Demipointe
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「忘れ物するとか鈍臭いって思われそう・・・。せっかく見送ってもらったのになぁ」
いってらっしゃいのキスを思い出すと頬が赤くなる。もっと・・・と、溢れ出してしまいそうな気持ちを抑え、はしたないと思われないようにパンパン!と叩いて気合いをいれる。
寮長室に近づくときらりと光るペン。
どうせなら寮長室の中に落ちていたらいいのに。
そんな事を思いながらしゃがんでペンを持ち上げ、念の為壊れていないか確認。
「うん、大丈夫そうね。・・・アズール先輩、お仕事してるのかなぁ・・・さっきまで会ってたのにまた会いたいってのは迷惑よね」
そっと寮長室の扉に触れる。
『はい、えぇ・・・久しぶりですね。こちらは元気にやってますよ』
「電話・・・かな?こんな聞き耳立てて私・・・悪いなぁ・・・」
『誕生日?前日に1度帰ります。僕も会いたいですよ。・・・僕も愛してます。それに話したいことがたくさんあります』
「愛してるって何?御家族?・・・でもホリデーじゃないのに帰るって・・・誕生日前に会いたいってよっぽど?・・・誕生日はそれでさえアズール先輩独り占め出来ないのに・・・」
『・・・えぇ、とても賢く素晴らしい女性ですよ。仕事も完璧で、見習うところが山ほど』
仕事も完璧で素晴らしい女性。
浮かれて顔を緩めるようなユウとは大きな差がある。優しくされて絆されるような女はアズールの好みではないのは常々思っていたこと。
自立、教養、美貌、家柄、どれをとっても秀でるものはない。
告白されて舞い上がっていたあの時は品がなかっただろう。
付き合い当初よりもアズールに対しての気持ちは膨れ上がり今ではきっとユウの方がアズールが好きなはず。
ユウは女の扱いの練習台にされたのか。
もしそうなら女として悔しくなるユウ。
しかし頭の片隅でそんな事をするような人ではないと思いつつも、利の為には何でもする人という事が離れない。
「・・・いい機会ね。私も変わらないと・・・キスされてスキップするような女じゃ・・・ダメなんだ。誕生日の前日は・・・悔しいけどその人に譲る・・・。でも・・・当日は譲らないもん」
*
モストロラウンジのバイト終了後、ユウは約束通りアズールに紅茶を振る舞う。
紅茶の淹れ方はジェイドに教わっているので完璧。サーブもフロイドに褒められたところだった。
「ユウさん、随分と手際がよくなりましたね。・・・うん、香りも芳醇で温度も完璧だ」
「褒めていただきありがとうございます。アズール先輩、お疲れでしょうからゆっくり休んでください。私はこれにて失礼しますね」
「え?ユウさん、僕に話があったのでは?」
ユウはアズールに誕生日に欲しい物を聞くつもりだった。そして、そのまま夜も甘えて過ごして2人で朝を迎えたいと思っていた。甘えたい心を押し殺す。
「・・・もう解決したので大丈夫です。どうぞ、それを飲んだら今日ぐらいはゆっくりお休みください」
「・・・何があったのです?様子が明らかに休憩時とは違いますね。誰かに何か言われましたか?貴女を傷付けるような輩は僕自ら出向きます」
誕生日の前日に会う人を聞いてもいいのだろうか。それとも盗み聞きしてしまったことを叱られるだろうか。ユウはにっこりと弧を美しく描く。幼い表情の上から背伸びした貼り付けるような表情。
アズールにはそれが違和感であり、あからさまな変化に眉を寄せる。
時々頑固さがあるのは知っている。
苦境に立ち上がり遥かに自分より強い相手にも果敢に挑む姿をアズールは見てきた。
その時の目の強さと意地がユウから伝わる。
こうなるとユウは一筋縄にはいかない。
アズールは狡いと思いつつもユウの肩に手を回しそっと押し倒す。喧嘩をした時言い合いをしてどっちつかずになった時アズールは小さな体のユウを腕の中に閉じ込め、優しく愛せばいつもユウは笑顔に戻る。そして終わればお互い素直になれる。
アズールは今回もユウの気持ちを探ろうと服の中に手を入れると、ユウに手を掴まれる。
「アズール先輩。私、そういう気分ではありません。それにそういう事は・・・私なんかで練習しても何も得られませんよ?ちんちくりんですし、おうとつもないので」
「・・・・・・は?練習?ちんちくりん?何の事ですか?ま、まぁ・・・ユウさんがそういう気分じゃないというなら無理にはしません。かなり・・・しんどいですけど」
