雨音
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しとしと降り続ける雨。
窓を流れる水滴を
彼女は見つめている。
「昨日の予報では
午後からって言ってたのにな……」
残念そうな言葉の後
はぁ、とため息をついた。
昨夜。寝る前のこと。
「起きて雨が降ってなかったら
外に出かけよう?」
そう提案したのは彼女、
ななしだった。
行きたいところがあるとか
したいことがあるわけではないけど、
とは言っていたのだが…
起きてみれば、雨。
昨日見た天気予報では
確かに午後からと言っていた筈だ。
てるてる坊主でも作るべきだったか、
などと考えながら
ななしの背中を見ていた。
自分の居る方とは反対を見る彼女の
表情は全く見えなかった。
ただ、窓を見つめる背中が
とても寂しげで小さく見えて。
思わず後ろから抱き締めた。
「きゃっ」
突然のことに驚いたのか
ななしの身体が小さく跳ねた。
「驚かせてしまったのだ…?
申し訳ないのだ」
彼女の肩に顎を乗せ
さらに身体を密着させると、
彼女はふふ、と笑った。
「おはよ、芳准。
びっくりした……どうしたの?」
変わらず顔は見えないけれど
声が明るく聞こえたことに安心した。
「おはよう、ななし。
目が覚めて君が隣に居なかったから、
オイラは気分が悪いのだ」
そう言って不貞腐れてみせれば
ごめんね、と聞こえたので
腕の中からななしを解放した。
身体ごと振り返った君は
嬉しそうに笑う。
「起きて外見てただけだよ?
もう、芳准は甘えん坊さんですねー」
そう言いながら
オイラの頭を撫でた。
心地よい感覚に
オイラも自然と笑顔になる。
「雨、降ってるけど。
今日は外でデートしようか?」
撫でられていた手を掴み
そのまま引き寄せて額に口付けた。
「……いい」
ななしは首を横に振り短く言うと
オイラにすり寄ってきた。
珍しい出来事に
驚きながらも頬が緩む。
「だ、ななしも甘えん坊さんなのだ」
抱き締めながら
今度はオイラが頭を撫でる。
「ふふ、芳准のが移ったのかなぁ」
「あ。人のせいにするのだ?」
こんな他愛もないやり取りが
愛しくて仕方ない。
君が居れば、それだけでいい。
そんな当たり前のことを
改めて強く思った。
「あとは雨のせい、かな」
「雨?」
「出かけたいとは思ってたけど
それよりも違う気持ちが勝っちゃった」
ななしの髪を弄りながら聞けば
オイラを見上げて言う。
「面倒くさくなった?」
「む、それも否定できないけどさー」
膨れながらそう言うと
ぎゅ、と抱きついてきて
「家じゃないとこんな風にできないから
出かけたくなくなっちゃうの。
ただでさえそうだからね、
雨が降ってなかったら
なんてあらかじめ言っておいたのに」
と、そんな可愛いことを言う。
「オイラは家じゃなくても出来るぞ?」
冗談半分で言ってみるけど。
「私は無理なのー」
うん、知ってる。
照れ屋なのもあるけど、
公共の場でいちゃつくなんて
君が嫌うことだから。
「オイラもななしのが移ったみたいだ」
「え?」
「出かけたくなくなったのだ。
今日はななしを堪能する日にしよう」
抱き締めて、唇を重ねて、肌を合わせて……
君のすべてを一日中独占してやるのだ。
「なんか、嫌な感じしかしない。
やっぱり出かけよっかな」
口ではそう言うものの
満更でもないって顔をしている。
「オイラから逃げられるなら、どうぞ」
頬を両手で固定して
深く口付けた。
静かな部屋の中には
降り続ける雨の音だけが響いていた。
→あとがき
窓を流れる水滴を
彼女は見つめている。
「昨日の予報では
午後からって言ってたのにな……」
残念そうな言葉の後
はぁ、とため息をついた。
昨夜。寝る前のこと。
「起きて雨が降ってなかったら
外に出かけよう?」
そう提案したのは彼女、
ななしだった。
行きたいところがあるとか
したいことがあるわけではないけど、
とは言っていたのだが…
起きてみれば、雨。
昨日見た天気予報では
確かに午後からと言っていた筈だ。
てるてる坊主でも作るべきだったか、
などと考えながら
ななしの背中を見ていた。
自分の居る方とは反対を見る彼女の
表情は全く見えなかった。
ただ、窓を見つめる背中が
とても寂しげで小さく見えて。
思わず後ろから抱き締めた。
「きゃっ」
突然のことに驚いたのか
ななしの身体が小さく跳ねた。
「驚かせてしまったのだ…?
申し訳ないのだ」
彼女の肩に顎を乗せ
さらに身体を密着させると、
彼女はふふ、と笑った。
「おはよ、芳准。
びっくりした……どうしたの?」
変わらず顔は見えないけれど
声が明るく聞こえたことに安心した。
「おはよう、ななし。
目が覚めて君が隣に居なかったから、
オイラは気分が悪いのだ」
そう言って不貞腐れてみせれば
ごめんね、と聞こえたので
腕の中からななしを解放した。
身体ごと振り返った君は
嬉しそうに笑う。
「起きて外見てただけだよ?
もう、芳准は甘えん坊さんですねー」
そう言いながら
オイラの頭を撫でた。
心地よい感覚に
オイラも自然と笑顔になる。
「雨、降ってるけど。
今日は外でデートしようか?」
撫でられていた手を掴み
そのまま引き寄せて額に口付けた。
「……いい」
ななしは首を横に振り短く言うと
オイラにすり寄ってきた。
珍しい出来事に
驚きながらも頬が緩む。
「だ、ななしも甘えん坊さんなのだ」
抱き締めながら
今度はオイラが頭を撫でる。
「ふふ、芳准のが移ったのかなぁ」
「あ。人のせいにするのだ?」
こんな他愛もないやり取りが
愛しくて仕方ない。
君が居れば、それだけでいい。
そんな当たり前のことを
改めて強く思った。
「あとは雨のせい、かな」
「雨?」
「出かけたいとは思ってたけど
それよりも違う気持ちが勝っちゃった」
ななしの髪を弄りながら聞けば
オイラを見上げて言う。
「面倒くさくなった?」
「む、それも否定できないけどさー」
膨れながらそう言うと
ぎゅ、と抱きついてきて
「家じゃないとこんな風にできないから
出かけたくなくなっちゃうの。
ただでさえそうだからね、
雨が降ってなかったら
なんてあらかじめ言っておいたのに」
と、そんな可愛いことを言う。
「オイラは家じゃなくても出来るぞ?」
冗談半分で言ってみるけど。
「私は無理なのー」
うん、知ってる。
照れ屋なのもあるけど、
公共の場でいちゃつくなんて
君が嫌うことだから。
「オイラもななしのが移ったみたいだ」
「え?」
「出かけたくなくなったのだ。
今日はななしを堪能する日にしよう」
抱き締めて、唇を重ねて、肌を合わせて……
君のすべてを一日中独占してやるのだ。
「なんか、嫌な感じしかしない。
やっぱり出かけよっかな」
口ではそう言うものの
満更でもないって顔をしている。
「オイラから逃げられるなら、どうぞ」
頬を両手で固定して
深く口付けた。
静かな部屋の中には
降り続ける雨の音だけが響いていた。
→あとがき
1/2ページ