Demipointe
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「私、ちゃんといい女出来てるよね。自立して先輩にも頼らずに勉強して、挨拶だって品のある立ち振る舞いを心がけてるもん」
腕につけた記者の腕章に触れる。本来ならユウだっておめかしして彼氏の誕生日を1番に祝いたかった。しかし浮かれてヘマでもしようものなら仕事の出来ない女になってしまう。
ユウの天秤は仕事側に傾く。先輩方や同学年の今までのインタビューの内容を思い出しながらペン先を自分の顎でカチカチと鳴らす。
「ユウさん!!失礼しますよ!!」
「あ、先輩!お誕生日楽しんでますか?もうすぐインタビューしますので会場でお待ちくださいね」
「貴女ねぇ・・・楽しんでますか?じゃないですよ。この際だから言いますけど最近の貴女どうしたんです?!」
「あ・・・えっと、まだ不十分でしたか?・・・うーん・・・この間のテストは平均的だったもんなぁ」
「・・・何のことかさっぱりですね。僕はテストの結果なんて聞いてませんよ。あぁ・・・もう、ノートとペンは置いてください!」
ユウのペンとノートを取り上げ無造作に投げ捨てる。何するんですか!とユウは唯一の仕事道具を取り上げられ腰に手を当て、口を尖らせる。
怒ってる姿でさえ愛おしいと思ってしまうアズールは一瞬後ろを振り向き、ニヤける口を腕で隠しすぐさま顔を戻す。
「物を投げたのはすみません。ユウさん、インタビューまで時間はあるはず。少し僕と話をしましょう」
「・・・・・・別れ話ですか?ちんちくりんだから?美人じゃないから?・・・・・・やだぁ、あの人にアズール先輩渡したくないぃ~」
「は?泣き顔も可愛いな・・・知ってますけど・・・じゃなくて!!ちょっ、泣かないでくださいよ!ユウさん、あの人って誰です?!全く心当たりありません!」
「だってぇ・・・面倒臭い女でごめんなさい~」
わぁわぁと泣き出すユウにアズールはユウを抱きしめて背中を優しく擦る。泣きたいのはアズールの方なのに泣かれる理由に見当がつかない。久しぶりに抱きしめたユウは柔らかくて、自分が贈った香水を付けていい香りがする。その上、背中を摩っているから下着の繋ぎ目に手が当たりどことは言わないが今の状況にそぐわなくなっていた。
「アズール先輩・・・何か言ってください」
「え、あ・・・そ、そうでしたね。まずはユウさんがよそよそしい理由を聞かせてください」
涙がたっぷり溜まっている目元に指を添える。言ってもいいのか悩み揺れる瞳に安心するよう額に口付けると、ユウはブワワッと赤くなる。
このまま全てをボイコットして自室に戻りたくなる衝動を抑えアズールは静かに待つ。
「幻滅・・・しないでくださいね?」
*
アズールはしゃがみこみ両手を床につける。
「何がどうなればそんな風に解釈するんです?!解釈違い過ぎますが!!あのですねぇ、ユウさんが僕と母の会話を聞いて貴女を褒めた言葉をどうすれば他の女性を褒めることになるんです?!」
「だって・・・私賢くないし、愛してるとかホリデーじゃないのに帰るとか・・・」
「・・・・・・賢いというのは成績だけのことを言いません。恥ずかしながら母が愛してると言えば、僕もそう返すように言われてるんです。ホリデーではないのに帰るのは誕生日前日は寮生達が会場を飾り付けるのでラウンジは休みなんです。それと母には直接言いたいことがあったんですよ」
そんな事一言も聞いてないと言えば、貴女は避けるように僕と接しなかったでしょうと言われ、ぐうの音も出ない。
「・・・何を言いに行ったのですか?」
「ユウさんとお付き合いしていること、そして卒業して仕事が軌道に乗りユウさんがいいと言ってくれたら・・・一緒になりたいって」
「結婚のご挨拶みたいじゃないですか!?あの・・・それに私プレゼントも悩みすぎて買えなくて・・・勝手に勘違いした女の人から何貰うんだろとか考えてて・・・」
「母は腕によりを掛けてユウさんを歓迎すると言ってましたよ。あぁ、プレゼントは気にしないでください。貴女にしか出来ないことをお願いしたいので。さぁ!ユウさんの誤解は解けましたね!勝手に誤解され、自立した女性?いい女?僕の彼女・・・番は少々ご自分に自信がないようですね。この数日、とても気分の悪い日を過ごしました」
「あ・・・えっと、すみませんっ」
「謝るなんてとんでもない。今日は僕の誕生日なんです。カロリーを気にせずに唐揚げを食べ、ケーキも食べましょう。カロリーは後でどうにでもなるんですよ」
蛸足で撫でるように耳を指で這う。
最近運動不足なんですよね、誰かさんのせいで。と耳元で囁けばユウはピンッと体が伸びる。
「仕事のあとはしっかり食べておくように。たくさん動いても夜食は用意出来ませんから。あー楽しみですねぇ。僕にはユウさんしかいないという事を再度体に刻んでください」
散らばったペンとノートを拾い上げ軽くはたくとユウに返す。
その時に目線が合うように腰を低くすれば、アズールの言いたいことを汲んでいるユウは何度も頷き声にならない返事をする。
「では、そろそろ僕の誕生日パーティーに戻るとしましょう。今日は楽しいパーティーになりますね!」
「ア、アズール先輩!!」
「何でしょう?ほら一緒に戻りますよ?」
「・・・お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとうございます。ほんと、ユウさんというプレゼントを頂くの楽しみですね」
「もうっ・・・!」
パーティーまでの道のりの僅かな距離でも2人は手を繋いで歩く。アズールは横に並ぶユウを見下ろすと小さくスキップしている。大人の女性のフリをして凛としている彼女も悪くなかった。しかし、甘えんぼうでオクタヴィネル寮の寮長を振り回す程の器量を持っているのはユウしかいない。
「背伸びしなくてもありのままのユウさんが好きですよ」
「うぅ・・・私の方がアズール先輩が好きなのに!」
はいはい。と眉を下げて笑い、好きな人に好きと言って貰える幸せを噛み締める。
クラッカーを待ち構える寮生がいる会場が見えると顔を覗かせた双子が手を振っていた。
「アズール先輩!行きますよ!」
「あぁっ、そんな引っ張らないでくださいっ」
手を引かれながら行った先でクラッカーの派手な音が鳴りカラフルなテープが飛ぶ。とばっちりのようにたくさんのカラフルなテープがユウの頭の上に乗るとベールのようになる。
淡い紫のベールもいいけど、カラフルなのも甘えたで愛らしい彼女に似合うとアズールの候補のひとつになった。
fin
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