ー合宿編ー
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キミからの愛があれば
「な、なんか…仁王先輩めちゃくちゃピリピリしてませんか?幸村部長並みに恐ろしいんスけど…」
「…あー、原因は言わずともアレだろ」
こんなに苛々したんは生まれて初めてかも知れんちゅーほど、むしゃくしゃする。
そんな俺を見てコソコソ話す赤也と丸井なんて気にならんくらい、俺の眼中には不二と話す愛子ちゃんしか入っとらん。
ドリンクを持ってきた愛子ちゃんに俺より早く駆け寄って彼女が持っていたカゴを受け取ったんも気に入らんが、会話をしながらさりげなくボディタッチをするんが一番腹立たしい。
愛子ちゃんも満更嫌じゃなさそうに見えてくるなんて…なかなか重症じゃな。(彼女のことを信じているはずなのに)
「仁王。先程から余所見ばかりしおって、練習に集中しろ!」
「…煩いやっちゃな」
「何っ!?」
「…ハァ。ちょっと頭冷やしてくる」
「何処に行く気だ」
「…すぐ戻るぜよ」
「真田君、少しだけでいいので彼を見逃してあげて下さい」
すまんのう、柳生…。
テニスコート裏にある水道で頭から水をかぶっていると、背後からザッと足音が聞こえた。
「…愛子、ちゃん」
「ほら」
振り向くと愛子ちゃんが立っており、タオルを投げらる。俺はそれをキャッチして髪から滴る水を拭いた。
平然を装うが不二を置いて俺を追いかけてきてくれたことが嬉しくて思わず口角が上がってしまい、タオルで口元を隠したのだった。
「どうかした?なんか様子が変だったけど」
「…気付いておったんか?」
「当たり前でしょ」
その言葉を聞いた途端、先程まで感じていたモヤモヤが全て消えてしまった。
…あまりにも単純過ぎて自分でも失笑するぜよ。
「…大丈夫じゃ。暑さにやられてしまっただけナリ」
「…そう?アンタってば本当暑さに弱いんだから」
「水浴びたら復活したぜよ」
「そんなら早く戻った方が良いよ。休憩も真田に殴られない程度にしなね」
「おん」
隣に近付いてきた愛子ちゃんに「ファイト」と背中をバシッと叩かれ、気合が入る。お陰で残りの時間は練習に集中することが出来た。
ーーーー…
夕飯が終わり、柳生と大浴場へと行った。
なかなか良い風呂に練習の疲れも不二のことも綺麗サッパリ流れ、良い気分で部屋に戻ろうとしていた。
しかし喉が乾いたので自販機に寄ろうと談話室に入りある光景を目撃してしまった瞬間、先程までの気分は一転し、絶望のドン底に突き落とされた。
「ー…ッ、不二!!」
「に、仁王君!?」
愛子ちゃんの頬に手を当てて顔を近づけようとする不二の姿を見た瞬間、俺の中のナニかが切れよった。
瞬時に駆け出し、不二の肩を力強くグイッと引く。そのまま驚く奴の胸ぐらを掴み、近くの壁に向けてドンッと背中を押し当てた。
「ちょ、ちょっと!何してるのよ!?」
「…それはこっちの台詞じゃ」
「何を勘違いしてるのか知らないけど、随分と野蛮だね。…これじゃあ、キミになんか愛子ちゃんを任せられないよ」
「…っ、なんじゃと!!」
「雅治やめなさい!!こんなところ真田や幸村に見られたらどうするつもり!?」
不二を庇おうとしてるのか胸ぐらを掴む俺の腕を引っ張る愛子ちゃんに初めて苛立ちを感じた。
「…ほうか。やはり初恋の相手には敵わんっちゅーわけじゃな」
「は?」
「もう放っておいてくれ。…ソイツと仲良くしとったらいいきに…」
力なくそう呟き不二の服を離す。俺はそのまま二人に背を向けて歩き出したのだった。
ー……きっともう、追ってくることもないじゃろう。
