君が好き
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「井宿のことが好きなの」
頬を紅く染め
ぎゅ、と服の裾を握る。
そんな姿がまた愛おしくて
自然と頬が緩んだ。
「オイラも君が……
ななしが好きなのだ」
抱き締めただけで
壊れてしまいそうな細い肩を、
優しく抱き寄せる。
ななしは一瞬
驚きで身体を跳ねさせたけれど
ゆっくりとオイラの背中に
その腕を回してくれた。
「……本当?」
泣いているのか
少し鼻声になった君が
オイラの胸に顔を埋めたまま
小さな声で聞いた。
「ああ、本当なのだ。
オイラもずっと、好きだった」
煩い心音が聞こえるだろう?
そう加えて言えば
「私も同じくらいドキドキしてるよ」
とオイラを見上げて笑った。
出逢った時からずっと、
心惹かれていた。
そんなはずないと
言い聞かせたこともあった。
自分はもう人を好きになることはない、
そんな資格などはないのだと。
でも君はそんなオイラの心の中に
すっと入り込んできたのだ。
その存在が
優しく、心地よかった。
こんなオイラでも
また人を好きになっていいと
思わせてくれた人。
まさか君も
オイラを好いてくれていたなんて
全然想像がつかなかった。
こんなにも嬉しいことだと
忘れかけていたのだ。
人を愛し、愛されること。
それがどれだけしあわせで
大事なことであるか。
君が思い出させてくれた。
これからは
ずっと君と一緒なのだ―――
そう思っていたのだが。
「あっ、ずるい!」
「ななしったらどんくさいわねぇ」
「ちょ、柳宿!
ななしちゃんになんてこと言うの!」
今までと変わらず、
美朱ちゃんや柳宿達と楽しそうに
その声を響かせている。
オイラはその姿を
遠巻きに見ているだけ。
そう、今までと変わらず……
もっと一緒にいたいと思っているのは
オイラだけなのだろうか。
勿論ここにいる仲間達は大事だ。
けれどオイラはそれ以上に、
君との時間を大事にしたいのだ。
しかし自分と同じだけの気持ちを
ななしが持っているとは限らない。
そうか、そうかもしれない……
楽しそうな雰囲気とは真逆に
オイラの思考はどんどん落ちていった。
オイラと君の「好き」では
きっとその重さが違うのだろう。
仲間達と笑顔で話す彼女を
ぼーっと見ていた。
すると、ふと目が合った。
ああ、きっとまた……
そう思っていると。
ななしは少し照れくさそうに、
でも確かにオイラを見て微笑んだ。
「……っ!!」
全ての熱が集中したかのように
一気に顔が熱くなった。
きっと今、自分の顔は赤くなっている。
「ちょっとお二人さん?
いちゃつくなら他に行ってくださる?」
そんなオイラの様子を見て
はぁ、と柳宿がため息をついた。
「いちゃつくって……
別に私たち何もしてないけど……」
彼女は首を傾げて言う。
「ななしちゃんてば、
いま見つめ合ってたじゃない♪」
そう美朱ちゃんに言われると、
ななしの瞳はまた
オイラの姿を捕らえた。
「み、見つめ合ってないよ!!」
ななしの顔は赤く染まり、
勢いよく視線も逸らされた。
「あら、そお?
あたしの見間違いかしらぁ?」
柳宿がニヤニヤしながら
こちらを見る。
オイラが否定するか肯定するか、
楽しんでいるようだ。
オイラは椅子から立ち上がり、
一斉に集中する視線もお構いなしに
ななしを横抱きにした。
「え、えっ、井宿!?」
先程よりも赤く染まる君の顔に
口許が緩みそうになるのを抑えて。
「柳宿のご希望通り、
これ以上は余所でやることにするのだ。
ではオイラ達は失礼するのだ」
極力普段と変わらぬよう振る舞い
その場を後にした。
「ちょっ、井宿!
