ー合宿編ー
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キミが後輩に弱い理由
合同合宿も残すことあと僅かとなったある朝。
「今日の午後から最終日までと短い期間だが、越前が特例で俺達の合宿に合流する」
「ボウヤが来るなんて楽しみだね」
「俺様の粋なはからいに感謝するんだな手塚」
「ああ。越前も良い経験となるだろう」
練習前の全体ミーティングで手塚からあのチビ助が来ることを知らされた。
「仁王君、どうかされましたか?」
「……いや」
神妙な面持ちを浮かべる俺に気付いた柳生に声をかけられたが、何でもないと言うように首を振る。
…何故か嫌な予感を感じてしまったが、気のせいだと思うことにした。
ーーしかし、それは甘かったとすぐに思い知らされることとなる。
「と、虎之助ー!!!」
合宿場に到着した越前を見た途端、愛子ちゃんは目を輝かせて駆け出したのだ。
「ー…は?な、なんスか!?は、離せって…っ!」
「愛、愛子ちゃん!?何しとるんじゃ!?」
ガバッと越前に抱きついた彼女の肩を引っ張るが、思った以上に力が強くて引き離せん。
「あ、赤也!手伝え!」
「え、お…俺ッスか?」
増援を呼ぶが「虎之助〜!」と越前に擦り寄る愛子ちゃんは手強く、結局桃城と大石にも手を借りて両方から引っ張ることでようやく二人を離すことが出来た。
「…ちょっとこの人一体なんなんスか?窒息しかねたんだけど」
「ボウヤすまなかったね」
「故意的じゃないにせよ…愛子ちゃんの胸に顔を埋めた罪は重いぜよ…!」
「はぁ…」
恨めしそうに見る俺に越前は怪訝そうな表情を浮かべたが、再び愛子ちゃんが近づいてくると眉を顰めて警戒心を露わにする。
「…近寄らないでくれる?」
「ご、ごめん…初対面で驚かせたよね」
「かなりね」
「キミのその目つきや髪の色とか…うちで飼ってる猫にそっくりだったからつい…」
「へえ。アンタも猫飼ってるんだ」
「え!もしかしてキミも…?」
「まあね」
「どうりで猫の香りがしたわけだ…!」
「なにそれ。…ただの変態かと思ったけど、アンタって案外面白そうだね」
「私如月愛子。忍足みたいな変態ではないから、良かったら仲良くしてね」
「越前リョーマ。それはアンタ次第かな」
そう言いながらも差し出された愛子ちゃんの手を握る越前。
愛子ちゃんが猫好きな人や後輩に優しいんは知っているが、俺の時よりもにこやかだし、スキンシップも激しいし…とにかく気に入らん。
「…おいチビ助。愛子ちゃんは、ダメじゃからな」
「さっきから意味が分からないんスけど」
本当は“彼女は俺のものじゃ!”と叫びたかったが、中坊のガキにまで嫉妬してると思われんが恥ずかくて出来んかった。(そもそも俺にそんな度胸があるんか…怪しいところじゃな)
「ちょっと、おチビおいで!…あのね、仁王と如月は付き合ってるんだよぉ…」
「ふーん…だからあの人怒ってるんだ。そうだとしても俺は悪くないけどね。勝手にくっついてきたのはあっちだし」
「…ほう、相変わらず減らず口を叩くやっちゃのう」
「心配しなくても私はショタコンじゃないから。後輩は絶対そういう対象に見えないから大丈夫」
「し、心配なんてしとらん…!…わけでもないが…、正直言っていい気はせん…」
「全く、仕方がないヤツだな」
呆れた口調で言いながらも愛子ちゃんの口角は上がっており、よしよしと頭を撫でられる。
それだけで不快な気持ちは全部吹き飛んでしまった。
「へぇ…。あの詐欺師の仁王さんが彼女の前では見る影もないなんて、まだまだだね」
「見ていて面白いよね」
くそ生意気な越前も腹立つが、一番恐ろしいんは不二じゃ。…アイツはどこまでが本気か分からん。
