ねこのきもち
君の名を教えてほしいのだ!
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暖かな日差しが降り注ぐ午後。
のんびり釣りをするのが日課のあなたに、
会いに行くのが私の日課でした。
ねこのきもち
「ちーちーりっ」
池に向かっている井宿を覗きこみながら
私は声を掛けた。
「だ。」
静かに釣りをしていた彼は
体の向きは変えず、顔だけを私へ向けた。
「今日はどう?釣れて……」
「ないのだ。」
私が途中で言葉を止めると
井宿が続きを発した。
こんな掛け合いも日課になりつつある。
「ふふ、やっぱり魚いないのかな。」
笑いながら井宿の隣に腰を下ろす。
「……それでもいいのだよ。」
そう微笑む彼に、私の心はどきりと跳ねた。
この笑顔、纏う空気
側にいてドキドキするのに安心する。
やっぱり好きだなぁって
改めて思うのも日課だったりする。
そんなことを考えていると
どこからかやってきた猫のたまが
私と井宿の間に座り込んだ。
「あれ、たま。どうしたの?」
「たまも一緒に釣りするのだ?」
珍しい訪問者に
二人の視線がたまに向けられる。
するとたまは私にすり寄ってきた。
まるで、撫でて欲しいと言っているよう。
「たま、撫でて欲しいの?」
うん、と返事をするように
たまはニャーと小さく鳴いた。
頭から背中にかけて何度か撫でてあげると
気持ち良さそうに喉を鳴らしている。
「ふふ、もしかして痒かったのかな?」
「……」
井宿に話しかけたつもりだったが、
井宿からの返事はない。
「井宿……?」
不思議に思って呼んでみると
「……!すまないのだ。ボーッとしてたのだ」
慌てた返事が返ってきた。
さっきまで普通に会話してたのに……
どうしたんだろう?
「井宿、大丈夫?」
体調でも悪い?
私は心配になって尋ねた。
「いや、そういうわけでは……」
「じゃあ、どうしたの?急に……」
口ごもる井宿に再び尋ねた。
「……」
「?」
暫くの沈黙。
あ、そうか。
「井宿ごめん!」
「え?」
「たまは井宿の方が断然懐いてるのに……
嫌だったよね、ごめん」
そうだよ。
私なんかが撫でるなんて。
「もう勝手に撫でたりしないから!」
私はたまを撫でていた手を離した。
「ななしちゃん……違うのだ」
はぁ、と少し溜め息をつき
たまを撫でる井宿。
あれ、違うの?
でも溜め息ついてるし……
「羨ましかっただけなのだ。
君に撫でられて、気持ち良さそうなたまが。」
え、それって
「オイラも猫だったら
こんな風に撫でてもらえたのか?
なんて思ってしまった」
撫でる手を止め
井宿が真っ直ぐ私を見つめる。
「はぁ、こんなこと
本当は言うつもりなかったのだ……」
君があまりにも違う方向に行くから、と
ふてくされたように呟く。
勘違いだったことも勿論恥ずかしくて、
でも井宿がそんな風に思ってくれてたことが
恥ずかしいけど嬉しくて
気がついたら手を伸ばしてた。
「……なっ、ななしちゃん!」
「猫じゃなくても、撫でて、いい?」
顔を紅く染める井宿をよそに
綺麗な空色の頭を撫でた。
「返事をする前に撫でてるのだ。」
「ふふ、ごめん。」
「でも、嬉しいからいいのだ。」
にっこりと笑うあなたに
今度は私の顔が紅く染まった。
「本当は猫じゃ嫌なのだ。
そしたらななしちゃんに
自分の気持ちを伝えることができない。」
そう言って撫でていた私の手を掴んだ。
「ななしちゃんのことが好きなのだ。」
井宿が、私を?
本当に?