女心と秋の空とはよく言ったもんぜよ。たった数日で今まで築き上げてきたもんが簡単に崩れ去るなんて。
「ーー……雅治っ!!」
背後から叫ばれた声に思わず驚いてしまった。振り向くと息を切らした愛子ちゃんが険しい顔をして立っていた。
「……なんじゃ。別れ話でもしに来よったんか」
「…何バカなこと言ってんの」
距離を詰めてくる彼女から逃げ出したかったが、何故か足がその場に縫い付けられたかのように動かない。
「…何泣いてんのよ、バーカ」
「な、泣いてなんかないぜよ!それにさっきからバカ、バカ言いよって…愛子ちゃんの方がバカじゃ!」
「そうだね。アンタの嫉妬に気付かなかった私は大バカ野郎だよ。考えてみたら分かることなのにね」
「な、なんで…」
「さっき柳生君に言われたの。“仁王君が大切ならばもっと彼の気持ちに寄り添ってあげて下さい”って怒られちゃったわ」
「や、柳生の奴…そんなこと言うとったんか…」
俺のことを思って言ってくれたんは嬉しいが、愛子ちゃんの反応が怖かった。
「まさかそんなに心配してるとは思わなかった。私としゅーく…不二の間には本当に何もないから。私が好きなのはアンタだけだし」
「…っ!で、でも…さっき、不二が愛子ちゃんにキ、キスしようと…」
「はあ!?そんなわけないでしょ!私の目に入り込んだ睫毛を取ってくれようとしてただけだわ」
「う、嘘じゃ!そんな誤魔化し…!」
「私はアンタと違って詐欺師じゃないんだけど。…全く変なところで往生が悪いんだから」
愛子ちゃんは「これならどう?」と言ってグイッと俺の胸ぐらを引き寄せる。
「ー…んっ!?」
二人の唇が合わさり、それはすぐに啄むようなキスへと変わった。角度を変えられ徐々に深くなっていく。
愛子ちゃんからの愛が伝わり、気付いたら彼女の腰に手を回していた。貪欲に彼女を求め、舌を絡めると鼻にかかった声を漏らす愛子ちゃんが可愛くて仕方がなくて、やはり離れることなんて出来そうにない。
こうして暫く口付けを交わしていたが、愛子ちゃんの息がもたなくなったところでそっと唇を離した。
すると愛子ちゃんは酸欠で顔を赤らめながらキッと俺を睨みつけてきたのだった。
「す、すまん…つい…ッ」
「…っハァ…、いい、よく聞きな…。こんなキスするのも…したいと思うのも、アンタだけに決まってんでしょ。私が誰でもホイホイ受け入れるような尻軽女にでも見える?」
彼女の気迫に圧倒されつつ、そんなワケあるはずないと勢いよく首を横に振ると、「じゃあ、私のこと信じなさい」と愛子ちゃんは堂々と胸を張った。
元はと言えば愛子ちゃんが紛らわしいことしてたんがいけんのに…と思いながらも、彼女が俺を裏切るはずなんてなかったと思わせてくれるような態度に今まで感じていた不安が急に馬鹿らしくなり、俺は思わずくつくつ笑ってしまった。
「やはり愛子ちゃんには敵わんのう…」
「アンタは心配症過ぎなの。あとで不二に謝りなよ」
「…しゅーくんでよか。もう気にしないきに。愛子ちゃんの愛が伝わったから大丈夫じゃ」
「そう。そりゃ良かったわ」
愛子ちゃんは目を細めて優しげに微笑んだ。その珍しい表情に胸がキュンとした俺は再び彼女の頬に向けて手を伸ばした。
ーーその時、背後から「…おっほん」と第三者の声が聞こえたのだった。
「…仲直りしたんはええんやけど、ここ一応廊下やねん」
「いやー、大人のキスって感じでしたね〜!見てるこっちがドキドキしちゃいましたよ。まるでドラマのようッスね!」
背後を振り向くと1メートル程離れた所に呆れ顔の忍足と鼻息荒く頬を赤らめる桃城がいた。
「なっ!アンタ達…いつからそこに!!悪趣味なのはその伊達眼鏡だけにしときなさいよ!!」
