オイラだけに、君だけに。
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「……よかったのだ?」
手を引かれて歩く回廊。
半歩前に居るななしに問い掛けた。
「……あまり乗り気に見えなかったから。
一緒に遊んだ方がよかった?」
立ち止まり、こちらを向くななし。
「……」
なんとも返事をしづらく、
首を小さく横に振った。
すると君は嬉しそうに笑って
また歩き始める。
つられるようにオイラも笑みがこぼれた。
いつの間にか握られていた手を
強く握り直し、自室へと向かった。
部屋の前に着くと歩みが止まった。
「お邪魔してもいい?」
照れながらそう問うななしに
勿論、と答えて扉を開けた。
部屋の中へと招き入れる。
ぱたりと扉が閉まる音がした瞬間
背中に温もりを感じた。
突如腰に回される腕。
「ななし……?」
ななしから抱きつくなど
普段はないことだ。
嬉しさもあるけれど
驚きの方が勝っているのが本音だ。
回された細い腕を自身から離し
振り返りななしと向き合った。
向き合う為に腕を離したのだが
それがどうやらお気に召さなかったようで
再びななしが抱きついてきた。
……本当に珍しい。
「急に、どうしたのだ?」
オイラの胸に顔を埋めるななしの頭を
ひと撫でしながら尋ねた。
表情が見えないことが余計に
何事かと思わせる。
「……ごめんね」
身体を少し離し
オイラを見上げるように言う。
何故謝られているのか理解できず
黙りこんでしまった。
「井宿抜きで遊んでたでしょ?
なんか嫌そうだったから悪かったなぁって」
まぁ…オイラも一緒に居たかった
と言えばそうなのだが。
それだけだとちょっと違うのだ。
「でも本当は遊びたかったのかなと思って、
部屋を出たときに聞いたんだけど
首振ってくれたからよかった、って」
確かに興味はあった。
君があんまり楽しそうだったから。
でもそれよりも……
「私と居ることを選んでくれたみたいで
嬉しくなっちゃったの。
そしたらなんだかくっつきたくなって」
恥ずかしくなったのか
オイラの身体にまた顔を埋めてしまった。
途中から聞き取りにくくなったけど
ちゃんと、聞こえたのだ。
君の声。君の、気持ち。
ぎゅう、と強く抱き締めると
それに応えるように抱き返してくれた。
「オイラも嬉しかったのだ。
ななしがオイラを分かってくれていて」
そう、あの一瞬で
オイラが抱いたもやもやを見抜いて
連れ出してくれた。
オイラと居ることを選んでくれたと
オイラだって思ったのだ。
「確かにオイラ抜きで遊んでいたのが
嫌だった部分もあるのだが」
腕の力を緩め、頬に手を添えて。
君の顔をオイラに向かせる。
「ななしが凄く楽しそうだったから
皆に嫉妬していたのだ」
「……」
「子供みたい、だな」
「……ううん、嬉しい」
照れながら嬉しそうに見つめる君が
とても愛しくて愛しくて。
「この表情はオイラだけのもの、がいい。
他の人には見せないで欲しいのだ」
本当は笑顔さえも、
なんて思っているけど。
君にはいつも笑っていて欲しいから
言葉にはしないし、出来ない。
「井宿も他の人にはそんなこと言わないでね?
嫉妬もそういう気持ちも、
私にだけ見せてくれたらいいな」
遠慮がちに言うななしに
また口元が緩んでしまう。
勿論、という返事の代わりに
もう一度強く抱き締めた。
君を独り占めしたい。
透き通った声も
周りを和ませる笑顔も
照れた赤い頬も。
オイラだけが知っていればいい。
オイラだけのものにしたい。
なんて、
子供染みた発想。
君だから思うのだ。
君にしか思わないのだ。
→あとがき
手を引かれて歩く回廊。
半歩前に居るななしに問い掛けた。
「……あまり乗り気に見えなかったから。
一緒に遊んだ方がよかった?」
立ち止まり、こちらを向くななし。
「……」
なんとも返事をしづらく、
首を小さく横に振った。
すると君は嬉しそうに笑って
また歩き始める。
つられるようにオイラも笑みがこぼれた。
いつの間にか握られていた手を
強く握り直し、自室へと向かった。
部屋の前に着くと歩みが止まった。
「お邪魔してもいい?」
照れながらそう問うななしに
勿論、と答えて扉を開けた。
部屋の中へと招き入れる。
ぱたりと扉が閉まる音がした瞬間
背中に温もりを感じた。
突如腰に回される腕。
「ななし……?」
ななしから抱きつくなど
普段はないことだ。
嬉しさもあるけれど
驚きの方が勝っているのが本音だ。
回された細い腕を自身から離し
振り返りななしと向き合った。
向き合う為に腕を離したのだが
それがどうやらお気に召さなかったようで
再びななしが抱きついてきた。
……本当に珍しい。
「急に、どうしたのだ?」
オイラの胸に顔を埋めるななしの頭を
ひと撫でしながら尋ねた。
表情が見えないことが余計に
何事かと思わせる。
「……ごめんね」
身体を少し離し
オイラを見上げるように言う。
何故謝られているのか理解できず
黙りこんでしまった。
「井宿抜きで遊んでたでしょ?
なんか嫌そうだったから悪かったなぁって」
まぁ…オイラも一緒に居たかった
と言えばそうなのだが。
それだけだとちょっと違うのだ。
「でも本当は遊びたかったのかなと思って、
部屋を出たときに聞いたんだけど
首振ってくれたからよかった、って」
確かに興味はあった。
君があんまり楽しそうだったから。
でもそれよりも……
「私と居ることを選んでくれたみたいで
嬉しくなっちゃったの。
そしたらなんだかくっつきたくなって」
恥ずかしくなったのか
オイラの身体にまた顔を埋めてしまった。
途中から聞き取りにくくなったけど
ちゃんと、聞こえたのだ。
君の声。君の、気持ち。
ぎゅう、と強く抱き締めると
それに応えるように抱き返してくれた。
「オイラも嬉しかったのだ。
ななしがオイラを分かってくれていて」
そう、あの一瞬で
オイラが抱いたもやもやを見抜いて
連れ出してくれた。
オイラと居ることを選んでくれたと
オイラだって思ったのだ。
「確かにオイラ抜きで遊んでいたのが
嫌だった部分もあるのだが」
腕の力を緩め、頬に手を添えて。
君の顔をオイラに向かせる。
「ななしが凄く楽しそうだったから
皆に嫉妬していたのだ」
「……」
「子供みたい、だな」
「……ううん、嬉しい」
照れながら嬉しそうに見つめる君が
とても愛しくて愛しくて。
「この表情はオイラだけのもの、がいい。
他の人には見せないで欲しいのだ」
本当は笑顔さえも、
なんて思っているけど。
君にはいつも笑っていて欲しいから
言葉にはしないし、出来ない。
「井宿も他の人にはそんなこと言わないでね?
嫉妬もそういう気持ちも、
私にだけ見せてくれたらいいな」
遠慮がちに言うななしに
また口元が緩んでしまう。
勿論、という返事の代わりに
もう一度強く抱き締めた。
君を独り占めしたい。
透き通った声も
周りを和ませる笑顔も
照れた赤い頬も。
オイラだけが知っていればいい。
オイラだけのものにしたい。
なんて、
子供染みた発想。
君だから思うのだ。
君にしか思わないのだ。
→あとがき