落ちた恋に触れて
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「あーぁ、仕事サボってるお盛んな店員さんがいる。アンタさ、自分の彼女とヤんのにこんな寒い所でするなよ。冷たい床で彼女冷えるじゃん」
「フロイドさん?!」
上擦った声でフロイドの名前を言う。フロイドは先ほどユウが補充していた棚の隙間からオッドアイを覗かせていた。彼を見ていた目は冷蔵庫の温度よりも冷たく、彼はヒッ!とユウの手を離す。
「小エビちゃん、オレもしかして邪魔してる?」
ユウは、横に大きく首を振る。
フロイドは目を細めて笑い、失礼しまーすと冷蔵庫に入ってきた。
「じゃ、問題ないね。・・・アンタには小エビちゃんは相応しくないよ。オレ知ってるから。アンタ・・・何股もしてるでショ。ま、見た目は悪くねぇもんな、オレ程じゃねぇけど!」
「えっ?!」
「その感じだと小エビちゃん・・・ソイツのことそんな好きじゃないね。なら、さっさと別れな。ソイツ、小エビちゃんとヤリたいだけだから」
「そ、そう・・・なの?」
ユウが尋ねると目は肯定と言わんばかりに泳いでいる。本来なら傷つくはずなのに、ユウは少しホッとしていた。
「チッ・・・。アンタこれからは小エビちゃんとシフト被んな。ここの店長知り合いだから、オレからも言うから」
え?!と今度はフロイドを見る。店長なのに服は派手で陽気な人。いつもユウを小鬼ちゃんと呼ぶ不思議な店長。
「・・・さっきは"彼氏"だったから許したけどぉ、次小エビちゃんに手を出したら・・・雑魚でも分かるよなぁ!?」
きっちりと留められた詰襟のボタンが弾ける。噎せている職場の先輩の苦しそうな光景にユウは止めてください!とフロイドの腕を掴む。
ずっと冷蔵庫にいたユウの手は冷たい。フロイドがユウの顔を見ると顔色もあまり良くなさそうだった。
*
「小エビちゃん、大丈夫?」
「はい。お茶ありがとうございました。後でお金払いますね」
「それぐらい気にしないでいーよ。ほんとは無理やりでも退勤させて良かったんだけど、アイツ逃げるように早退したからさ。この店・・・今、小エビちゃんだけだもんね」
ホットウォーマーから出した温かいほうじ茶。冷えきった手にじんわりと血が巡る。どれだけ勝手を知ってるのかフロイドは小銭をレジに入れて、ユウにお茶を渡したのだ。
事務室の椅子に座り、ふぅふぅとしながら飲む。足を広げ踵を上げてしゃがむフロイドはニコニコしている。
「なんか、いつもの小エビちゃんって感じ。オレさ、小エビちゃんの気に障るようなことした?それならオレ謝るよ」
「フロイドさんは何も悪くないです・・・。ほんと、私の問題で・・・。あの、もう大丈夫です。こんな時間ですし、彼女さん待ってるんじゃないですか?」
ペットボトルをグッと握る。十分に暖かくなった手は今度は熱い。目の前にいる好きな人に居て欲しいのに、彼女の所へ行ってなど口が裂けても本当は言いたくない。お人好し過ぎる性格は損をするとマブに言われたこともあった。
「は・・・?彼女?オレ、いねぇけど・・・」
「はは、気を遣わないでください。以前一緒にいらしてた綺麗な女性がいたじゃないですか。ひ、ひ、避妊具も・・・」
段々恥ずかしくなってきたユウはペットボトルに口を付けながらもごつく。
ピンときたフロイドは、あー・・・と頭をガシガシと掻いて視線を逸らす。
「あれねー・・・仕事関係で接待していた人なの。ちょっと色々聞きたいことあったから、上手ぁく口車に乗せて最終的にヤル約束で聞いた。オレはヤル気全くなかったけど、一応カタチだけ買ったってわけ。あの後デロデロになるまで飲ませて置いて帰ったし、一切手を出してないよ。信じてくれる?」
首を傾けて聞くフロイドの仕草にグッと胸を押さえる。しかしあんな美人との好機を捨てるとは、余程モテるのだろうとまたもや悩みの種である。
