箱庭の姫
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「ジェイド先輩?」
「・・・あぁ、すみません。僕の机は今散らかっているので隣のフロイドの机を使いましょう。彼の机も散らかっていますが、まぁ・・・何とかなります」
積み重なる本や衣服を片付ける。私も手伝いますとユウは荷物を下ろし片付けを手伝った。
机の散らかり具合をくすくすと笑いながら片付けるユウに、ジェイドは胸が抓られたような気持ちになる。
─なんで、そんな優しい目をしてフロイドの私物を見ているのですか?
フロイド自身に向けた目ではない。たかが、本や衣服。それでも、そこにあるフロイドの物というフィルターのせいできっとユウにそんな顔をさせた。
それを知っているから声に出せずに心にしまう。
「さぁ、勉強をはじめましょう。・・・おや?ここの範囲は前回から随分と進んでますね?」
「そうなんです!最近はフロイド先輩が教えてくれていたんですよ」
へぇ。と机の上で組んでいた手に力が入る。
仮面をつけたような笑いでユウに視線を向けると、ユウの視線の先はここにはいない想い人に向けられていた。
ぐるぐると不自然に渦巻く黒い感情をどうにかしようと、心の尾鰭で蹴散らす。
「僕が教えるよりもフロイドは教えるの上手でしたか?」
「え?」
「いえ、何でもありません。さぁ、始めましょう」
カリカリとペンを走らせているユウの教科書はびっちりと赤線やメモが書かれている。その端にフロイドが落書きしたであろうウツボとエビのイラストが描かれている。2つのイラストはにっこりと笑っていて、そのフォルムがハートの形に見える。ただの落書きだ。
ジェイドは自分の幼稚すぎる嫉妬に情けなくなる。
そして、ユウが自分のトートバッグから他の教科書を漁っている間に、ジェイドは自分のマジカルペンでその落書きをなかったことにした。
「・・・まるで稚魚ですね、全く」
「・・・先輩?もしかして体調が良くなかったですか?・・・なんだか今日は上の空ですね。熱があるとか?」
「・・・っっ!!」
ユウはジェイドの額に手を当てる。柔らかく暖かい手の平がジェイドの低めの体温を熱した。
本当に熱が上がりそうなほど。
「んー・・・ひんやりしてる。フロイド先輩と同じぐらいだから大丈夫かな?」
──またフロイド・・・ですか。
いつの間にそんな近い距離で接するようになったのか。初めにユウに近づいたのはジェイドだった。
手順を踏み、少しずつ少しずつ自分の存在をユウに埋め込んでいこうとしていた。微笑みかけられるのも、その熱を孕んだ瞳も全て。
「ジェイド先輩」
柔らかい凪のような声。
時々、芯が強くなる声。
小さな箱庭にしまい、自分だけが聞けるように囲う願望。
美しいガラスの器に囚われた姫として。
ジェイドなしでは生きられない─テラリウムの植物のように。
「少し休憩しませんか?私、紅茶入れてきます。ジェイド先輩ほど上手くないですが」
「そうですか?では、ユウさんが淹れてくれた紅茶をご馳走になります。その間、僕はこの範囲の要点をまとめておきますね」
「お願いします!では、給湯室お借りしますね」
給湯室は小さなコンロがある。そこの存在を案内せずともユウは知った様子。
そこもフロイドが教えたのだろう。
ユウはにこっと笑いながら会釈をすると、ジェイドの部屋を出て行った。
カチコチと壁に掛かっている時計の秒針がやたらと耳につく。カチ、コチと1秒ずつ進むそれ。
ノートに要点をまとめつつ、その音を無意識に数えている。
チラチラと時計を見て、時間はまだ5分ほどしか経っていない。
この部屋を出て、紅茶を淹れる用意をして蒸らし時間に1~2分。5分は妥当な時間。
そろそろトレーに乗せて部屋へ戻ってくるだろう。分かりやすくノートにまとめ、次の小テスト対策も足した。これは無対価。
さすがジェイド先輩です!・・・なんて言ってほしくて。
弧を描いた様に笑い、首が痛くなるのに見上げるユウ。それは小さくて、脆くて、守ってあげなくては、と雄としての本能か。
「少し、遅いですね。ユウさんを迎えに行きましょうか」
フロイドに食べられないように隠していたクッキーをベッドの下の箱から出す。
美味しい紅茶とクッキーに可愛いユウ。
素敵な休憩になりますね。と、ユウを迎えに行くことにした。
「・・・あぁ、すみません。僕の机は今散らかっているので隣のフロイドの机を使いましょう。彼の机も散らかっていますが、まぁ・・・何とかなります」
積み重なる本や衣服を片付ける。私も手伝いますとユウは荷物を下ろし片付けを手伝った。
机の散らかり具合をくすくすと笑いながら片付けるユウに、ジェイドは胸が抓られたような気持ちになる。
─なんで、そんな優しい目をしてフロイドの私物を見ているのですか?
