一輪
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「レオナ先輩?!ち、違います!!えっと、か·····会議お疲れ様です」
「あぁ。くそダルかったな·····」
寮長会議が終わったレオナはそのままオンボロ寮へと直行。ゆっくりと歩きながら落ちたフロイドのハットを拾い指でくるくると回し手遊びをする。それを見たフロイドはレオナから奪い取るとすぐに被り、少しだけユウから距離を取った。
「それで?くそ魚野郎はユウがまだ好きだって話だったか?」
「ど、どこから聞いてたんですか?!」
「あ?んなもん、こいつは端から俺がいるの知ってたぞ」
「へ?!」
「まぁね。そりゃ、トド先輩ぐらいの気配はわかるよ。オンボロ寮の扉の裏でオレ達の会話を聴いてるとか良い趣味~」
「はっ!言ってろ。俺がいると知りながらユウにふっかける野郎も良い趣味なことで」
はわわ!!とユウはまた2人の板挟みになる。
「まぁいい。ユウ、お前·····実の所まだこいつが好きだろ」
「な、何を言うんですレオナ先輩?フロイド先輩は私がいるのにほかの女の子と遊んでたんですよ?酷いですよね!私はレオナ先輩が·····す、好きです·····よ!」
「無理すんな。お前の言う好きは俺がお前に言う好きとは違う。ユウのダチに対して言う好きと同じだってことぐらい俺にだって分かる」
ピンッと額を弾かれユウは鈍い声を上げて額を摩る。
ユウはレオナが好きだ。
これは本心。
でも、好きの行先がフロイドとは違うのは薄々感じていた。
好きな物は共有したいし、楽しかった話も聞いて欲しい。これはトモダチ相手にも恋人相手にも出来る。
素敵、かっこいいというミーハーな感情。
好きかどうかだなんていう単純なことではなく、レオナが言うのは愛しているの好き。
「だ、だって·····私はレオナ先輩に抱いてもらったじゃないですか」
「·····小エビちゃんから聞きたくねぇー」
フロイドは両耳を塞ぐ。
音をシャットダウンさせ、レオナを見ると何か喋っている。耳を塞いでいてよく聞こえない。
ユウの善いところでも言っているのか、営み中に言われたことでも言っているのか。
ユウは何やら慌てていて、フロイドは片目でレオナの口の動きを読み取った。
─本当はユウを抱いていない
「へ?マジで?」
すぽんと耳から栓が抜けるように手を離す。
「嘘言ってどうなる。まぁ、俺からしてみるといつでもこいつを抱けたけどな。この前のホテルなんて絶好のチャンスだったしよ。ホテルに俺を連れて行きやがったからそのまま抱き潰そうとしたら 、急に風呂入るって言い出してシャワー浴びに行ったわけだ。そしたら、シャワー浴びながら泣いてやがって·····もう俺もその気が失せた」
「いやいや、待てって。トド先輩、その前から小エビちゃんと交尾してたんじゃねぇの?!」
「んなもん、ハッタリだ。ユウは意地になって俺に抱かれようとしてたけど·····な」
青くなったり赤くなったりユウの顔色は忙しく色変わりしていた。
「·····一途に愛されながら抱かれてみたかったんです。抱かれながら、他の女の人がチラつくなんて幸せじゃない。首筋に見えたいくつものキスマークを見ながら抱かれるなんて無理です」
そらそうだろ!とレオナは笑い飛ばすがフロイドは笑えない。現にレオナの噛み跡がある体を見ながらユウを抱くのはフロイドとて集中できない。善がる姿、声、柔らかく揺れる肢体を他所で晒してきたのかと思うと頭が割れそうだった。
「そーいう事だ。くそ魚野郎も俺のおかげで随分反省しただろうよ。言い様に使われただけだったが、俺は帰るとするぞ」
「レオナ先輩!え、どーいう事ですか?」
「俺はユウに振られた·····ってことだ。短い間だったけど、ユウの番をやれて楽しかったぜ?」
「振られた?!どっちかと言うとこれは·····私が振られたんじゃ·····」
レオナを傷つけてしまったのではとレオナの手を握ろうとすると、フロイドが首を横に振りながらユウの腕を掴む。
「小エビちゃん、オレ·····オレ今度こそは間違えないよ。小エビちゃんが本当に好きなのって誰?」
「フ、フロイド先輩なんか一生許さないです!私が好きなのは·····好きなのは·····フロイド先輩なの·····うぅ悔しいっっ·····えーん·····」
「こ、小エビちゃん!!オレも!オレも、小エビちゃん好き!!ごめんね、ほんと·····ごめんね!!」
「えーん!!許さないです!!本能とか私関係ないもん!!私人魚じゃないから海のルールなんて知らない!!」
「うん、ほんとにそうだね·····ごめんねぇ·····」
「あーあーあー。またユウを泣かせやがって。ユウ、次こいつが余所見したら砂にしてから本気でお前を奪いに来るからな。次こそは容赦なく手を出すから覚悟しろよ。俺の妃にしてやるから楽しみに待ってろ」
「は?!小エビちゃんはあげねぇから!!」
「レオナ先輩~·····ふぇぇん·····ごめんなさぁい」
「せめて、ありがとうって言え。惨めだろうが」
「あ、ありがとう·····ございまじたぁ」
ブッサイクな草食動物だな。とレオナは笑いながらユウの頬にキスをひとつ落とすとケラケラ笑いながらオンボロ寮を出て行った。
それを間近で見たフロイドは鱗が逆立ったが、レオナのおかげでもあるので何度も何度も感情を飲み込んで堪えた。
***
「··········小エビちゃん、泣き止んだ?」
「··········少しだけ」
「ご飯食べながら泣くなんて器用じゃん」
「·····ご飯に罪はないので温かいうちに食べます。先輩も食べてください·····レオナ先輩食べずに帰っちゃったし」
「あー·····うん。トド先輩にはオレのマドルで返しておくから」
コクンと頷くとユウはまたフリッターを食べる。最初になくなったのもフリッターで、余程気に入っているのかとフロイドはマドルなしで作ってあげようと思った。
「フロイド先輩、もし次浮気したら·····アズール先輩にお願いして尾鰭切っていいですか?」
「あはぁ!すんげぇ狂愛じゃん!いいよぉ~オレ、もう浮気なんて絶対しねぇから。ジェイドに見張り頼んでもいいよ」
「はい。まだ少し不安なのでフロイド先輩への信頼が戻ったら·····その時は私を抱いていいですよ。それまでは我慢してくださいね」
「はぁい··········」
一輪の花を踏んでしまった罪は大きかった·····とフロイドは全力でユウへの信頼回復に奮闘する。
そしてフロイドから貰った花でひっそりと作った押し花が出来上がる頃にフロイドは漸くユウからお許しが出たのだった。
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