扉を開けると、
面を外した井宿が立っていた。


｢やっと開けてくれたのだ｣

そう笑うあなたに、
また涙腺が弱まりそうになる。


井宿の手が伸びてきて
私の頬に触れた。

優しく、涙の跡を撫でてくれる。



｢もしかして、なのだが
オイラが誰かと一緒に居ると思ったのだ？
くりすますだから｣

私の頬に触れたまま井宿が言う。


｢……うん｣

私を捕らえて離さない視線に
嘘はつけなかった。


｢泣いているのは
それが理由、なのだ？｣

｢……そうだよ｣

言い切ると同時に
視界からあなたの姿が消えた。

力強く、でも優しく
あなたは私を抱きしめた。


｢ち、井宿？｣

｢泣かせたのはオイラだったのか。
申し訳ないのだ｣

ぎゅ、
抱きしめる力が強くなる。



｢美朱ちゃんから聞いたのだ。
君達の世界の、くりすますのことを。
ぷれぜんとを渡したり
部屋を飾りつけて食事をしたり
大切な人と過ごす日だと。

だからオイラは
ななしちゃんと居たい、と
そう思っていたのだ｣


ゆっくり、井宿の身体が離れた。
再び私に注がれる視線。


｢こんなことになってしまうなら
初めから隠さなければ良かったのだ｣

そう言って差し出されたのは
手に収まる大きさの可愛らしい巾着袋。


｢ぷれぜんと、なのだ。

オイラはななしちゃんのことが
好きなのだ。
受け取って欲しい。

そして、一緒に今日を過ごして欲しい｣




一連の流れに頭がついていかない。
必死に整理する。


井宿は私の為にプレゼントを用意して
一緒に過ごそうとしてくれてた。

つまり、つまり、

他の誰かなんて
いなかったってことだよね？