「ありがとうございます。今までアズール先輩にずっと甘えててごめんなさい。これからは自立して強い女になります。だから、見ててくださいね!私、負けませんから!!」
「いや、だから・・・ユウさんはさっきから何の話を・・・」
「・・・・・・っ、おやすみなさいっ!!」
「あっ!!ユウさんっ!!」
強い女を演じるというのはこんなにも心が疲れるのか。アズールの腕を掴んで問いただして、砂糖が溶けたような甘い時間を過ごしたい。
僕にはユウさんしかいません。
いつかそう言って貰えるように。
見えない美女への対抗心を燃やし、ユウは誰もいないオンボロ寮までの道のりを叫びながら走った。
*
アズール誕生日当日。
オクタヴィネル寮は鮮やかなブルーをメイン色として飾り付けられ、自寮の寮長の誕生日とあってそれはそれは盛大だった。この日だけは特別だからと唐揚げタワーなんて物もある。胸焼けしそうな光景も男子高生には絶景。豪華な料理に特注サイズのケーキ、他寮から届いた贈り物も積み重なっていて誰が見ても素晴らしい誕生日会だ。
そう思うのは1人を除いて。
「・・・全くもって不愉快。僕が何をしたと言うんだ?」
アズールはラウンジのカウンターのいつもの場所にて突っ伏していた。本日の主役は襷を掛け、本来なら会場のど真ん中にいてもいいはずなのにアズールはとても楽しめる雰囲気ではない。
というのも、原因は勿論ユウだ。
どういうわけか、過度なスキンシップは避けられ挨拶も他人行儀で確実に付いていけていない授業や宿題も1人でやるからと避けられる。
シフトイン中の休憩も一切顔を見せに来なくなった。どうしているのかと双子に聞けば自分たちと談笑したり、まかないを一緒に食べているという。普通のことと言えば普通のことなのに、今までと違うことをされるのは妙な気持ちになる。
ユウを怒らせてしまうようなことをした覚えがない。
「愛想が尽きたのか?・・・ユウさんが?この僕を?・・・・・・有り得ない!!あぁ駄目だ、自分の誕生日なのに全然楽しくありません!おい、ユウさんはどこにいるんだ?!」
近くにいた後輩を捕まえ、問いただすとユウはバースデーインタビューの準備をしているという。彼氏の誕生日だというのに学園長から押し付けられた仕事でここにいるのにも癪に障る。空いている部屋で質問する内容を考えているというのを聞き、アズールは足早に会場を後にした。
いってらっしゃいのキスを思い出すと頬が赤くなる。もっと・・・と、溢れ出してしまいそうな気持ちを抑え、はしたないと思われないようにパンパン!と叩いて気合いをいれる。
寮長室に近づくときらりと光るペン。
どうせなら寮長室の中に落ちていたらいいのに。
そんな事を思いながらしゃがんでペンを持ち上げ、念の為壊れていないか確認。
「うん、大丈夫そうね。・・・アズール先輩、お仕事してるのかなぁ・・・さっきまで会ってたのにまた会いたいってのは迷惑よね」
そっと寮長室の扉に触れる。
『はい、えぇ・・・久しぶりですね。こちらは元気にやってますよ』
「電話・・・かな?こんな聞き耳立てて私・・・悪いなぁ・・・」
『誕生日?前日に1度帰ります。僕も会いたいですよ。・・・僕も愛してます。それに話したいことがたくさんあります』
「愛してるって何?御家族?・・・でもホリデーじゃないのに帰るって・・・誕生日前に会いたいってよっぽど?・・・誕生日はそれでさえアズール先輩独り占め出来ないのに・・・」
『・・・えぇ、とても賢く素晴らしい女性ですよ。仕事も完璧で、見習うところが山ほど』
仕事も完璧で素晴らしい女性。
浮かれて顔を緩めるようなユウとは大きな差がある。優しくされて絆されるような女はアズールの好みではないのは常々思っていたこと。
自立、教養、美貌、家柄、どれをとっても秀でるものはない。
告白されて舞い上がっていたあの時は品がなかっただろう。
付き合い当初よりもアズールに対しての気持ちは膨れ上がり今ではきっとユウの方がアズールが好きなはず。
ユウは女の扱いの練習台にされたのか。
もしそうなら女として悔しくなるユウ。
しかし頭の片隅でそんな事をするような人ではないと思いつつも、利の為には何でもする人という事が離れない。
「・・・いい機会ね。私も変わらないと・・・キスされてスキップするような女じゃ・・・ダメなんだ。誕生日の前日は・・・悔しいけどその人に譲る・・・。でも・・・当日は譲らないもん」
*
モストロラウンジのバイト終了後、ユウは約束通りアズールに紅茶を振る舞う。