重いし恥ずかしいから降ろしてっ」
回廊に出ると、
ななしは真っ赤な顔で訴えた。
何度かそれは繰り返されたが
オイラが聞かずに歩みを進めたため
途中で観念したようだった。
自室へ入り、彼女を寝台へ座らせる。
「すまなかったのだ、
オイラがここまで降ろしたくなかった」
そう謝罪すると
少し不機嫌そうに口を開く。
「重いから嫌だったのに……」
そんな言動にも
可愛いという感情しか湧かないのは
もう末期症状と言える。
「君は軽すぎるくらいなのだ。
ちゃんと食べているのか心配になる」
右の手で君の頬を包めば、
その身体の細さを改めて感じる。
「ちゃんと食べてるよ。
ここのご飯、美味しいもん」
そう笑うななしに耐えられなくなり
触れるだけの軽い口付けをした。
「井宿、どうしたの?
さっきからちょっといつもと違うみたい」
不思議そうな顔をする彼女に
少し苦笑しながら、
彼女の隣へと腰を降ろす。
「いつもと違うのは
……君も一緒だと思うのだ」
そう告げると、より不思議そうな顔をした。
「いつもだったら
目が合うと直ぐに逸らされるのに……
今日は笑ってくれたのだ」
それが嬉しかったのだ、
そう続けて話すと
「今までは好きなのがバレちゃうと思って
逸らしちゃってただけだよ。
恋人になれたから、いいのかなぁって」
恥ずかしそうに口にした。
「本当は前から見ていたかったんだよ?
でももう気にしなくていいよね」
えへへ、と笑うななしを
ぎゅっと強く抱き締めた。
「……井宿?」
心配そうな声が耳元で聞こえる。
「オイラも本当はずっと、
こんな風に君と過ごしたかった」
口から出た音は
自分でも驚くほど弱々しかった。
「想いが通じても……
君との距離がさほど変わらない気がしてた。
今まで以上を望むのは
オイラだけなのかと思ってたのだ」
そこまで言うと、
ななしが強く抱き返してきて。
「井宿だけじゃないよ。
私だってもっと井宿と一緒に居たいし
今まで以上を望んでるよ?」
オイラの欲しかった言葉を、
欲しかった同じ気持ちをくれた。
「本当なのだ……?」
まだ確認したくなるのは
君を疑っているからではなくて。
自分自身に自信がないから。
そんなオイラを見ても君は
笑顔を向けてくれる。
「ほんとだよ!
井宿のことが、好きなんだもん」
頬を染めながら笑うななしを
もう一度強く抱き締めた。
オイラも君が、好きなのだ。
→あとがき
頬を紅く染め
ぎゅ、と服の裾を握る。
そんな姿がまた愛おしくて
自然と頬が緩んだ。
「オイラも君が……
ななしが好きなのだ」
抱き締めただけで
壊れてしまいそうな細い肩を、
優しく抱き寄せる。
ななしは一瞬
驚きで身体を跳ねさせたけれど
ゆっくりとオイラの背中に
その腕を回してくれた。
「……本当?」
泣いているのか
少し鼻声になった君が
オイラの胸に顔を埋めたまま
小さな声で聞いた。
「ああ、本当なのだ。
オイラもずっと、好きだった」
煩い心音が聞こえるだろう?
そう加えて言えば
「私も同じくらいドキドキしてるよ」
とオイラを見上げて笑った。
出逢った時からずっと、
心惹かれていた。
そんなはずないと
言い聞かせたこともあった。
自分はもう人を好きになることはない、
そんな資格などはないのだと。
でも君はそんなオイラの心の中に
すっと入り込んできたのだ。
その存在が
優しく、心地よかった。
こんなオイラでも
また人を好きになっていいと
思わせてくれた人。
まさか君も
オイラを好いてくれていたなんて
全然想像がつかなかった。
こんなにも嬉しいことだと
忘れかけていたのだ。
人を愛し、愛されること。
それがどれだけしあわせで
大事なことであるか。
君が思い出させてくれた。
これからは
ずっと君と一緒なのだ―――
そう思っていたのだが。
「あっ、ずるい!」
「ななしったらどんくさいわねぇ」
「ちょ、柳宿!
ななしちゃんになんてこと言うの!」
今までと変わらず、
美朱ちゃんや柳宿達と楽しそうに
その声を響かせている。
オイラはその姿を
遠巻きに見ているだけ。
そう、今までと変わらず……
もっと一緒にいたいと思っているのは
オイラだけなのだろうか。
勿論ここにいる仲間達は大事だ。
けれどオイラはそれ以上に、
君との時間を大事にしたいのだ。
しかし自分と同じだけの気持ちを
ななしが持っているとは限らない。
そうか、そうかもしれない……
楽しそうな雰囲気とは真逆に
オイラの思考はどんどん落ちていった。
オイラと君の「好き」では
きっとその重さが違うのだろう。
仲間達と笑顔で話す彼女を
ぼーっと見ていた。
すると、ふと目が合った。
ああ、きっとまた……
そう思っていると。
ななしは少し照れくさそうに、
でも確かにオイラを見て微笑んだ。
「……っ!!」
全ての熱が集中したかのように
一気に顔が熱くなった。
きっと今、自分の顔は赤くなっている。
「ちょっとお二人さん?
