青空に舞うまで
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「あの会社、絶対に契約させます。ユウさんの一大事に割り込むように連絡を寄こしたのですから」
カツカツと革靴を鳴らしながら魔法士専用の魔法の鏡のある施設へ向かう。イライラとした気分半分、いまだにユウから連絡が入らないスマホにジェイドは暗くなったままの画面に映った自分の顔を見つめた。
「ユウさん、ジェイドです。遅くなってすみません」
軽めにオンボロ寮の玄関の扉をノックする。いつもならすぐに飛んで迎えてくれるのに今日は迎え出てくれる様子がない。ジェイドは再度ノックをしようとした手を止め、ノブの方へと手を下ろし回してみると玄関はジェイドを受け入れた。いつもなら不用心ですよと注意をするところだが、今回はそれをしない方が良さそうだと勘づく。オンボロ寮にある大きな窓から差し込んだ日差しが中央にあるテーブルを夕日色に変えている。そこにはソファにも座らずにテーブルに突っ伏しているユウがいた。
「ユウさん」
微動だにしないユウの髪をジェイドは優しく撫でる。それでもユウは黙ったまま。
ふとユウの足元に目を向ければスマホが無造作に転がっていて、ジェイドは一応ユウに一声掛けてスマホの画面に触れる。ロックをかけていない画面にはすぐに確認をしておきたかった情報が映し出されていた。
「不合格・・・ですか」
ジェイドのその言葉にユウは漸くぴくりと反応した。そっとユウのスマホをテーブルに置くと小さくユウがぽそぽそと言葉を綴る。ジェイドは聞き取れず、ユウと同じようにしゃがみ込んで彼女の顔の近くに耳を寄せた。
「ジェイド先輩、本当にごめんなさい。折角たくさん勉強教えてくれたのに・・・。仕事だって忙しいのにいつも励ましてくれて・・・。合格することが私に返せることだったのに。本当にごめ」
言い終わる前にジェイドはユウの言葉を塞ぐように強く抱きしめた。頭の先から全てを包むように囲い、「よく頑張りましたね」と低く穏やかな声で頭に唇を寄せるとユウは何度も頷きながらポロポロと涙を零した。
「ユウさんに渡したいものがあります」
少し落ち着いてからジェイドはユウから離れるとマジカルペンを軽く振って魔法を使った。
「ブルーローズ三本・・・」
ユウが受験に失敗しているのを見越して買ってきたのだろうか。また夢を叶える為に頑張れと。それにしたっても今渡されるのは少々辛い。ユウは複雑な心境のまま差し出された三本のブルーローズを受け取る。そして受け取った三本のバラに違和感。ユウは何が違うのだろうかと重たくなった頭を回転させ気づいた。
いつもは一本ずつ渡していた。
「ユウさん、愛しています」
「ほぇ?」
情けない声が出たユウに、ジェイドは可愛いですねと先に述べてから三本のバラの意味ですと続ける。頭が付いていけないユウは赤くなった目をパチパチと何度も瞬きをする。
「本当はユウさんが受験なんてしなくても卒業後は僕が養うつもりでした。だけど、貴女は諦めることなく勉強に励み努力をしてきました。結果は僕もとても悔しい。もっと貴女に出来る事があったのではと後悔しています」
「そんなことないです。先輩は本当に良くしてくださいました!」
髪が乱れるのをお構いなしにユウは首を何度も横に振る。止まった涙がまたほろりと零れるとジェイドは落ちる前にそっと涙を指で受け止めた。
「この悔し涙は僕の悔しい涙でもあります」
そう言うと涙が乗った指をそっと口付け涙はジェイドの中へと入っていった。
「ユウさん。先ほど、ブルーローズを三本お渡ししましたがその三本で合計何本のブルーローズになるかご存じですか?」
いつからか数えられなくなっていたユウは申し訳なさそうに頭を下げる。そんな事で怒るようなジェイドではないので、どうか顔を上げてください。と下を向いているユウの顔を覗き込む。
「108本目になりました」
「そんなに贈ってくださっていたんですね。本当に支えられました。これも・・・また意味があるのでしょうか?」
「はい、とても大切な意味です。ユウさん、学園を卒業したら結婚しましょう。一緒の家で暮らしてもっと貴女をサポートします。式はユウさんが大学を卒業するまで待ちますからご安心を。僕、貴女の為ならいくらでも待ちます」
人生どん底の今日なのに人生最高に塗り替えられたプロポーズ。目の前には三本のブルーローズなのに108本があるように見える。華やかしい青がジェイドの前に広がっていた。
実はジェイドに一本ずつ贈られる度にユウもまたジェイドへの想いを募らせていた。そして合格したらこの気持ちを伝えようと。それも相まってあの落ち込みようだったのだ。
「ジェイド先輩、私もずっと好きでした。一緒に私の夢を叶えてください」
それから数年後、夢を叶えたブルーローズはウエディングブーケとなった。花嫁に高く放り投げられるとブーケは花びらを散らしながら白い砂浜と青い海を見下ろし、二人の新たな門出を祝福した。
