過保護な兄を持つ少女。
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私には2つ上の兄がいる。
心配性というか過保護というか、
とにかく私を構ってくる。
自分で言うのもアレだけど……
兄は、私を溺愛しているのだと思う。
「ほらななし。行こう」
学校へ行こうと玄関に向かうと、
ドアの前で待つ兄の姿。
私が兄と同じ高校に入学してから
ほぼ毎朝見ている光景だ。
(小中学校も在学中はそうだった)
私が早く出かける日も、
それに合わせて用意していたから
初めは申し訳なく思っていた。
そう、初めの頃だけは。
普通、という言い方は良くないけど
普通そこまでしないよねって
思うようになったのはしばらく経ってから。
兄が先に登校しなければいけない日は
これまた少し厄介で、
「私はななしを置いてなど行けない」とか
「通学中何かあったらどうするのだ」とか
大袈裟なことを言い出すのである。
なんていうか
正直ちょっと……窮屈。
だけど、
妹から見ても美しい顔立ちの兄が
笑顔で手を差し出す姿は
何処かの王子様かと思ってしまう。
私に対するコレがなければ、
本当に満点な兄なんだけどなぁ。
「お兄ちゃん、いつも言ってるけど
手は繋がなくていいよ」
差し出された手を受け流し
先にドアを開け出ようとすると、
「ななし、私もいつも言っているが
先に出て何かあったらどうする。
手はまぁ良い、私の後から来なさい」
ドアに伸ばした手は優しく押し返され、
いつも通り行き場を無くした。
道路に出れば、車道側を兄が歩く。
それもいつも通りのことで。
人にぶつかりそうになれば、
私の肩を抱き寄せ「大丈夫か?」と問う。
それもいつも通りのことで。
そして……
「おはようなのだ!
星宿クン、ななしちゃん」
「……おはよう、井宿」
「お、おはようございます!井宿先輩っ」
通学途中で井宿先輩に会い挨拶を交わせば、
こんな風に途端に不機嫌になる。
それもいつも通りのことなのだ。
「井宿、今日は日直じゃなかったか?
早く行かねばならんのではないか?」
「だっ、まだこの時間なのだ。
全然問題ないのだ!」
たぶん嫌味?だった筈なのに、
気にしてくれてありがとうなのだー
という井宿先輩の返しに
兄はがくりと肩を落としていた。
井宿先輩、素敵……。
「ななしちゃん、
学校にはだいぶ慣れてきたのだ?」
「はひっ!?
そ、そうですね、そうだと思います」
いきなり自分の名前を呼ばれ
爆発するかと思った。
変な日本語だったけど
よく返事を返せたじゃない、私。
褒めるに値するわ。
明らかに不自然な私にも、
井宿先輩は優しい笑顔を向けてくれる。
空色の美しい長髪を束ねた
そのお姿だけでも美しいというのに
そんな風に微笑まれたら……
恋に落ちない訳がない。
吸い込まれそうな二つの瞳の色も
優しい口調や物腰も
頭が良いところも
人に対する気遣いができるところも
全部全部、すき。
こんな素敵な人に
きっと近づける筈なかった。
お兄ちゃんの友達でいてくれて、
本当に感謝します。
お兄ちゃんも、ありがとう。
「ああそうだななし、
私が早く行かねばならんのだった」
思い出すように口にした兄に
もしかして二人にしてくれるの?
なんて思って見送ろうとしたけれど、
まさかそんな筈はなく。
私の手を引くと
「では井宿、また後でな」
と彼に言い残し、突然走り出した。
「え、ちょっ、お兄ちゃん!?」
井宿先輩の方へ振り返ると
眉を下げ困ったような笑顔をした先輩が
「またね」と手を小さく振っていた。
うう、かっこいい……
ってそうじゃなーい!!
なんで私まで走らされてるの!?
「お兄ちゃん、別に私
早く行かなくてもいいんだけど……!」
運動神経の良い兄に必死で着いていき、
息を切らしながら訴える。
「ななしを一人に出来ぬ」
兄からは息切れなど少しも感じさせぬ、
普段通りの返事が返ってきた。
「井宿先輩が、いたじゃないっ……」
折角二人になれそうだったのに。
いや、心の準備が出来てなかったけど!
「……あいつと二人にはさせん」
「……え!?
