たなばた
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「ねぇ、芳准」
「……どうしたのだ?」
隣に座る君が
曇った表情で口を開く。
今にも涙が降り出しそうな君に
オイラは思わず身構えた。
何かあったのだろうか?
……それとも、
オイラがしてしまったのだろうか?
ぐるぐると思考を巡らせるオイラを
潤んだ瞳は捉え続けたまま。
少しの沈黙の後、
ななしはゆっくり言葉を紡ぎ始めた。
「織姫と彦星ってさ、
1年に1度しか会えないんだよね……」
「まぁ、そう、なのだ」
……織姫……彦星?
ああ、そろそろ七夕か。
でもなんで急にそんなこと?
そう考えていると。
「会いたいのに会えないなんて辛いね。
……もし、もし、
私達がそうなったら芳准はどうする?」
君は不安そうな顔をしてオイラに問う。
君の考えていることは
大体分かるようになってきたけれど、
それでもその不安全てを
取り除いてはあげられないのだ。
だけど、
心配することなんて何もないのに。
「織姫と彦星が会えなくなったのは
お互いが悪いからで、自業自得というか
仕方のないことだと思うのだ」
そう言葉を返すと
先程よりななしの表情は曇り
俯いてしまった。
一瞬でも君を落ち込ませてしまうのは
とても心苦しいのだけれど……
どれだけ君を想っているか
すぐに伝えるから、許して欲しいのだ。
「でも、オイラ達は違う、だろう?」
頭を一撫ですると
ななしはゆっくりと顔を上げた。
「ななしもオイラも
二人で居られるように、働いてるのだ」
「……うん」
依然、ななしの瞳は潤んだままで
いつ降り出してもおかしくない。
「忙しくて会えなくても、辛くても、
君も頑張ってると思うから
オイラは何時だって頑張れるし、
会う時間を増やしたいからこそ頑張ってる」
ななしもそうだろう?と聞くと
こくりと頷いた。
「だから、安心して欲しいのだ。
会えない時間も
ちゃんとななしを想ってるのだ」
「……うん」
そう言って抱き締めると
ぎゅっと強く抱き返された。
ああ、でもまだ君の不安は
残っているのだね。
「それでももし、
ななしがまだ不安を感じるなら
ずっと一緒に居ればいいのだ」
頬に手を添えて
ななしの顔を上げた。
「毎日、一緒に居ればいい」
「芳准も私も仕事あるし
まして芳准は忙しい仕事だし
そんなのできる訳……」
「あるのだ」
「……?」
言葉の意味が理解できないのか
ななしは首を傾げた。
「結婚、しよう。ななし」
「え……」
「1年に1度しか会えなかったら、
と言っていたけど、そんなの御免なのだ。
考えただけで気が狂いそうになる」
ななしの瞳から
大粒の涙が次々と溢れた。
「本当はずっと考えてた。
どうしたら君と離れずに済むか。
君をこんなに悩ませるくらいなら、
もっと早く言えばよかった」
ななしは小さく
でも確かに首を横に振った。
「違うの……ごめんね、芳准。
私が弱いだけなの。
貴方が居ないと何も出来ないから」
ななしの頭を
優しく撫でながら抱き締める。
涙混じりの声で続けられる言葉を
黙ってただ聞いていた。
「芳准のことが好き。大好きなの。
好き過ぎて、怖くなったの。
貴方と会えなくなったらどうしようって」
撫でている手を止め
不安を紡ぐ唇に自身のそれを重ねた。
震える君の唇が
オイラの胸を締め付ける。
「オイラは何処にも行ったりしないし、
もしお願いされたって
ななしを離す気はないのだ。
だから、そんな心配は無用なのだ」
そう笑いかければ
涙を流しながら微笑む君。
「ありがとう」
そして大好き、と呟いた。
「それで……返事は?」
涙を拭いながら訊ねれば
きょとんとしているななし。
「オイラ、君にプロポーズした筈なのだ」
忘れられていたようだ。
これでも凄く緊張していたのだが。
「えっ……ごめんなさい」
聞こえたのは耳を疑う言葉。
嘘だろう?断られた――
緊張とは違う、心音の速さ。
血の気が引く感覚。
言葉も失う程の衝撃だった。
そんなオイラを救ったのも
また君の言葉だった。
「返事、したつもりになってた」
そう言って姿勢を正し
オイラを見つめた。
「えっと……ふつつかものですが、
よろしくお願いします」
照れた表情で言われて
ほっと胸を撫で下ろした。
まだ涙目の君にもう一度口付けて。
一生離さないと、
君をしあわせにすると誓った。
→あとがき
「……どうしたのだ?」
隣に座る君が
曇った表情で口を開く。
今にも涙が降り出しそうな君に
オイラは思わず身構えた。
何かあったのだろうか?
