恋に変わるとき。
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼は強くて、
優しいし頼りになる。
年長者っていうのもあるけど
それだけでって訳ではない。と思う。
好きか嫌いか、
そう問われれば間違いなく
好きに決まってるけど。
それが恋愛感情かというと
そうではないと思う。
…いや、思ってた。
「ななしちゃん、
ちゃんと食べないと体に悪いのだ」
「だ、ななしちゃん。
昨日はよく眠れなかったのだ?
お疲れのようなのだ…」
「ななしちゃん!
そんなに走ったら危ないのだー」
「ななしちゃんっ…」
…………
って、私は子どもかい!!笑
というくらい井宿は
何かと私を気にかけてくれている。
それはとても有り難いのだけど
正直、なんだか申し訳ない。
私がもっとしっかりすれば
そんなこともなくなるのかなぁ。
「はぁ……」
「どうしたの、ななし。
ため息なんてついちゃって」
回廊の手摺に寄り掛かり空を見ていると
美朱がやって来た。
「え、いや、別に……」
「何か悩みでもあるの?
あ、もしかしてお腹空いた?」
それは美朱でしょ、と笑うと
バレた?と美朱も笑った。
「冗談はさておき、
何か困ってるなら聞くよ?」
美朱が優しく問い掛けてくれる。
「困ってるわけでは……」
「まぁ私に話しにくいなら
井宿に言ってもいいと思うけど」
ん?
「なんでいきなりここで井宿が……」
疑問は口に出ていたようで。
美朱がくす、と笑う。
「だって仲いいでしょ?
快く話聞いてくれると思うよ」
確かにそうかもしれないけど、
まさか本人に言う訳にもいかないし。
美朱が通りかかったのも何かの縁、と
私は美朱に言うことにした。
「井宿ってさ、
なんかお母さんみたいだよね」
「……は?」
「いつも何かと気にかけてくれて
助けてくれるし面倒見てくれるし。
でも私は何も返せなくて……
なんか、申し訳ないなって思って」
「えええ、ちょっと待って、
なんでお母さん!?
そこお兄ちゃんじゃないの!?」
急に美朱が驚くから、
その声に驚いてしまった。
でも、驚きはそれだけで済まなくて。
「だ。そこはせめて
兄にして欲しかったのだ」
後ろから聞こえたその言葉に
二人で慌てて振り返った。
そこには話題の中心であった
井宿の姿が。
「ち、井宿……!」
「いつからそこに」
「井宿ってなんかお母さんみたい
ってところからなのだ」
面をしている筈の井宿の表情は
どこか悲しそうに見えて。
「あの、気に障ったならごめん。
でも、悪い意味じゃないの」
謝ってみたものの
井宿の表情は変わらない。
「うん、わかってるのだ」
そう言って私の頭を撫で、
自分の部屋へ向かって行った。
「……なんか井宿
悲しそうな顔してたね」
自分だけではなく
美朱にもそう見えたのだと思うと
非常に申し訳なくなった。
何も返せないどころか
悲しませてしまうなんて……
「美朱ごめん。
私、井宿のとこ行ってくる」
「うん、その方がいいかも」
美朱に見送られながら
私は井宿の部屋へと向かった。
部屋の前に着き、扉を叩く。
「井宿、いる……?」
「……ななしちゃん?」
声がしたと思ったら
すぐに目の前の扉が開いた。
「君がここへ来るなんて珍しいのだ」
そう笑う井宿はやっぱり
どこかいつもと違う。
「あのね、私……」
「うん?」
「井宿のこと、大事だと思ってるの。
本当の家族みたいに……
でもお母さんなんて言っちゃって
失礼だったよね、ごめんなさい」
そこまで言い終えると
井宿の手が再び頭に乗せられた。
「失礼でもなんでもないのだ。
オイラが勝手にショックを受けただけで
君は何も悪くない」
頭を撫でられる感覚が心地よい。
「でも今の言葉を聞けて嬉しいのだ。
オイラも君のこと、
とても大事に想っているのだ」
そして井宿はまた笑う。
今度は少しだけ、嬉しそうに。
その笑顔と、その言葉に
顔と心が熱くなる。
何故だか井宿の姿が
いつもより格好よく見えて
お母さんでも
お兄ちゃんでもない、と思った。
この感覚ってなんだか……
「ななしちゃん?
大丈夫なのだ?」
私の顔の前で
手のひらをヒラヒラさせる井宿。
「へっ!?
だ、大丈夫です!」
心配そうに見つめてくるから
まともに顔が見れない。
「とりあえず今は母親でもいいのだ。
でも、ずっと母親でいる気も
……兄でいるつもりもないから」
そう言って近付いてきたと思ったら
「何時かはオイラのこと、
ちゃんと男として見て欲しい」
なんて手の甲に口付けられて。
赤くなっていたであろう私の顔は
きっと茹でダコ以上に真っ赤なんだろう。
いつもより優しい笑みを浮かべる井宿を
もうお母さんなんて思えない。
→あとがき
優しいし頼りになる。
年長者っていうのもあるけど
それだけでって訳ではない。と思う。
好きか嫌いか、
そう問われれば間違いなく
好きに決まってるけど。
それが恋愛感情かというと
そうではないと思う。
…いや、思ってた。
「ななしちゃん、
ちゃんと食べないと体に悪いのだ」
「だ、ななしちゃん。
昨日はよく眠れなかったのだ?
