You make my happy
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「好きです。僕と付き合ってください」
そう言ったアズール。
始まりは男らしく紳士に。体の真ん中にある心臓は今にも爆発しそうだったことは本人しか知らない。
─私のどこが好きなんですか?
豆鉄砲を食らったような表情に可愛さが入り交じって吹き出してしまった。
そういう所も含めてアズールは彼女が可愛いと思う。
アズールは今まで様々な分岐点があった。
からかわれ、惨めで閉じこもった時もある。対価というモノで自分の価値を上げ、努力と実力で伸し上がる。理想通りであり、手の上で踊らせ全て上手くいっていた。
しかし目の前でポカンと口が開いているユウによって全てが無かったことになってしまった時もある。
どろどろの黒いものから救ってくれたのもまたユウ。
そんな彼女を目で追わないわけがない。
ただ追うだけ。目が合いそうになれば逸らす。そして、目が合う。笑いかけられる。
そんな事の繰り返し。
双子以外にアズールに笑いかけるのはユウだけだった。
「貴女の笑顔です」
真っ直ぐ目を見て答えると、赤く染められた美しい花の手の甲にキスをひとつ落とした。
永遠に褪せない想いを込めて。
*
「アズール、少し宜しいですか?」
「・・・何です?」
作業の邪魔ですと思いつつ、アズールは声を掛けてきたジェイドへ視線を向ける。目の錯覚か疲れなのかジェイドの足が4本に見えたのだ。海の中なら尾鰭1本・・・なら分かる。陸なら2本。四足歩行の動物にでもなったのか。にしても、2本は細く遠慮がち。
「・・・・・ユウさんも一緒でしたか」
「お仕事中ごめんなさい」
晴れて恋人になったというのにユウはずっと遠慮がちだ。アズールが難しい顔をしていたから、ジェイドが気を遣ってやったのだろう。
他の男を頼ったのは気に食わないが、近寄り難いオーラを出していたのは自分だからと飲み込む。
そう言えば・・・とアズールは持っていたペンを下ろす。
スマホで連絡は毎日取っているとはいえ、会うのは何日ぶりだろうかと。
それでも日を増す事に彼女であるユウを想う気持ちは輝いて眩しい。遠慮がちなユウの態度でさえ愛しいと思うのだから、恋とは怖い。
「ユウさんが、アズールに話があるそうですよ。ほら、ユウさん」
肩を組んでユウを差し出すジェイドは明らかに態とだ。面白くなさそうな顔をしているアズールで遊んでいる。
「・・・アズール先輩、今日は何の日か分かりますか?」
「今日・・・?さて、何の日でしたか?」
「・・・アズール先輩は勉強だけじゃなくて、ラウンジの仕事があって忙しいの知ってます。でも、記念日を忘れるなんて・・・ホントに私の事好きなんですか?」
ピシャーンと脳天に雷が落ちたアズールと被弾したジェイド。管理能力に自信があったはずなのに、落としてはいけない物を落としていた。片腕を掴んでふるふると震えるユウにギョッとする。スマホのスケジュール表を慌てて確認すると、『お付き合い3ヶ月』と書かれたスタンプ。
3ヶ月。半年でもなければ1年でもなく、言えば中途半端。
ユウは記念日を作りたがるタイプではないが、アズールが記念日を大切にしたいと毎月付き合った記念日をお祝いしようと言ったのだ。
「そ、そうでした!すみません・・・ユウさん。僕としたことが貴女との約束を・・・すぐに片付けてお祝いしましょう!」
「もう、いいです。3ヶ月目にして忘れられるようなら先輩の気持ちはその程度だったってことですよね」
「は?その程度・・・?確かに忘れた僕は最低ですが、僕の気持ちはその程度ではありませんが?」
片付ける手を止め、ピリッと空気が冷えた。いよいよ不穏な空気にラウンジにいる寮生の集まっていた視線はバラけだす。気を回したジェイドの紅茶の誘いもユウは首を横に振る。
「・・・今日はもう帰ります。忙しいところお邪魔しました。失礼します」
四方にお辞儀をするとユウは踵を返す。
アズールが送ります。と立ち上がるとユウはお忙しいようなので結構ですとキッパリ。それでもそこそこ更けた時間に1人で帰らすのはしのびなく、渋々ジェイドに頼むとユウはニッコリと承諾。
それがまたアズールを苛立たせる。
ユウの彼氏は自分だと。
「ユウさん」
ユウの左手を掴む。
冷たくなっている手を今すぐにでも寮長室で温めてやりたい。優しい言葉一つかけてやればいいのに、あぁ言えばこう言う状態の二人には意味が無い。ここは名残惜してくても一旦落ち着く為に帰すのが吉。
急に掴んだせいでユウはよろけながらアズールにもたれかかった。
「・・・おやすみなさい。今日はすみませんでした」
非があったのはアズールの方なのは間違いない。
ユウも引くにも引けなくなった苛立ちのせいで頷くのが精一杯。
触れるか触れない程度の距離感でジェイドはユウをエスコートする。
ラウンジの入口の扉が完全に閉まるまでアズールは見届けると、転がっていたペンを持ち直し、カンカンとテーブルを叩く。傍観者化していたバイト達はいそいそと片付けに戻って行った。
「あ~ぁ、小エビちゃん可哀想~!」
「落ち度は完璧に僕です。今度の仕事に集中し過ぎました。それに彼女への気持ちの伝え方が甘かった・・・」
キッチンからずっと様子を伺っていたフロイドがのそりと顔を出す。
「小エビちゃん、アズールに好きか聞くぐらい寂しかったんだねぇ」
「・・・毎日メッセージのやりとりはしてます」
「そんなモノより、一目会って大好きって言えば早くね?」
「フロイド、お前・・・番でもいるのか?」
「え~オレの番は小エビちゃん!」
「はっ倒すぞ」
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