「よし、歓迎の印に今日の夕飯は越前君の好きな食べ物を作るよ!」
「…アンタが作るの?」
「越前、彼女が作る料理は美味いぞ」
「部長がそう言うなら信用は出来そうッスね。それなら焼き魚がいい」
「えー、魚かよ。そこは肉にしとけよ!」
「丸井は黙れ。越前君は魚が好きなんて…ますます虎之助にそっくりだわ」
「リョーマ」
「ん?」
「リョーマでいいよ。愛子さん」
ニヤリと笑うチビ助に愛子ちゃんの表情はいつもより柔らかい。(赤也に向ける視線と同じじゃが…)
「ほれ、手塚に幸村。こんなとこでいつまでも油売ってていいんか?さっさと練習始めんしゃい」
「仁王の言う通りだな。全員五分後にテニスコートに集合だ!」
「へー、仁王がそんなに練習熱心だなんて知らなかったよ」
「…プリ」
ーーーーー…
「虎之助ー…じゃなかった、リョーマお疲れ様」
「どーも」
「…あ。はい、雅治も」
「…ピヨッ」
ドリンクを持ってきた愛子ちゃんはそれを飲む越前をデレデレと見ている。
じとりとした視線を向ける俺に気付くとやべっといった感じで俺にも手渡してくれたが…、彼氏である俺よりチビ助が先とはどういうことじゃ。
「俺達には手渡してくれないのかい?」
「それくらい自分で取りなよな」
「完全なるエコ贔屓ですね」
そして、夕飯時も愛子ちゃんの越前贔屓は目についた。
「おい、如月。越前の皿の魚だけ明らかに多いのは何故なんだ。おかしいであろう」
真田の言葉に越前が座る方を見てみると、皿にてんこ盛りに魚が盛られておる。…確かにあれはやり過ぎじゃろ。(流石にチビ助も微妙な表情を浮かべている)
「集団の場であからさまな別け隔てがあってはならぬと思うが」
「虎之…じゃない。リョーマはまだまだ成長途中なんだからいいの。真田、アンタはこれ以上成長したら困るでしょ。今でさえ生徒手帳が手放せない顔してんだから」
「むっ。どういう意味だ」
「“より老け顔になったら、生徒手帳があっても高校生として見られなくなるよ”と如月は言う」
「…ぷっ!」
「赤也ァァア!!貴様…何を笑っておるのだ!!」
「えぇえ!!怒りの矛先は俺ッスか!?」
「…愛子ちゃん」
「あー、はいはい。雅治には特別に私の魚一尾あげるから!」
「…プリ」
なんか適当にあしらわれている気がするんは気のせいじゃろか…。とりあえずアンタの事も構っているぞ的な感じぜよ。
ーーーー…
夕食後、談話室で越前と猫の話をする愛子ちゃんを少し離れた椅子に座りながら待つ。
そして30分くらい経ち話が終わったのか、ふいに立ち上がった越前が俺の方に顔を向けたのだった。
「仁王さん、アンタの彼女お借りしました」
「…貸した覚えはないがのう」
「愛子さん、またね」
「おやすみー」
去っていく越前の背中に手を振る彼女の前へと座り、ムスッとした態度で見る。
「…ずいぶん盛り上がっておったのう」
「リョーマんとこの猫ちゃんカルピンっていうんだけど、めっちゃ可愛かったよ!雅治も会話に参加すれば良かったのに」
「…そんなら呼んでくれたら良かったんに…」
「アンタは我が儘な子どもか。どうせ呼んだって来なかったくせに」
「…プリ」
「ハァ…」
呆れたような溜息をつかれ思わず俯いてしまった。
「……私ね、意外かも知れないけど小さい頃は人形遊びが好きだったんだ」
「へ?」
「いつも赤ちゃんに見立てて世話してた」
唐突に始まった脈絡もない話に戸惑う俺のことなんて気にせず愛子ちゃんは話を続ける。
「…実は妹か弟が欲しかったの。でも知っての通りそれは叶わなかった。……だからなのかな」
「な、何がじゃ…?」
「赤也や鳳君みたいに慕ってくれる後輩には弱い。リョーマみたいに歳が離れていると可愛く思えて仕方がないんだ。私にもし弟がいたらこんな感じなのかな…ってさ」
