一輪
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「おやおや、フロイドはこんなところで2度寝ですか?ここを通る生徒の皆さんがフロイドを見てますよ」
「ねぇ、ジェイド·····小エビちゃんが浮気してトドんとこ行った」
「浮気?それ、あなたが言います?フロイドもユウさんからすれば十分浮気をしていると思いますよ」
「浮気じゃねーし!遊んでるだけじゃん!好きなのは小エビちゃんだけだし浮ついてねぇよ!」
朝の通学ラッシュの鏡舎。
仰向けで稚魚のように暴れるフロイドに自寮他寮生とも触らぬ何たらのように見ぬ振りをするが、誰もが心で思う。
世間ではそれを浮気と言うぞ。·····と。
「ユウさんは十分我慢してらっしゃったのでしょう。異世界の方とはいえ女性なんですから、恋人が遊んでいるのを容認するのは苦痛だったはずです」
「そんな風には全然見えなかったし。他のメスとヤったって言ってもにこにこしてたけど?嫌なら嫌って言えばいいじゃん」
「·····僕たちが人魚だから、そういうものだと思ったんでしょう。人魚一括りにされるのは心外ですけどね。レオナさんのような獣人族は女性を大切に扱う種族です。きっとユウさんも彼なら一途に愛してくれると思ったのでは?」
「だーかーらー、オレも一途だっての!」
いまいち伝わらないフロイドにジェイドはうーんと顎に手を添える。
「では、ユウさんがフロイドのことを1番と言うのにレオナさんの所で体を重ねる日々が続き、その様子を嬉しそうにあなたに報告されると·····どうです?」
「無理。良かったなんて言うものなら抱き潰してオレだけのものにして閉じ込める。··········あ」
そういう事ですよ。と、ジェイドは両手を上品に揃える。
つまりは、フロイドがされたくない事や言われたくない事をユウは毎日のように聞かされていたという事。
楽しんできてくださいと笑うユウの笑顔の裏では毎晩泣いていたのだろう。
それもフロイドが好きだというだけで我慢させていた。
「そっか。小エビちゃんは自分以外のメスと遊ぶの嫌だったんだね。オレ、気持ちがなけりゃ遊んでいいって思ってた。もー、ジェイド!なんで早く言ってくれなかったの!!」
「·····僕は散々警告しましたけどね」
「もぉ·····小エビちゃん、トドの番になろうとしてんじゃんか!!昨晩泊まったって何?!え、もしかして交尾したんじゃ·····」
ニヤァと笑うジェイドにフロイドは顔面蒼白。
大事にしてきたはずのユウの初めてをあっさり奪ったかもしれないレオナ。
自己責任とはいえフロイドはやだぁぁ!と鏡舎で叫んだ。
その朝の出来事はあっという間に学園内で広まった。
─あのフロイドがやっと監督生に振られた。
─レオナが次の監督生の男になったらしい。
監督生側に付いていた者達からは安堵の声。
レオナはあぁ見えてやる時はやる時男だからフロイドよりはマシだろう。
そんな声が学園内で話されていた。
勿論そんなやりとりはフロイドの耳にも届いているわけで、何度も睨みつけたり脅したり物に当たり散らす。器具の損害はオクタヴィネル寮に請求されるわけで放課後のモストロではアズールが発狂することとなる。
「小エビちゃん·····いる?」
1年の教室。ざわざわとしていた教室はフロイドによりシンと静まる。エース達と談笑していたユウはフロイドを見つけると、スンと笑顔が消えた。心配そうなマブ達に笑顔を向けるとユウは教室の入口にいる遠慮がちに覗くフロイドの元へと向かう。
「フロイド先輩、今朝は大丈夫でしたか?」
「あ、あれね·····うん、大丈夫。オレの心配してくれてありがと、小エビちゃん」
「それなら良かったです。何か私にご用ですか?」
「あ、あのね!綺麗なお花見つけたから小エビちゃんにあげよーと思って持ってきたの!」
ほら!と可愛いピンクの花が一輪。
たった一輪なのにご丁寧にリボンが付いていた。
「そうですか。わざわざありがとうございます。でも、これからはこう言ったプレゼントは結構ですよ?」
「え、な、何で?」
「これからはレオナ先輩がそういった事をしてくれるので」
「う、うん。トド先輩は小エビちゃんのオトモダチだもんね」
俯きながらちょんちょんとフロイドは自分の指同士を突く。
「いいえ?私、レオナ先輩とお付き合いします。フロイド先輩今までありがとうございました。ほんとに好きでしたよ。先輩は他の方々と楽しくお幸せにお過ごしください。さよなら」
「ま、待って小エビちゃん!」
フロイドがユウの手を掴もうとするがユウがピシャリと教室のドアを閉めてしまった。
行き場のなくなった宙ぶらりんの手はゆっくりと下げられ、ポケットのスマホを取り出すと遊んでいたメス達の連絡先を全て消した。
届いているメッセージは読む前にゴミ箱へ。
「小エビちゃんの笑顔が·····こんなにも辛いと思ったのは初めてだよ」
さよならと言ったユウの笑顔は何かを吹っ切れた清々しいものだった。