきの態度にフロイドが自分たちに八つ当たりしないだろうかとゆっくりと横目でフロイドを覗き見る。
しかし憂さ晴らしとは縁遠い、項垂れるような今にも泣いてしまいそうな、そこには失恋した人魚がそこにいた。
昼食後、フロイドは勿論授業に出席する気分にはなれず、お気に入りの木の上で昼寝をしていた。テストがあった気がするが今はそれどころではない。
「小エビちゃんのあの怯えた目・・・。絶対あの一件のせいじゃん。あんなにケラケラ笑ってたのにオレが来た瞬間に笑わなくなるとか・・・・ショック過ぎるし」
フロイドの大きな巨体を支える幹に縋るよう腕を回しあの時のユウの目を思い出す。まるで自分がフロイドにそうされるかのような。例えユウがそうだったとしてもフロイドがユウに手を上げることなんて有り得ない。なんなら肩代わりをしてやってもいいほど。
大きな口を開けてケラケラ笑うのも、カフェでおしとやかに微笑む姿もフロイドはもう知ってしまっている。どの笑い方をしたって、笑わせるのは自分でありたい。
「・・・・よぉし、やるかぁ!」
薄いパジャマを脱いで制服に着替え、今日も遅刻をしないようにバッチリ準備をする。
オンボロ寮にいるゴーストたちにもいつも偉いねと褒めてもらい、えへへと得意げ。
しかし二階はグリムのふなぁーー!!という声が下の階まで聞こえてきて、ユウは寝坊助親分に肩を下げる。
「グリムー、遅刻しちゃうよー!早くー!」
「ま、待って欲しいんだゾ!!朝メシのトーストだけは絶対食ってやるー!」
寝坊しても食い意地が張っているグリムにユウは仕方がないなぁ・・・と、ひとまず外の空気でも吸おうかと玄関の扉を開けた。
冬の朝の匂いは好き。だけども学園内は空調が一定。寒いのは苦手だけど、扉を開けた瞬間に切り替わる冬の朝の風情がいい。
「・・・・・・花?」
冬の匂いでもなく、空気の匂いでもなくそこには少しだけ香る小さな花がぽつんを置かれてあった。
「なんでこんなところに花があるの?飛んできた・・・にしては大きいし・・・」
オンボロ寮付近には生えていない花。どこからか飛んできたにしては茎は細くない。人の手が加わって茎が切られている。落とし物とも考えにくいそれにふとユウは何か悪戯の魔法がかけられているのではないかと、触れようとした手を止めた。
「子分、お待たせなんだゾー!って、お前何してんだゾ?」
「やっと来た!グリムあのね、この花から何か魔力感じたりする?」
「魔力―?んー、そんなものは感じられねぇな。ただの花なんだゾ!」
「良かった!普通のお花なら触れても大丈夫そうね」
そう言うと、ユウがしゃがんで両手をそっと抱き上げるようにして花を持ち上げる。
しっかりとした茎に、ぴんと張った花びら。まだまだ元気な状態だけど、このまま置いておくには忍びない。お洒落な花瓶なんてないけど、急いでキッチンに戻ってコップに水を張ってあげたほうが良さそう。
「ふふっ、新鮮なお水をあげようね」
「おいっ、子分!遅刻するんだゾ!」
「急いで行くから先に行っててー!」
にこにことしながらキッチンへと消えていったユウに今度は立場が変わったグリムはその小さな腕を組んで鼻から息を漏らしていた。
「・・・・魔力はない・・・・けど、匂いはしたんだゾ」
オレ様は気遣いの天才!とグリムは仕方のない子分をきちんと待って、そしていつかその花の持ち主からきっちり礼を貰おうと、頭の中で早速リストを作り出したのだった。