いきなりのことに声が出ない。
「ごめんなのだ。
困らせるつもりはなかったのだ。
ただ、君と過ごす時間が大事だと、
伝えておきたくなったのだ。」
駄目だ、私もちゃんと伝えなくちゃ。
「私も。私も井宿が好き。
猫じゃ……嫌だよ……」
井宿は猫じゃないのに
もしも、なんて考えたら、涙が出そうだ。
「ななしちゃん、大丈夫なのだ。
オイラは猫じゃないし
今後猫になる予定もないのだ!」
今度は私の頭を井宿が撫でてくれた。
ああ、安心する。
「今後猫になる予定って……」
「それも心配してるかと思ったのだ!」
「確かに猫になっちゃうかのような
そんな言い回しだったかも。笑」
そんなやり取りをしてるうちに、
気がつくとたまの姿がなくなっていた。
「気を遣わせてしまったのだ……」
「ふふ、そうだね。
お詫びに後でまた撫でてあげよう?」
「だ。」
暖かな日差しが降り注ぐ午後。
猫の気持ちが少しだけわかった私達は
お互いの頭を撫でるのが日課となりました。
あとがき→
のんびり釣りをするのが日課のあなたに、
会いに行くのが私の日課でした。
ねこのきもち
「ちーちーりっ」
池に向かっている井宿を覗きこみながら
私は声を掛けた。
「だ。」
静かに釣りをしていた彼は
体の向きは変えず、顔だけを私へ向けた。
「今日はどう?釣れて……」
「ないのだ。」
私が途中で言葉を止めると
井宿が続きを発した。
こんな掛け合いも日課になりつつある。
「ふふ、やっぱり魚いないのかな。」
笑いながら井宿の隣に腰を下ろす。
「……それでもいいのだよ。」
そう微笑む彼に、私の心はどきりと跳ねた。
この笑顔、纏う空気
側にいてドキドキするのに安心する。
やっぱり好きだなぁって
改めて思うのも日課だったりする。
そんなことを考えていると
どこからかやってきた猫のたまが
私と井宿の間に座り込んだ。
「あれ、たま。どうしたの?」
「たまも一緒に釣りするのだ?」
珍しい訪問者に
二人の視線がたまに向けられる。
するとたまは私にすり寄ってきた。
まるで、撫でて欲しいと言っているよう。
「たま、撫でて欲しいの?」
うん、と返事をするように
たまはニャーと小さく鳴いた。
頭から背中にかけて何度か撫でてあげると
気持ち良さそうに喉を鳴らしている。
「ふふ、もしかして痒かったのかな?」
「……」
井宿に話しかけたつもりだったが、
井宿からの返事はない。
「井宿……?」
不思議に思って呼んでみると
「……!すまないのだ。ボーッとしてたのだ」
慌てた返事が返ってきた。
さっきまで普通に会話してたのに……
どうしたんだろう?
「井宿、大丈夫?」
体調でも悪い?
私は心配になって尋ねた。
「いや、そういうわけでは……」
「じゃあ、どうしたの?急に……」
口ごもる井宿に再び尋ねた。
「……」
「?」
暫くの沈黙。
あ、そうか。
「井宿ごめん!」
「え?」
「たまは井宿の方が断然懐いてるのに……
嫌だったよね、ごめん」
そうだよ。
私なんかが撫でるなんて。
「もう勝手に撫でたりしないから!」
私はたまを撫でていた手を離した。
「ななしちゃん……違うのだ」
はぁ、と少し溜め息をつき
たまを撫でる井宿。
あれ、違うの?
でも溜め息ついてるし……
「羨ましかっただけなのだ。
君に撫でられて、気持ち良さそうなたまが。」
え、それって
「オイラも猫だったら
こんな風に撫でてもらえたのか?
なんて思ってしまった」
撫でる手を止め
井宿が真っ直ぐ私を見つめる。
「はぁ、こんなこと
本当は言うつもりなかったのだ……」
君があまりにも違う方向に行くから、と
ふてくされたように呟く。
勘違いだったことも勿論恥ずかしくて、
でも井宿がそんな風に思ってくれてたことが
恥ずかしいけど嬉しくて
気がついたら手を伸ばしてた。
「……なっ、ななしちゃん!」
「猫じゃなくても、撫でて、いい?」
顔を紅く染める井宿をよそに
綺麗な空色の頭を撫でた。
「返事をする前に撫でてるのだ。」
「ふふ、ごめん。」
「でも、嬉しいからいいのだ。」
にっこりと笑うあなたに
今度は私の顔が紅く染まった。
「本当は猫じゃ嫌なのだ。
そしたらななしちゃんに
自分の気持ちを伝えることができない。」
そう言って撫でていた私の手を掴んだ。
「ななしちゃんのことが好きなのだ。」
井宿が、私を?
本当に?
いきなりのことに声が出ない。
「ごめんなのだ。
困らせるつもりはなかったのだ。
ただ、君と過ごす時間が大事だと、
伝えておきたくなったのだ。」
駄目だ、私もちゃんと伝えなくちゃ。
「私も。私も井宿が好き。
猫じゃ……嫌だよ……」
井宿は猫じゃないのに
もしも、なんて考えたら、涙が出そうだ。
「ななしちゃん、大丈夫なのだ。
オイラは猫じゃないし
今後猫になる予定もないのだ!」
今度は私の頭を井宿が撫でてくれた。
ああ、安心する。
「今後猫になる予定って……」
「それも心配してるかと思ったのだ!」
「確かに猫になっちゃうかのような
そんな言い回しだったかも。笑」
そんなやり取りをしてるうちに、
気がつくとたまの姿がなくなっていた。
「気を遣わせてしまったのだ……」
「ふふ、そうだね。
お詫びに後でまた撫でてあげよう?」
「だ。」
暖かな日差しが降り注ぐ午後。
猫の気持ちが少しだけわかった私達は
お互いの頭を撫でるのが日課となりました。
あとがき→
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