思わずキョトンとすると、愛子ちゃんはニッと笑って俺を見た。
“だから心配するな”と言わんばかりの笑みに、ようやく腑に落ちた俺は力なく笑った。
「…そうか。愛子ちゃんがそんなこと思っていたなんて知らんかったぜよ」
「アンタは弟には見えないから、扱いが違うのは仕方ないでしょ」
「それを聞いて…安心したナリ」
「赤也やリョーマ達は可愛い後輩。しゅーくんや他の皆んなは…仲間というより悪友みたいな感じかな。そんでもってアンタは私唯一の彼氏なんだから、もっと自信持って堂々としてればいいの」
こんな情けない俺を見切らず…こんな嫉妬深い俺を丸々受け止めてくれる懐の広い愛子ちゃんの優しさに思わず涙が出そうになった。
「…そんなら、もっと普段から愛の言葉が欲しいナリ」
「おい、調子に乗るな」
「…なーんてな。今の言葉だけで充分じゃ」
「ハァ、全く…。私が好きな男は雅治だけだよ…って言えば良かった?」
「ふ、不意打ちはずるいぜよ…!」
「ハハ。アンタに免疫がもう少しついたら考えてやってもいいよ」
心臓がドキドキ高鳴り、頬が赤い。愛子ちゃんの言う通り、頻繁に愛の言葉を囁かれでもしたら俺の心は爆発するかも知れん…。
「………愛子ちゃん、俺も好いとうよ」
ーーこうして越前が来てくれたおかげで、なんだかんだまた一つ愛子ちゃんとの仲が深まった気がした。
「おい、チビ助」
「…なんスか」
「詫びにデザートのフルーツ一つやるぜよ」
「…え、」
次の日の朝、たまたま隣を通りかかった越前に声をかけると、めちゃくちゃ怪訝そうに見られたが今の俺は気分が良い。
「あ、リョーマ〜。私のも一つあげるよ」
「…やっぱり、お前にはあげん」
「…なんなんッスか」
コイツはただの後輩。…分かってはいるものの、どうやら気持ちはまだついていかんらしい。
腹いせにチビ助のキャップのつばを掴み、深く被らせてやった。
合同合宿も残すことあと僅かとなったある朝。
「今日の午後から最終日までと短い期間だが、越前が特例で俺達の合宿に合流する」
「ボウヤが来るなんて楽しみだね」
「俺様の粋なはからいに感謝するんだな手塚」
「ああ。越前も良い経験となるだろう」
練習前の全体ミーティングで手塚からあのチビ助が来ることを知らされた。
「仁王君、どうかされましたか?」
「……いや」
神妙な面持ちを浮かべる俺に気付いた柳生に声をかけられたが、何でもないと言うように首を振る。
…何故か嫌な予感を感じてしまったが、気のせいだと思うことにした。
ーーしかし、それは甘かったとすぐに思い知らされることとなる。
「と、虎之助ー!!!」
合宿場に到着した越前を見た途端、愛子ちゃんは目を輝かせて駆け出したのだ。
「ー…は?な、なんスか!?は、離せって…っ!」
「愛、愛子ちゃん!?何しとるんじゃ!?」
ガバッと越前に抱きついた彼女の肩を引っ張るが、思った以上に力が強くて引き離せん。
「あ、赤也!手伝え!」
「え、お…俺ッスか?」
増援を呼ぶが「虎之助〜!」と越前に擦り寄る愛子ちゃんは手強く、結局桃城と大石にも手を借りて両方から引っ張ることでようやく二人を離すことが出来た。
「…ちょっとこの人一体なんなんスか?窒息しかねたんだけど」
「ボウヤすまなかったね」
「故意的じゃないにせよ…愛子ちゃんの胸に顔を埋めた罪は重いぜよ…!」
「はぁ…」
恨めしそうに見る俺に越前は怪訝そうな表情を浮かべたが、再び愛子ちゃんが近づいてくると眉を顰めて警戒心を露わにする。
「…近寄らないでくれる?」
「ご、ごめん…初対面で驚かせたよね」
「かなりね」
「キミのその目つきや髪の色とか…うちで飼ってる猫にそっくりだったからつい…」
