一輪
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「小エビちゃん!仲直りしよう!そんなに怒んないで~」
「仲直りも何も怒ってなんかいませんよ」
「小エビちゃん~また膝枕してぇ」
「私の膝はレオナ先輩のものです」
「オレとトド先輩の何が違うわけ?!」
「んー·····私だけを大事にしてくれてます」
「小エビちゃん!」
「小エビちゃんってば!!」
「·····もうっ!フロイド先輩何なんですか?!私はもう彼女じゃないんですからあんまり構わないでください!」
「フロイド、フロイド、生きてますか?」
散らかった自室のベッドにうつ伏せに寝転がっているフロイドは放心状態。ジェイドに揺さぶられて漸く頭だけ動かして、無理と消えそうな程の小声で呟くとまた顔は枕と対面する。ここ数日、ユウがフロイドに対する口調や態度が一変して本当に興味が無いといったユウにフロイドは悪戦苦闘していた。
もぞもぞと尾びれを動かして上手いこと布団に包まると、小さくため息を付く。
「オレ、本気で小エビちゃんにフラれちゃった」
顔は枕に突っ伏しながらくぐもった声で、今にも泣きそうなフロイドにジェイドはフロイドの頭を撫でる。元々無頓着なフロイドの髪がさらに乱れていて、どれだけフロイドがユウのことを好きだったのか思い知る。しつこい事が嫌いなフロイドがしつこい程ユウに付きまとっていたが、ジェイドが見たユウの表情は今までよりも落ち着いていて穏やかな日々を送っていることを証明していた。中庭にいる時も昼食時もレオナと一緒にいるユウだが、たまにフロイドの方を見ているのをジェイドは知っている。
それに、
「ジェイド先輩、フロイド先輩を宜しくお願いします」
などと言ったのだ。余計なことは言うべきではないと余所行きの笑顔で返事をすれば、ユウは3年生の教室へと走って行ったことがある。
「フロイド、ユウさんはフロイドのことを嫌っていませんよ。これは憶測ですが」
「そんな風には見えねぇんだけど。小エビちゃんに近づくと日に日にあのトドの匂いが強くなんの。オレの匂いがしねぇ。オレ、他のメスと一切連絡も取ってないし会ってもないのに」
「今連絡取ってなくても、その時に連絡してたんですから遅いんです。フロイド、なんだか顔がやつれてますね。明日はラウンジも休みですし麓の街で気分転換でもしたらどうです?それとも僕の山登りに付き合いますか?」
「それは遠慮しとくぅ。あーもぉ!明日は発散してやるもんね!」
***
「ユウ、そんないじってたら出来るものも出来ねぇぞ。なんでまたそんな物作ってんだ?」
「んー、綺麗だったから·····ですかね」
パタンと分厚い本を閉じるとユウは本棚に戻した。
自身のベッドに寝転ぶレオナはペシペシと尻尾を使いユウにこっちに来るように催促する。
失礼します。と、ゆっくりと寝転びながらレオナの腕の中に収まり静かにまぶたを閉じる。するすると背中を撫でられ見上げるとレオナはじっとユウを見つめていて、全てを見透かす宝石のような瞳にユウは目が逸らせなくなる。
「レオナ先輩·····私を抱いてくれないんですね」
「どの口が言ってやがる。そんな度胸なんて無い癖によ」
強めのデコピンに痛っ!と顔を顰める。
そんなユウにレオナは可笑しそうに笑うけれど、ユウはレオナが自分に気を遣っているのを知っている。
ただの傲慢な寮長かと思えばとんでもない。
フロイドと別れた後すぐにでも抱かれるだろうと覚悟をした初日は何もされず、今のようにただ抱きしめられたまま眠った。
その後も何度かこうやって眠るだけでキスのひとつもしてこない。
だけども想われている、というのは付き合いだした日常でひしひしと伝わる。
安心感というのはこういうモノだと教えられた気がした。
口は少し悪くても一途に1人だけを愛するレオナを──<好きになろう>。
「私、レオナ先輩が好きですよ」
「··········そーかよ」
「はい。私を大事にしてくれて嬉しいです」
「·····なぁ」
「はい?」
「·····いや、あぁ~明日、2人で出掛けるか?いつも俺に合わせて部屋にいるだけだしな。たまにはお前を見繕ってやるよ」
嬉しい!と抱きつくユウにレオナも抱きしめる腕を強める。
ただ、レオナの表情は少し寂しげだった。