爪の痕
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二人の愛の育み方はとてもゆっくりで周りが急かしたくなるほど。
あのキスから先へ進むまでは随分と時間がかかったし、それでもその時間がかかった分二人の絆はより深まっていた。
オクタヴィネルの寮長の番として学園内でも認識され、それが周りへの牽制となってユウの日常も平和そのものだった。嫌がらせは全てなくなった。
何も問題がなく、二人の関係は順調。
アズールも愛する彼女が肩見狭い思いをせずにのびのびと学園生活を送っているのは自分のおかげだと思っていたし、彼女の為なら何だってしようを思うぐらい人魚として番を想う気持ちは強かった。
「ユウさん、ユウさん」
「ユウさん、愛していますよ」
「ユウさん、僕だけを見て」
その頃ユウの心には小さな綻びがぽろぽろと出来ていた。小さな綻びは一つだったのに、アズールと過ごしていく内にまた綻びが出来る。自分で綻びを直してみようと試みたけれど、それでもその綻びは直ることはなかった。
アズールはオクタヴィネルの寮長だ。
そして成績も優秀でラウンジの運営もしていてとても忙しい。アズールは忙しい時間を割いて会いに来ていて、その時でさえ疲れた顔や仕事の愚痴ひとつ零さない。
お疲れでしょうから今日は自室でゆっくりしてくださいと言ってもユウさんと会う方が癒されますからと週に何度もオンボロ寮を訪れていた。
「ユウさんとくっついている時が一番癒されますね」
談話室のソファに座って二人でくっついている時間はユウにとってもとても大好きな時間。
彼の美しい髪の毛が肩を掠めスヤスヤと寝てしまえば、やっぱり無理して会いに来ているのではないかと心配になる。
「会いに来てくれるのは嬉しいけど、もっと私を信じて仕事の愚痴とか大変だった話とかして欲しいな。少しぐらい会えなくても私がアズール先輩を嫌ったりなんてしないのだから自分を大切にしてください。それとも、私が頼りないから・・・先輩は私に心から接してくれないのですか?」
私、寂しいです。と、陶器のような肌のアズールに頬をくっつけた。
アズールはずっと彼氏として完璧だった。
反してユウの綻びはもうどうしようもないほど広がっていた。
愛するが故、自己嫌悪に陥って次第に何故こんな自分がいいのだろうかとか他にもっと素敵な人いるのではないかと自暴自棄になる。
そして、
「そうか。私しかここでは女の子がいないからなんだ」
とんでもない考えにまで発展する。
アズールがNRCの唯一の女性だからユウを好きになったわけではない。例えそれが別の女性ならきっとアズールは興味を持たなかっただろう。計画を邪魔した小汚い雑巾のままだった。
そんな単純なことが分からなくなるぐらい自分に自信がなくなっていたし、アズールのユウを想う気持ちを無視して違った方向に立ち上がった。
この年頃の恋する女性はどこか大人びた考えになる。それが正しいことなのだと思えば行動が早い。アズールを愛しているからきっと彼にはもっと素敵な人が相応しい等と思うのだ。お人好しで人の事ばかり考えるユウには残念ながらその考えを止めてくれる「女」友達はこの学園にはいない。
「アズール先輩・・・、私と別れてください」
「は?・・・意味が分かりません。何か魔法薬でもかけられましたか?」
奇怪な顔をしてアズールがユウの額に手を当てるが熱はない。
何か面倒なユニーク魔法をかけられたのではと魔法痕跡をユウから探ってもなにも感知されない。
そうなってくるといよいよアズールも焦りの色が見えた。
「誰かに何か脅されましたか?貴女は僕が守るので安心してその人の名前を教えてください」
「違うんです。誰にも脅されていません」
「・・・もしかして、フロイドかジェイドが絡んでいますか?あいつらはすぐに悪ふざけをしますからね」
「いいえ。フロイド先輩もジェイド先輩も関係ありません」
「じゃ、じゃぁ・・・一体何なんです!?」
ユウと付き合ってから初めて彼女に対して大きな声を上げた。これにはさすがのユウもたじろぎ、アズールはすみませんとユウを抱きしめる。
「・・・ユウさん、冗談ですよね。僕は本当にユウさんを愛しているんです。そんな台詞を貴女から聞きたくない」
ユウを抱きしめるアズールの腕は震え、心なしか声まで震えている。ここで冗談でした!なんてユウが笑えばアズールはまた笑えるし、冗談でも言われたことは悲しかったから嫌というほど彼女を組み敷いて分からせようと思っていた。
「本気です。アズール先輩のことは今でも大好きですが、私には勿体なくてこんなに幸せにしてもらっていいのか分からなくて。もっと先輩が頼れるような大人な女性がいいような気がするんです。何も持たない私なんてきっと物足りなくなります」
「・・・・本気で言っていますか?僕が貴女を物足りなくなると。頼っていないと」
「はい」
それは自分に言い聞かすように。
何度も自分に聞いて自分で出したユウの結果だった。
きちんと話が出来たのだ。一方的ではない。
「僕は貴女が望むことを全てしてあげたい。分かりました・・・別れましょう」
