落ちた恋に触れて
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「いらっしゃいませー」
大きなビルが立ち並ぶ都会から少し離れた場所にとあるコンビニがある。大手で務める会社員の仕事帰り、最寄り駅から帰宅する学生等が立ち寄る。帰宅時駅内のコンビニに立ち寄れなかったのなら、次にあるのはこのコンビニ。と利用客は言う。
現在、後1時間で日付が変わる時刻であり、バイトのユウが退勤する時間でもある。
しかし、ドリンクショーケース棚の上に設置された時計を確認する暇もない。
花金とあってこの時間でもコンビニ内は、会社員や学生が入り交じっていた。
「ありがとうございましたー」
このコンビニのバイトを初めて3ヶ月。元々接客業の経験があるユウは、業務をそつ無くこなすタイプ。覚えることは多いが、要領のいいユウはすぐに作業を覚え、今では1人で店内を任されることも増えた。
今日はお客さんが多いなぁと思いながら忙しなくレジを捌いていく。
ピッ・・・ピッ・・・
電子音を鳴らしてコードを読み込む。単純なようでスピードを求められる作業。人間急いでいると理由はどうあれ、早くしてくれと思う。気軽に立ち寄れて、サッと買い物が出来るコンビニはその代表のようなものだ。
仕事が出来るようになり、1人でこなせるとはいえ出来ることは限られる。店長は別の店舗へと用事で席を外しており、店には本当にユウだけ。
今レジをしている客は買い物、税金の支払い、通販サイトで購入した代金の払いに来ている。
印鑑、支払証明書など用意しないといけない。
する事がたくさんあるのに、こんな時に限って列が出来ていた。
「なぁ・・・まだかよ・・・。早くしてくれよ」
やっぱ言われた。と思い、すみません!と眉を八の字に下げながら、体を傾けて後ろの客にユウは謝罪した。舌打ちが聞こえてしまい、今まで何度も経験してるとはいえ恐縮する。
「あー・・・・・・店員さぁん、オレらの事気にしなくていいから、自分のペースで仕事やればいいからね」
最後尾から間延びした声が聞こえる。並ぶ客全員の頭1個分は余裕であるだろうその人は、少し気だるそうに言う。ユウがお礼を言おうと顔を上げると、目を細めてニッと笑っていてユウの心臓を煩く打ち鳴らした。
「あの・・・先程はありがとうございました。フロイドさん」
「別に~?小エビちゃん一生懸命やってるのに野次入れやがってムカつく!」
ユウがフロイドと呼ぶ男は、はい!いつものね!と棒付きの飴を差し出す。
ピッとバーコードを読み取ると、ユウは小さいゴミ箱をサッとカウンターに置く。フロイドはすぐに飴に被されている透明の袋を破りポイッと入れた。店員として常連客の求めるサービスとしては上出来。
「小エビちゃんがいる時、いっつも変な客いるよねぇ。」
「あはは。そうでしょうか」
くしゃりと丸められた飴袋に視線を落とし、フロイドの言う─いつも─を思い出す。
*
あれはユウがこのコンビニに務めて1ヶ月程のこと。季節の新商品の納品が届き、棚の整理をしていた。今の季節らしいフルーツを使ったミニパフェで、上がる時に残っていたら買おうかなぁなんて思いながらユウは陳列していた。それでもやはり売れてくれた方が嬉しいので、ラベルの向きや列を揃えたり気を配る。
「店員さん、すみません。探している雑誌があるんですけど・・・ちょっと見て貰えませんか?」
「は、はい!」
本、雑誌が置いてある窓側へ移動する。サラリーマン風の男性の後を付いて行き、ユウは声をかけるが男性はとりあえず来てと一言。
「ここ、ここ。ちょっと、僕目があまり良くないんで店員さん雑誌の見出し読み上げていってくれる?」
「え・・・ここ?」