「おたくらが勝手にイチャコラ始めたから通れんかったんや。そんなことより、愛子ちゃんも可愛いとこあるやんか〜。ええな、彼女がいるって青春やな。まさにアオハルや」
「なんか忍足さんオッサンくさいッスよ」
「…ッ、このことを他のヤツらに言いふらしたりでもしたら…っ!アンタら二人のご飯は3食ずっーとキャベツだけにするからな!!」
「な!そ、それだけは勘弁して下さいよ!!」
「嫌なら今見たこと全てこの瞬間に忘れろ」
愛子ちゃんは低い声で凄みメンチを切っているが、耳は真っ赤に染まっている。これまた珍しく恥じらう彼女が愛おしくて可笑しくて、俺は羞恥なんて忘れて堪らずに笑い声を漏らす。
「くくく…」
「アンタは何笑ってんの!もう、知らない…!私部屋戻るから!」
「ま、待ちんしゃい!送って行くぜよ!」
「結構です!」
とうとうお冠となってしまった愛子ちゃんを俺は慌てて追いかける。
そして隣に追いつくと無言で手を差し出されたので、恐る恐る俺も差し出すとギュッと指先を握られた。
いじらしい仕草に思わず笑みを漏らすと「…バカ」と睨まれた。しかし今日の俺は今までとは違う。
彼女のお陰で自信を持つことが出来たので、しっかりと小さな手の平を握り直しておいた。
ーーーー
ーーー
ー…
「な、なんか…今日の仁王先輩めちゃくちゃ機嫌良くないッスか?不二さん並に笑顔爽やかなんスけど…」
「…あー、導因は言わずともアレだろ」
不二に話しかけられた愛子ちゃんはチラッと俺を見ると、“安心しなさい”と言うかのように軽く手を振ってくれた。それに俺も手をあげて応える。
こうして、不二と一緒にいる彼女を見ても黒くモヤモヤとした気持ちが湧かなくなった。
……が、やはり距離が近いんは気に入らん。よし、邪魔しに行くとするかのう。
「な、なんか…仁王先輩めちゃくちゃピリピリしてませんか?幸村部長並みに恐ろしいんスけど…」
「…あー、原因は言わずともアレだろ」
こんなに苛々したんは生まれて初めてかも知れんちゅーほど、むしゃくしゃする。
そんな俺を見てコソコソ話す赤也と丸井なんて気にならんくらい、俺の眼中には不二と話す愛子ちゃんしか入っとらん。
ドリンクを持ってきた愛子ちゃんに俺より早く駆け寄って彼女が持っていたカゴを受け取ったんも気に入らんが、会話をしながらさりげなくボディタッチをするんが一番腹立たしい。
愛子ちゃんも満更嫌じゃなさそうに見えてくるなんて…なかなか重症じゃな。(彼女のことを信じているはずなのに)
「仁王。先程から余所見ばかりしおって、練習に集中しろ!」
「…煩いやっちゃな」
「何っ!?」
「…ハァ。ちょっと頭冷やしてくる」
「何処に行く気だ」
「…すぐ戻るぜよ」
「真田君、少しだけでいいので彼を見逃してあげて下さい」
すまんのう、柳生…。
テニスコート裏にある水道で頭から水をかぶっていると、背後からザッと足音が聞こえた。
「…愛子、ちゃん」
「ほら」
振り向くと愛子ちゃんが立っており、タオルを投げらる。俺はそれをキャッチして髪から滴る水を拭いた。
平然を装うが不二を置いて俺を追いかけてきてくれたことが嬉しくて思わず口角が上がってしまい、タオルで口元を隠したのだった。
「どうかした?なんか様子が変だったけど」
「…気付いておったんか?」
「当たり前でしょ」
その言葉を聞いた途端、先程まで感じていたモヤモヤが全て消えてしまった。
…あまりにも単純過ぎて自分でも失笑するぜよ。
「…大丈夫じゃ。暑さにやられてしまっただけナリ」
「…そう?アンタってば本当暑さに弱いんだから」
「水浴びたら復活したぜよ」