「あは!小エビちゃんは色んな表情するし、すげぇ面白いよねぇ!そっかぁ・・・もしかしてぇ、それでオレに素っ気なかった?オレに彼女いると思ったんでしょ?」
ぶわわっとユウは本当の茹でエビのように赤くなる。このやり取りでは、フロイドに彼女がいて悲しくて拗ねてましたと言っているようなものだ。
「や・・・あの・・・違っ・・・」
「でも、あのヤリチンと付き合ってたんだよねぇ?小エビちゃん・・・もしかして本当はヤリマ「違います!!」
ドン!とペットボトルと事務机に置く。勢い余ったお茶がピチャリと跳ねた。
「ごめんごめん!それは違うよね。じゃぁ、小エビちゃんの好きな人は本当は誰?」
確信と自信に満ちたフロイド。
店内のBGMはシンガーソングライターが歌う恋の応援歌が流れている。
「・・・・・・小エビちゃん、もう遅いっ!!」
シンガーソングライターが項垂れた気がする。
「わ、私・・・フロイドさんに、恋してます!」
「あはぁ!よく言えました!いい子いい子!オレもねぇ、小エビちゃんに恋してるよ」
嘘・・・と大きな大きな涙の粒が溢れる。
添えられた暖かい手はホットドリンクよりも温かくて、優しい。
「好きじゃない人と付き合って・・・バカな私でごめんなさい」
「ん。オレも紛らわし人連れてきてごめんね?面倒な仕事押し付けた2人に文句言っとくから!」
誰の事を言っているのかユウは知らないが、それもまた近いうちに知ることになるだろう。
すみませーん!とレジの方から聞こえる。
今はまだ勤務中。
「はぁい!伺います!」
「ねぇ、小エビちゃん~。仕事終わったらオレん家来る?」
あの箱使ってないか確認してよ。なんて、冗談で誘い文句を言う。
「えっと、あの箱・・・つ、使っていいですよ?・・・じゃ、お仕事して来ます!」
自分で熱湯に浸かり、茹でエビになるユウ。
フロイドも予想外の反応に照れていた。
深夜のコンビニ。
店員もお客さんも肩書きを外せば皆同じ。
満月の下、鼻歌を歌う。
ゆらゆらとコンビニの袋は2人の真ん中で揺れる。
BGMはお互いの鼻歌。
Fin
「フロイドさん?!」
上擦った声でフロイドの名前を言う。フロイドは先ほどユウが補充していた棚の隙間からオッドアイを覗かせていた。彼を見ていた目は冷蔵庫の温度よりも冷たく、彼はヒッ!とユウの手を離す。
「小エビちゃん、オレもしかして邪魔してる?」
ユウは、横に大きく首を振る。
フロイドは目を細めて笑い、失礼しまーすと冷蔵庫に入ってきた。
「じゃ、問題ないね。・・・アンタには小エビちゃんは相応しくないよ。オレ知ってるから。アンタ・・・何股もしてるでショ。ま、見た目は悪くねぇもんな、オレ程じゃねぇけど!」
「えっ?!」
「その感じだと小エビちゃん・・・ソイツのことそんな好きじゃないね。なら、さっさと別れな。ソイツ、小エビちゃんとヤリたいだけだから」
「そ、そう・・・なの?」
ユウが尋ねると目は肯定と言わんばかりに泳いでいる。本来なら傷つくはずなのに、ユウは少しホッとしていた。
「チッ・・・。アンタこれからは小エビちゃんとシフト被んな。ここの店長知り合いだから、オレからも言うから」
え?!と今度はフロイドを見る。店長なのに服は派手で陽気な人。いつもユウを小鬼ちゃんと呼ぶ不思議な店長。
「・・・さっきは"彼氏"だったから許したけどぉ、次小エビちゃんに手を出したら・・・雑魚でも分かるよなぁ!?」
きっちりと留められた詰襟のボタンが弾ける。噎せている職場の先輩の苦しそうな光景にユウは止めてください!とフロイドの腕を掴む。
ずっと冷蔵庫にいたユウの手は冷たい。フロイドがユウの顔を見ると顔色もあまり良くなさそうだった。
*
「小エビちゃん、大丈夫?」
「はい。お茶ありがとうございました。後でお金払いますね」
「それぐらい気にしないでいーよ。ほんとは無理やりでも退勤させて良かったんだけど、アイツ逃げるように早退したからさ。この店・・・今、小エビちゃんだけだもんね」