あからさまに顔を出さないようにするも、少し口が引き攣る。何故ならここは成人雑誌のコーナーで、この男性は探し物といいながらユウに卑猥な見出しの台詞を言わせたいだけ。セクハラだとすぐに分かったが、どうすることも出来ず早くと急かされる。ニヤリとされる顔が気持ち悪い。
「あ、えっと・・・"淫らな私の、「はぁい、そこまで~」」
ぬっと頭上から腕が降りてくるとユウが持っていた雑誌が取り上げられる。その際少しビッと破けてしまう。後ろを振り向くと背が高く、珍しいオッドアイの男性が見下ろしていた。
「へ?あ、雑誌が・・・」
「おっさーん、アンタのキモイ顔が外から丸見えなんだけど?どう見てもセクハラじゃん。この小エビちゃん困ってるし」
「こ、小エビ??私のこと?」
「な、何を言うんだ!僕は店員さんに雑誌を探してもらってるだけだ!」
「へー。なら雑誌名言うだけでいいんじゃね?見出しとかいらねぇよな?それと・・・ふぅん、大きい会社に務めてんだ?」
「い、いつの間に?!返せ!」
汚いものを持つように社員証を摘み持ち、ひらひらと揺らす。もぅ、覚えたからいらね!とポイッと投げると、男は慌てて拾うとコンビニから走り去って行った。漫画のように転んでいて思わずユウがプッと含み笑いをすると、彼・・・フロイドも笑っていた。男を鋭く見下ろしていた顔から、無邪気な顔で笑っていたものだから、ユウは思わずときめいてしまう。その後、必要ありませんとユウは断るも、フロイドは破った雑誌の代金を払い引き取ろうとする。
「小エビちゃん真面目に仕事して偉いねぇ。まぁ、あんな変態もいるから気をつけなよ。また来るね~」
店内の新聞雑誌用のゴミ箱に買ったばかりの雑誌をポイッと入れる。タイプの女じゃないんだよねぇ~と。振り返ることなく、フロイドは手をひらひらさせ、それは深海魚の尾鰭のように夜闇へと消えていく。
「長身イケメンで甘い声に優しい・・・あれは・・・好きになるでしょ。まるで人魚ね・・・」
人魚の美しい姿、歌声に引かれた王子のようだと、とある映画を思い出していた。
大きなビルが立ち並ぶ都会から少し離れた場所にとあるコンビニがある。大手で務める会社員の仕事帰り、最寄り駅から帰宅する学生等が立ち寄る。帰宅時駅内のコンビニに立ち寄れなかったのなら、次にあるのはこのコンビニ。と利用客は言う。
現在、後1時間で日付が変わる時刻であり、バイトのユウが退勤する時間でもある。
しかし、ドリンクショーケース棚の上に設置された時計を確認する暇もない。
花金とあってこの時間でもコンビニ内は、会社員や学生が入り交じっていた。
「ありがとうございましたー」
このコンビニのバイトを初めて3ヶ月。元々接客業の経験があるユウは、業務をそつ無くこなすタイプ。覚えることは多いが、要領のいいユウはすぐに作業を覚え、今では1人で店内を任されることも増えた。
今日はお客さんが多いなぁと思いながら忙しなくレジを捌いていく。
ピッ・・・ピッ・・・
電子音を鳴らしてコードを読み込む。単純なようでスピードを求められる作業。人間急いでいると理由はどうあれ、早くしてくれと思う。気軽に立ち寄れて、サッと買い物が出来るコンビニはその代表のようなものだ。
仕事が出来るようになり、1人でこなせるとはいえ出来ることは限られる。店長は別の店舗へと用事で席を外しており、店には本当にユウだけ。
今レジをしている客は買い物、税金の支払い、通販サイトで購入した代金の払いに来ている。
印鑑、支払証明書など用意しないといけない。
する事がたくさんあるのに、こんな時に限って列が出来ていた。
「なぁ・・・まだかよ・・・。早くしてくれよ」
やっぱ言われた。と思い、すみません!と眉を八の字に下げながら、体を傾けて後ろの客にユウは謝罪した。舌打ちが聞こえてしまい、今まで何度も経験してるとはいえ恐縮する。
「あー・・・・・・店員さぁん、オレらの事気にしなくていいから、自分のペースで仕事やればいいからね」