「へえ。アンタも猫飼ってるんだ」
「え!もしかしてキミも…?」
「まあね」
「どうりで猫の香りがしたわけだ…!」
「なにそれ。…ただの変態かと思ったけど、アンタって案外面白そうだね」
「私如月愛子。忍足みたいな変態ではないから、良かったら仲良くしてね」
「越前リョーマ。それはアンタ次第かな」
そう言いながらも差し出された愛子ちゃんの手を握る越前。
愛子ちゃんが猫好きな人や後輩に優しいんは知っているが、俺の時よりもにこやかだし、スキンシップも激しいし…とにかく気に入らん。
「…おいチビ助。愛子ちゃんは、ダメじゃからな」
「さっきから意味が分からないんスけど」
本当は“彼女は俺のものじゃ!”と叫びたかったが、中坊のガキにまで嫉妬してると思われんが恥ずかくて出来んかった。(そもそも俺にそんな度胸があるんか…怪しいところじゃな)
「ちょっと、おチビおいで!…あのね、仁王と如月は付き合ってるんだよぉ…」
「ふーん…だからあの人怒ってるんだ。そうだとしても俺は悪くないけどね。勝手にくっついてきたのはあっちだし」
「…ほう、相変わらず減らず口を叩くやっちゃのう」
「心配しなくても私はショタコンじゃないから。後輩は絶対そういう対象に見えないから大丈夫」
「し、心配なんてしとらん…!…わけでもないが…、正直言っていい気はせん…」
「全く、仕方がないヤツだな」
呆れた口調で言いながらも愛子ちゃんの口角は上がっており、よしよしと頭を撫でられる。
それだけで不快な気持ちは全部吹き飛んでしまった。
「へぇ…。あの詐欺師の仁王さんが彼女の前では見る影もないなんて、まだまだだね」
「見ていて面白いよね」
くそ生意気な越前も腹立つが、一番恐ろしいんは不二じゃ。…アイツはどこまでが本気か分からん。
「よし、歓迎の印に今日の夕飯は越前君の好きな食べ物を作るよ!」
「…アンタが作るの?」
「越前、彼女が作る料理は美味いぞ」
「部長がそう言うなら信用は出来そうッスね。それなら焼き魚がいい」
「えー、魚かよ。そこは肉にしとけよ!」
「丸井は黙れ。越前君は魚が好きなんて…ますます虎之助にそっくりだわ」
「リョーマ」
「ん?」
「リョーマでいいよ。愛子さん」
ニヤリと笑うチビ助に愛子ちゃんの表情はいつもより柔らかい。(赤也に向ける視線と同じじゃが…)
「ほれ、手塚に幸村。こんなとこでいつまでも油売ってていいんか?さっさと練習始めんしゃい」
「仁王の言う通りだな。全員五分後にテニスコートに集合だ!」
「へー、仁王がそんなに練習熱心だなんて知らなかったよ」
「…プリ」
ーーーーー…
「虎之助ー…じゃなかった、リョーマお疲れ様」
「どーも」
「…あ。はい、雅治も」
「…ピヨッ」
ドリンクを持ってきた愛子ちゃんはそれを飲む越前をデレデレと見ている。
じとりとした視線を向ける俺に気付くとやべっといった感じで俺にも手渡してくれたが…、彼氏である俺よりチビ助が先とはどういうことじゃ。
「俺達には手渡してくれないのかい?」
「それくらい自分で取りなよな」
「完全なるエコ贔屓ですね」
そして、夕飯時も愛子ちゃんの越前贔屓は目についた。
「おい、如月。越前の皿の魚だけ明らかに多いのは何故なんだ。おかしいであろう」
真田の言葉に越前が座る方を見てみると、皿にてんこ盛りに魚が盛られておる。…確かにあれはやり過ぎじゃろ。(流石にチビ助も微妙な表情を浮かべている)
「集団の場であからさまな別け隔てがあってはならぬと思うが」
「虎之…じゃない。リョーマはまだまだ成長途中なんだからいいの。真田、アンタはこれ以上成長したら困るでしょ。今でさえ生徒手帳が手放せない顔してんだから」
「むっ。どういう意味だ」
