Xmas SS 2020
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パラパラと紙同士が擦れる音がする。
男子校の学園には不似合いのそれ。
ユウのマブたちがしょうもない喧嘩をしているので、仲裁をしようとしたがジャックやエペルが止めに入ったので大丈夫だろうとユウは自分の時間に費やしていた。
サムの店で泣け無しのお小遣いで買った雑誌。こんな物まで売ってるのかと思わず財布の紐が緩んだ。
「へぇ、今ってこういうのが流行ってるんだ」
ユウが読んでいるのは女性向けのファッション雑誌。それでも表紙にはヴィルが載っていて、エペルはヴィルサン凄いと賞賛していた。
目次から始まり、新発売の香水やメイク用品、旬のタレントのスナップ写真など載っていて、身内贔屓からかユウはNRCにもこんな人いっぱいいるじゃん……とタレントの男性にはときめかない。
どこの世界も雑誌は同じようなことが書いてあるんだなぁと、次のページを捲る。
「わぁ!綺麗なアクセサリー!!」
雑誌全面に有名ロゴらしきブランドのアクセサリーが掲載されてきる。
この時期はクリスマス。
クリスマスをイメージしたカラーやモチーフ、宝石などがはめ込まれたアクセサリーが雑誌越しでも煌めいている。
値段も宝石並に輝いているのは見ないふり。
「ユウさんはこのような宝石がお好きなんですか?」
「わっ!!ビックリした・・・ジェイド先輩でしたか!急に現れるとかフロイド先輩みたいですね」
「ふふっ、たまには僕にも驚いてください」
マブたちがいつの間にか静かになっていてユウはなるほどね……と頬杖をつく。
ジェイドは失礼しますね。とユウの机にもたれ掛かり長い足をクロスさせる。そして、ユウの見ていた雑誌を興味深そうに見下ろす。
「あ、さっきの話ですが……アクセサリーは好きですよ。ただ、こんな高級のじゃなくて数マドルぐらいの安いのしか買えませんけどね」
いつも買うレベルの金額の何倍もするアクセサリーに想像するだけで目が回る。
そう思いながら次のページを捲ると、イルミネーション特集だった。
大きな大きな木のツリーやら、魔法で宙に浮くトナカイの飾りやサンタ。雑誌に乗っているカップルモデルも楽しそうにしている。
全てが煌びやかで見ているだけで行った気分になる。
「へぇ……このイルミネーション24日までなんだ。あっ!!しかもここって賢者の島!絶対ハロウィンきっかけよね!あー行きたいなぁ……」
「ユウさん、僕と24日にこのイルミネーション見に行きますか?」
へ?!とユウは顔を上げる。雑誌に夢中になっていて、行きたいという言葉が零れていた。ニコニコと笑うジェイドにユウは照れながら首を縦にした。
*
「ひゃー!人がいっぱい!でも、綺麗!!綺麗!!」
24日、日が暮れる前にユウとジェイドは外出許可を取り郊外の町にあるイルミネーションスポットに来ていた。ライトアップは既にされていて、夕方ではあったが雰囲気は十分。
「ユウさんに喜んでもらえたなら来た甲斐がありますね。はい、無邪気にはしゃぐお嬢様は僕と手を繋ぎましょうね」
「は、はしゃぎましたが子どもじゃないです!」
「えぇ、貴女は子どもではありませんね。さぁ、レディ・・・お手をどうぞ」
たまにヴィラン顔をするのに、こうやって王子スマイルもする。小悪魔系女子ならぬ、小悪魔男子とはジェイドの事なのでは?とユウは雑誌の記事を思い出していた。
手袋をしていないすらりとした指に恐る恐る指先を乗せる。
ゆっくりと乗せていると、焦れったいですねと笑いながら手を包まれ、人魚だからひんやりしているのかと思えばそれほどひんやりしていない。
よく見るとジェイドはここに来るまで手をコートのポケットに入れていた。
ユウに触れた時に冷たさで驚かさないようにする為。
「ジェイド先輩は優しいですね。こうやって後輩の為にイルミネーションまで来てくれるんですから」
「……誰にでも優しくはないですよ?」
顔を覗き込まれて、奥底の感情を読まれそうでユウは目をそらす。
「し、知ってましたか?!この大きなツリーは最後に点灯するんですって!点灯する瞬間見たいですね!きっともうすぐですから、ツリーを見ましょ!」
ツリーに繋いでる手を向けてユウは誤魔化す。ジェイドは眉を下げて苦笑いしながら、そうですね。とツリーに目を向けた。
次第に辺りは暗くなり点灯を待つ人々が町の真ん中に集まり出し、背の低いユウは埋もれてくる。少し狭そうにしているユウにジェイドはこちらです!と手を引き、人混みを避けながら間を通り開けた場所へと連れていく。
「勝手なことしてすみません。少し離れてしまいましたが、ここからでもツリーが見えますからご安心ください」
「いえっ!少し辛かったので助かりました」
穴場らしいそこは周りに人がいない。少し高台になっていて、二人は休憩を兼ねて腰を下ろす。さり気なくハンカチを敷いてくれるのもジェイドらしい。
上から見たツリーの周りはカップルがたくさん。
微笑ましいのと同時にユウは羨ましくも思う。今の自分は雑誌のモデルカップルと同じなのよね?と。
こんなに素敵なジェイドが恋人ならいいのに。
そうユウが思っている間にもジェイドは寒いでしょう?と自分のマフラーを巻いてくれる。
スパダリ過ぎて、ユウはお礼のタイミングを逃してしまう。
「あっ!ジェイド先輩!カウントダウン始まりましたよ!!30、29……ふふっ、30秒前からって変ですね」
「ユウさん、実は渡したい物があります。これ、開けてみてください」
「26、25・・・、え?まさかジェイド先輩レンタル料の請求?」
手のひらサイズの赤い箱。
箱の蓋と思われるところには、見たことあるロゴマーク。ユウはいよいよ手が震えてしまい、ジェイドはどうぞと手でジェスチャーする。
点灯のカウントダウンはツリーの周りのカップル達が数えていて、ユウはそれを聞きながらリボンを解いていく。
「ジェイド先輩、私ね……こういうシチュエーションって初めてだから期待しちゃうんです。だから、ほんと気の迷いなら気の迷いの冗談って今言ってください」
「気の迷いなんかじゃありません。これは……僕の貴女への気持ちです。受け取って頂けますか?」
「うぅ……まだ開けてないのに……泣くぅ……」
クスクスと笑いながらジェイドはユウの体を自分の方へと抱き寄せる。目を潤ませながらジェイドの胸元で箱を開けると、先日の雑誌に載っていたアクセサリー。ユウさんの好きそうな物を選びました、とジェイドは箱からネックレスを取り出し首に飾ってあげる。あの時の雑誌の中でもユウのドンピシャ過ぎてまたユウは泣いてしまい、もうツリーの点灯どころではない。
「僕が卒業する時のクリスマスプレゼントはもっと期待しててくださいね」
「うぅ、ジェイド先輩の考えてる事が想像出来るから、私涙止まりません……」
「おやおや……それでは、涙が止まるようなことしましょうか?」
「………………恥ずかしいからダメですっ!」
「しくしく……」
ジェイドXmasver. Fin