……それとも、
オイラがしてしまったのだろうか?
ぐるぐると思考を巡らせるオイラを
潤んだ瞳は捉え続けたまま。
少しの沈黙の後、
ななしはゆっくり言葉を紡ぎ始めた。
「織姫と彦星ってさ、
1年に1度しか会えないんだよね……」
「まぁ、そう、なのだ」
……織姫……彦星?
ああ、そろそろ七夕か。
でもなんで急にそんなこと?
そう考えていると。
「会いたいのに会えないなんて辛いね。
……もし、もし、
私達がそうなったら芳准はどうする?」
君は不安そうな顔をしてオイラに問う。
君の考えていることは
大体分かるようになってきたけれど、
それでもその不安全てを
取り除いてはあげられないのだ。
だけど、
心配することなんて何もないのに。
「織姫と彦星が会えなくなったのは
お互いが悪いからで、自業自得というか
仕方のないことだと思うのだ」
そう言葉を返すと
先程よりななしの表情は曇り
俯いてしまった。
一瞬でも君を落ち込ませてしまうのは
とても心苦しいのだけれど……
どれだけ君を想っているか
すぐに伝えるから、許して欲しいのだ。
「でも、オイラ達は違う、だろう?」
頭を一撫ですると
ななしはゆっくりと顔を上げた。
「ななしもオイラも
二人で居られるように、働いてるのだ」
「……うん」
依然、ななしの瞳は潤んだままで
いつ降り出してもおかしくない。
「忙しくて会えなくても、辛くても、
君も頑張ってると思うから
オイラは何時だって頑張れるし、
会う時間を増やしたいからこそ頑張ってる」
ななしもそうだろう?と聞くと
こくりと頷いた。
「だから、安心して欲しいのだ。
会えない時間も
ちゃんとななしを想ってるのだ」
「……うん」
そう言って抱き締めると
ぎゅっと強く抱き返された。
ああ、でもまだ君の不安は
残っているのだね。
「それでももし、
ななしがまだ不安を感じるなら
ずっと一緒に居ればいいのだ」
頬に手を添えて
ななしの顔を上げた。
「毎日、一緒に居ればいい」
「芳准も私も仕事あるし
まして芳准は忙しい仕事だし
そんなのできる訳……」
「あるのだ」
「……?」
言葉の意味が理解できないのか
ななしは首を傾げた。
「結婚、しよう。ななし」
「え……」
「1年に1度しか会えなかったら、
と言っていたけど、そんなの御免なのだ。
考えただけで気が狂いそうになる」
ななしの瞳から
大粒の涙が次々と溢れた。
「本当はずっと考えてた。
どうしたら君と離れずに済むか。
君をこんなに悩ませるくらいなら、
もっと早く言えばよかった」
ななしは小さく
でも確かに首を横に振った。
「違うの……ごめんね、芳准。
私が弱いだけなの。
貴方が居ないと何も出来ないから」
ななしの頭を
優しく撫でながら抱き締める。
涙混じりの声で続けられる言葉を
黙ってただ聞いていた。
「芳准のことが好き。大好きなの。
好き過ぎて、怖くなったの。
貴方と会えなくなったらどうしようって」
撫でている手を止め
不安を紡ぐ唇に自身のそれを重ねた。
震える君の唇が
オイラの胸を締め付ける。
「オイラは何処にも行ったりしないし、
もしお願いされたって
ななしを離す気はないのだ。
だから、そんな心配は無用なのだ」
そう笑いかければ
涙を流しながら微笑む君。
「ありがとう」
そして大好き、と呟いた。
「それで……返事は?」
涙を拭いながら訊ねれば
きょとんとしているななし。
「オイラ、君にプロポーズした筈なのだ」
忘れられていたようだ。
これでも凄く緊張していたのだが。
「えっ……ごめんなさい」
聞こえたのは耳を疑う言葉。
嘘だろう?断られた――
緊張とは違う、心音の速さ。
血の気が引く感覚。
言葉も失う程の衝撃だった。
そんなオイラを救ったのも
また君の言葉だった。
「返事、したつもりになってた」
そう言って姿勢を正し
オイラを見つめた。
「えっと……ふつつかものですが、
よろしくお願いします」
照れた表情で言われて
ほっと胸を撫で下ろした。
まだ涙目の君にもう一度口付けて。
一生離さないと、
君をしあわせにすると誓った。
→あとがき
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