ー友達編2ー
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キミに心配をかけたくないんです
朝下駄箱を開けると、また例の紙が入っていた。
「……また入ってたの?」
「相手は暇人のようだね」
二学期になってから【死ね】【仁王君に近づくな】【アバズレ女】など内容は様々だが、こういった地味な嫌がらせが増えてきたのである。筆跡は大体三人程で手口は毎回同じ。多分前に私を呼び出したグループだと思う。
まあ誰だとしても全くくだらないし、紙の無駄でしかない。こんなことで私が傷付くとでも思っているんだろうか。
慣れた手つきでその紙をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨てた私を誰かが陰から見ていたなんて気付きもしなかった。
ーーーー
ーーー
ー…
それから徐々に嫌がらせの中身はエスカレートしていった。最初は上履きへの悪戯、続いて教科書への落書きや紛失。
「…あれ?如月さん、また教科書忘れたの…?それ、違う人の物だよね」
「なんか最近忘れっぽくてね〜」
「…そう」
この感の鋭い男に気付かれてはならない。だって、確実に仁王にも知られてしまう。
あの優しい男はきっと自分のせいじゃ…と酷く傷ついてしまうだろうから。
そんなある朝、また上履きがなくなっていた。前にも焼却炉のゴミ置き場に色々捨てられていたからきっとそこだろう。
そう思って校舎裏に足を運び、ゴミバケツの蓋を開けたその時ーーバシャッと水が降ってきた。
濡れた全身に流石の私も思わず唖然としてしまった。だがすぐにハッと我にかえり頭上を見上げてみると、開けられた2階の窓からひっくり返されたバケツを持つ誰かの腕が見え、「バーカ!!」という言葉と複数の笑い声が聞こえたのだった。
「…その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
これじゃあ、仁王にバレるだろ。
着替えようと思ったが、昨日体操着を切り刻まれてしまったことを思い出した。なので仕方なく保健室へと向かった。
ーーーー…
「愛、愛子ちゃん…その格好、どうしたんぜよ…」
クラスにやって来た仁王は新品のジャージ姿でスリッパを履く私を見て驚きの声を上げた。
…こんな姿見られたくなかったな。髪も濡れてしまったので珍しく一つに束ねており、見た目だけで言ったらとてもダサい。
「水飲もうとしたら蛇口が壊れてて水が吹き出した。んで、体操着も忘れたから保健室で新しいジャージ借りた」
「……それは、災難じゃのう…」
「ホントついてないよねー」
納得のいっていない顔で私をジッと見てくるが気づかないふりをする。
「…ほんに何もないんか?」
「は?」
「いや…、なんか最近、愛子ちゃんの周りのもんが色々新しくなっとる気がしちょって…」
「(…コイツ。そういうところは目敏いな)」
「…何か、困っとらん?」
「何も」
「……そうか」
その話はお終いと言うように「そういえば数学の先生がね〜」と話題を変える。すると仁王はそれ以上何も言って来なかった。
そして仁王が自身のクラスに戻ったあと、珍しく黙って静観していた幸村がおもむろに口を開いた。
「…仁王に黙っているつもり?」
「何を?」
「俺が気付いてないとでも?言いにくいなら俺から伝えてあげようか」
「……いい。アイツには絶対に言わないで」
「どうして?」
「……変な心配なんてかけたくない。それにそろそろ相手も諦める頃だろうしね」
「…それはどうかな。とにかく気をつけなよ」
この時の私は幸村の言葉の意味を深く考えることはしなかった。
それが後々、自らの首を絞める事に繋がることになろうとはーー…。
ーーーー
ーーー
ー…
明日は二度目の海原祭。相手も準備で忙しいのか、とうとう飽きたのか、ここ数日嫌がらせはなりを潜めていた。
「愛子ちゃん!もし…自由時間があったら… 合わせるきに、また一緒に回らんか…?」
「あんまし時間はないと思うけど」
「それでも良い、……ダメかのう?」
「…はあ。…いいよ。どーせ、友達は彼氏と一緒だろうし」
「…っ、楽しみにしとるナリ!!」
「今回はちゃんと忘れないから」
去年を思い出して笑う私を見て、仁王も「頼むぜよ」と笑った。
「よし。完成」
仁王と話しながらも調理部で使うラッピング用のリボンを作っていたがようやく終わり、他にも色々入っているダンボールの箱の中へと入れる。
「じゃあ、私行くから」
「重そうじゃのう…、手伝うぜよ」
「いいよ。アンタはそろそろ自分のクラスの手伝いしなよ」
アンタのクラスの委員長に私が怒られると言うと、仁王は渋々自分のクラスへと戻って行った。
仁王を見送ったあと、何とか大きなダンボールを両手で抱えた私は廊下に出ると階段を目指した。調理部は一階にあるので誰もいない階段をゆっくり下る。ーーこの時ダンボールに気を取られていたせいで、背後から近づく気配になんて気付かなかった。
ー…ドンっと、突如背中に強い衝撃が走った。
身体が前のめりとなる。両手が塞がっていて、手すりを掴むこともバランスを取ることも出来なかった私は重力に引き寄せられるように踊り場へと落下していった。ーーその瞬間の出来事は頭が真っ白となりよく覚えていない。
驚きと、痛みと、ダンボールの心配と、頭の中で思考がごちゃごちゃとなる。なんだか視界もぼんやりしてきた。
遠ざかる意識の片隅で「きゃあーー!!」と誰かの叫び声が聞こえたような気がした。
