HONEY
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「親展フロイド・リーチ様」
ある日届いた一通の手紙。裏返せば見覚えのあるマーク。海の魔女の慈悲の精神に基づく寮である蛸足と巻貝をモチーフにしたオクタヴィネル寮のシーリングスタンプが押されている。にやりと笑った親展者のフロイドはスッとペーパーナイフで封を切る。一枚の羊皮紙に目を通し、奥のキッチンでコトコトと煮込み料理をしている愛しい人の名前を呼んだ。
「小エビちゃん!」
「はーい!ご飯はまだですよー」
「じゃなくて!あのさ、NRCの同窓会に行くよ!」
***
小エビちゃんことユウが卒業して5年ほど経った現在。在学中に恋人同士になったフロイドとユウは卒業と同時に同棲生活が始まった。身寄りのないユウにはフロイドだけが唯一頼れる存在で家族のようなもの。この五年間は在学中に比べてより密接に過ごしているだけあって知らない一面だったり新しい発見があったりと充実していた。楽しいこともあり、悲しいこともある。そして、喧嘩も・・・。
「フロイドさん、だから何回も私言いましたよね!」
「しょーがねーじゃん。だって、そういう気分になったらしたくなるじゃん」
「だからって毎回出掛ける度にそれじゃ困ります!」
「もー、小エビちゃんしつこい。オレがしたかったからいいの!小エビちゃんもいい顔してたじゃん」
「だ、だって・・・とにかく!もう、あぁいうのは止めてくださいね!」
同窓会当日。船に乗りたくなったフロイドは賢者の島まで船で行くことにした。ゆらゆらと揺れる船のデッキでそんな会話をしていて傍から見れば卑猥じみて聞こえてしまう。だが、決してそういう話ではなくて同窓会に行くのにフロイドはユウの為に新しいワンピースを買ってきたという話。フロイドが買って来てくれるワンピースはユウのドンピシャに好みでサイズもぴったり。可愛い。とても可愛いのだ。しかし、ユウに甘いフロイドは何かに理由を付けて服だったりアクセサリーを買ってくるものだから、申し訳なさからフロイドに止めてほしいと散々言ってきた。そして今回もそれ。今回の同窓会はオクタヴィネルの同窓会であってメインはフロイド。自分ではないのだから買うならフロイドが新しいスーツを買うべき。フロイド曰く、あいつらとは普段から仕事で会ってるんだし、特別感なんてないんだよね。とのこと。靴だけは以前新調してまだおろしていなかった靴を履いている。フロイドにしてみれば可愛い恋人を着飾りたいだけなのだが、オンボロ寮時代の節約癖が抜けていないせいでユウは今では立派な倹約家だった。
「フロイド、彼女はなぜあんなにプリプリと怒ってるんです?」
「さぁ~?オレが選んだワンピースが気に入らなかったんでしょー」
テーブルの上に積まれたフルーツの盛り合わせから葡萄を一粒摘まんでポイッと口に含む。フロイドは皮を出すのが面倒だからそのまま飲み込んだ。そしてフロイドの声が聞こえていたユウは、めちゃくちゃ気にいってますぅと嫌味になっていないのに嫌味を言っている風な態度でアズールは成程とすぐに察したのだった。
今も続いているモストロ・ラウンジ。経営者はアズールのままで今では雇われ店長として別の者が運営を任されている。サマーホリデー中とあって現在の寮生たちは故郷へと帰っていてオクタヴィネルは貸し切り状態。ラウンジ内は今でも交流あるアズール達を除けば久しぶりの顔ぶれ。フロイドはポケットに手を突っ込みシャンパンを時々口に含みながらラウンジ内を歩く。ユウはまだご機嫌斜めなので今はそっとしておく。これはこの5年でフロイドが学んだ彼女への対応。昔ならしつこく絡んでご機嫌を取ろうとしていたがそれでは逆効果だというのを学んだのだ。
「小エビちゃんが隣にいないと落ち着かない」
そわそわとしながら意味もなくラウンジ内を歩く。久しぶりにあった旧友と話したり、ノリで絞めてみたり、顔を見てあだ名を思い出したりしていた。
一方壁の花となっているユウはアルコールが入っていないカクテルをちびちびと飲んでいた。オクタヴィネルの知り合いはフロイド達を除けばほとんどいない。たまにジェイドが声を掛けてくれるが彼も久しぶりの友との会話が弾んでいるようで、ユウは邪魔にならないように結局壁の花に戻る。しかし壁側というのはよく全体が見渡せる。一人でいるというのもあるがフロイドがいる場所もすぐに分かる。フロイドにノリで絞められた彼は落ちかけているし、話し掛けられた彼は当時と変わらず怯えている。なんだか、学園時代の懐かしいフロイドがそこにいるようで微笑ましくなった。
「フロイドさん、楽しそうだな・・・私もそろそろ機嫌直さないと」
フロイドの対応は当たっていた。ユウは自分で機嫌を直すタイプ。
「フロイドさんのシャンパンのおかわりを持ってあっち行こうっと。・・・え、あれって」
壁の花は全体が見える。だからユウは気づいて走った。
「フロイドさん!危ない!」
「は?小エビちゃん⁉」
ユウとフロイドが持っていたグラスがガシャンと床に破片を散らす。どんっと体当たりしたユウに押されたフロイドはよろけながらも状況だけは瞬時に反応出来た。自分が着ていたスーツをユウの頭から被せ覆い隠すようにフロイドはユウの盾となった。
