Unexpected he
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「山の月刊誌?」
サムの店で歯ごたえのありそうなビスコッティをいくつか選んでいると、ジェイドが店の端で雑誌をパラパラと捲っていた。どんな本を読んでいるのだろうと表紙をちらりと覗くとそんなタイトルで、雲海が広がる美しい風景と足場が悪そうな岩の上に座っている登山者の姿が載った渋い雑誌。
「ユウさんも興味がおありで?」
「ジェイド先輩ほどではないですけど、この写真の雲海はすごいですね」
「えぇ、素晴らしい雲海です。僕はまだこの目で雲海を見たことがないので大変興味があります。標高の高い場所にしか生えないきのこもありますので、いつかこう行った場所にも行きたいですね」
「へぇ!きのこって凄いですよね。変なところにも生えるし、見た目がすごいのに食べられるっていう不思議さが面白いです!」
幼い頃に母が育てていた花壇から白いきのこが生えていたのを見つけた時は、幼心に心が踊ったのを思い出した。新しい発見、初めて見る植物に興奮するというのは陸歴が浅い人魚なら当たり前なんだろうとユウはジェイドの開いていたページをじっと眺めた。
「・・・ユウさん」
「あ、ごめんなさい。馴れ馴れしかったですね」
腕が当たりそうな距離に気付いて1歩半ぐらい離れ、申し訳なさそうに肩を上げながらジェイドを見上げるとユウが思っていた反応とは違い、ジェイドの目はキラキラとしていた。
「もしかして・・・きのこお好きですか?!」
「え?えぇ、きのこ好きですよ」
だって、食べられるし。とは言えず、にっこり笑う。珍しいジェイドの弾んだ声にユウは笑った時に見える歯はフロイド先輩と一緒だなぁなんて関係ないことを思った。
「嬉しいですね!ユウさんがきのこ好きだったとは思っていませんでした。よければこの後植物園へ行きませんか?僕が育ててる原木を見て欲しいです」
「え!今からですか?あ、あの私ビスコッティをフロイド先輩のところへ・・・ってジェイド先輩?!」
ジェイドは山の月刊誌とビスコッティのお会計を済ますと、ユウの手を掴みきらきらとした笑顔のままサムの店を後にする。
サンキュー小鬼ちゃん!とウインクをしたサムはユウに向けて指でハートを作っていて、盛大な勘違いをしているサムに違う!と手を振ると今度はグッドラックと親指を立てられた。
そのままジェイドに引っ張られて植物園に来たユウは時間の許す限りきのこについて延々と話され変わったきのこを見せられた。
しかしながら、案外それが面白くてそんなに苦ではなかったのはユウの中でも意外だった。
「あ。ビスコッティをフロイド先輩に渡しに行くの忘れてた」
ユウによってフロイドは機嫌が良くなっただろうと思っていたエースからクレームのメッセージが来たので、ごめん。と一言だけ送っておいた。
***
「ジェイド先輩の好きな食べ物は何ですか?」
「タコのカルパッチョです」
「おしゃれな好物ですねー」
「見た目は華やかですが、僕には少々量が少ないのが難点です」
次の授業の移動中にたまたまジェイドと鉢合わせたので、同じ通り道なのでと2人並んで歩くことになった。歩幅が全然違うユウに合わせてくれたり、重いでしょう?と資料集までも持ってくれる紳士さというのはフロイドは今のところない。ユウを驚かせて資料集をバサバサ落としているユウを見てケラケラと笑ってすぐ何処か行ってしまうのだ。
そんな事をされても好きなものは好きなのだけれど、ジェイドの優しさはユウの中で意外性があってそしてやはり何を考えているのか不透明な人だった。せっかく話すのなら少しでもフロイドの情報が欲しくて、さり気なくジェイドに話を振りながらフロイドの好物も聞こうと思っていたのに、余りにもおしゃれな好物でユウは少しばかりジェイドの話に興味を持ってしまう。
そのままレシピを聞いたりしていたら、次の教室に着いてしまったので結局フロイドの好物を聞くことが出来なかった。
「ジェイド先輩、タコが好きなのかぁ。それなら・・・フロイド先輩もきっとタコが好きね!だって双子だもん!」