よく聞こえないんだけどっ」
ぼそりと発された言葉は聞き取れず、
何度も聞き直したけれど
兄は何も言ってくれなかった。
走り続けること数分。
学校に到着し、ようやく兄の足が止まる。
私の息切れは止まらないけど。
「……ぜぇ、はぁ、
で、どうして早く来なきゃいかなかったの?」
朝から全力疾走させられたんだ。
それを聞く権利はあるはず。
「……はて、何だったかな」
「……はい?」
涼しげな顔をして言葉を放つ兄に
様々な怒りが沸く。
「もしかして、わざとっ……!!」
「ななし、
そんな大声を出してはいけないよ」
にこ、と笑う兄が
とても憎たらしかった。
「お兄ちゃんのバカー!!」
兄は、私を溺愛しているのだと思う。
故に私の想い人にも気付いていて
その接触を妨害しようとしているのだろう。
感謝の言葉は撤回。
私の恋を実らせるには
まず兄をどうにかしないと、だ。
あとがき→
心配性というか過保護というか、
とにかく私を構ってくる。
自分で言うのもアレだけど……
兄は、私を溺愛しているのだと思う。
「ほらななし。行こう」
学校へ行こうと玄関に向かうと、
ドアの前で待つ兄の姿。
私が兄と同じ高校に入学してから
ほぼ毎朝見ている光景だ。
(小中学校も在学中はそうだった)
私が早く出かける日も、
それに合わせて用意していたから
初めは申し訳なく思っていた。
そう、初めの頃だけは。
普通、という言い方は良くないけど
普通そこまでしないよねって
思うようになったのはしばらく経ってから。
兄が先に登校しなければいけない日は
これまた少し厄介で、
「私はななしを置いてなど行けない」とか
「通学中何かあったらどうするのだ」とか
大袈裟なことを言い出すのである。
なんていうか
正直ちょっと……窮屈。
だけど、
妹から見ても美しい顔立ちの兄が
笑顔で手を差し出す姿は
何処かの王子様かと思ってしまう。
私に対するコレがなければ、
本当に満点な兄なんだけどなぁ。
「お兄ちゃん、いつも言ってるけど
手は繋がなくていいよ」
差し出された手を受け流し
先にドアを開け出ようとすると、
「ななし、私もいつも言っているが
先に出て何かあったらどうする。
手はまぁ良い、私の後から来なさい」
ドアに伸ばした手は優しく押し返され、
いつも通り行き場を無くした。
道路に出れば、車道側を兄が歩く。
それもいつも通りのことで。
人にぶつかりそうになれば、
私の肩を抱き寄せ「大丈夫か?」と問う。
それもいつも通りのことで。
そして……
「おはようなのだ!
星宿クン、ななしちゃん」
「……おはよう、井宿」
「お、おはようございます!井宿先輩っ」
通学途中で井宿先輩に会い挨拶を交わせば、
こんな風に途端に不機嫌になる。
それもいつも通りのことなのだ。
「井宿、今日は日直じゃなかったか?
早く行かねばならんのではないか?」
「だっ、まだこの時間なのだ。
全然問題ないのだ!」
たぶん嫌味?だった筈なのに、
気にしてくれてありがとうなのだー
という井宿先輩の返しに
兄はがくりと肩を落としていた。
井宿先輩、素敵……。
「ななしちゃん、
学校にはだいぶ慣れてきたのだ?」
「はひっ!?
そ、そうですね、そうだと思います」
いきなり自分の名前を呼ばれ
爆発するかと思った。
変な日本語だったけど
よく返事を返せたじゃない、私。
褒めるに値するわ。
明らかに不自然な私にも、
井宿先輩は優しい笑顔を向けてくれる。
空色の美しい長髪を束ねた
そのお姿だけでも美しいというのに
そんな風に微笑まれたら……
恋に落ちない訳がない。
吸い込まれそうな二つの瞳の色も
優しい口調や物腰も
頭が良いところも
人に対する気遣いができるところも
全部全部、すき。
こんな素敵な人に
きっと近づける筈なかった。
お兄ちゃんの友達でいてくれて、
本当に感謝します。
お兄ちゃんも、ありがとう。
「ああそうだななし、
私が早く行かねばならんのだった」
思い出すように口にした兄に
もしかして二人にしてくれるの?
なんて思って見送ろうとしたけれど、
まさかそんな筈はなく。
私の手を引くと
「では井宿、また後でな」
と彼に言い残し、突然走り出した。
「え、ちょっ、お兄ちゃん!?」
井宿先輩の方へ振り返ると
眉を下げ困ったような笑顔をした先輩が
「またね」と手を小さく振っていた。
うう、かっこいい……
ってそうじゃなーい!!
なんで私まで走らされてるの!?
「お兄ちゃん、別に私
早く行かなくてもいいんだけど……!」
運動神経の良い兄に必死で着いていき、
息を切らしながら訴える。
「ななしを一人に出来ぬ」
兄からは息切れなど少しも感じさせぬ、
普段通りの返事が返ってきた。
「井宿先輩が、いたじゃないっ……」
折角二人になれそうだったのに。
いや、心の準備が出来てなかったけど!
「……あいつと二人にはさせん」
「……え!?
よく聞こえないんだけどっ」
ぼそりと発された言葉は聞き取れず、
何度も聞き直したけれど
兄は何も言ってくれなかった。
走り続けること数分。
学校に到着し、ようやく兄の足が止まる。
私の息切れは止まらないけど。
「……ぜぇ、はぁ、
で、どうして早く来なきゃいかなかったの?」
朝から全力疾走させられたんだ。
それを聞く権利はあるはず。
「……はて、何だったかな」
「……はい?」
涼しげな顔をして言葉を放つ兄に
様々な怒りが沸く。
「もしかして、わざとっ……!!」
「ななし、
そんな大声を出してはいけないよ」
にこ、と笑う兄が
とても憎たらしかった。
「お兄ちゃんのバカー!!」
兄は、私を溺愛しているのだと思う。
故に私の想い人にも気付いていて
その接触を妨害しようとしているのだろう。
感謝の言葉は撤回。
私の恋を実らせるには
まず兄をどうにかしないと、だ。
あとがき→
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