「“より老け顔になったら、生徒手帳があっても高校生として見られなくなるよ”と如月は言う」
「…ぷっ!」
「赤也ァァア!!貴様…何を笑っておるのだ!!」
「えぇえ!!怒りの矛先は俺ッスか!?」
「…愛子ちゃん」
「あー、はいはい。雅治には特別に私の魚一尾あげるから!」
「…プリ」
なんか適当にあしらわれている気がするんは気のせいじゃろか…。とりあえずアンタの事も構っているぞ的な感じぜよ。
ーーーー…
夕食後、談話室で越前と猫の話をする愛子ちゃんを少し離れた椅子に座りながら待つ。
そして30分くらい経ち話が終わったのか、ふいに立ち上がった越前が俺の方に顔を向けたのだった。
「仁王さん、アンタの彼女お借りしました」
「…貸した覚えはないがのう」
「愛子さん、またね」
「おやすみー」
去っていく越前の背中に手を振る彼女の前へと座り、ムスッとした態度で見る。
「…ずいぶん盛り上がっておったのう」
「リョーマんとこの猫ちゃんカルピンっていうんだけど、めっちゃ可愛かったよ!雅治も会話に参加すれば良かったのに」
「…そんなら呼んでくれたら良かったんに…」
「アンタは我が儘な子どもか。どうせ呼んだって来なかったくせに」
「…プリ」
「ハァ…」
呆れたような溜息をつかれ思わず俯いてしまった。
「……私ね、意外かも知れないけど小さい頃は人形遊びが好きだったんだ」
「へ?」
「いつも赤ちゃんに見立てて世話してた」
唐突に始まった脈絡もない話に戸惑う俺のことなんて気にせず愛子ちゃんは話を続ける。
「…実は妹か弟が欲しかったの。でも知っての通りそれは叶わなかった。……だからなのかな」
「な、何がじゃ…?」
「赤也や鳳君みたいに慕ってくれる後輩には弱い。リョーマみたいに歳が離れていると可愛く思えて仕方がないんだ。私にもし弟がいたらこんな感じなのかな…ってさ」
思わずキョトンとすると、愛子ちゃんはニッと笑って俺を見た。
“だから心配するな”と言わんばかりの笑みに、ようやく腑に落ちた俺は力なく笑った。
「…そうか。愛子ちゃんがそんなこと思っていたなんて知らんかったぜよ」
「アンタは弟には見えないから、扱いが違うのは仕方ないでしょ」
「それを聞いて…安心したナリ」
「赤也やリョーマ達は可愛い後輩。しゅーくんや他の皆んなは…仲間というより悪友みたいな感じかな。そんでもってアンタは私唯一の彼氏なんだから、もっと自信持って堂々としてればいいの」
こんな情けない俺を見切らず…こんな嫉妬深い俺を丸々受け止めてくれる懐の広い愛子ちゃんの優しさに思わず涙が出そうになった。
「…そんなら、もっと普段から愛の言葉が欲しいナリ」
「おい、調子に乗るな」
「…なーんてな。今の言葉だけで充分じゃ」
「ハァ、全く…。私が好きな男は雅治だけだよ…って言えば良かった?」
「ふ、不意打ちはずるいぜよ…!」
「ハハ。アンタに免疫がもう少しついたら考えてやってもいいよ」
心臓がドキドキ高鳴り、頬が赤い。愛子ちゃんの言う通り、頻繁に愛の言葉を囁かれでもしたら俺の心は爆発するかも知れん…。
「………愛子ちゃん、俺も好いとうよ」
ーーこうして越前が来てくれたおかげで、なんだかんだまた一つ愛子ちゃんとの仲が深まった気がした。
「おい、チビ助」
「…なんスか」
「詫びにデザートのフルーツ一つやるぜよ」
「…え、」
次の日の朝、たまたま隣を通りかかった越前に声をかけると、めちゃくちゃ怪訝そうに見られたが今の俺は気分が良い。
「あ、リョーマ〜。私のも一つあげるよ」
「…やっぱり、お前にはあげん」
「…なんなんッスか」
コイツはただの後輩。…分かってはいるものの、どうやら気持ちはまだついていかんらしい。
腹いせにチビ助のキャップのつばを掴み、深く被らせてやった。