「そんなら早く戻った方が良いよ。休憩も真田に殴られない程度にしなね」
「おん」
隣に近付いてきた愛子ちゃんに「ファイト」と背中をバシッと叩かれ、気合が入る。お陰で残りの時間は練習に集中することが出来た。
ーーーー…
夕飯が終わり、柳生と大浴場へと行った。
なかなか良い風呂に練習の疲れも不二のことも綺麗サッパリ流れ、良い気分で部屋に戻ろうとしていた。
しかし喉が乾いたので自販機に寄ろうと談話室に入りある光景を目撃してしまった瞬間、先程までの気分は一転し、絶望のドン底に突き落とされた。
「ー…ッ、不二!!」
「に、仁王君!?」
愛子ちゃんの頬に手を当てて顔を近づけようとする不二の姿を見た瞬間、俺の中のナニかが切れよった。
瞬時に駆け出し、不二の肩を力強くグイッと引く。そのまま驚く奴の胸ぐらを掴み、近くの壁に向けてドンッと背中を押し当てた。
「ちょ、ちょっと!何してるのよ!?」
「…それはこっちの台詞じゃ」
「何を勘違いしてるのか知らないけど、随分と野蛮だね。…これじゃあ、キミになんか愛子ちゃんを任せられないよ」
「…っ、なんじゃと!!」
「雅治やめなさい!!こんなところ真田や幸村に見られたらどうするつもり!?」
不二を庇おうとしてるのか胸ぐらを掴む俺の腕を引っ張る愛子ちゃんに初めて苛立ちを感じた。
「…ほうか。やはり初恋の相手には敵わんっちゅーわけじゃな」
「は?」
「もう放っておいてくれ。…ソイツと仲良くしとったらいいきに…」
力なくそう呟き不二の服を離す。俺はそのまま二人に背を向けて歩き出したのだった。
ー……きっともう、追ってくることもないじゃろう。
女心と秋の空とはよく言ったもんぜよ。たった数日で今まで築き上げてきたもんが簡単に崩れ去るなんて。
「ーー……雅治っ!!」
背後から叫ばれた声に思わず驚いてしまった。振り向くと息を切らした愛子ちゃんが険しい顔をして立っていた。
「……なんじゃ。別れ話でもしに来よったんか」
「…何バカなこと言ってんの」
距離を詰めてくる彼女から逃げ出したかったが、何故か足がその場に縫い付けられたかのように動かない。
「…何泣いてんのよ、バーカ」
「な、泣いてなんかないぜよ!それにさっきからバカ、バカ言いよって…愛子ちゃんの方がバカじゃ!」
「そうだね。アンタの嫉妬に気付かなかった私は大バカ野郎だよ。考えてみたら分かることなのにね」
「な、なんで…」
「さっき柳生君に言われたの。“仁王君が大切ならばもっと彼の気持ちに寄り添ってあげて下さい”って怒られちゃったわ」
「や、柳生の奴…そんなこと言うとったんか…」
俺のことを思って言ってくれたんは嬉しいが、愛子ちゃんの反応が怖かった。
「まさかそんなに心配してるとは思わなかった。私としゅーく…不二の間には本当に何もないから。私が好きなのはアンタだけだし」
「…っ!で、でも…さっき、不二が愛子ちゃんにキ、キスしようと…」
「はあ!?そんなわけないでしょ!私の目に入り込んだ睫毛を取ってくれようとしてただけだわ」
「う、嘘じゃ!そんな誤魔化し…!」
「私はアンタと違って詐欺師じゃないんだけど。…全く変なところで往生が悪いんだから」
愛子ちゃんは「これならどう?」と言ってグイッと俺の胸ぐらを引き寄せる。
「ー…んっ!?」
二人の唇が合わさり、それはすぐに啄むようなキスへと変わった。角度を変えられ徐々に深くなっていく。
愛子ちゃんからの愛が伝わり、気付いたら彼女の腰に手を回していた。貪欲に彼女を求め、舌を絡めると鼻にかかった声を漏らす愛子ちゃんが可愛くて仕方がなくて、やはり離れることなんて出来そうにない。
