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一夜の過ちから始まる恋
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「はー…つっかれた〜…」
初めての人と会う・話すというのは、こうも疲れるものなのかと、駅前のベンチに腰掛けながら呟いた。
今日は友達に勧められて始めたマッチングアプリでマッチした男性と初めて会い、一緒に飲む約束となっていた。
彼氏がいなくてもう5年。社会人になってから色恋よりも仕事に専念してきたが、周りが結婚をし始めて、いよいよ焦り出した。
そんな時に、友達がマッチングアプリで彼氏が出来たと言うので、私も早速やってみたら、思いの外スイスイとやりとりができ、今日に至る。
個室の居酒屋を予約してくれていた『京太君』。
見た目も写真通りだし、エスコートもさりげなくて良い感じだった。
飲み始めてしばらくは探り探りでお互い話していたが、徐々に酔いも回ってきて恋愛の話題になってきた時、
「なまえちゃん、写真通り可愛いくてめっちゃタイプだったんだよね!俺さ、なまえちゃんとは本気で将来のこと見据えてお付き合いしたいな!」
『えっ…いや〜、ちょっと早くないですか?まだあたし達、今日会ったばかりですし!これからお互いのことを知っていく段階なんじゃないかなーって…』
「いや!!俺はもうなまえちゃんしか考えられない!!それに…なまえちゃんだって俺との将来のこと、考えてないわけじゃないでしょ?」
『っ!?(ちょ、なんで急に手を握ってくるの!?)あ、はははー…私はもう少しゆっくりとかなぁって、』
「そうなのー?…にしても、なまえちゃんってさぁ、可愛いけど結構綺麗系でもあるよねぇ。今日だってさぁ、その格好は誘ってるよねぇ?」
そういって、私の胸元を覗きながら手をゆっくり太ももを撫で回された。
その瞬間、私の中でプツンッと我慢していた糸が切れた音がした。
『ごめんなさい!ちょっと体調が悪くなったので、これで失礼します!お金はここに置いておきますので!』
「え、ちょっと!なまえちゃん!?」
私はお金はテーブルの上にドンッと置き、足早にその場を後した。
後ろの方で私の名前を呼んでいる京太君の声が聞こえたが、聞こえないふりをして駅の方へ向かい、そして今に至る…。
『(はぁー…あたしには向いてないんだな、アプリって。世の中の皆さんはどうやってお付き合いしているんだろう…すごいなぁ)』
ぼーっとしていると、車道を挟んだ反対側の歩道で男女が手を繋ぎながら仲よさげに歩いている姿が見え、羨ましくもあり尊敬の念もあり。
今日の京太君からのあの一言‥気持ち悪かったな…。見た目はすごく真面目そうで良い感じだったのに。結局男はみんな同じ考えなのだろうか…。
自分で言うのもなんだが、私自身の顔立ちは可愛いよりも綺麗めと言われることが多い。そして胸もまあ、そこそこある。
なので、言い寄ってくる男は大抵遊び相手として付き合おうとしたり声を掛けたりする。
派手そうな見た目だからなのか、簡単に遊べそうな相手と思われてしまう。実際はそんなことなくて、むしろ男性関係に関しては慎重な方である。だから前の彼氏ともうまくいかなかったんだけど…。
今回だけはそうならないようにと思ったのに…。
やっぱり私には彼氏なんてできないのかな…。そもそも、私がもう割り切ってそういうチャラチャラした人達と付き合えるように切り替えていけばいいのかな…。
そんなことを考えていたら、スマホの通知が鳴った。それは京太君からだった。
【急にいなくなってびっくりしたよ!照れちゃったのかな?可愛いね!まだ近くにいるよね?駅前のホテルを予約してあるからそこで飲み直そうよ!今駅の方に向かってるんだけど、どこにいる?】
ぎゃーーーー!やっぱり無理!割り切るなんて無理!!照れてないし!むしろ引いてたのがわからないのかな!?
ていうか、ここにいたらまずい!絶対京太君と出くわしてしまう…!
もう!!タクシー待ってたけど来る気配ないし!!
とりあえず駅から離れようと立ち上がると、遠くから京太君らしき人がこちらに向かってきていた。
ぎゃーーー!!どうしよう、どうしよう!!
慌てた私は、とりあえず彼が歩いている道路と反対側の方に向かおうと思い、振り返った途端、
『きゃっ!?』
「うわっ、と。」
振り返った所に男性がいたらしく、ぶつかってしまった。反動で後ろに倒れそうになったが、ぶっかってしまった相手に腕を掴まれて何とか倒れずに済んだ。
「堪忍やで。お姉さん、大丈夫か?」
『…あ、はい。大丈夫、です』
そこには、端正な顔立ちをしていて男性にしては白い肌、そして綺麗なグレージュの髪色。
これは正しくイケメンと呼ばれる部類に入る人なのだろう。
……いやいや!イケメンに見惚れている場合じゃなかった!後ろを見ると、信号待ちをしている京太君の姿が見えた。もう、そこを渡ってしまえばこっちに来てしまう…!!どうしよう…!!
「あの…お姉さん?ほんまに大丈夫か?」
『あ、ごめんなさい!大丈夫です!そちらこそ大丈夫でしたか?』
「ああ、俺は平気や。それよりも…さっきから後ろの方をめっちゃ気にしとるみたいやけど…大丈夫か?」
『あー…ちょっと、会いたくない人がいるっていうか…』
そう言うと、目の前のその男の人は後ろの信号待ちをしている人達をじーっと見つめた。
「もしかして、黒っぽいジャケット羽織ってて中に白シャツ着てる男性?」
『そうです!よくわかりましたね!』
「まあ、他は2人組のカップルや女子グループ、あとは仕事帰りのサラリーマン達やからな。そんな中で1人だけスマホを気にしてる男性がおるからなぁ。」
『す、すごい!なんか探偵みたいですね!』
「…そうか?それよりも、お姉さん。もうすぐ信号変わってあのお兄ちゃんこっち来るで?」
『っ!?ど、どうしよう!?とりあえず離れなきゃ…あの、本当にすみませんでした!』
目の前の男性に謝り、その場を離れようとしたら、「ちょい待ちぃや」と手を引かれた。
「せやったら、ちょっと俺に付き合わへん?」
『は?付き合うってどこに!?』
「ここや」
そう言ったお兄さんが指差した先は、某チェーン店居酒屋だった。
「お姉さんはこの店に入って、これから来る男性に会わないようにやり過ごす。俺はさっきまで飲んでたんやけど、飲み足りんかったから、ここでお姉さんと飲み直す。どうや?ええ考えちゃう?」
『そうしましょう!お願いします!』
ほな行こうか、とお店の中へ促された。
とりあえず、京太君から離れられれば良い!と私は即判断し、急ぎ足でお店の中へ入って行った。
「そういえば、名前言うてなかったな。白石蔵ノ介や。よろしくな」
『みょうじなまえです。巻き込んでしまってすみません。』
「ええって。誰かと飲みたい気分やったし。せやから、俺と遅くまで付き合うてな?」
『それはもう!気の済むまで飲みましょう!』
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