そうしてユウとアズールは付き合っていた関係に終止符を打った。
続く
あのキスから先へ進むまでは随分と時間がかかったし、それでもその時間がかかった分二人の絆はより深まっていた。
オクタヴィネルの寮長の番として学園内でも認識され、それが周りへの牽制となってユウの日常も平和そのものだった。嫌がらせは全てなくなった。
何も問題がなく、二人の関係は順調。
アズールも愛する彼女が肩見狭い思いをせずにのびのびと学園生活を送っているのは自分のおかげだと思っていたし、彼女の為なら何だってしようを思うぐらい人魚として番を想う気持ちは強かった。
「ユウさん、ユウさん」
「ユウさん、愛していますよ」
「ユウさん、僕だけを見て」
その頃ユウの心には小さな綻びがぽろぽろと出来ていた。小さな綻びは一つだったのに、アズールと過ごしていく内にまた綻びが出来る。自分で綻びを直してみようと試みたけれど、それでもその綻びは直ることはなかった。
アズールはオクタヴィネルの寮長だ。
そして成績も優秀でラウンジの運営もしていてとても忙しい。アズールは忙しい時間を割いて会いに来ていて、その時でさえ疲れた顔や仕事の愚痴ひとつ零さない。
お疲れでしょうから今日は自室でゆっくりしてくださいと言ってもユウさんと会う方が癒されますからと週に何度もオンボロ寮を訪れていた。
「ユウさんとくっついている時が一番癒されますね」
談話室のソファに座って二人でくっついている時間はユウにとってもとても大好きな時間。
彼の美しい髪の毛が肩を掠めスヤスヤと寝てしまえば、やっぱり無理して会いに来ているのではないかと心配になる。
「会いに来てくれるのは嬉しいけど、もっと私を信じて仕事の愚痴とか大変だった話とかして欲しいな。少しぐらい会えなくても私がアズール先輩を嫌ったりなんてしないのだから自分を大切にしてください。それとも、私が頼りないから・・・先輩は私に心から接してくれないのですか?」
私、寂しいです。と、陶器のような肌のアズールに頬をくっつけた。
アズールはずっと彼氏として完璧だった。
反してユウの綻びはもうどうしようもないほど広がっていた。
愛するが故、自己嫌悪に陥って次第に何故こんな自分がいいのだろうかとか他にもっと素敵な人いるのではないかと自暴自棄になる。
そして、
「そうか。私しかここでは女の子がいないからなんだ」
とんでもない考えにまで発展する。
アズールがNRCの唯一の女性だからユウを好きになったわけではない。例えそれが別の女性ならきっとアズールは興味を持たなかっただろう。計画を邪魔した小汚い雑巾のままだった。
そんな単純なことが分からなくなるぐらい自分に自信がなくなっていたし、アズールのユウを想う気持ちを無視して違った方向に立ち上がった。
この年頃の恋する女性はどこか大人びた考えになる。それが正しいことなのだと思えば行動が早い。アズールを愛しているからきっと彼にはもっと素敵な人が相応しい等と思うのだ。お人好しで人の事ばかり考えるユウには残念ながらその考えを止めてくれる「女」友達はこの学園にはいない。
「アズール先輩・・・、私と別れてください」
「は?・・・意味が分かりません。何か魔法薬でもかけられましたか?」
奇怪な顔をしてアズールがユウの額に手を当てるが熱はない。
何か面倒なユニーク魔法をかけられたのではと魔法痕跡をユウから探ってもなにも感知されない。
そうなってくるといよいよアズールも焦りの色が見えた。
「誰かに何か脅されましたか?貴女は僕が守るので安心してその人の名前を教えてください」
「違うんです。誰にも脅されていません」
「・・・もしかして、フロイドかジェイドが絡んでいますか?あいつらはすぐに悪ふざけをしますからね」
「いいえ。フロイド先輩もジェイド先輩も関係ありません」
「じゃ、じゃぁ・・・一体何なんです!?」
ユウと付き合ってから初めて彼女に対して大きな声を上げた。これにはさすがのユウもたじろぎ、アズールはすみませんとユウを抱きしめる。
「・・・ユウさん、冗談ですよね。僕は本当にユウさんを愛しているんです。そんな台詞を貴女から聞きたくない」
ユウを抱きしめるアズールの腕は震え、心なしか声まで震えている。ここで冗談でした!なんてユウが笑えばアズールはまた笑えるし、冗談でも言われたことは悲しかったから嫌というほど彼女を組み敷いて分からせようと思っていた。
「本気です。アズール先輩のことは今でも大好きですが、私には勿体なくてこんなに幸せにしてもらっていいのか分からなくて。もっと先輩が頼れるような大人な女性がいいような気がするんです。何も持たない私なんてきっと物足りなくなります」
「・・・・本気で言っていますか?僕が貴女を物足りなくなると。頼っていないと」
「はい」
それは自分に言い聞かすように。
何度も自分に聞いて自分で出したユウの結果だった。
きちんと話が出来たのだ。一方的ではない。
「僕は貴女が望むことを全てしてあげたい。分かりました・・・別れましょう」
そうしてユウとアズールは付き合っていた関係に終止符を打った。
続く