こうして暫く口付けを交わしていたが、愛子ちゃんの息がもたなくなったところでそっと唇を離した。
すると愛子ちゃんは酸欠で顔を赤らめながらキッと俺を睨みつけてきたのだった。
「す、すまん…つい…ッ」
「…っハァ…、いい、よく聞きな…。こんなキスするのも…したいと思うのも、アンタだけに決まってんでしょ。私が誰でもホイホイ受け入れるような尻軽女にでも見える?」
彼女の気迫に圧倒されつつ、そんなワケあるはずないと勢いよく首を横に振ると、「じゃあ、私のこと信じなさい」と愛子ちゃんは堂々と胸を張った。
元はと言えば愛子ちゃんが紛らわしいことしてたんがいけんのに…と思いながらも、彼女が俺を裏切るはずなんてなかったと思わせてくれるような態度に今まで感じていた不安が急に馬鹿らしくなり、俺は思わずくつくつ笑ってしまった。
「やはり愛子ちゃんには敵わんのう…」
「アンタは心配症過ぎなの。あとで不二に謝りなよ」
「…しゅーくんでよか。もう気にしないきに。愛子ちゃんの愛が伝わったから大丈夫じゃ」
「そう。そりゃ良かったわ」
愛子ちゃんは目を細めて優しげに微笑んだ。その珍しい表情に胸がキュンとした俺は再び彼女の頬に向けて手を伸ばした。
ーーその時、背後から「…おっほん」と第三者の声が聞こえたのだった。
「…仲直りしたんはええんやけど、ここ一応廊下やねん」
「いやー、大人のキスって感じでしたね〜!見てるこっちがドキドキしちゃいましたよ。まるでドラマのようッスね!」
背後を振り向くと1メートル程離れた所に呆れ顔の忍足と鼻息荒く頬を赤らめる桃城がいた。
「なっ!アンタ達…いつからそこに!!悪趣味なのはその伊達眼鏡だけにしときなさいよ!!」
「おたくらが勝手にイチャコラ始めたから通れんかったんや。そんなことより、愛子ちゃんも可愛いとこあるやんか〜。ええな、彼女がいるって青春やな。まさにアオハルや」
「なんか忍足さんオッサンくさいッスよ」
「…ッ、このことを他のヤツらに言いふらしたりでもしたら…っ!アンタら二人のご飯は3食ずっーとキャベツだけにするからな!!」
「な!そ、それだけは勘弁して下さいよ!!」
「嫌なら今見たこと全てこの瞬間に忘れろ」
愛子ちゃんは低い声で凄みメンチを切っているが、耳は真っ赤に染まっている。これまた珍しく恥じらう彼女が愛おしくて可笑しくて、俺は羞恥なんて忘れて堪らずに笑い声を漏らす。
「くくく…」
「アンタは何笑ってんの!もう、知らない…!私部屋戻るから!」
「ま、待ちんしゃい!送って行くぜよ!」
「結構です!」
とうとうお冠となってしまった愛子ちゃんを俺は慌てて追いかける。
そして隣に追いつくと無言で手を差し出されたので、恐る恐る俺も差し出すとギュッと指先を握られた。
いじらしい仕草に思わず笑みを漏らすと「…バカ」と睨まれた。しかし今日の俺は今までとは違う。
彼女のお陰で自信を持つことが出来たので、しっかりと小さな手の平を握り直しておいた。
ーーーー
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ー…
「な、なんか…今日の仁王先輩めちゃくちゃ機嫌良くないッスか?不二さん並に笑顔爽やかなんスけど…」
「…あー、導因は言わずともアレだろ」
不二に話しかけられた愛子ちゃんはチラッと俺を見ると、“安心しなさい”と言うかのように軽く手を振ってくれた。それに俺も手をあげて応える。
こうして、不二と一緒にいる彼女を見ても黒くモヤモヤとした気持ちが湧かなくなった。
……が、やはり距離が近いんは気に入らん。よし、邪魔しに行くとするかのう。