紅茶の淹れ方はジェイドに教わっているので完璧。サーブもフロイドに褒められたところだった。
「ユウさん、随分と手際がよくなりましたね。・・・うん、香りも芳醇で温度も完璧だ」
「褒めていただきありがとうございます。アズール先輩、お疲れでしょうからゆっくり休んでください。私はこれにて失礼しますね」
「え?ユウさん、僕に話があったのでは?」
ユウはアズールに誕生日に欲しい物を聞くつもりだった。そして、そのまま夜も甘えて過ごして2人で朝を迎えたいと思っていた。甘えたい心を押し殺す。
「・・・もう解決したので大丈夫です。どうぞ、それを飲んだら今日ぐらいはゆっくりお休みください」
「・・・何があったのです?様子が明らかに休憩時とは違いますね。誰かに何か言われましたか?貴女を傷付けるような輩は僕自ら出向きます」
誕生日の前日に会う人を聞いてもいいのだろうか。それとも盗み聞きしてしまったことを叱られるだろうか。ユウはにっこりと弧を美しく描く。幼い表情の上から背伸びした貼り付けるような表情。
アズールにはそれが違和感であり、あからさまな変化に眉を寄せる。
時々頑固さがあるのは知っている。
苦境に立ち上がり遥かに自分より強い相手にも果敢に挑む姿をアズールは見てきた。
その時の目の強さと意地がユウから伝わる。
こうなるとユウは一筋縄にはいかない。
アズールは狡いと思いつつもユウの肩に手を回しそっと押し倒す。喧嘩をした時言い合いをしてどっちつかずになった時アズールは小さな体のユウを腕の中に閉じ込め、優しく愛せばいつもユウは笑顔に戻る。そして終わればお互い素直になれる。
アズールは今回もユウの気持ちを探ろうと服の中に手を入れると、ユウに手を掴まれる。
「アズール先輩。私、そういう気分ではありません。それにそういう事は・・・私なんかで練習しても何も得られませんよ?ちんちくりんですし、おうとつもないので」
「・・・・・・は?練習?ちんちくりん?何の事ですか?ま、まぁ・・・ユウさんがそういう気分じゃないというなら無理にはしません。かなり・・・しんどいですけど」
「ありがとうございます。今までアズール先輩にずっと甘えててごめんなさい。これからは自立して強い女になります。だから、見ててくださいね!私、負けませんから!!」
「いや、だから・・・ユウさんはさっきから何の話を・・・」
「・・・・・・っ、おやすみなさいっ!!」
「あっ!!ユウさんっ!!」
強い女を演じるというのはこんなにも心が疲れるのか。アズールの腕を掴んで問いただして、砂糖が溶けたような甘い時間を過ごしたい。
僕にはユウさんしかいません。
いつかそう言って貰えるように。
見えない美女への対抗心を燃やし、ユウは誰もいないオンボロ寮までの道のりを叫びながら走った。
*
アズール誕生日当日。
オクタヴィネル寮は鮮やかなブルーをメイン色として飾り付けられ、自寮の寮長の誕生日とあってそれはそれは盛大だった。この日だけは特別だからと唐揚げタワーなんて物もある。胸焼けしそうな光景も男子高生には絶景。豪華な料理に特注サイズのケーキ、他寮から届いた贈り物も積み重なっていて誰が見ても素晴らしい誕生日会だ。
そう思うのは1人を除いて。
「・・・全くもって不愉快。僕が何をしたと言うんだ?」
アズールはラウンジのカウンターのいつもの場所にて突っ伏していた。本日の主役は襷を掛け、本来なら会場のど真ん中にいてもいいはずなのにアズールはとても楽しめる雰囲気ではない。
というのも、原因は勿論ユウだ。
どういうわけか、過度なスキンシップは避けられ挨拶も他人行儀で確実に付いていけていない授業や宿題も1人でやるからと避けられる。
シフトイン中の休憩も一切顔を見せに来なくなった。どうしているのかと双子に聞けば自分たちと談笑したり、まかないを一緒に食べているという。普通のことと言えば普通のことなのに、今までと違うことをされるのは妙な気持ちになる。
ユウを怒らせてしまうようなことをした覚えがない。
「愛想が尽きたのか?・・・ユウさんが?この僕を?・・・・・・有り得ない!!あぁ駄目だ、自分の誕生日なのに全然楽しくありません!おい、ユウさんはどこにいるんだ?!」
近くにいた後輩を捕まえ、問いただすとユウはバースデーインタビューの準備をしているという。彼氏の誕生日だというのに学園長から押し付けられた仕事でここにいるのにも癪に障る。空いている部屋で質問する内容を考えているというのを聞き、アズールは足早に会場を後にした。