FIN
カツカツと革靴を鳴らしながら魔法士専用の魔法の鏡のある施設へ向かう。イライラとした気分半分、いまだにユウから連絡が入らないスマホにジェイドは暗くなったままの画面に映った自分の顔を見つめた。
「ユウさん、ジェイドです。遅くなってすみません」
軽めにオンボロ寮の玄関の扉をノックする。いつもならすぐに飛んで迎えてくれるのに今日は迎え出てくれる様子がない。ジェイドは再度ノックをしようとした手を止め、ノブの方へと手を下ろし回してみると玄関はジェイドを受け入れた。いつもなら不用心ですよと注意をするところだが、今回はそれをしない方が良さそうだと勘づく。オンボロ寮にある大きな窓から差し込んだ日差しが中央にあるテーブルを夕日色に変えている。そこにはソファにも座らずにテーブルに突っ伏しているユウがいた。
「ユウさん」
微動だにしないユウの髪をジェイドは優しく撫でる。それでもユウは黙ったまま。
ふとユウの足元に目を向ければスマホが無造作に転がっていて、ジェイドは一応ユウに一声掛けてスマホの画面に触れる。ロックをかけていない画面にはすぐに確認をしておきたかった情報が映し出されていた。
「不合格・・・ですか」
ジェイドのその言葉にユウは漸くぴくりと反応した。そっとユウのスマホをテーブルに置くと小さくユウがぽそぽそと言葉を綴る。ジェイドは聞き取れず、ユウと同じようにしゃがみ込んで彼女の顔の近くに耳を寄せた。
「ジェイド先輩、本当にごめんなさい。折角たくさん勉強教えてくれたのに・・・。仕事だって忙しいのにいつも励ましてくれて・・・。合格することが私に返せることだったのに。本当にごめ」
言い終わる前にジェイドはユウの言葉を塞ぐように強く抱きしめた。頭の先から全てを包むように囲い、「よく頑張りましたね」と低く穏やかな声で頭に唇を寄せるとユウは何度も頷きながらポロポロと涙を零した。
「ユウさんに渡したいものがあります」
少し落ち着いてからジェイドはユウから離れるとマジカルペンを軽く振って魔法を使った。
「ブルーローズ三本・・・」
ユウが受験に失敗しているのを見越して買ってきたのだろうか。また夢を叶える為に頑張れと。それにしたっても今渡されるのは少々辛い。ユウは複雑な心境のまま差し出された三本のブルーローズを受け取る。そして受け取った三本のバラに違和感。ユウは何が違うのだろうかと重たくなった頭を回転させ気づいた。
いつもは一本ずつ渡していた。
「ユウさん、愛しています」
「ほぇ?」
情けない声が出たユウに、ジェイドは可愛いですねと先に述べてから三本のバラの意味ですと続ける。頭が付いていけないユウは赤くなった目をパチパチと何度も瞬きをする。
「本当はユウさんが受験なんてしなくても卒業後は僕が養うつもりでした。だけど、貴女は諦めることなく勉強に励み努力をしてきました。結果は僕もとても悔しい。もっと貴女に出来る事があったのではと後悔しています」
「そんなことないです。先輩は本当に良くしてくださいました!」
髪が乱れるのをお構いなしにユウは首を何度も横に振る。止まった涙がまたほろりと零れるとジェイドは落ちる前にそっと涙を指で受け止めた。
「この悔し涙は僕の悔しい涙でもあります」
そう言うと涙が乗った指をそっと口付け涙はジェイドの中へと入っていった。
「ユウさん。先ほど、ブルーローズを三本お渡ししましたがその三本で合計何本のブルーローズになるかご存じですか?」
いつからか数えられなくなっていたユウは申し訳なさそうに頭を下げる。そんな事で怒るようなジェイドではないので、どうか顔を上げてください。と下を向いているユウの顔を覗き込む。
「108本目になりました」
「そんなに贈ってくださっていたんですね。本当に支えられました。これも・・・また意味があるのでしょうか?」
「はい、とても大切な意味です。ユウさん、学園を卒業したら結婚しましょう。一緒の家で暮らしてもっと貴女をサポートします。式はユウさんが大学を卒業するまで待ちますからご安心を。僕、貴女の為ならいくらでも待ちます」
人生どん底の今日なのに人生最高に塗り替えられたプロポーズ。目の前には三本のブルーローズなのに108本があるように見える。華やかしい青がジェイドの前に広がっていた。
実はジェイドに一本ずつ贈られる度にユウもまたジェイドへの想いを募らせていた。そして合格したらこの気持ちを伝えようと。それも相まってあの落ち込みようだったのだ。
「ジェイド先輩、私もずっと好きでした。一緒に私の夢を叶えてください」
それから数年後、夢を叶えたブルーローズはウエディングブーケとなった。花嫁に高く放り投げられるとブーケは花びらを散らしながら白い砂浜と青い海を見下ろし、二人の新たな門出を祝福した。
FIN
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