一輪
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オンボロ寮の談話室の小さなテーブルにところせましと並ぶは豪華な海鮮料理。
勿論全てレオナのポケットマネーだけども、どれも美味しそうでユウは海鮮のいい香りを鼻いっぱいに吸い込む。
「もう、匂いだけで幸せ·····。レオナ先輩に感謝しなくちゃ」
その当のレオナは寮長会議の延長によりまだオンボロ寮には来ていない。予定時間きっちりに運ばれた料理にユウはいつでもかぶりつく準備万端。
「小エビちゃん、先に食べちゃえば?」
「や、いえ·····レオナ先輩のマドルですし待ってます」
料理を運んできたのはフロイド。
小洒落たテーブルクロスなんてなくて、シルバーも使い古されたものだったのでフロイドが魔法で綺麗にして全てセッティングをした。
セッティングをすればすぐに帰るだろうと思っていたのにフロイドは帰らずに壁に寄りかかっている。
「そんな事でトド先輩怒んないでしょ。小エビちゃんの好きな白身魚のフリッター食べてみてよ。いい魚が手に入ったんだけど、小エビちゃんの為にオレが捌いたんだぁ」
にこにことしたフロイドの笑顔。
この笑顔が大好きで、優しく下がる目尻が好きで、だから我慢していたのを思い出した。
レオナがこれぐらいで怒らないのは知っている。
だからフロイドの言うように、フリッターを一口パクリと食べる。
ふわりとした白身が口の中でほろほろと解け、揚げた衣もしつこくなくていくらでも食べられる。
「小エビちゃん、美味しい?」
「はい、とっても」
「そっかぁ!良かったぁ。あのさ、小エビちゃん·····すんごい今更だけど·····色々ごめんね」
ごくんと飲み込んだタイミングでフロイドが言うものだから噎せそうになり、慌てて水を口の中に含む。
「この間の言い合いもだけどさ。オレ、ずーっと小エビちゃんに甘え過ぎてた。優しい小エビちゃんだからずっとオレに言いたかったけど、言えなかったんだよね。カノジョに言いたいことも言わせれない甲斐性なしのウツボだよね、オレ」
「そ、そんなこと·····」
「小エビちゃん、トド先輩と付き合ってからすんげぇ綺麗になったしいい関係築けてんだなぁって思う。遊んでたオレが言うのもなんだけどさ」
「フロイド先輩がそんなしおらしい事言うなんて·····変な感じです」
「はぁ?まじめに言ってんじゃん」
「ふふっ、ごめんなさい」
「小エビちゃんの笑った顔、久しぶりに見た。うん·····やっぱオレまだ小エビちゃんが好き」
カラン·····と持っていたフォークが床に落ちた。
落ちたフォークが静かになると今度聞こえてくるのはユウの心臓の音。
何をまた言い出すの?
レオナ先輩との幸せを願ってくれたんじゃないの?
「あー·····ごめん。うっかり口から出た。オレがそんなこと言う資格ないし気にしないでね。もうすぐ寮長会議も終わるだろうし、ラウンジに帰るよ」
「ま、待ってください!」
思わずフロイドの腕を掴んでしまい、ガクッと揺れたフロイドの頭からハットがぽとりと落ちた。
ゆらゆらとハットが揺れ、腕を掴んでしまったけども次の言葉が紡げない。
フロイドも簡単に腕を払えるのにただユウの行動をじっと待つ。
「あ、あの!私、フロイド先輩が浮気してたの一生許さないつもりです!」
「うん。オレ、超サイテーだったね」
「何回も言ってウザイかもしれませんけど私たくさん我慢してたんです!」
「ウザいなんて思わねぇし」
「知らない女の人を抱いていたフロイド先輩に触られたくなくて、ずっと拒んでいました」
「やっぱ·····そういう理由だったんだ」
ラフな格好をしているユウ。
フロイドの背丈からユウのくっきりとした鎖骨が視界に入り、その柔そうな白い肌に吸い付きたくなる。
ほんの少し前ならそれも出来たかもしれない。
今、ユウに触れられるのはフロイドではないのだ。
「ねぇ。·····オレってもう完全に小エビちゃんの番になるのは無理?オレ、もう二度と他のメスと遊ばねぇし交尾もしない。っても、オレこんなんだから信用ねぇかもしれないけど·····。小エビちゃんのハジメテをあの先輩に取られのはめちゃくちゃ腹立つけど、それはもうオレへの罰だと思ってるからめちゃくちゃ我慢する」
眉も目じりも口角も下がり本気で反省しているようだ。
「フロイド先輩の事は許せないけど嫌いじゃないです」
「うん。嫌われてないだけでも良かった」
「私、レオナ先輩と付き合ってるんです」
「知ってる。でもオレは小エビちゃんが好きだよ」
「·····狡い先輩」
それだけを言うとオンボロ寮はしんと静まる。いつも賑やかにしてくれるゴースト達は静かだし、腹減った腹減った!と言うグリムも不在。
だれか雰囲気を変えてくれる人がいないものか。
「おいユウ、浮気か?」