フロイド自身に向けた目ではない。たかが、本や衣服。それでも、そこにあるフロイドの物というフィルターのせいできっとユウにそんな顔をさせた。
それを知っているから声に出せずに心にしまう。
「さぁ、勉強をはじめましょう。・・・おや?ここの範囲は前回から随分と進んでますね?」
「そうなんです!最近はフロイド先輩が教えてくれていたんですよ」
へぇ。と机の上で組んでいた手に力が入る。
仮面をつけたような笑いでユウに視線を向けると、ユウの視線の先はここにはいない想い人に向けられていた。
ぐるぐると不自然に渦巻く黒い感情をどうにかしようと、心の尾鰭で蹴散らす。
「僕が教えるよりもフロイドは教えるの上手でしたか?」
「え?」
「いえ、何でもありません。さぁ、始めましょう」
カリカリとペンを走らせているユウの教科書はびっちりと赤線やメモが書かれている。その端にフロイドが落書きしたであろうウツボとエビのイラストが描かれている。2つのイラストはにっこりと笑っていて、そのフォルムがハートの形に見える。ただの落書きだ。
ジェイドは自分の幼稚すぎる嫉妬に情けなくなる。
そして、ユウが自分のトートバッグから他の教科書を漁っている間に、ジェイドは自分のマジカルペンでその落書きをなかったことにした。
「・・・まるで稚魚ですね、全く」
「・・・先輩?もしかして体調が良くなかったですか?・・・なんだか今日は上の空ですね。熱があるとか?」
「・・・っっ!!」
ユウはジェイドの額に手を当てる。柔らかく暖かい手の平がジェイドの低めの体温を熱した。
本当に熱が上がりそうなほど。
「んー・・・ひんやりしてる。フロイド先輩と同じぐらいだから大丈夫かな?」
──またフロイド・・・ですか。
いつの間にそんな近い距離で接するようになったのか。初めにユウに近づいたのはジェイドだった。
手順を踏み、少しずつ少しずつ自分の存在をユウに埋め込んでいこうとしていた。微笑みかけられるのも、その熱を孕んだ瞳も全て。
「ジェイド先輩」
柔らかい凪のような声。
時々、芯が強くなる声。
小さな箱庭にしまい、自分だけが聞けるように囲う願望。
美しいガラスの器に囚われた姫として。
ジェイドなしでは生きられない─テラリウムの植物のように。
「少し休憩しませんか?私、紅茶入れてきます。ジェイド先輩ほど上手くないですが」
「そうですか?では、ユウさんが淹れてくれた紅茶をご馳走になります。その間、僕はこの範囲の要点をまとめておきますね」
「お願いします!では、給湯室お借りしますね」
給湯室は小さなコンロがある。そこの存在を案内せずともユウは知った様子。
そこもフロイドが教えたのだろう。
ユウはにこっと笑いながら会釈をすると、ジェイドの部屋を出て行った。
カチコチと壁に掛かっている時計の秒針がやたらと耳につく。カチ、コチと1秒ずつ進むそれ。
ノートに要点をまとめつつ、その音を無意識に数えている。
チラチラと時計を見て、時間はまだ5分ほどしか経っていない。
この部屋を出て、紅茶を淹れる用意をして蒸らし時間に1~2分。5分は妥当な時間。
そろそろトレーに乗せて部屋へ戻ってくるだろう。分かりやすくノートにまとめ、次の小テスト対策も足した。これは無対価。
さすがジェイド先輩です!・・・なんて言ってほしくて。
弧を描いた様に笑い、首が痛くなるのに見上げるユウ。それは小さくて、脆くて、守ってあげなくては、と雄としての本能か。
「少し、遅いですね。ユウさんを迎えに行きましょうか」
フロイドに食べられないように隠していたクッキーをベッドの下の箱から出す。
美味しい紅茶とクッキーに可愛いユウ。
素敵な休憩になりますね。と、ユウを迎えに行くことにした。