お疲れのようなのだ…」
「ななしちゃん!
そんなに走ったら危ないのだー」
「ななしちゃんっ…」
…………
って、私は子どもかい!!笑
というくらい井宿は
何かと私を気にかけてくれている。
それはとても有り難いのだけど
正直、なんだか申し訳ない。
私がもっとしっかりすれば
そんなこともなくなるのかなぁ。
「はぁ……」
「どうしたの、ななし。
ため息なんてついちゃって」
回廊の手摺に寄り掛かり空を見ていると
美朱がやって来た。
「え、いや、別に……」
「何か悩みでもあるの?
あ、もしかしてお腹空いた?」
それは美朱でしょ、と笑うと
バレた?と美朱も笑った。
「冗談はさておき、
何か困ってるなら聞くよ?」
美朱が優しく問い掛けてくれる。
「困ってるわけでは……」
「まぁ私に話しにくいなら
井宿に言ってもいいと思うけど」
ん?
「なんでいきなりここで井宿が……」
疑問は口に出ていたようで。
美朱がくす、と笑う。
「だって仲いいでしょ?
快く話聞いてくれると思うよ」
確かにそうかもしれないけど、
まさか本人に言う訳にもいかないし。
美朱が通りかかったのも何かの縁、と
私は美朱に言うことにした。
「井宿ってさ、
なんかお母さんみたいだよね」
「……は?」
「いつも何かと気にかけてくれて
助けてくれるし面倒見てくれるし。
でも私は何も返せなくて……
なんか、申し訳ないなって思って」
「えええ、ちょっと待って、
なんでお母さん!?
そこお兄ちゃんじゃないの!?」
急に美朱が驚くから、
その声に驚いてしまった。
でも、驚きはそれだけで済まなくて。
「だ。そこはせめて
兄にして欲しかったのだ」
後ろから聞こえたその言葉に
二人で慌てて振り返った。
そこには話題の中心であった
井宿の姿が。
「ち、井宿……!」
「いつからそこに」
「井宿ってなんかお母さんみたい
ってところからなのだ」
面をしている筈の井宿の表情は
どこか悲しそうに見えて。
「あの、気に障ったならごめん。
でも、悪い意味じゃないの」
謝ってみたものの
井宿の表情は変わらない。
「うん、わかってるのだ」
そう言って私の頭を撫で、
自分の部屋へ向かって行った。
「……なんか井宿
悲しそうな顔してたね」
自分だけではなく
美朱にもそう見えたのだと思うと
非常に申し訳なくなった。
何も返せないどころか
悲しませてしまうなんて……
「美朱ごめん。
私、井宿のとこ行ってくる」
「うん、その方がいいかも」
美朱に見送られながら
私は井宿の部屋へと向かった。
部屋の前に着き、扉を叩く。
「井宿、いる……?」
「……ななしちゃん?」
声がしたと思ったら
すぐに目の前の扉が開いた。
「君がここへ来るなんて珍しいのだ」
そう笑う井宿はやっぱり
どこかいつもと違う。
「あのね、私……」
「うん?」
「井宿のこと、大事だと思ってるの。
本当の家族みたいに……
でもお母さんなんて言っちゃって
失礼だったよね、ごめんなさい」
そこまで言い終えると
井宿の手が再び頭に乗せられた。
「失礼でもなんでもないのだ。
オイラが勝手にショックを受けただけで
君は何も悪くない」
頭を撫でられる感覚が心地よい。
「でも今の言葉を聞けて嬉しいのだ。
オイラも君のこと、
とても大事に想っているのだ」
そして井宿はまた笑う。
今度は少しだけ、嬉しそうに。
その笑顔と、その言葉に
顔と心が熱くなる。
何故だか井宿の姿が
いつもより格好よく見えて
お母さんでも
お兄ちゃんでもない、と思った。
この感覚ってなんだか……
「ななしちゃん?
大丈夫なのだ?」
私の顔の前で
手のひらをヒラヒラさせる井宿。
「へっ!?
だ、大丈夫です!」
心配そうに見つめてくるから
まともに顔が見れない。
「とりあえず今は母親でもいいのだ。
でも、ずっと母親でいる気も
……兄でいるつもりもないから」
そう言って近付いてきたと思ったら
「何時かはオイラのこと、
ちゃんと男として見て欲しい」
なんて手の甲に口付けられて。
赤くなっていたであろう私の顔は
きっと茹でダコ以上に真っ赤なんだろう。
いつもより優しい笑みを浮かべる井宿を
もうお母さんなんて思えない。
→あとがき
1/2ページ