いちゃつくなら他に行ってくださる?」
そんなオイラの様子を見て
はぁ、と柳宿がため息をついた。
「いちゃつくって……
別に私たち何もしてないけど……」
彼女は首を傾げて言う。
「ななしちゃんてば、
いま見つめ合ってたじゃない♪」
そう美朱ちゃんに言われると、
ななしの瞳はまた
オイラの姿を捕らえた。
「み、見つめ合ってないよ!!」
ななしの顔は赤く染まり、
勢いよく視線も逸らされた。
「あら、そお?
あたしの見間違いかしらぁ?」
柳宿がニヤニヤしながら
こちらを見る。
オイラが否定するか肯定するか、
楽しんでいるようだ。
オイラは椅子から立ち上がり、
一斉に集中する視線もお構いなしに
ななしを横抱きにした。
「え、えっ、井宿!?」
先程よりも赤く染まる君の顔に
口許が緩みそうになるのを抑えて。
「柳宿のご希望通り、
これ以上は余所でやることにするのだ。
ではオイラ達は失礼するのだ」
極力普段と変わらぬよう振る舞い
その場を後にした。
「ちょっ、井宿!
重いし恥ずかしいから降ろしてっ」
回廊に出ると、
ななしは真っ赤な顔で訴えた。
何度かそれは繰り返されたが
オイラが聞かずに歩みを進めたため
途中で観念したようだった。
自室へ入り、彼女を寝台へ座らせる。
「すまなかったのだ、
オイラがここまで降ろしたくなかった」
そう謝罪すると
少し不機嫌そうに口を開く。
「重いから嫌だったのに……」
そんな言動にも
可愛いという感情しか湧かないのは
もう末期症状と言える。
「君は軽すぎるくらいなのだ。
ちゃんと食べているのか心配になる」
右の手で君の頬を包めば、
その身体の細さを改めて感じる。
「ちゃんと食べてるよ。
ここのご飯、美味しいもん」
そう笑うななしに耐えられなくなり
触れるだけの軽い口付けをした。
「井宿、どうしたの?
さっきからちょっといつもと違うみたい」
不思議そうな顔をする彼女に
少し苦笑しながら、
彼女の隣へと腰を降ろす。
「いつもと違うのは
……君も一緒だと思うのだ」
そう告げると、より不思議そうな顔をした。
「いつもだったら
目が合うと直ぐに逸らされるのに……
今日は笑ってくれたのだ」
それが嬉しかったのだ、
そう続けて話すと
「今までは好きなのがバレちゃうと思って
逸らしちゃってただけだよ。
恋人になれたから、いいのかなぁって」
恥ずかしそうに口にした。
「本当は前から見ていたかったんだよ?
でももう気にしなくていいよね」
えへへ、と笑うななしを
ぎゅっと強く抱き締めた。
「……井宿?」
心配そうな声が耳元で聞こえる。
「オイラも本当はずっと、
こんな風に君と過ごしたかった」
口から出た音は
自分でも驚くほど弱々しかった。
「想いが通じても……
君との距離がさほど変わらない気がしてた。
今まで以上を望むのは
オイラだけなのかと思ってたのだ」
そこまで言うと、
ななしが強く抱き返してきて。
「井宿だけじゃないよ。
私だってもっと井宿と一緒に居たいし
今まで以上を望んでるよ?」
オイラの欲しかった言葉を、
欲しかった同じ気持ちをくれた。
「本当なのだ……?」
まだ確認したくなるのは
君を疑っているからではなくて。
自分自身に自信がないから。
そんなオイラを見ても君は
笑顔を向けてくれる。
「ほんとだよ!
井宿のことが、好きなんだもん」
頬を染めながら笑うななしを
もう一度強く抱き締めた。
オイラも君が、好きなのだ。
→あとがき
1/2ページ