ホットウォーマーから出した温かいほうじ茶。冷えきった手にじんわりと血が巡る。どれだけ勝手を知ってるのかフロイドは小銭をレジに入れて、ユウにお茶を渡したのだ。
事務室の椅子に座り、ふぅふぅとしながら飲む。足を広げ踵を上げてしゃがむフロイドはニコニコしている。
「なんか、いつもの小エビちゃんって感じ。オレさ、小エビちゃんの気に障るようなことした?それならオレ謝るよ」
「フロイドさんは何も悪くないです・・・。ほんと、私の問題で・・・。あの、もう大丈夫です。こんな時間ですし、彼女さん待ってるんじゃないですか?」
ペットボトルをグッと握る。十分に暖かくなった手は今度は熱い。目の前にいる好きな人に居て欲しいのに、彼女の所へ行ってなど口が裂けても本当は言いたくない。お人好し過ぎる性格は損をするとマブに言われたこともあった。
「は・・・?彼女?オレ、いねぇけど・・・」
「はは、気を遣わないでください。以前一緒にいらしてた綺麗な女性がいたじゃないですか。ひ、ひ、避妊具も・・・」
段々恥ずかしくなってきたユウはペットボトルに口を付けながらもごつく。
ピンときたフロイドは、あー・・・と頭をガシガシと掻いて視線を逸らす。
「あれねー・・・仕事関係で接待していた人なの。ちょっと色々聞きたいことあったから、上手ぁく口車に乗せて最終的にヤル約束で聞いた。オレはヤル気全くなかったけど、一応カタチだけ買ったってわけ。あの後デロデロになるまで飲ませて置いて帰ったし、一切手を出してないよ。信じてくれる?」
首を傾けて聞くフロイドの仕草にグッと胸を押さえる。しかしあんな美人との好機を捨てるとは、余程モテるのだろうとまたもや悩みの種である。
「あは!小エビちゃんは色んな表情するし、すげぇ面白いよねぇ!そっかぁ・・・もしかしてぇ、それでオレに素っ気なかった?オレに彼女いると思ったんでしょ?」
ぶわわっとユウは本当の茹でエビのように赤くなる。このやり取りでは、フロイドに彼女がいて悲しくて拗ねてましたと言っているようなものだ。
「や・・・あの・・・違っ・・・」
「でも、あのヤリチンと付き合ってたんだよねぇ?小エビちゃん・・・もしかして本当はヤリマ「違います!!」
ドン!とペットボトルと事務机に置く。勢い余ったお茶がピチャリと跳ねた。
「ごめんごめん!それは違うよね。じゃぁ、小エビちゃんの好きな人は本当は誰?」
確信と自信に満ちたフロイド。
店内のBGMはシンガーソングライターが歌う恋の応援歌が流れている。
「・・・・・・小エビちゃん、もう遅いっ!!」
シンガーソングライターが項垂れた気がする。
「わ、私・・・フロイドさんに、恋してます!」
「あはぁ!よく言えました!いい子いい子!オレもねぇ、小エビちゃんに恋してるよ」
嘘・・・と大きな大きな涙の粒が溢れる。
添えられた暖かい手はホットドリンクよりも温かくて、優しい。
「好きじゃない人と付き合って・・・バカな私でごめんなさい」
「ん。オレも紛らわし人連れてきてごめんね?面倒な仕事押し付けた2人に文句言っとくから!」
誰の事を言っているのかユウは知らないが、それもまた近いうちに知ることになるだろう。
すみませーん!とレジの方から聞こえる。
今はまだ勤務中。
「はぁい!伺います!」
「ねぇ、小エビちゃん~。仕事終わったらオレん家来る?」
あの箱使ってないか確認してよ。なんて、冗談で誘い文句を言う。
「えっと、あの箱・・・つ、使っていいですよ?・・・じゃ、お仕事して来ます!」
自分で熱湯に浸かり、茹でエビになるユウ。
フロイドも予想外の反応に照れていた。
深夜のコンビニ。
店員もお客さんも肩書きを外せば皆同じ。
満月の下、鼻歌を歌う。
ゆらゆらとコンビニの袋は2人の真ん中で揺れる。
BGMはお互いの鼻歌。
Fin
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