最後尾から間延びした声が聞こえる。並ぶ客全員の頭1個分は余裕であるだろうその人は、少し気だるそうに言う。ユウがお礼を言おうと顔を上げると、目を細めてニッと笑っていてユウの心臓を煩く打ち鳴らした。
「あの・・・先程はありがとうございました。フロイドさん」
「別に~?小エビちゃん一生懸命やってるのに野次入れやがってムカつく!」
ユウがフロイドと呼ぶ男は、はい!いつものね!と棒付きの飴を差し出す。
ピッとバーコードを読み取ると、ユウは小さいゴミ箱をサッとカウンターに置く。フロイドはすぐに飴に被されている透明の袋を破りポイッと入れた。店員として常連客の求めるサービスとしては上出来。
「小エビちゃんがいる時、いっつも変な客いるよねぇ。」
「あはは。そうでしょうか」
くしゃりと丸められた飴袋に視線を落とし、フロイドの言う─いつも─を思い出す。
*
あれはユウがこのコンビニに務めて1ヶ月程のこと。季節の新商品の納品が届き、棚の整理をしていた。今の季節らしいフルーツを使ったミニパフェで、上がる時に残っていたら買おうかなぁなんて思いながらユウは陳列していた。それでもやはり売れてくれた方が嬉しいので、ラベルの向きや列を揃えたり気を配る。
「店員さん、すみません。探している雑誌があるんですけど・・・ちょっと見て貰えませんか?」
「は、はい!」
本、雑誌が置いてある窓側へ移動する。サラリーマン風の男性の後を付いて行き、ユウは声をかけるが男性はとりあえず来てと一言。
「ここ、ここ。ちょっと、僕目があまり良くないんで店員さん雑誌の見出し読み上げていってくれる?」
「え・・・ここ?」
あからさまに顔を出さないようにするも、少し口が引き攣る。何故ならここは成人雑誌のコーナーで、この男性は探し物といいながらユウに卑猥な見出しの台詞を言わせたいだけ。セクハラだとすぐに分かったが、どうすることも出来ず早くと急かされる。ニヤリとされる顔が気持ち悪い。
「あ、えっと・・・"淫らな私の、「はぁい、そこまで~」」
ぬっと頭上から腕が降りてくるとユウが持っていた雑誌が取り上げられる。その際少しビッと破けてしまう。後ろを振り向くと背が高く、珍しいオッドアイの男性が見下ろしていた。
「へ?あ、雑誌が・・・」
「おっさーん、アンタのキモイ顔が外から丸見えなんだけど?どう見てもセクハラじゃん。この小エビちゃん困ってるし」
「こ、小エビ??私のこと?」
「な、何を言うんだ!僕は店員さんに雑誌を探してもらってるだけだ!」
「へー。なら雑誌名言うだけでいいんじゃね?見出しとかいらねぇよな?それと・・・ふぅん、大きい会社に務めてんだ?」
「い、いつの間に?!返せ!」
汚いものを持つように社員証を摘み持ち、ひらひらと揺らす。もぅ、覚えたからいらね!とポイッと投げると、男は慌てて拾うとコンビニから走り去って行った。漫画のように転んでいて思わずユウがプッと含み笑いをすると、彼・・・フロイドも笑っていた。男を鋭く見下ろしていた顔から、無邪気な顔で笑っていたものだから、ユウは思わずときめいてしまう。その後、必要ありませんとユウは断るも、フロイドは破った雑誌の代金を払い引き取ろうとする。
「小エビちゃん真面目に仕事して偉いねぇ。まぁ、あんな変態もいるから気をつけなよ。また来るね~」
店内の新聞雑誌用のゴミ箱に買ったばかりの雑誌をポイッと入れる。タイプの女じゃないんだよねぇ~と。振り返ることなく、フロイドは手をひらひらさせ、それは深海魚の尾鰭のように夜闇へと消えていく。
「長身イケメンで甘い声に優しい・・・あれは・・・好きになるでしょ。まるで人魚ね・・・」
人魚の美しい姿、歌声に引かれた王子のようだと、とある映画を思い出していた。
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