バシャッ
ある日届いた一通の手紙。裏返せば見覚えのあるマーク。海の魔女の慈悲の精神に基づく寮である蛸足と巻貝をモチーフにしたオクタヴィネル寮のシーリングスタンプが押されている。にやりと笑った親展者のフロイドはスッとペーパーナイフで封を切る。一枚の羊皮紙に目を通し、奥のキッチンでコトコトと煮込み料理をしている愛しい人の名前を呼んだ。
「小エビちゃん!」
「はーい!ご飯はまだですよー」
「じゃなくて!あのさ、NRCの同窓会に行くよ!」
***
小エビちゃんことユウが卒業して5年ほど経った現在。在学中に恋人同士になったフロイドとユウは卒業と同時に同棲生活が始まった。身寄りのないユウにはフロイドだけが唯一頼れる存在で家族のようなもの。この五年間は在学中に比べてより密接に過ごしているだけあって知らない一面だったり新しい発見があったりと充実していた。楽しいこともあり、悲しいこともある。そして、喧嘩も・・・。
「フロイドさん、だから何回も私言いましたよね!」
「しょーがねーじゃん。だって、そういう気分になったらしたくなるじゃん」
「だからって毎回出掛ける度にそれじゃ困ります!」
「もー、小エビちゃんしつこい。オレがしたかったからいいの!小エビちゃんもいい顔してたじゃん」
「だ、だって・・・とにかく!もう、あぁいうのは止めてくださいね!」
同窓会当日。船に乗りたくなったフロイドは賢者の島まで船で行くことにした。ゆらゆらと揺れる船のデッキでそんな会話をしていて傍から見れば卑猥じみて聞こえてしまう。だが、決してそういう話ではなくて同窓会に行くのにフロイドはユウの為に新しいワンピースを買ってきたという話。フロイドが買って来てくれるワンピースはユウのドンピシャに好みでサイズもぴったり。可愛い。とても可愛いのだ。しかし、ユウに甘いフロイドは何かに理由を付けて服だったりアクセサリーを買ってくるものだから、申し訳なさからフロイドに止めてほしいと散々言ってきた。そして今回もそれ。今回の同窓会はオクタヴィネルの同窓会であってメインはフロイド。自分ではないのだから買うならフロイドが新しいスーツを買うべき。フロイド曰く、あいつらとは普段から仕事で会ってるんだし、特別感なんてないんだよね。とのこと。靴だけは以前新調してまだおろしていなかった靴を履いている。フロイドにしてみれば可愛い恋人を着飾りたいだけなのだが、オンボロ寮時代の節約癖が抜けていないせいでユウは今では立派な倹約家だった。
「フロイド、彼女はなぜあんなにプリプリと怒ってるんです?」
「さぁ~?オレが選んだワンピースが気に入らなかったんでしょー」
テーブルの上に積まれたフルーツの盛り合わせから葡萄を一粒摘まんでポイッと口に含む。フロイドは皮を出すのが面倒だからそのまま飲み込んだ。そしてフロイドの声が聞こえていたユウは、めちゃくちゃ気にいってますぅと嫌味になっていないのに嫌味を言っている風な態度でアズールは成程とすぐに察したのだった。
今も続いているモストロ・ラウンジ。経営者はアズールのままで今では雇われ店長として別の者が運営を任されている。サマーホリデー中とあって現在の寮生たちは故郷へと帰っていてオクタヴィネルは貸し切り状態。ラウンジ内は今でも交流あるアズール達を除けば久しぶりの顔ぶれ。フロイドはポケットに手を突っ込みシャンパンを時々口に含みながらラウンジ内を歩く。ユウはまだご機嫌斜めなので今はそっとしておく。これはこの5年でフロイドが学んだ彼女への対応。昔ならしつこく絡んでご機嫌を取ろうとしていたがそれでは逆効果だというのを学んだのだ。
「小エビちゃんが隣にいないと落ち着かない」
そわそわとしながら意味もなくラウンジ内を歩く。久しぶりにあった旧友と話したり、ノリで絞めてみたり、顔を見てあだ名を思い出したりしていた。
一方壁の花となっているユウはアルコールが入っていないカクテルをちびちびと飲んでいた。オクタヴィネルの知り合いはフロイド達を除けばほとんどいない。たまにジェイドが声を掛けてくれるが彼も久しぶりの友との会話が弾んでいるようで、ユウは邪魔にならないように結局壁の花に戻る。しかし壁側というのはよく全体が見渡せる。一人でいるというのもあるがフロイドがいる場所もすぐに分かる。フロイドにノリで絞められた彼は落ちかけているし、話し掛けられた彼は当時と変わらず怯えている。なんだか、学園時代の懐かしいフロイドがそこにいるようで微笑ましくなった。
「フロイドさん、楽しそうだな・・・私もそろそろ機嫌直さないと」
フロイドの対応は当たっていた。ユウは自分で機嫌を直すタイプ。
「フロイドさんのシャンパンのおかわりを持ってあっち行こうっと。・・・え、あれって」
壁の花は全体が見える。だからユウは気づいて走った。
「フロイドさん!危ない!」
「は?小エビちゃん⁉」
ユウとフロイドが持っていたグラスがガシャンと床に破片を散らす。どんっと体当たりしたユウに押されたフロイドはよろけながらも状況だけは瞬時に反応出来た。自分が着ていたスーツをユウの頭から被せ覆い隠すようにフロイドはユウの盾となった。
バシャッ
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