朝下駄箱を開けると、また例の紙が入っていた。
「……また入ってたの?」
「相手は暇人のようだね」
二学期になってから【死ね】【仁王君に近づくな】【アバズレ女】など内容は様々だが、こういった地味な嫌がらせが増えてきたのである。筆跡は大体三人程で手口は毎回同じ。多分前に私を呼び出したグループだと思う。
まあ誰だとしても全くくだらないし、紙の無駄でしかない。こんなことで私が傷付くとでも思っているんだろうか。
慣れた手つきでその紙をぐしゃぐしゃに丸めてゴミ箱に捨てた私を誰かが陰から見ていたなんて気付きもしなかった。
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それから徐々に嫌がらせの中身はエスカレートしていった。最初は上履きへの悪戯、続いて教科書への落書きや紛失。
「…あれ?如月さん、また教科書忘れたの…?それ、違う人の物だよね」
「なんか最近忘れっぽくてね〜」
「…そう」
この感の鋭い男に気付かれてはならない。だって、確実に仁王にも知られてしまう。
あの優しい男はきっと自分のせいじゃ…と酷く傷ついてしまうだろうから。
そんなある朝、また上履きがなくなっていた。前にも焼却炉のゴミ置き場に色々捨てられていたからきっとそこだろう。
そう思って校舎裏に足を運び、ゴミバケツの蓋を開けたその時ーーバシャッと水が降ってきた。
濡れた全身に流石の私も思わず唖然としてしまった。だがすぐにハッと我にかえり頭上を見上げてみると、開けられた2階の窓からひっくり返されたバケツを持つ誰かの腕が見え、「バーカ!!」という言葉と複数の笑い声が聞こえたのだった。
「…その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
これじゃあ、仁王にバレるだろ。
着替えようと思ったが、昨日体操着を切り刻まれてしまったことを思い出した。なので仕方なく保健室へと向かった。
ーーーー…
「愛、愛子ちゃん…その格好、どうしたんぜよ…」
クラスにやって来た仁王は新品のジャージ姿でスリッパを履く私を見て驚きの声を上げた。
…こんな姿見られたくなかったな。髪も濡れてしまったので珍しく一つに束ねており、見た目だけで言ったらとてもダサい。
「水飲もうとしたら蛇口が壊れてて水が吹き出した。んで、体操着も忘れたから保健室で新しいジャージ借りた」
「……それは、災難じゃのう…」
「ホントついてないよねー」
納得のいっていない顔で私をジッと見てくるが気づかないふりをする。
「…ほんに何もないんか?」
「は?」
「いや…、なんか最近、愛子ちゃんの周りのもんが色々新しくなっとる気がしちょって…」
「(…コイツ。そういうところは目敏いな)」
「…何か、困っとらん?」
「何も」
「……そうか」
その話はお終いと言うように「そういえば数学の先生がね〜」と話題を変える。すると仁王はそれ以上何も言って来なかった。
そして仁王が自身のクラスに戻ったあと、珍しく黙って静観していた幸村がおもむろに口を開いた。
「…仁王に黙っているつもり?」
「何を?」
「俺が気付いてないとでも?言いにくいなら俺から伝えてあげようか」
「……いい。アイツには絶対に言わないで」
「どうして?」
「……変な心配なんてかけたくない。それにそろそろ相手も諦める頃だろうしね」
「…それはどうかな。とにかく気をつけなよ」
この時の私は幸村の言葉の意味を深く考えることはしなかった。
それが後々、自らの首を絞める事に繋がることになろうとはーー…。
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ー…
明日は二度目の海原祭。相手も準備で忙しいのか、とうとう飽きたのか、ここ数日嫌がらせはなりを潜めていた。
「愛子ちゃん!もし…自由時間があったら… 合わせるきに、また一緒に回らんか…?」
「あんまし時間はないと思うけど」
「それでも良い、……ダメかのう?」
「…はあ。…いいよ。どーせ、友達は彼氏と一緒だろうし」
「…っ、楽しみにしとるナリ!!」
「今回はちゃんと忘れないから」
去年を思い出して笑う私を見て、仁王も「頼むぜよ」と笑った。
「よし。完成」
仁王と話しながらも調理部で使うラッピング用のリボンを作っていたがようやく終わり、他にも色々入っているダンボールの箱の中へと入れる。
「じゃあ、私行くから」
「重そうじゃのう…、手伝うぜよ」
「いいよ。アンタはそろそろ自分のクラスの手伝いしなよ」
アンタのクラスの委員長に私が怒られると言うと、仁王は渋々自分のクラスへと戻って行った。
仁王を見送ったあと、何とか大きなダンボールを両手で抱えた私は廊下に出ると階段を目指した。調理部は一階にあるので誰もいない階段をゆっくり下る。ーーこの時ダンボールに気を取られていたせいで、背後から近づく気配になんて気付かなかった。
ー…ドンっと、突如背中に強い衝撃が走った。
身体が前のめりとなる。両手が塞がっていて、手すりを掴むこともバランスを取ることも出来なかった私は重力に引き寄せられるように踊り場へと落下していった。ーーその瞬間の出来事は頭が真っ白となりよく覚えていない。
驚きと、痛みと、ダンボールの心配と、頭の中で思考がごちゃごちゃとなる。なんだか視界もぼんやりしてきた。
遠ざかる意識の片隅で「きゃあーー!!」と誰かの叫び声が聞こえたような気がした。